義輝記 伏竜の章 その弐
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【 華陀の治療の件 】

 

あれから、七日が過ぎた。

 

俺達は、役割を月様や詠より割り振ってもらい、仕事に励んでいる。

 

まず、義輝は政務、兵の鍛錬、月様の護衛と全般な活躍を見せ、非常に重宝がられている。 

 

薫卓軍の将は偏りが多いため、必要人数が余分にかかり、財政に少なくない負担を背負わせため、一人居るだけで用が済むというのは、大変助かる。

 

次に、俺、光秀、信玄、信廉は、政務を主に担当。 

 

謙信、信長、昌景殿、鹿介殿、道雪殿、紹運殿は、兵の鍛錬。

 

義清、宗茂は、俺の護衛と武将としての更なる成長のため、政務や兵の鍛錬、街の見回り等を俺と他の誰か一人がついて行うと、なっている。 

 

三太夫や小太郎は、諜報活動が主だから、なかなか顔を合わせる事ができなかった。

 

そんな、慌ただしい中に、あの『 漢女 』が帰ってきた!!

 

? 天水城 大広間 ?

 

月様が玉座に座り、詠等の董卓軍の将及び義輝、光秀等天の御遣い達が居並ぶ、俺の報告を待つ。

 

颯馬「 先日の賊軍討伐に尽力いただき、まずは感謝を!! 」

 

背筋を伸ばし頭を下げる。 俺の力不足で亡くなった兵達の冥福を簡単ながら祈り、頭を上げる…………。

 

皆の顔を見ると、あの時の事を思い出したか苦渋に顔をしかめる者、次の戦いに闘志を燃やす者、目を瞑り何やら考える者等それぞれだ。

 

ただ、月様…? 何で、俺の顔見て真っ赤になっているのか、是非問いただしたい。 …光秀や幾人の将がその事に気付いて、俺を睨みつけているんだが?! 俺、何もしてないが……………?

 

ド………、ドドド……、ドドドドド………! ドドドドドド!!!

 

         ドバーーーン!!!

 

貂蝉「 みんな、お久しぶり〜〜〜ねぇぇぇ! 私の事居なくて、寂しかったでしょう〜〜〜?! 」

 

卑弥呼「 …より強く美しくなるよう『 漢女力 』を上げてきたわい! ガハハハハハ!!! 」

 

??「 それよりも、貂蝉、卑弥呼! この地に俺を待つ患者が居ると聞いたが、どこだ?! 一刻も早く病魔を退治しなければ!! 」

 

わあぁぁぁぁ! とってもいい具合に空気を壊してくれたな! 漢女……達………?  あれ、一人男が居る…???  

 

詠「 コラーー!!! 黙りなさい! 変態共!! 」

 

貂蝉「 誰があぁぁぁぁ、油虫から進化した筋肉達磨のなり損ないだってぇぇぇーー?! 」

 

詠「 誰も、そんな事言ってないでしょう! 」

 

月「 おば様、お久しぶりです! お元気そうでなによりです! 」

 

貂蝉「 月ちゃん! あなただけよ! 私の事、本気で心配してくれるのは…………!! 」

 

          プツン!

 

霞「 ええぇぇぇかぁぁげぇぇんにぃぃせぇぇいぃぃぃ!! 」

 

 

         ドオォォォカァァァァンン!!

 

切れた霞が、地面に向けて、例の特大ハリセンを叩きつける!!!

 

 

霞「 話が進まんやろ! まず、そこの奴、事情を説明しいや! 」

 

と、赤い髪の男に向かい指を指す! 

 

華陀「 すまない、患者の事を考えていたら、焦りが止まらなくて。俺の名前は華陀、五斗米道と言う医術を使う流れの医者だ 」

 

三国志で有名な医者だ。あの関雲長さえも治療したと言うが見た目がえらく若い…。 でも、曹孟徳が年老いたときに登場したから、若くても当然なんだろう。

 

月「 『 ゴトベイドウ 』…ですか? 」

 

華陀「 『 ゴッドヴェイドォー 』と呼んでもらいたい! …まぁ正しく発音出来る者は、師匠と俺ぐらい………… 」

 

颯馬「 『 ゴッドヴェイドォー 』で合ってるよな? 」

 

義輝「 『 ゴッドヴェイドォー 』じゃろ 」

 

光秀 「 『 ゴッドヴェイドォー 』ですよね 」

 

華陀「 ……………………………………………… 」

 

信長 「 『 ゴッッドォォヴェイィィドォォォー 』 だな。 城の付近には、南蛮人が居たから慣れたものよ 」

 

華陀「 素晴らしい!!! こんな発音が綺麗で、しかも多人数で言えるなんて始めてだ!! 俺は… 俺は! 感動している!!! 」

 

貂蝉「 華陀ちゃ〜ん 言ったでしょぉぉう? この子達は天の御遣いなの。 ほら、街で噂になっている『 伏竜の軍勢 』よん! 」

 

いつの間にか、そんな風に呼ばれる事になっていた俺達。

 

初め聞いた時は、なんだと思ったよ。 

 

先日の戦は、俺が敵を発見できた事や謙信殿達の活躍のお陰で、成果は絶大、被害は最小となる。

 

そのため、天の御遣い達は智にも武にも秀でると評判が流れ始め、いつの間にか、このような詩を口ずさまれるようになった。

 

 

 

《 天の軍勢、力を溜め、時期を悟るが故に、深淵に潜む

 

雷雲が呼び、雨天が招けば、万難を排し、天へと駆け昇ろう

 

優しき日輪を守護し、世を安寧に導くために 》

 

 

 

…人は、いつしか『 伏竜の軍勢 』と呼称するようになった。

 

雷雲とは何か、雨天とは何かはわからない。 

 

ただ、天の軍勢は、乱れた世を治すために、この地に降り立ったのは事実。必ず平和な世に変えてくれるだろうと言い合った。

 

それを聞いた華陀は、そうか! と、頷ついて手を俺の前に出す。

 

華陀「 そうか、おまえさん達が『 伏竜の軍勢 』か! 紹介が遅れてすまない。俺の名前が華陀だ、宜しく頼む! 」

 

颯馬「 こちらこそ。 俺の名前は天城颯馬だ。 …この軍の軍師をしている。 俺としては、『 伏竜の軍勢 』なんて呼ばれたくないから、天城か颯馬でも名前で呼んでくれればいい 」

 

俺に引き続き、皆が紹介していく。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

華陀「 …すると、患者は二人でいいのか? 卑弥呼 」

 

卑弥呼「 うむ! 武田信玄と立花道雪がそうだ。 」

 

信玄殿は、生まれつきの病で体調を崩し易く、妹御の信廉殿が影武者を長く勤めたと聞く。

 

道雪殿がは、幼少の砌に雷に打たれ半身不随になり、移動の際は道雪殿専用『 黒戸次 』なる車輪付き座椅子に乗って移動している。

 

華陀は、二人を個別に呼んで問診、触診、打診等を行い様子をみる。

 

診察の結果、信玄殿は治癒の見込みはかなり高いとの事で今から治療に入ると言う。 

 

道雪殿の場合は、残念ながら下半身の神経が機能しなくなって久しいため、治療をおこなっても回復の見込みは少ないそうだ。 

 

華陀が物凄く悔しいそうな顔をして、道雪殿に謝るのを見て、華陀の医療に掛ける情熱、患者を思う心は、本物だと確信した次第だ。

 

華陀「 それでは、信玄。 少し我慢してくれよ…。 今から病魔の元を探す! ハアァァァァッッッ!!! 」

 

急に華陀の身体が金色に光出す! 同時に華陀が何かを探しているように、信玄の姿を見回す。

 

華陀「 ここか、いや? ここなのか? いや! ここだ! 俺の鍼が病魔を滅する! 俺の全ての力をこの鍼一点に結集!! 」

 

鍼、治療か?! だが、鍼治療に、こんな強力な気が集まるのか?

 

華陀「 我が身、我が鍼と一つとなり! 一鍼同体! 全力全快! 必察必治癒………病魔覆滅! 元気になれ!!!」

 

眩しい閃光が走り抜け、気が付けば華陀の治療は終わっていた。

 

華陀「 信玄の体に巣くっていた病魔は滅した。 後で薬を渡すからそれを飲み続ければ、一月程で完治するだろう 」

 

心配そうに見ていた信廉殿は、寝台に横になる信玄殿の手を取り、ゆっくり握りしめた。 その上に涙を落としながら…………。

 

対して、完治は遠いと言われた道雪殿は、少し悲しい顔をされたが、

泣きながら近づく義妹と娘を逆に励まし、華陀より治療の内容を聞いている。

 

その様子を珍しくため息つきながら見守る貂蝉、卑弥呼。

 

貂蝉「 ……何度、外史を廻ってても、こんな情景、慣れないモノね…。 華水の話といい、道雪ちゃんの話といい…… 」

 

卑弥呼「 馬鹿者…。 お前の方はまだマシだ! 私はダーリンと廻っているため、人の生死など日常茶飯事でだった! …無論、慣れようなど、思わなかったがな………… 」

 

外見から見て、とても考えられない繊細な考えを持つ事は、わかった

が…何で俺の目の前で、体をくねらす?! 気色悪いわぁーー!!

 

貂蝉「あら、やだ! 年頃の男の子は欲求不満なのねぇぇ?! 」

 

卑弥呼「 ガハハハ! まだまだ儂も魅力的ということか?! 」

 

頬を染めるな! 気持ち悪い動きは止めろーーーーー!!

 

俺は、欲求不満なんかじゃない!! 昨日は! っと、コホン!

 

何でもない! 俺は、欲求不満じゃない! と言いたいだけだ!!

 

姫武将達に訝しく(いぶかしく)疑われながら、あーだこーだと話をして、俺は皆を煙に巻いた。 巻かれなかったのは、当事者の光秀と

 

…………颯馬も光秀も気付かなかった、『 風魔 小太郎 』だけ。

 

◆◇◆

 

【 雨のち晴れ……時々雪 の件 】

 

? 日の本 島津屋敷にて ?

 

……………………私は、悔しい。 

 

颯馬にあれほど軍略を講義したのに関わらず、当の本人が策を失敗してしまったのだから……………。

 

颯馬と共に、大陸に渡るため、向こうの言葉や風俗、地理を暇を作っては勉強し、荷物等にも抜かりはなかった。

 

………あの、策が失敗するまでは…………。

 

私は、目から涙が溢れるのを止められず、ただ、そのままにして、抱きかかえていた、颯馬人形に顔を埋める。

 

何回も何回も何回も頭の中で考えた謀。

 

お父さんを納得させるのに、口で伝えるのは無理だと思ったから。 

 

だから『 よし姉の料理を全部食べれば、颯馬に付いて行かず、ここに残る 』という騙し討ちみたいな事をしてみたが………。

 

結局、お父さんの愛情、根性、異常の三本柱で食べきり、数日前まで生死の境をさまよっていたという。

 

こんな事を思う私は、『 とても親不孝なんだろう 』と思う。

 

自分が、馬鹿で、莫迦で、大馬鹿なんだろうなって思う。

 

だけど、考えてしまうの!!!

 

…………お父さん! 何で私の初恋を邪魔するの!

 

颯馬とは、これで二度と会えないかもしれないのに!!

 

何で何でなんでなんでなんでナンデナンデナンデ!!!!

 

…………この、後悔を何度繰り返し、自己嫌悪に陥り、部屋から出なくなり、どれほど経つのだろう………………。

 

他の姉妹達は、立ち直り部屋から出てきたようで、毎日私を外に出すために部屋に来てくれている。 とても感謝しているのだが、私はまだまだ、自己嫌悪と後悔と苛立ちに苛まれている。

 

 

 

 

………………………颯馬。

 

………教えて下さい。 ……もし、あなたでしたら…………この難局をどう乗り越えますか…………?

 

 

☆☆☆

 

家久「 ……………今日も駄目だったね。歳姉………… 」

 

義久「 歳ちゃん…… 」 

 

義弘「 もう、お父さん! こうなったら歳ちゃん、颯馬を追わせたら! 歳ちゃんなら大陸渡れる力もあるし! 」

 

貴久「 義弘! 馬鹿な事を言うんじゃない!! 」

 

義弘「 ………ゴメンナサイ。 頭に血がのぼってました 」

 

貴久「 怒鳴ってゴメンね!! 義弘の気持ちはホン〜トよく分かるけど、颯馬達の情報がまるで入らないんだもん!!! 」

 

義久「 他の大名家や足利家さえも、足取りが途中までしか追えなかったのは、変な話よね…………… 」

 

家久「 義輝様も山中さんや山縣さん、それに光秀さん達も強いから大丈夫じゃないかな? 」

 

義久「 …それにね? 幾つかの大名家では、当主、元当主、重臣がいつの間にか消えてる話も報告に入っているのよ 」

 

義弘「 何それ、神隠し?! 」

 

貴久「 俺も知ってる! 確か、武田姉妹は、病気の治療で代理を立てているが、何故か新参者を使っているとか? 後は、上杉家の隠居、大友の三名臣、他にも何人かいるらしいよ!! 」

 

家久「 う〜ん 何だろうね……? 」

 

★★★

 

??「 歳…殿、歳久殿 」  ユサユサ

 

歳久「 うっ、う〜ん。 また、寝てしまいましたか…。 気のせいか誰か起こしてくれた気が…………?!  」

 

人の気配? 私はすぐに正気に戻り腰につけてあった短刀を抜き、人影に構えました!

 

??「 ふすふす、大分参っているようですね。歳久殿? 」

 

あ、あなたは、果心居士? なんで、私の部屋に!! 

 

果心「 くつくつ、外史の管理者からの要請により、あなたを颯馬殿の元へお連れする事になったのです 」

 

い、今、なんて……………?!

 

果心「 あなたを颯馬殿の元へ送ると言ったのです。 ふすふす 」

 

不用心な事だが、この時ばかりは、頭の中が真っ白になる!!

 

歳久「……………! 」    パチン!!!

 

いけない、いけない! 頬を叩いて正気に戻る!

 

果心「 もし、お嫌でしたら某はここを去り、他の毛利や鍋島、伊達に出向く事にしましょう…… 」

 

歳久「 待って下さい! これは、すぐに決めれません。少し猶予をいただけれませんか? 家族で話たいので 」

 

果心居士殿より承諾を出て、私は、久しぶりに部屋の外へ出た。

 

外の日の光は、些かまぶしかった。だけど、何故か颯馬の笑顔を思い出したのは、私だけの秘密だ。

 

☆☆☆

 

部屋から出てきた私を驚き、涙ぐむ姉妹達。号泣するお父さん。

 

……あれ、豊久は? 

 

………はっ? お父さんの代わりに政務を行っているのですか? 

 

私が部屋に籠もるから、心配で仕事が出来ないとは、いい逃げ口上です! 後でお説教をと思いましたが、今回は許して上げます。

 

で、早速お願いがあります……。

 

……私を、颯馬の元に行かせて下さい!! お父さんとの約束を破る事になりますが…………どうか……!!

 

…………………………………………

 

………………? お父さん、良いんですか? 本当にいいんですか?

 

…そうですか、私の顔は、そんなに酷い顔でしたか……。

 

『 こんな顔になるのなら、颯馬の元に行って元気になって来い 』だなんて、お父さんらしくないです。 

 

 

…………まったくです。

 

 

いろいろ考えて………いたの……に! お父さんをどう言いくるめるか………一緒懸命…………考えて……いたのに!!

 

えっ? い、い、嫌です! 私の策が分かってしまいます! 私の言いくるめる口上を教えてくれだなんて、趣味悪いです!! 

 

それから、許可していただき、ありがとうございます!! 必ず、またこの地に帰ってきますので!!!

 

では、よし姉達もこれでお別れ………?! 一緒についてくるって?!

 

どういう……? 果心殿…? なんですか、その含み笑いは!!

 

もしかして、姉妹全員連れて行く予定でした…か? そうですか。

 

……………………………………………

 

アハハハハハッ!  …………もう一度引きこもって………いいですか…?  

 

 

◇◆◇

 

【 新たな仲間参戦の件 】

 

? 天水城 大広間にて ?

 

俺は、どういう顔をすればいいだろうか?

 

貂蝉が、月様に配下の将を呼び集めるようにと、お願いして来てみれば、なんと軍略の講師をしてもらった『 島津 歳久』殿がいるではないか? しかも、残りの三姉妹、長女『 島津 義久 』殿、次女『 島津 義弘 』殿、四女『 島津 家久』殿達もご一緒とは!

 

また、貂蝉の仕業かと思えばそうではなく、外史からの干渉があり、日の本担当の管理者『 果心居士 』が、島津四姉妹を連れてきたという。 

 

確かに、軍師俺一人は辛いし、他の人の意見も聞きたい事もあるから良いんだけど、月様の許可が出るか……………?

 

 

月「 良いですよ! 後で部屋を案内させますからね! 」

 

詠「 また、とんでもない将ばかりなんでしょうね…。でも、颯馬の軍略の師が配下なんて有り難いわ! 後で教授してもらわないと 」

 

恋「 ………むぅ 」

 

ねね「 恋殿、友達じゃないんですか? 」

 

恋「 …………敵。でも友達 」

 

ねね「 ??? 」

 

霞「 くうぅぅぅーーー! 今回も綺麗処が仰山おるな! 」

 

華雄「 うむ、今回も強い奴がいる! 実に楽しみだ! 」

 

霞「 あかん、相変わらず固いことばかり抜かすわ! 」

 

ーーーーーーーーーーーー

 

歳久「 颯馬、息災で何よりです 」

 

颯馬「 ………歳久殿、何か病気でも掛かられました? 大分お顔が窶られ(やつられ)ましたが… 」

 

日の本を離れて、月日はそう長くない筈だが、あまりにも酷い。

 

頬骨は浮き出て、目には濃い隈、肌も瑞々しさもなく、色も青白い。

 

余程、鈍感な男でもない限り、健康を損ねていると見るのが正解だろう。 現にその言葉を聞いて、涙ぐむ姉妹達の姿を後ろで見る。

 

歳久「 え? えぇ、あれから大分長患いをしてしまい、この有り様ですよ。颯馬に『 軍師とは健康第一。 戦場で倒れては指示や士気に関わる 』と教えた者が、この様ですからね…… 」

 

歳久殿は、力なく首を下に向ける。

 

颯馬「 俺は、そうは思えません! 」

 

励ますつもりで大きな声を出したが、少し驚かれたか、歳久殿の体がピクリと動く。

 

颯馬「 歳久殿が何を考えていたのかは、不肖の弟子にはわかりません。 しかし、憶測を許されれば、歳久殿の者が余程気に病む程の障害だと思います。 俺なら、考えに考えた後に行動しますけど 」

 

「 歳久殿が体の健康を損ねた事は、被害を出来る限り出さないように思案した優しさ、職務を全うしたい責任感の壁に挟まれ悩んだ結果だと思います。 俺は、そんな歳久殿を尊敬しますよ! 」

 

それを聞いた歳久殿は、今まで見たことがない驚いた顔をして、急にその表情が萎んだと思えば、涙がこぼれ落ちる。

 

歳久「 わ、わた、私は、そんな立派な人物じゃ、ないです! 」

 

そう言うと、俺の胸に飛び込み大泣きをした後、眠ってしまった。

 

……………のちに、島津姉妹より話を聞き、董卓軍や姫武将達がもらい泣きをしてしまったのは仕方が無いこと。

 

で、何故、俺が散々罵らされのかは、結局わからなかった。

 

あっ、そうそう、果心居士は、当分居てくれる事になった。

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

三太夫「 山縣の旦那 」

 

昌景「 なんだ、三太夫? 」

 

三太夫「 この前、本屋に入りましたら、天城の旦那みたいな状況の奴を見たんですがね…… 」

 

昌景「 ほう? 面白いな! もう少し聞かせて貰おうか? 」

 

三太夫「 確か、女の子を三人連れた若い男でしたよ。 えーと 「 ご主人様 」とか呼ばれていた、白い服を着た若い男で… 」

 

◆◇◆

 

【 もう一人の天の御遣いの件 】

 

??「 お兄ちゃん、早く来ないと売れちゃうのだぁぁぁ!! 」

 

??「 こらぁ!! 鈴々! ご主人様を困らせるなぁぁ!!! 」

 

あちゃー、鈴々…頼むからこれ以上愛紗を怒らせないでくれ…。

 

??「 二人とも、元気一杯で楽しそうだねよね? ご主人様? 」

 

と、桃香さん、俺の腕をそのマシュマロに挟まないで! お願いだからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

うっ? コホン! …俺の名前は、北郷一刀。

 

聖フランチェスカ学園の学生………だった。つい数日まで。 

 

偶々遅刻になって走っていたら、光って気絶して目が覚めたら、美少女三人に拾われ、天の御遣いに奉じられたという話。

 

俺だって信じたくないが、実際に起こった事だし、その美少女達が名乗った名も聞き覚えがあるんだから仕方がない。

 

関羽『 私の名は、姓は関、名は羽、字は雲長。 真名は『愛紗』といいます。 よろしくお願いします、ご主人様! 』

 

鈴々『 鈴々は、姓は張、名は飛、字は翼徳! 真名は『鈴々』なのだ! よろしくなのだ! お兄ちゃん! 』

 

桃香『 私は、姓は劉、名は備、字は玄徳 真名は『桃香』です! よろしくね! ご主人様 』

 

だが、何故美少女なんだ?? 確か三国志って熱い男達のバトルやタクティカル的な物語じゃなかったか? 

 

これじゃ、まるで及川が持ってるR18指定の物語じゃないか?!

 

 

 

………でも、言っていた事は、芯が通っていたよ。 『 皆が笑える世を作る 』だったかな? そのためには苦難を乗り越えて行くのは、並み大抵の覚悟じゃ出来ない。 

 

それを、見も知らぬ俺の目を直視して、当然と言い放った。

 

そんな簡単な事、大人でも偉い人も、出来る人て少数だよ。

 

こんな事、喋る俺だって出来ないのに!  

 

俺は、どんな世界かわからない、この『 劉 玄徳 』が気に入った。 勿論、『 関 雲長 』、『 張 翼徳 』もだ!

 

たがら、俺はこの娘達を助けたい! 力になりたい!

 

無論『 御遣い 』なんて称えられるような力は無いよ。 あるのは、この世界の元になったと思われる『 三国志の知識 』、爺ちゃんより習った『 薬丸自現流 』、そして、『 俺自身 』だ。  

 

俺は、出来る限り三人の力になろう。 天の御遣いとしての役割は不足しても、『 北郷一刀 』としての役割には充分だ。 

 

だから、精一杯付き合わさせてもらうぞ!  三人共! 

 

………だから、手を離せ! 桃香ーー!!

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

? 天水城 城下 ?

 

そんな、俺達が旅を続けて、ある噂を聞いたんだ。

 

『 伏竜の軍勢 』と呼ばれる名高い軍勢。

 

武将は一騎当千クラスが十名って何だよ、その無茶振りは!

 

いや、いいか…。 真・三國○双だって一騎当千が何十人いるから悪くはないか。 でも、どんな奴ら? もの凄くごっつい奴らばっかりとか考えられるんだけど…………。

 

特に軍師は、『 神の拳 』を持つとか聞いてるがどんな奴だよ? 

 

何でも、内部破壊を得意とする拳で、鎧を着用していても、破壊が可能って、北斗○拳でもやっているのか!!

 

そんな考え事をしながら、本屋に立ち寄る。 何故『 本 』がある? 紙の発明てこの時期だったか? 印刷の発明は、確か十六世紀だから遥か先なのに、何故出来る? と思案に耽る。

 

一刀「 まったく、この世界はどうなっているんだ? 」

 

ふと、見ると、俺の顔をジッと見ている少年がいる。 おかしいな、服装が忍び装束に見えるのだが………。 

 

愛紗「 ……探しましたよ! ご主人様! 」

 

一刀「 あぁ ゴメンゴメン! そろそろお昼かい? また、鈴々が早く食べたいと叫んでいるんだろう? 」

 

愛紗「 えぇ、今、桃香様が抑えてくれてますが、長くは持ちません! 早くこちらに………! 」

 

一刀「 分かった、分かったから、袖を引っ張らないで!! 」

 

◇◆◇

 

【 影蠢く…の件 】

 

?漢の都 洛陽にて?

 

??「 …………本日も、退屈な仕事が終わったか…… 」

 

十常待 筆頭 『 張譲 』は、そう呟き、宮殿を後にする。

 

若い頃に宦官になり、賄賂や地位の凱旋を行い、現皇帝劉宏さえ思うように操ると言われる男。 天下はこの男の手の平にあると言っても過言では無い…………。

 

知謀も度胸も財産まである、この男には、とある性癖があり、そのために、今まで危ない橋を渡ってきたのだが、他の者には幸運、張譲にとっては不幸であった。

 

張譲「 ……儂は、自分の欲を満たしたかっただけなのに、どうして、このような地位、権力を得てしまったのじゃろうか……… 」

 

張譲の性癖……人より見下しされる事で喜びを見いだす自虐思考。

 

宦官になったのも、昔は宦官とは蔑まれられた存在。だから張譲は自ら志願しなったのだ。 男とも女とも言えない者に…………。

 

だが、皮肉にも、宦官の地位を上げたのも張譲だった。 

 

張譲は、凱旋や賄賂を行えば、人が我が罪を見つけ、軽蔑する。

 

犯罪者として、多くの民から蔑まされ、憎まれ、罵倒される。

 

張譲「 あぁぁぁ! なんという快感! 考えただけでも、考えただけでもぉぉぉぉぉぉぉぉ☆☆☆!!! 」

 

そんな男ほど運が良いらしく、発見されても賄賂を渡せば、見逃してくれた。張譲と分かれば、黙ってしまった。

 

張譲は、激しく不満を秘めたまま、日常を送っていた…………。

 

いつか、精神が壊れる快感に期待しながら。

 

だが、運命はやはり皮肉だった。 ある人物が張譲を誘ったのだ。

 

張譲の欲望と地位を利用するため、外史の世界から………。

 

??「 そこの方、私を雇っては、いただきませんか? 」

 

張譲は、一瞬、不振に思った。 自分に媚び諂う(こびへつらう)輩

が、気を引かせるために、女を一人置いたのかと。

 

だが、こんな場所に女一人だけ置いておく、馬鹿な奴などいない。

 

置いておけば、他の者が盗む。 これが今の洛陽の常識。

 

では、なんだ? と思い、呼び止めた方を見る。

 

そこには、煌びやかな衣装を着た紫色の髪を持つ美少女が佇んでいた。 優雅に口許を扇子で隠し、そっと挨拶を行う。

 

久秀「 私の姓は『 松永 』、名は『 久秀 』、字、真名はありません。 宜しくお願いします、張譲様 」

 

『 自分を救ってくれる天女 』 

 

張譲は、そう確信して久秀を張譲付きの女官として、取り立てた。

 

 

……………これが、天下の大乱の源となる事を知らずに………

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

今回は、はっきり言って、駄文なんでしょうね………。

 

まさか、書いてるときに、北郷一刀を出すなんて考えていなかったなでの、こんな口調になってしまい、申し訳ない。

 

次回からは、黄巾の戦いに入ろうと思いますので、また読んでやってください。

 

 

説明
義輝記の続編です。 今回戦場描写はありません。
期待せずに、お読み下さい。誤字訂正しました。
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コメント
編成に関しては、 ほぼお言葉通りですが、大規模な戦いのときは変化させようかなと考えています。(いた)
雪風様 何度もコメントありがとうございます! 誤字情報ありがとうです!早速直します。 後、護衛はその時の状況に応じてという感じで行います。出番に偏り が無いようにしたいからです。(いた)
追伸:董卓の董が違う薫になってますよ(雪風)
考察してみると・・護衛が宗茂&義清なら・・武田衆「信玄・信廉・山県」・大友衆「立花・高橋」・足利衆「義輝・光秀・信長・(颯馬)」・島津衆「義久・義弘・(歳久)・家久」・その他「謙信・山中」こんな感じ?(雪風)
雪風様 再度のコメントありがとうございます! それはありますね。一応編成は、出身地が同じ、もしくは関係があったというところを重視しようと考えています。(いた)
軍事の編成が気になりますが・・、宗茂&義清が護衛で、それ以外も主将・副将ぞろい・・。相性等を考慮して編成しないといけないかもですね。特に先鋒争奪戦になりそうな・・(雪風)
雪風様 コメントありがとうございます! 今、言える事は、一刀は反薫卓軍連盟に参加、久秀は一時的に消える予定です。後は物語の進行次第ですかね。後、他のキャラは入れない予定です。(いた)
一刀一行をどう今後作者が扱うかで作品ががらりと変わりますよ。そして仕官の島津姉妹・・それ以外はもう招待されないのかな・・・。久秀が洛陽入り・・でも反董卓時には姿を消してると見た!!。(雪風)
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