IS‐インフィニット・ストラトス‐黒獅子と駆ける者‐
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episode236 二人の想い

 

 

 

 

「兄さん!!」

 

 と、寮の食堂に隼人が簪とユニコーン、バンシィと共に入ると颯が隼人に跳び付いた。

 

「颯・・・・」

 

 倒れないように踏ん張りながら、隼人は顔を下げて颯を見る。

 

「よかった。本当に・・・・生きてて良かった」

 

 顔を隼人の胸の中に埋めると、涙を流しながら言葉を綴る。

 

「・・・・すまない。死ぬほど心配を掛けて」

 

 隼人は申し訳なさそうに表情を暗くするも、颯の髪を優しく撫でる。

 

 

 

「隼人!」

 

 と、食堂に話を聞いた一夏と箒が入ってきた。

 

「一夏。箒」

 

 颯を慰めながら離し、隼人は二人を見る。

 

「ほ、本当に・・・・隼人なのか?」

 

 目の前の事が信じられないように箒が問い掛ける。

 

「あぁ。言っておくが、幽霊じゃないぞ」

 

「あ、あぁ」

 

 

「・・・・本当に、信じられないよな」

 

「俺も思ってるよ」

 

 一夏の呟きに隼人は苦笑いを浮かべる。

 

「でも、どうやって戻ってきたんだ?」

 

「そりゃ・・・・・・まぁ、悪運が強かったって所かな」

 

 スペリオルカイザーの事はあえて伏せる事にした。

 

 

 

「師匠!!」

 

 と、颯爽と食堂に駆け込んできたラウラが隼人にタックルの如く跳び付いて来た。

 

「うごっ!?」

 

 予想以上に衝撃が強く、隼人は数歩後ろに下がるも倒れまいと踏ん張った。

 

「生きていたんですね!!私は帰ってくるのを信じて待っていました!!」

 

 ラウラは力強く隼人を抱き締める。

 

 

 

「ら、ラウラ。嬉しいのは分かるが、加減はしてくれ」

 

 ラウラのバカ力で隼人は締め付けられており、苦痛に隼人の表情が歪んでいる。

 

「ハッ!?」

 

 ラウラも状況を把握するとすぐに隼人から離れる。

 

「も、申し訳ございません!師匠が生きていたと聞いたら、ジッとしていられなくって・・・・つい・・・・」

 

 顔を赤くしながらも頭を下げて隼人に謝罪する。

 

「いや、嬉しい気持ちは分かるさ。心配を掛けたな」

 

 隼人は微笑を浮かべてラウラの頭を撫でると、「あぅ」とラウラは顔を赤くする。

 

「それに、お前は一人前だって言っただろ。もう俺は師匠じゃない」

 

「でも、私にとってはいつまでm、師匠は師匠です!」

 

「それ一生続けるつもりか」

 

 それはそれでなんか・・・・

 

 

 

「そういえば、シャルはどうした?」

 

 隼人が生きて戻ってきたとなれば、颯同様にシャルロットもやって来るはず・・・・

 

 

「シャルロットは・・・・・・栄養失調で今は病室の方で寝ています」

 

 するとラウラの表情に影が差す。

 

「なに?」

 

「師匠が死んだと思って、あまりものショックでしばらく魂が抜けたような状態だったんです。それで、ずっと何も口にしなかったので・・・・」

 

「・・・・そうだったのか」

 

 隼人の表情に影が差す。

 

(・・・・本当に俺は・・・・無責任だな)

 

 改めて自分が行った事の重大さを思い知る。

 

(今に今に始まった事じゃないだろ。お前の無責任と言うのは)

 

(うっ・・・・)

 

 ノルンにダメだしされて言葉を詰まらせる。

 

 

 

 

「隼人」

 

 と、食堂に千冬が入ってきた。

 

 

 ・・・・・・若干ご機嫌斜めな様子だが。

 

 

「千冬さん」

 

 隼人は気を取り直し、千冬に向き合う。

 

「・・・・その、えぇと・・・・・・かなり遅れての帰還となりましたが―――――」

 

 

 ゴンッ!!

 

 

 と、隼人が言い終える前に千冬は隼人の頭に拳骨を入れる。

 

「おぐっ!?」

 

 まさかの行動に隼人は対応しきれず、周りのメンバーも驚きを隠せれなかった。

 

 予想以上に痛かった為、隼人は殴られた箇所を押さえる。

 

「な、なんでこんな仕打ち――――」

 

 

 

 しかし、その直後に、千冬は隼人を抱擁する。

 

「・・・・・」

 

 

「・・・・馬鹿者が。死ぬほど、人を心配させおって」

 

 耳打ちで呟くと、千冬の目より一筋の涙が流れ落ちる。

 

「・・・・すいませんでした」

 

 そして隼人は千冬の左腕に違和感を覚える。

 

「千冬さん。その左腕は・・・・」

 

 

「気にするな。二本の内一本が無くなっただけだ」

 

「・・・・」

 

「・・・・だが、よく・・・・生きて戻ったな」

 

「当然ですよ」

 

 隼人は笑みを浮かべる。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 

 それからナンバーズのメンバーがやって来て隼人の帰還を祝ってくれた。

 

 シノンからはいつもより鋭く増した毒舌を吐かれてしまったが、最後は隼人の帰還を表情に僅かに喜んでいた。

 

 束もあの後食堂にやって来たと思った途端に隼人に跳びかかろうとしたが、隼人はお約束の如く横にかわした。

 

 

 

 

 それから色々と話し、隼人は外に出ていた。

 

(しかし、ヴィヴィオのタックルは中々効いたな)

 

 少ししてヴィヴィオが食堂に入ってきて、隼人に抱き付いたつもりなのだろうが、ラウラよりも強力なタックルを受けた為に身体に痛みが残っていた。

 

(国に戻っているセシリア達は・・・・きっと今すぐにでも会いたい気持ちでいっぱいだろうな)

 

 それぞれの国に帰国しているセシリア達に会えないのは少し残念だったが、しばらくすれば会えるので、気長に待つ事にした。

 

(だが、ティアが無事でよかった)

 

 瀕死の重傷を負ったティアであったが、何とか一命を取り留めていた。まだ意識は戻ってないが、もうしばらくすれば目は覚めるとの事。

 

 

 

 

「しかし、どうやって戻ってきたの」

 

 と、隼人の近くの地面にハルファスとフェニックス、マスターフェニックスが下りて来る。

 

「ハルファスとフェニックス。それに、マスターフェニックス」

 

「あの状態で生きていたとはな」

 

「悪運が強いのが取り柄でな。しかし、なぜお前が一緒に居る?」

 

 この場に居るとは思えないものだったので、隼人は疑問に思う。

 

「罪を償う、そんな所だ」

 

「・・・・」

 

 隼人は特に何も言わなかった。

 

「それで、ただ悪運が強いだけで戻ってきたわけじゃないのだろ?」

 

「あぁ。話せば長くなるが―――――」

 

 と、隼人はハルファス達に全てを話した。

 

 

 

 次元の狭間に迷い込んだ事。

 

 

 黄金神スペリオルカイザーとの出会い。

 

 

 レイ・ラングレンの暴走の原因となった暗黒卿マスターガンダムの事を。

 

 

 

 

「まさか、あの伝説の黄金神が現れるとはな」

 

「それほど凄いのか」

 

「凄いってものじゃないわ。全ての神の頂点に立つほどの神よ」

 

「そして、一つの時代で起きた神々を含めて起こった大決戦を終結させた者として、知らない者はいないわ」

 

(そんな者と会ったのか)

 

 改めてスペリオルカイザーの凄さを知った。

 

(今更か?)

 

(・・・・)

 

 

 

「でも、お前達はこれからどうするんだ」

 

「私達はお兄様の意志を受け継ぐ為に、監視者としてこの世界を見守るわ」

 

「俺も監視者として、付いて行く」

 

「そうか。じゃぁ、もう会うことは無いんだな」

 

「たぶんね。この世界で何かが起こらない限り、会う事はないでしょうね」

 

「そうか。寂しくなるな」

 

「えぇ。でも、あなたへの恩は決して忘れないわ」

 

「俺もだ」

 

 隼人はハルファスと握手を交わす。

 

「私もよ。お兄様たちが遺した力を、決して無駄にはしないでね」

 

「あぁ」

 

 次にフェニックスと握手を交わす。

 

「お前との決着は付けたかったな」

 

「俺もだ。いつか、付けたいものだな」

 

「あぁ」

 

 隼人はマスターフェニックスと握手を交わす。

 

 

 

 

 そうしてハルファス達は空高くへと舞い上がる。

 

「・・・・」

 

 隼人はその姿を見えなくなるまで見送った。

 

 

 

 

 

「隼人・・・・」

 

「・・・・?」

 

 しばらくすると呼ぶ声がして、声がした方を向くと、簪が立っていた。

 

「簪」

 

「・・・・」

 

 

 

 

 それから隼人と簪は敷地内の舗装道を歩いていた。

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

 しかし一向に話すきっかけが出て来ず、二人の間に沈黙が続く。

 

 

 

「あー、えぇと・・・・その、なんだ」

 

「・・・・」

 

「・・・・本当に・・・・心配を掛けたな」

 

「もう、いいのに・・・・」

 

「いや、君が良くても、俺は・・・・気が済まない」

 

「・・・・」

 

「後の事を考えずに、その時の事態を収拾させる事だけしか考えなかった」

 

「・・・・」

 

「現に、シャルロットがそんな状態になってしまった」

 

「隼人・・・・」

 

「それに、君だって・・・・」

 

「え?」

 

 簪は瞬きする。

 まだ理由を話してないからだ。

 

 

 

「目が充血しているのに、それで分からない事はないと思うぞ?」

 

「あ・・・・」

 

 簪は思わず目を隠す。

 

 

 

「あぁ、そういえば」

 

 隼人はふとある事を思い出して右手を拳にして左手にポンと置く。

 

「決戦前に、俺に何か言いたかったんだよな?」

 

「ふぇっ!?」

 

 突然の問いと、その事を思い出したのか簪は顔を真っ赤にする。

 

「何が言いたかったんだ?」

 

「え・・・・えぇと・・・・」

 

 簪は視線を左右に動かす。

 

 

 

(い、いや、逃げちゃダメ。あの時、酷く後悔した。もう二度と、そんな体験はもう嫌だ!)

 

 内心で自分を励ましながら、簪は深く息を吸うって、深くゆっくりと吐く。

 

 

「は、隼人」

 

 簪は覚悟を決めて隼人を見る。

 

「わ、私・・・・ずっと、言いたかった事があるの」

 

「・・・・」

 

 隼人は何も言わずに待っている。

 

「・・・・わ、私は・・・・・・・・は、は、隼人のこと、が・・・・」

 

 途切れ途切れになりながらも、簪は言葉を振り絞る。

 

「・・・・す、す、す」

 

「す?」

 

 

 

 

「す、す、好き。大好き!!」

 

 そして吹っ切れて簪は大きな声で言い切った。

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

 簪は顔を真っ赤にして俯く。

 

(い、言っちゃった。は、隼人は・・・・何て言うのかな)

 

 内心で色々と心配が過ぎり、落ち着けなかった。

 

 

 

 隼人は何も言わずに、簪を抱擁する。

 

「ぁ・・・・」

 

 簪は少し驚くも、何もしなかった。

 

 

「簪。・・・・俺は最初、君の事は仲間とか、特別な友達としか、思っていなかった」

 

「・・・・」

 

「以前の俺は・・・・恋愛とか、そういうのは全く興味は無かった。君も、例外じゃない」

 

「・・・・」

 

 

「でも、君と一緒に居る間に、大切な人と、思ってきたんだ」

 

「・・・・」

 

「ここまで、一人を大切に思った事は無い」

 

「はや、と・・・・」

 

 

 

 

「これほど、君の事を想った事はない。俺も・・・・・・君の事が好きだ。この世界で、誰よりも」

 

 震える声で、隼人も想いを告げた。

 

「・・・・」

 

 その言葉を聞いて、簪の目に涙が浮かぶ。

 

 

「簪・・・・」

 

「隼人・・・・」

 

 簪も背中に両腕を回し、二人は互いの温もりを感じながら抱き締め合った・・・・・

 

 

 

 

説明
トラックに轢かれそうになった女の子を助けて俺はお陀仏になった・・・。・・・って!それが本来の死じゃなくて、神様のミスで!?呆れている俺に、その神様がお詫びとして他の世界に転生させてくれると言うことらしい・・・。そして俺は『インフィニットストラトス』の世界に転生し、黒獅子と呼ばれるISと共にその世界で戦うぜ!
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ユニコーン バンシィ ガンダム インフィニット・ストラトス IS 

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