真・恋姫†無双 裏√ 第三十六話 咲夜編其二
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思い出すのは、あいつとの日々

 

 

 

 

あいつに救われ、一緒に駆け抜けた二年間の旅の軌跡

 

 

 

 

そして、私があいつと共に生きると誓った記憶

 

 

 

 

全てが、かけがえのない私の思い出

 

 

 

 

これは、咲夜<わたし>と零士<あいつ>の物語

 

 

 

 

 

 

咲夜編其二

 

 

 

 

 

 

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私はもともと、小さな村の平凡な家に住んでいた。

その昔、司馬一族と言えばそれなりに有名だったらしいが、

今ではなんてことない、私塾を営む日々を送っていた

 

私は、司馬家の一人娘として生まれ、本に囲まれ、様々な知識を得る毎日を送っていた。

外で遊ぶよりは、こうして知識を蓄えていく方が楽しかった私としては、

それなりに有意義な日々だった

 

だが、そんな日常も、14年目の誕生日を迎える日に、あっけなく終わってしまった

 

私の村に多数の賊が押し寄せてきた。

役人共は自分の身可愛さに早々に逃げ、村の皆で迎え撃つも、数に押されて行く。

やがて、私の下にまで賊がやってくると、両親が身を挺して私を逃がしてくれた

 

私は怖かった

 

だから、助けることも、振り返ることもできなかった

 

今でも、鮮明に覚えている

 

燃える家屋、虐殺されていく村人、混じり合う断末魔と獣の咆哮

 

そして両親の悲鳴

 

私は地獄に来たのだと思った

 

そして

 

私は次第に追い詰められる

 

だが

 

一発の銃声が私を地獄から引き上げてくれた

 

それが、東零士との出会いだった

 

 

 

 

 

六年前

 

 

 

 

 

目を覚ますと、私の部屋ではないどこかの寝台に横になっていた。

 

ここはどこだろう

 

部屋を見渡すと、かなり荒れているのがわかる。

その光景が、目を背けたかった事実を明らかにさせた

 

咲夜「そうか…やはり昨日の事は…」

 

賊の襲撃…

夢であってほしかったが、そんなうまい話ないよな

 

咲夜「待て、何故私は生きている?」

 

一つの疑問が浮上する。恐らく村の皆は全滅したはずだ。

そして私自身も、最後は逃げ切れず、追い詰められたはずだ。

なのに何故、私は今ここにいる?

 

咲夜「……とりあえず、外に出てみよう」

 

私は部屋を出て、外に出ることにした。

その光景に、かつての村の姿はどこにもなかった。

崩れ落ちている家屋に燃え切った畑…

だが不思議な事に、死体がどこにも見当たらない。賊の者も、村の者も…

 

咲夜「…」

 

私はしばらく歩き、私が住んでいた家の前に辿り着く。

だが、そこに家はなかった。燃え尽きてしまったようだ

 

「やぁ、体の調子はどうだい?」

 

咲夜「!!」

 

声のする方へ振り向くと、そこには見慣れない黒い服を着た男がいた。

こいつは確か…そうだ。私はこいつに救われたんだ

 

咲夜「お前、昨日私を助けた奴だよな」

 

私は警戒しながら尋ねる。

正直、勝てる気も逃げ切れる気もしないが、何もないよりはマシだ

 

零士「そんなに警戒しなくてもいいよ。僕は東零士。

最近ここに来たんだが、なんというか災難だったね」

 

東零士と名乗った男は、悠々とどこからか出した椅子に座った。

え?本当にどこから出したんだ、あれ

 

咲夜「私は司馬懿だ。お前、ここにあった死体はどうした?どこにも見当たらないんだが」

 

零士「君が司馬懿?」

 

ん?こいつ、何に驚いたんだ?

 

零士「死体はみんな片付けたよ。放っておいても、害にしかならないから」

 

こいつの話によると、あの夜襲撃してきた賊は全て殺したらしい。

だが既に、私以外に生存者はおらず、とりあえず私だけでも救ったとのことだ

 

零士「村人がいるところまで、案内しようか」

 

私は無言で頷き、こいつの案内で村人が眠っていると言われる場所にくる。

そこには、確かに何かを埋めたであろう跡が残っていた

 

零士「とりあえず、僕の世界の流儀で埋めさせてもらったけど、大丈夫だったかい?」

 

咲夜「あぁ、別に構わない。悪いなわざわざ」

 

ここに、私の両親が眠っているのか…

 

咲夜「……うっ……くっ……」

 

私は自然と涙が零れた。

もう会えないのだと思ってしまうと、途端に寂しくなり、恋しくなり、哀しくなった…

本当に最悪な誕生日だ…

 

零士「ごめん。もう少し早く、ここに着いていたらね」

 

こいつは私を抱きしめ、頭を撫でてくれた。

それがとても暖かく、安心したのだが、涙が止まることはなかった

 

 

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咲夜「悪かったな、突然、その、泣き出して」

 

しばらくすると落ち着くが、今度は羞恥心に襲われた。

何故私はこんな見知らぬ輩の前で、しかも胸を借りて泣いてしまったんだ

 

零士「はは、気にしないで。仕方ないからさ」

 

こいつは笑って、気にしてないと言ってくれたが、正直無理な話だな

 

零士「さて、突然だけど、君はこれからどうする?」

 

考えてなかったな。よくよく考えたら、私はこれで帰る場所を失ったんだ。

ここにいても意味がないし、正直ここにはいたくない。

だが、どこかに行きたいにしても、また賊に襲われでもしたら…

私にそれを撃退する力はなんて…

 

咲夜「…」

 

零士「あはは、なら、一緒に来ないかい?

僕は今、世に名を残す英雄と会う、って旅をしているんだ。

君さえよければ、どうかな?」

 

妙な旅だな。そもそも、こいつは何者なんだ。

だが、考えるまでもないな。こいつについて行かなければ、私は必ず野垂れ死ぬだろう。

それに、なんとなく私はこいつと一緒にいたかった。

その気持ちが、なんなのかはわからないが…

 

咲夜「こっちとしても願ったりだ。よろしく頼むよ、零士」

 

零士「あぁ、よろしくね司馬懿ちゃん」

 

司馬懿ちゃん?なんか落ち着かない呼び方だ

 

咲夜「ちゃんはやめてくれ」

 

零士「はは、考えとくよ」

 

嘘だな。おっと、そうだったな…

 

咲夜「それと、咲夜だ、私の真名。助けてもらった礼と、今後世話になるからな。

好きに呼んでくれ」

 

するとこいつは不思議な表情をした。真名を許したのがそんなに不自然だったか?

 

零士「えーっと…真名ってなんだい?」

 

咲夜「はい?」

 

零士曰く、この大陸に来たのは昨日の事だったらしく、ここの文化について全く知らないらしい。

どうやってここまで来たんだよ…

 

咲夜「こりゃ、いろんな意味でお前にはついて行った方が良さそうだな」

 

零士「あー、はは、よろしく頼むよ」

 

それから私たち二人は旅に出た。

歩きだったし、なんてことない、って思っていたが、そういうわけにはいかなかった

 

 

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しばらく歩き、私たちが小川に辿り着く頃…

 

 

 

零士「さて、ここらで休憩にしようか。えと、咲ちゃん大丈夫かい?」

 

咲夜「はぁ、はぁ、だ、大丈夫だ。それと、さ、咲ちゃんはやめろ…」

 

息が絶え絶えだった。ずっと本と暮らしていた分、致命的なまでに体力がなかったのだ

 

零士「ふふ。初日だしね。咲ちゃんは休んでなよ。魚でも釣ってくるから」

 

あー、くそ!まだ咲ちゃんと呼ぶか。もういい…

 

咲夜「わ、悪い。迷惑かけるな…」

 

零士「いいって」

 

そして零士は小川に近づいていった。あいつ、釣竿も無しに魚を釣る気か?

 

零士「よっと」ぱしっ

 

咲夜「…」

 

目の錯覚か?いま、何も無い所から釣竿が現れたぞ?

 

零士「椅子も出しちゃお」ぽんっ

 

今度は椅子が現れた…

 

咲夜「ちょ、ちょっと待て!お前、今何をした?」

 

私は聞かずにはいられなかった

 

零士「何って、魔術?」

 

咲夜「魔術ってなんだよ!?あれか?妖術の一種か?」

 

なんでこいつは、さも当たり前と言った様子なんだよ!

 

零士「魔術の定義か…考えたことないな。

まぁなんだ、なんでも作れる便利な技、って認識でいいよ」

 

ずいぶん適当だなオイ。だが、興味深い。なんでも作れるだって?そんな事が可能なのか?

 

咲夜「なぁ、それって、私でもできるのか?」

 

私は知的好奇心から、思わず聞いてしまった。

そんなあり得ない技、私の常識にはない。可能なら、私自身も習得したい

 

零士「魔術を?あー…できないことはないけど、素質もいるし、なにより…」

 

零士は私をチラッと見て微笑を漏らした

 

零士「君の体力じゃあちょっとねぇ」

 

咲夜「…」

 

かなり傷ついた…

いやそりゃ、自覚はしていたけどさ…

こんな事なら、もっと外で遊んでりゃとか思ったけどさ…

 

零士「だからまぁ」ひょい

 

零士は釣竿を上げ、一匹の魚を手にした

 

零士「まずは、体力を付けよう。僕でよければ、基礎体力作りや護身術の指導をするよ」

 

咲夜「本当か?」

 

私は賊の襲撃以来、武力も欲していた。

今度は、誰かを助けたい。そして、私から全てを奪った賊を根絶やしにしたい。

そんな願いがあったからだ

 

零士「あぁ。魔術はある程度体力が付いたら教えるよ」

 

咲夜「頼む!」

 

だが私は舐めていた。こいつの訓練内容と、私の体力の低さを…

 

零士「はい。初日はこんなもんかな?………大丈夫かい?」

 

咲夜「お、お前、ほんとに、心配しているんだよな?

はぁ…はぁ…なんでそんな、ニヤニヤしてんだ…」

 

 

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それからの日々は、今までの人生とは全く真逆と言っていいほど変わった。

旅をしつつ、武術を学びつつ、またこれまでは気にしたこともない、

零士が言うところのサバイバル術なども学んでいった

 

体力の低さは仕方ないにしても、どうやら素質があったらしく、みるみるうちに技術を学んでいった。

これに関しては零士も驚いていたな

 

充実した毎日だった。今までにない、新たな事を学び生きていく。

それは、私が過去を思い出す暇すらないほど、充実していた

 

 

だが、ある日何時ものように訓練し、街に向かい歩いていると、賊と遭遇してしまった

 

 

賊1「おうおう!ここらはワシらの縄張りやぞ?なに、勝手に入ってきてんねん!」

 

賊2「ひゅーっ!ベッピンキター!」

 

賊3「ずっこんばっこん犯しちゃいやしょうぜー!」

 

数は50人ほどだったが、私は思い出してしまった。

恐怖と、哀しみと、怒りを…

 

零士「咲夜、下がっていなさい」

 

零士が命令する。だが私には、そんな事聞こえていなかった

 

咲夜「お前らが…お前らみたいなのがいるから…」

 

怖かった。体の震えは止まらなかった。だがそれでも、私はこいつらを殺したかった

 

零士「咲夜…」

 

私は飛び出し、ナイフを振るった。

この時の事は、あまり覚えていない。だがそれでも、私が犯した最初の殺人だった。

そしてその感触だけは、忘れる事はなかった

 

気付けば、私と零士は血だまりの中にいた。全て殺したらしい。

すると零士が重々しく口を開いた

 

零士「咲夜、気持ちはわかるが、もっと冷静になりなさい。

あんな戦い方をしていたら、いつか死ぬぞ」

 

咲夜「ハッ!気をつけとくよ」

 

この時の私は、そんな気なんてさらさらなかった

 

賊を全て殺す

 

私の心は、どす黒い感情で満たされていた

 

 

 

説明
こんにちは
咲夜編の第二話ということで過去編です
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コメント
咲ちゃんの闇ともいえた?所ですか(qisheng)
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