「真・恋姫無双  君の隣に」 第7話
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「星、よろしいのですか?一刀殿は得難い主だと思いますが」

ふむ、稟がどうやら気を使っているようだが、私に迷いは無い。

「かまわぬよ、その一刀殿からお主達を無事に陳留に送って欲しいと頼まれてもいる。まったく興味深い御仁だ」

私が稟達と共に寿春を離れるのは、軍事訓練から戻った折に二人から陳留に行くと告げられた事が発端だ。

二人は一刀殿から聞いた乱の予兆と、意思を尊重してくれた厚意に報いる為にも一刻も早く曹操殿の下に向かうと決めた。

私はどうしたものかと悩んだが、先に一刀殿に告げられた。

「仕える主を探してるんだろ、だったら妥協せずに大陸中見て回ったらいい」

全く、言葉も笑顔も反則だ。

「おやおや、星ちゃんはお兄さんに惚れちゃいましたねえ」

「フッ、こんな三人もの良い女を笑顔で手放す罪な御仁だがな」

私の言葉を肯定と取ったようで宝ャが返答する。

「チッ、あの種馬野郎が」

「何故でしょう、その言葉、非常にしっくりくるのですが」

 

 

「真・恋姫無双  君の隣に」 第7話

 

 

稟たちが華琳の下に旅立ち、斗詩たちも国に帰った。

俺は黄巾の乱に備え、準備を整える。

本当は天和達が乱を起こす前に接触したかったけど、流石に無理だった。

以前は陳留で会ったから網も張ったんだけど、情報が手に入った時はファンがかなりの数になってて手遅れだった。

細作を潜り込ませはしたが、幹部の連中のガードが固くて有益な情報はまだ入ってきていない。

仕方ないので今はこちらの準備に専念する。

領土内の街や村に狼煙台と見張り矢倉を設置して連絡網を強化し、全兵の半分を選別して兵役から解き故郷に帰らせて各地の自衛力を上げ、軍自体も精鋭化させる。

油や矢を出来る限り貯蓄して籠城に必要な物を用意する。

実際にこれらは普段の政策としても既に行っていたから、順調といっていい。

準備が順調に出来たのは七乃のおかげだった。

七乃が重臣共を始末する際に最大の武器となった細作部隊、そして重臣共から没収した莫大な財産。

この二つが無ければ、これだけ短い時間で成す事は出来なかった。

七乃は俺に金や人を用意して、自由に行動させてくれた。

だからこそ、絶対に期待に応えてみせる。

必ず美羽や七乃を、この地を護る。

・・只、美羽と七乃に言ってない事がある。

俺は美羽を、本当の意味で王にする気はない、したくもない。

自覚や覚悟が無いのも大事だけど、それ以前に子供にそんな重いものを背負わせる事が認められない。

世襲制?血筋?糞くらえだ!

この時代の常識に照らせば俺の方が非常識な考えなのは分かってる、でもこれだけは引く気は無い。

桂花たちに宣言もした以上、二人には早く話そうと思っていたが、切り出すタイミングが掴めないでいた。

でも、これ以上伸ばす訳にはいかない。

今日中に話そうと決めて街に出ている二人を探していたら、見つけた。

二人は竹籠を売っている娘達と話していた。

俺はまた、会いたかった人と出会う。

凪、真桜、沙和、俺の初めての部下達だった。

 

多分ええとこの嬢ちゃんが、ウチの作った全自動カゴ編み装置を見て眼を輝かせとる。

うんうん、こういう反応は嬉しいなあ、隣の姉ちゃんはカゴを念入りに確認しててなかなか買おてくれへんけど。

嬢ちゃんは色々聞いてきて商売妨害になっとるんやけど、まあ、横におる凪と沙和は売り切ったようやし、残り四つは何とか買ってもらおか。

「のう、そのからくりは売ってもらえんのか?」

「嬢ちゃん、あんた御目が高いなあ。でも堪忍な、これまだ完成品やないんや」

「そうか、残念なのじゃ、一刀にも見せたかったのじゃ」

うんうん、ええ子やなあ。

今度寿春に来る時は完成させて、良かったらもう一台作っとこか。

「確かにたいしたもんだ、この才、欲しいなあ」

「一刀!」

「あら、一刀さん」

いきなり声をかけて来た兄さんに嬢ちゃんたちが驚いとる、ウチもやけどな。

「美羽、気持ちは分かるけど、あんまり長く話してると他のお客さんが買い辛くなるよ」

嬢ちゃんは兄さんの言葉に、ウチらの方を向いて謝る。

「ええよええよ、ウチも楽しんでたし」

「ちゃんと謝れるなんて偉いの〜」

「立派だ」

ウチらの言葉に赤くなって照れとる、可愛いなあ。

隣の姉さん、何か恍惚な顔しとらんか?

「お詫びといってはなんだけど、残りのカゴは買わせてもらうよ、後、良かったら食事でもご馳走したいんだけど」

大判振る舞いな兄さんの提案に飛びつく。

「きゃ〜〜〜〜っなの」

「兄さん、太っ腹やなあ」

「いえ、そんな訳にはいきません」

・・凪、空気読もうや。

「大丈夫、下心あるから、是非ご馳走させて」

「下心あるんか〜い」

「困ったの〜、沙和たち食べられちゃうの〜」

「た、食べられ・・・」

兄さんの絶妙な突っ込みに乗っかるウチと沙和、そんで真っ赤になっとる凪。

何か楽しいなあ、初めて会うたのに、ずっと一緒におったような、こうやって笑いあってたような気がするねん。

 

ホントに驚いたの、いま一緒にご飯食べてる人達がこの国の王様と大将軍と天の御遣いさんだなんて。

でも周りの人達が驚いてる沙和たちにホントだって教えてくれたの。

だって全然見えないの、威厳なんて欠片も無いの。

完全に庶民に溶け込んでるの。

沙和は偉い人となんて会った事ないけど、役人はいつだって威張って、暴力を振るうだけだったの。

それなのに目の前の王様は私達が普段食べてる物を美味しそうに食べてるし、大将軍は嬉しそうにお世話してるし、御遣いさんは麻婆豆腐をご飯にかけてるの。

「ねえ、凪ちゃん、真桜ちゃん、沙和が不思議に思うの当然だと思うの」

「いや、麻婆は関係ないやろ」

「・・邪道だ」

「美味しいんだよ、なんなら一口食べてみる?」

そんな感じで食事は美味しくて楽しかったの。

食べ終わってお暇しようかと思ったら、御遣いさんがトンデモないことを言ったの。

「君達、うちで働かないか?」

「私達がですか?」

御遣いさんは真剣な顔で頷いたの。

「本気かいな、ウチら、只の一般市民やで」

「そうなの、難しい事なんて分からないの」

凪ちゃんは分かるの、とっても強いし頼りになるし、でも沙和や真桜ちゃんはそこまで強くないの。

「そうかな。俺が見たところ楽進さんはとても強いし、李典さんのからくりは素晴らしい技術の結晶だし、于禁さんの民の嗜好の情報通は政に大変有意だ」

沙和は真っ赤になってると思うの。

お洒落が好きなだけなのに褒めて貰えるなんて初めてなの、むしろ無駄な事をって窘められてたのに。

凪ちゃんたちも真っ赤になってるの。

でも気持ち分かるの、今、凄い嬉しいの。

自分の事を認められるのがこんなに嬉しいなんて知らなかったの。

「お気持ちはとても嬉しく思います。ですが私達はカゴを売って村にお金を届けなくてはなりません。村にとって大事な収入源なんです」

「そうやねん、だからウチら景気のええと聞いた寿春まで来てん、少しでも高く売ろうと思うて」

「そうか、それで寿春に」

あれ?今の言葉、何かおかしいの。

まるで沙和たちが遠くから来たのが分かってたように聞こえるの。

「それなら一つ提案がある。俺はどうしても君達が欲しい」

何かすっごい発言なの、勘違いしちゃいそうなの。

「君達の村とカゴの専属契約をしたい。お抱えの商人に話を通して商売の移動の際に立ち寄ってもらって売買取引をする。但しカゴの出来によっての金銭交渉にはなるが、どうだろう」

凄いの、とってもいい話なの、商人さんの方から来てもらえれば買い物も出来るし、行商に出ないでいいなら出費も減らせるの。

「ここまで言われて断ったら罰当たると思わんか、凪、沙和」

「ああ、本当にありがたい」

「ホントなの、沙和、一生懸命頑張るの!」

沙和達は御遣いさんの前に行って、改めて働かせて欲しいとお願いしたら、三人揃って抱きしめられたの。

「ありがとう、よろしく頼むよ」

きゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!

御遣いさんは凄くうれしそうなの、でも沙和達は固まっててそれどころじゃないの。

でも何でか嫌じゃないの、三人ともそうだって何故か分かるの。

「一刀、妾も抱きしめるのじゃ」

「全くこの種馬さんは、いくら撒き散らせば気が済むんですかねえ」

張勲さんの言葉に沙和も何でか知らないけど全面的に肯定なの〜〜〜〜〜〜〜。

 

 

一刀さんの部屋で何時も通りに三人でお話をしてます。

今日は凪さん達が仲間になった事を美羽様はとても嬉しかったようですね。

美羽様にとって御家族以外に真名を呼び合える人は、私と一刀さんしかいませんでしたから。

私は人を信用できなくて孤立してましたけど、一刀さんは人との信頼関係を自然に作ってしまいます。

そして一刀さんが信頼してるなら大丈夫と思ってしまう自分に驚きです。

あら美羽様、寝てしまいましたか、それじゃお着替えしましょう。

「七乃、話があるんだ」

一刀さんが真面目な顔で私を見つめます。

今日私たちを探してた理由、ですね。

「分かりました、美羽様の着替えが済んだら行きますので外で待ってて貰えますか」

 

七乃が部屋から出てきた。 

「お待たせしました、私の部屋で聞きますから付いてきて下さい」

部屋に着いて、七乃はお茶を用意してくれた。

七乃の部屋、初めて入ったけど生活感無いな、綺麗というより使ってない感じだ。

「それでお話というのは」

「ああ、本当は美羽も入れてのつもりだったんだけど・・・・・・・・」

俺は話す。

美羽を王にする気は無い事。

大陸の王を見定める事が俺の天の御遣いとしての役割だと。

相応しい者がいなければ俺が王になると。

俺は裏切りとしかとってもらえないであろう言葉を紡ぐ。

でも俺は二人を護りたい。

斬られても仕方ないけど、斬られるだけでは終われない。

 

神妙な顔をして、一刀さんが私の言葉を待ってます。

・・馬鹿ですねえ。

本当に馬鹿です。

どうせ美羽様と私を裏切ってると思ってるんでしょう。

ええ、その通りです。

そこまで美羽様の事を大事に思ってくれてるなんて、私の考えを遥かに裏切ってますよ。

「一刀さん、貴方の考えはわかりました。ですが美羽様に変わって貴方が王になるのは時期と根回しを完全にしないと、漢や他国に敵対する大義名分を与えてしまいます」

「七乃、いいのか?」

「ええ、一刀さんが美羽様を大事に思ってくれてる事、充分に分かりました」

私は今、自分も知らない表情をしてると思う。

「ありがとう」

一刀さんが凄く嬉しそうです。

「まあ、一刀さんが美羽様を妻にするのが一番確実ですが、流石に種馬の一刀さんでも今の美羽様に手は出せないでしょう。数年後にはパクリでしょうが、やはり今の段階では強制的に美羽様をものにしたと言われかねません」

あら、涙目になってますね。

「なあ、種馬って決定なのか?」

「私はそれ以外に一刀さんを表す言葉はありませんよう」

本気半分、からかい半分の発言に一刀さんが頭を垂れます。

一刀さん、貴方は一人の女性で縛れる人じゃありませんよ。

私はブツブツ呟いている一刀さんに近づいて、唇を重ねます。

だから私も愛してください。

私は貴方を愛してます。

説明
稟たちが旅立ち気合を入れなおす一刀
美羽たちを探しに行くとそこにはまさかの
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コメント
七乃が本気になったらそこいらの軍師以上だからなぁ…頼もしい事この上ない(はこざき(仮))
まぁ、どうせ名家のみなさんと懇ろになるんだから、なんだかんだ言って血筋を利用する形になることに変わりはないんだけどね。(PON)
メインヒロイン、完全に七乃じゃないですかー、やったー(一火)
この七乃さんはいい七乃さんだw(nao)
七乃さんマジリスペクトッス!!(地球ジェット…)
華琳と一刀の違いって部下の力を100%生かせるか、潜在能力まで引っ張り出せるかが一番の違いじゃないかな?って思ったりするこのごろ(h:o)
魏のヒロインとキスをしたら、記憶が戻るという設定はどうですか?(了)
袁術一家がすごくツボです。デレた七乃さんは最高やで(asayake)
タグ
沙和 真桜  七乃 美羽 北郷一刀 真・恋姫無双 

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