「真・恋姫無双  君の隣に」 第13話
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皇帝崩御。

大将軍何進と十常侍の権力闘争が本格化する。

関わるのはあまりにも馬鹿馬鹿しいので両方の招聘は無視。

結局は董卓の相国就任で落ち着き、着々と反董卓連合の流れだ。

董卓に関しては細部まで情報を集めた。

彼女は時代の生贄か。

一ヶ月後、袁紹から使者が到着した。

 

 

「真・恋姫無双  君の隣に」 第13話

 

 

「朱里ちゃん、この前張勲さんにね」

私と御遣い様が似ていると言われた事を話してみる。

あれからずっと考えてたけどやっぱり分からなくて、少し怒ってたみたいだから嘘ではないと思う。

朱里ちゃんは辛そうな表情で私に答えてくれる。

「そうですね、張勲さんの仰るとおりだと思います。ですが申し訳ありません、私も理由は申し上げられません」

「どうして、朱里ちゃんも怒ってるの?」

「確かに怒ってはいます。ですが桃香様にではなく自分自身にです」

「私じゃなくて朱里ちゃん自身を?」

「はい。私は桃香様がその理由にお気づきになっていない事を知っていながら、桃香様の為にと自分の行動を正当化していました。でもやっぱり本心では苦しくて、御遣い様に見抜かれた時に泣いてしまったんです」

私はずっと朱里ちゃんに無理をさせてたんだ。

「じゃあ、愛紗ちゃんも?」

「いえ、このような言い方は失礼ですが、愛紗さんは純粋に裏切られたと思ったんです。愛紗さんの桃香様への心を。その意味では愛紗さんも気付かれていません」

「愛紗ちゃんも分かってないの?」

「はい、鈴々ちゃんは分かりませんが、雛里ちゃんは気付いてました」

私と愛紗ちゃんが気付いていない、でも出会ったばかりの御遣い様は気付いた。

「朱里ちゃん。ごめん、どうしても分からないの」

「私達は歪んでました。言葉だけで理想に酔ってました。これは必然なんです」

「理由を聞かせて貰えないのはどうして?」

「桃香様ご自身で気付かれないと意味が無いんです」

でも、このままじゃ駄目だよ。

やっぱり御遣い様にお願いに行ってみよう。

 

「大将、いよいよ明日出兵やな」

「ああ、難しい戦だけど俺には真桜達がついてるからね、大丈夫だよ」

ウチは寝床で大将に甘えながら唇を重ねる。

「全く大将は、ホンマ女をその気にさせるなあ、ワッルイ男やで」

「押し倒してきたのは君だと思いますが」

「そりゃ沙和に負けてるわけにはあかんからな、それに今度の戦でどうせ新しい肌馬が増えるやろうし」

「何たる暴言」

前の大将と沙和の会話を部屋の外から聞いてて、それを理由に部屋に呼び出して今に至る訳やけど、ホンマ幸せや。

沙和が心を満たされたいうのがよう分かる。

やっぱ抜け駆けされんのは面白無いから邪魔したろ思たんやけど、沙和の部屋から真面目な声が聞こえて盗み聞きしたあと鍛冶場に戻った。

話の内容は驚いたけど、ウチは満足してた。

大将の傍におれて、力になれて、惚れてよかったってな。

だから沙和の事も素直に祝福したんやけど、毎日惚気られて流石にムカツいとったんや。

明日から遠征やから度胸一発、てな訳や。

「まあええやん、もう領土内では種馬で認定されてるし、男の甲斐性ってもんやろ」

「そんな認定はいらない」

 

「あら〜、明日から遠征だというのに美羽様をほったらかしにして種馬生活を満喫している最低な人、いえ馬さんがいらっしゃるじゃありませんかあ、何で生きてるんですか、身の程をわきまえてほしいですねえ」

久々の毒舌。

「七乃、そう言ってやるななのじゃ。明日からは一緒じゃし、戦の前じゃ、やらねばならない事が沢山あるのじゃろ」

「お嬢さま、何てお優しい。一刀さん、今の御言葉聞いてましたあ」

はい、それはもう、美羽の成長が凄く嬉しい反面、自分がどうしようもない男だと。

明日からの遠征、反董卓連合の戦は二人にも来て貰わないといけない。

俺は二人に改めてお願いする。

「美羽、今回の戦はどうしても美羽自身に出て貰わないと駄目なんだ。だけど、絶対に護るから」

「妾がおっても何の役にも立たんじゃろうが、一刀の為なら問題ないのじゃ」

「七乃、ある意味一番危険な役目だけど、七乃しかいないんだ。何とか頼む」

「はいはい、お任せください〜」

俺は二人を抱きしめる。

「ありがとう、俺の我儘に付き合ってくれて」

二人は笑顔で答えてくれた。

「一刀には妾も七乃も凪も真桜も沙和もついてるのじゃ。心配いらないのじゃ」

「私達は何処までも一緒ですよ」

 

(長沙)

「やはり二万だな」

どう計算してもそれが限界だ。

私は眼鏡を外し、目の付け根を揉む。

「はい〜、それでも無理をしてるんですけどね〜」

穏の言うとおりだ、だが少数過ぎては他の諸侯に侮られ武名も挙げられない。

「雪蓮、そういう訳だ、我が軍は二万の兵で連合に参加する」

「もうちょっと追加できない?他の諸侯は三万以上でしょ?」

「気持ちは分かるが、長沙からでは遠すぎるんだ。それに財政は立て直し中だ、もう少し時間が欲しい」

独立はしたが、まだ時間が足りない。

「一刀から借りるってのは」

「馬鹿を言うな、既にどれだけの借りを作っていると思っているんだ」

太守就任に蓮華様の件、商業の流通も独立当初は融通して貰ったんだぞ。

「その通りですねえ、蓮華様達なんて殆んど別人になってお帰りになられましたし〜」

全くだ、その成長振りは私の予想を遥かに超えていた。

今の蓮華様は既に王の風格があり、思春も一軍の将を任せられる。

弟子の亞莎など同一人物とは思えない程だ。

「おまけに三人とも完全に一刀に惚れたようだしねえ。あと明命も尊敬しまくってたし」

雪蓮の発言は私に頭痛を起こさせる。

寿春に使いに出した明命が、戻ってきた時に大きな猫を模った抱き枕というものを抱えていた。

何でも御遣いが考えた商品で、値段も安く子供に、特に女の子に大人気らしい。

お土産にと貰ったらしく、感動して真名を預けたと言っていた。

流石に勧誘という訳では無いだろうが、これ程までに人を惹きつける御遣いは、本当に何者なのだ。

「まあいいわ、数が足りない分は実力で補いましょ。蓮華達は留守番。一刀は冥琳も実際に会って見定めなさい。今回の戦で多分色々分かるわよ」

「妙な言い回しだな、味方なのだから話す機会は充分あるだろう?」

「そうなんだけどねえ、何かひっかかるのよ」

 

(陳留)

「季衣、流琉、全力でかかって来い」

「いくよお」

「はい、春蘭様」

私は二人を同時に相手しながらこのスッキリしない気持ちを晴らそうとするが、どうにも駄目だ。

「どうした姉者?訓練に身が入ってないぞ」

私は手を止め、季衣たちも武器を納める。

「秋蘭、私は此度の戦、どうにも気に入らんのだ。華琳様の為なら百万の敵だろうと望むところだが、今回は袁紹が董卓を除こうとする為の戦だろう」

「ああ、その通りだ。実際董卓の暴政というのも怪しいものだ」

「だったら何故華琳様はそんな戦に参加するのだ。董卓が付け込まれる隙を作ったのは迂闊だが、どうにも華琳様らしくない気がするのだ」

華琳様とて臣下の前では本心を隠して建前の発言をする事はある。

今回は建前の発言で参加される事を告げた。

「姉者の言うとおりだ。華琳様も乗り気ではないが、一つ無視できない事があるんだ」

 

(平原)

「では、雛里は参加するしかないと言うんだな?」

「は、はい。わ、私達は発起人である袁紹さんの近隣である為、断れば見せしめの為に攻撃されかねないのです」

私は苦い物を口に運んでいる気持ちになりながら、聞かねばならない事を聞く。

「本当に、董卓殿は暴政をしているのか?」

「わ、分かりません。しょ、商人等から聞いた話では真逆だという事です」

これが、現実か。

私は正義の為に武を振るってきた筈なのに、力に呑まれて無実の者を討つのか。

「あ、愛紗さん、この平原の民を護る為には」

「分かってる、我等には袁紹に勝てる力は無い」

私が死ぬだけならいい、だが民はどうなる。

重い。

桃香様、いや、劉備殿に代わり私が頭首を務める様になってから、何度も選択肢を選んできた。

その度に選択の重さがこの身から離れない。

私はあの人にこれ程の重責を負わせておいて、その重さも量れずに支えていると思っていたのか。

あの人はあの時まで、そのような重さを見せていなかった。

いや、見せてくれた事はあった、だが私はその事を否定しただけだった。

あの人の為だと思って。

私は、私は自分を恥じる、申し訳ありません、桃香様。

 

(渤海)

「お〜ほっほっほっほっほっ、流石は名門袁家の威光、続々と参加してきますわね」

姫は御機嫌だ、しっかしこんなに集まったらアタイの出番が無くならないかな?

姫のこったから他の諸侯に露払いさせるだろうし。

アタイの出番まで董卓軍に元気がありゃいいけど。

あれ?浮かない顔してんな、斗詩、どうしたんだ?

「文ちゃん、袁術様からの返事がまだないの」

「遅れてるだけなんじゃねえの。勅の事も伝えてあるんだろ?」

勅を受けた姫は完璧な大義名分を手に入れたんだからな。

「う、うん、そうなんだけど」

それじゃ何で?ま、まさか御遣いの奴の事を気にしてるんじゃ。

「だ、駄目だぞ、斗詩。斗詩はあたいのもんなんだからな」

「えっ、何言ってるの、文ちゃん?」

あたいは斗詩のおっぱいを鷲掴みする。

「このおっぱいはアタイのもんなんだからな〜」

「文ちゃん、やめて〜」

 

(洛陽)

どうして、こんな事になってしまったんだろう。

私は詠ちゃん達と亡き両親から受け継いだ天水の地を護って、平和に過ごせたら充分だったのに。

黄巾の乱が終結して傷ついた領地を立て直していたら、何進大将軍から招聘を受けて洛陽に来たら権力闘争に巻き込まれて、最後に残った私が相国の地位を持つ事になってしまった。

詠ちゃんはこれが天命で、私が大陸を治めるのに相応しいからだって言ったけど、漢の名門袁紹さんが反董卓連合軍を立ち上げた。

戦に疎い私でも分かるくらい絶望的な戦力差だった。

皆は私を護ると言ってくれるけど、私の為に多くの人達が傷つく事になる。

袁紹さんにこの首を差し出せば、戦は避けられると思う。

覚悟は決めているつもり、でも、やっぱり怖いよ、詠ちゃん。

 

「恋殿〜。ここにおられましたか、詠が呼んでますぞ」

「ん」

「恋殿がいれば連合軍など恐れるに足りないのです」

嘘なのです。

どう考えても無理なのです。

黄巾のような雑魚の固まりなら恋殿の神懸った武勇で逃げ出しますが、今回は程度の差はあれど正規兵です、兵力差も予測では十倍近い。

こちらは籠城する側なのに、援軍も見込めない。

華雄は勝てると本気で思っているようですが、詠も霞も月殿をどうやって逃がせばいいかを必死に模索中です。

先の見えない戦の事を考えていたら、恋殿が頭を撫でてくれるのです。

「ねね、大丈夫、恋が護る」

「恋殿」

ねねの虚勢は、恋殿にはお見通しなのです。

「それに、あっちの方から助けてくれる人が来る」

恋殿が指差す方向は南。

南の勢力といえば、劉表?

確かに劉表は連合軍に不参加と聞いてますが、あの日和見主義者が助けに?

「行こう、ねね」

「ま、待ってくだされ、恋殿〜」

 

「詠、こっちは最大で何ぼの兵力や」

「洛陽の人達の義勇兵を含めて四万、頼みの綱だった馬騰には援軍を断られたから、これが限界よ」

元々董卓軍は騎兵が主力の軍。

攻撃に関しては無類の強さを誇るけど、籠城戦では力の半分も出せないわ。

将も同じで、攻めには大陸屈指の将達がいるけど、守りに向いてるとはいえない。

でも、兵力差を考えれば野戦に転じるのは論外よ。

和議に持ち込む為に朝廷に何度も上奏したけど、返事は返ってこない。

八方塞がりよ。

どうしたら、どうしたら月を護れるの?

あの子はきっと、自らを差し出そうと思ってる。

そんな事させられない、それが僕達の共通する思いだ。

「詠、安心しろ。我が武勇で必ず董卓様をお護りする」

華雄のあまりの考え無しの発言が僕の神経を逆撫でる。

「あんた一人で何が出来るって言うのよ。だったら一人で突入して敵を滅ぼしてきなさいよ!」

「落ち着き、詠。華雄、あんたもちょっとは頭使いいな」

「頭を使うのは軍師の役目だろう、私は武人だ」

この馬鹿っ!

僕が華雄に掴みかかろうとするのを霞に止められてたら、恋達が部屋に入ってきてねねに質問される。

「詠、劉表から援軍の知らせが来てるのですか?」

「劉表の援軍?何の事よ、そんな知らせあるわけ無いじゃない。あの日和見主義者が援軍なんて寄こす訳ないわ」

ねねの訳の分からない質問に返答する。

「恋殿、劉表の援軍は来ませんぞ」

「来る、あったかい人が」

「恋、ねね、あんた達は一体何を言って・・」

僕が問いただそうとした時、兵から至急の報告が来た。

南に、袁と十文字の旗を掲げる約六万の軍勢が現れたって。

 

 

「さあ皆、大陸中の諸侯に喧嘩を売りに行こうか」

「「「「「応」」」」」

説明
反董卓連合の檄文が諸侯に届く
諸侯はどう動く
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コメント
あぁ、北郷が董卓につくのか…しかし、勝算はあるのか?気になるなぁ…(はこざき(仮))
↓同じく(れんれん)
「さあ皆、大陸中の諸侯に喧嘩を売りに行こうか。」←何こいつ、超カッコイイ(心は永遠の中学二年生)
魅力カンスト一刀がかっこいい。こりゃ惚れるわ。(もずきゅ)
真っ向から反董卓連合をどう迎え撃つのか?この戦いで篩にかけようとしているのか?そして凪の初めてはいつか?wこれからも期待しております。(shirou)
Jack Tlamさん ご指摘ありがとうございます 修正しました(小次郎)
真っ向から月達を助けようというのか?どうやって連合を退くのか楽しみですな^^(nao)
か楽しみです! ・・・切れてしまいました。すみません!(゜Д゜;)(レヴィアタン)
最後の「喧嘩を売りに行こうか。」は、一刀のセリフかな?なんかかっこいいwこれから先どうやって切り抜けていく(レヴィアタン)
連合参加の返事してないところで予想したとおりwww(アルヤ)
かゆうまの生存フラグか?(地球ジェット…)
追加で誤字報告。朱里が鈴々を呼ぶとき、敬称は付けずに「ちゃん」ではないですか?(Jack Tlam)
喧嘩を売りに行ったか…しかし桃香と愛紗が敵味方に分かれてしまうとは。そして桃香はなぜここまで言われて気付かないのだろうか…愛紗はもしかしたら気付くかもしれないけど、七乃はほぼ全てを教えたようなものなのに。(Jack Tlam)
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