真・恋姫†無双 〜孫呉千年の大計〜 第3章 8話
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第3章 群雄淘汰・天下三分の計編 08話 『 荊南戦 決着 』

 

 

 

暇を持て余していた所に、急遽届けられた書簡に首を傾げながらも

いち早く目を通し終えた琥珀は、すぐさま行動を開始する

 

「ふ〜ん なるほどね さすが楓様に穏 いい読みしてる これはお手柄だ 

 穏はたまにいい仕事するんだよねぇ〜 ホントたまにだけど・・・

 瑠璃! 仕事だよぉ〜〜〜〜」

 

「うにゅ??? 仕事?」

 

と全く緊張感のない声を琥珀に対して返している

これまで全く出番がなかった為、副長である周魴に全てを任せっきりにし、船内でダラけてきっていた瑠璃である

 

「蓮華様が攫われたらしい まだ予想段階らしいけど

 そっちになんか情報入ってない?」

 

琥珀の表情が、先頃までの緊張感のないモノとは違っていた事もあり

事情も事情だけに、すぐさま瑠璃の表情も厳しいモノへと変っている

 

「・・・??? 副ちょー 何か聞いてる?」

 

船内入り口にいた瑠璃は、船内奥に控えている自身の右腕で副長でもある周魴へと尋ねた

 

この周魴という人物 実に惜しい、また悲しいことに影が薄い、存在感もない、生気も感じられない、名で呼ばれることがマレ

・・・とトコトンついていない副長さんなのである

斥候という影の役職には非常に向いている人物といえ、瑠璃とは対照的に部隊では主に諜報部門を担っている

 

「周魴という名があるのですが・・・ いつから副長という名に・・・ まぁそれは今は置いておくとしましても

 質問の内容にお答えしますと、いえ 何も・・・ 

 部下達からは定期連絡のみで変った情報など聞いておりませんが? 至急、情報を集めましょうか?」

 

そう周魴へと問われた瑠璃は、判断に窮し琥珀へと視線を向ける

 

「いや いいよ 時間がもったいない ここは攫われていると仮定して動こう 時は一刻を争うんだから

 2人ともちょっとこちらへ着いて来てくれるかい?」

 

そう琥珀に言われた瑠璃と周魴は急いで後を追う

 

「先ずそうだね〜 瑠璃 副長さん もし君達2人がアタシ達の警戒を突破するとしたら、どこから突破を仕掛ける?」

 

琥珀は船内に設けられた地図を眺め、顎をしずかになぞりながら、瑠璃と周魴の2人へ向けて問いかけたのである

 

「こっちかこっち・・・ あとこっちも・・・」 

 

瑠璃の背は小さい事から指差してはいるものの・・・ 

遠すぎて直ぐには要領を得ることが出来なかった琥珀ではあったが

 

「えっと我らの位置からみて、東側か西側のどちらかでしょうな

 東は我らの領土に接してますし、西を突っ切って逃げ隠れするのは平地や街道が多く、隠密行動には適しておらず無理があります

 長沙の街に潜み、やり過ごすという手もあります・・・と隊長はおっしゃっております」

 

と見事、隊長である瑠璃の言いたいことを全て周魴が代弁していたのである

 

「見事な解読手腕 実に判り易かった ごくろう 副長さん 

 いい読みかな ワタシもほぼ同意見だね

 

 荊南地方へ逃げるのは袋のネズミとなり一番の愚策だろうし、そちらへは配備する兵も惜しいのでいらないか

 そちらへ逃げるなら、夜陰に紛れずすぐに逃げないと意味ない、だってワタシらはこれから荊南地方を切り取るつもりなんだしね

 

 それにすぐに脱出に向かったとしたら、こちらに怪しい人物達の情報が、各方面へと放っている斥候から来てるだろうからね

 情報が一向に来てないってことは、どこかに機を待って潜んでいるという事だろう

 

 じゃ 本命は何処に潜んでいるのか? それは十中八九長沙の街に潜んでいるとみるな

 街燃やして怪しい奴だ!なんて炙り出せないしね そうと仮定し話を進めるとしよう 

 街の周囲に少数の見張りを配置しておいて、読みが失敗した時の為に、東と西に多くの人員を割き予防線を張っておくとしよう

 

 こちらの味方の格好をして、蓮華様達を連れ出したというから、味方の姿であろうとも気を抜かずにね それでどう? いいかな?」

 

周魴の意見は聞かなくてもいいの?と思わないでもないが、影が薄いのでこのようなスルーは周魴にとって日常茶飯事なのである

イチイチ気にしていたら周魴の命はいくつあっても足りはしない

 

ただ影の薄く自己主張の苦手な周魴も・・・

副長!だけでなく、名前も呼んで欲しいという野望は持っていたりするので、その点だけには強い拘りを持っていたりするが

自分の思考が辿った道筋を2人に説明し終え、2人へと交互に視線を移し表情を確認している琥珀

 

「コクコク」

「ハッ それでは早速」

 

琥珀の意見に同意を示した2人は、早速船内から勢い良く飛び出していった

そんな2人の姿を溜息を交えつつ視線で追いつつも・・・

尚も地図を厳しい表情のまま見つめ、思考を隅々にまで巡らせる琥珀でありました

 

「ワタシら孫呉の狸と見知らぬ狐との化かし合い さぁて勝敗の賽の目はどっちに転ぶかな?」

 

いささか不謹慎ともとれる内容の物言いであったが、これが琥珀という人物であった

 

時に冥琳をもからかい、外からみれば一見温厚そうで、紅と共に外交の一線にて活躍しそうにみなされる琥珀であるが

製作物の拘りからみても判る通り、その内には誰よりも熱き魂の血潮が溶け、マグマとなって体中を駆け巡っている

 

そしてその頭脳は熱き血潮とは正反対に、静かに真綿で首を絞めるかの如く、緻密且つ正確に相手を確実に追い詰めていく

正史でもそうであるが、周瑜亡き後、孫呉を智謀の面から支えたのは、この魯粛なのである

 

琥珀と穏の智謀の歯車が見事までに噛み合い、危機を奇跡へと変じ懐へと呼び込んだ瞬間でもあった

 

今の孫呉は、武の面でも智の面でも、全くと言っていいほど隙がない、完璧な布陣だったといえたのである

 

 

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琥珀の読みは見事に的中していたのである

陽が西へと沈むと同時に、長沙の街から東西へと飛び出し

途中西に向かった者達は、さらに北・西へと隊を分けた行動を開始し出したのであった

 

合流を果たしていた穏と琥珀の読みとしては、西から方向を変え北へと向けて移動する者達へと狙いを絞ったものの・・・

万が一外した場合も考慮して、最大限の対策を各方面へと施していたのである

 

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「武陵方面へは逃がしませんよ?」

長沙城を脱出した者達が去った後、穏は夜になる前に、武陵へと通じる全ての街道を封鎖し終えていたのである

 

武陵方面へと暗がりの中逃げられては、発見・捕縛する事が一層困難となり面倒だったからだ

だが全ての街道を押さえてしまえば、話はまるっきり違ってくる 

 

こんな戦の最中、街道を通ろうとする空気が読めない商人など、失格の烙印を押されているようなもので

そうそういる筈もなく、民と限定するならば、焼き出されていないのだから、尚少なかった

 

「みなさん 怪しい人を見つけたなら、1人残らずひっ捕らえてくださいね〜〜〜」

 

穏の指示を受け検問を強化した結果、西へと逃亡する者達の悉くをひっ捕らえる事に成功する

蓮華が隠せるような大きな麻袋を手にした怪しき人物を捕えたものの・・・

 

中身は大きな甕だったようで・・・ 要はハズレということらしかった

 

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長沙の街から東へと逃げるのは、川を使って逃げるのには適していたが

孫呉の兵に水陸と簡単に追い込まれ包囲されてしまう可能性があった

 

冥琳に無理を承知で頼み込み、劉gを建業へと送る任を受けた思春が担当していたのだった

 

「見つけたぞ! 追い込め!」

 

思春に指示された皆は、逃亡を図る者達へと一斉に投網を投げ入れ、あっという間に全員捕獲してみせたのである

だが蓮華と思しき袋の中身を開けてみると、誰とも分らない者の無残な死体だけであった

 

「おいっ お前達が大事に抱えていたのはこれだけなのか?」

 

「残念だったな こっちはハズレだ 馬ぁー」

 

思春をあざ笑うかのような態度をとろうとした男ではあったが、その男の言葉が最後まで続く事はなかったのである

 

「言葉には気をつけるのだな おっと・・・もう話せないか」

 

思春の言葉の通り、暴言を吐こうとした男の口辺りから、横一線の鈴音の薙ぎが綺麗に決まり

男の口から上が船外へと吹っ飛び、川へとぼちゃんと鈍い音と共に、川底へとゆらゆらと沈んでいったのである

 

「気がお済でやすか? 隊長 周瑜様との約定を果たし、そろそろ劉g殿を建業へとお送りしやせんと・・・」

 

「ふんっ・・・最後まで言わずともわかっている あとは明命や瑠璃達に信じて任せろというのだろう?

 野郎ども 建業までこのままお送りするぞ 準備を急げ!」

 

不機嫌な様子を隠そうともしないで、そう周囲へぶっきらぼうな指示をし終えた後、船内へと足早に去っていく思春でありました

                       

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琥珀と瑠璃の部隊の大部分を、穏と思春の隊へと割き合流させていたこともあり

3つめの最後となる隊には、今現在、明命、瑠璃、周魴の3名しか派遣されていなかった

 

琥珀が読みきっていたというのに、なぜそんな歪ともとれる編成をしたのだろうか?

それは簡単なことで、この3人で動くのが一番無駄がなく理に適っていたからである

 

この3人に勝る俊足の持ち主は、捜索隊の中では思春を除いては皆無だからである

しかも明命と瑠璃に至っては武の面でも一流である 追っ手としてこれ以上の適任な人選などいる筈もない

 

本命と据えてその3人を派遣した、琥珀の眼力をここは褒めるべき所であろう

 

「副長さんは手筈通りお願いします 瑠璃ちゃんと私の2人で邪魔者を片付けます」

「・・・周魴です 明命様、隊長 承知しました 御武運を」

 

明命の言葉に周魴は頷くと、すぐに自身は闇へと紛れ、周囲を警戒すべく気配を断つのであった

 

「やっと見つけました 貴方達ですね」

「邪魔する奴から殺す」

 

周魴の動きを悟らせぬように後方から声をかけ

男達へと鋭い殺気を放ちながら、魂切を手にした明命と不撓不屈を手にした瑠璃が、徐々に肉薄してきたのである

 

2人だけなら囲み殺した方が速いかと思った隊長格の男は

全力で逃げながらも、身体を器用に反転させながら、ふと隣にいる副長の男へと目配せをする

 

しかし、副長格の男も意図を悟り頷きかけたその時には

不撓不屈を手にした瑠璃の姿がスゥーーーと闇夜に溶けて消えたのだった

 

「闇に完全に溶け込んだだとっ!?」 

 

副長格の男がそう呟きながら、皆が思わず後ろ(逃亡を図る前方)を振り向いてしまう程であった なぜなら・・・ 

 

「陽が暮れ夜になる時をずっと待っていた・・・

 今の私を視認するなど無理、無駄、無謀 ・・・よって死ね」

 

そう呟いた瑠璃の声は、確かに男達の後ろ(逃亡を図る前方)から聞こえてきた為だった

だが瑠璃の姿はほんの数秒前に消えたばかりである しかもこうした遣り取りの間も全力で疾駆しているのである

 

もし自身らの後ろ(逃亡する前方)へと回り込めるのであれば、最初からこちらに声などかける必要など何処にもない 

さっさと奇襲してしまえばいいだけの話なのだから・・・

 

蓮華を担ぐ者や男の周囲を護衛している者達は、周囲から選び抜かれた手練の者達ばかりを揃えていた

時には死をも凌駕するそんな者達が感じる恐怖 

 

・・・それは自身が理解不能なモノ、自身の死が無駄になる事に対して抱く

今男達を混乱へと陥れるべく、瑠璃が先手を取り、男達の心に芽生えた恐怖に拍車をかけたのである

 

振り向いた先に瑠璃が当然の事ながらいる筈もなく

このままこの方向へと逃げていいのか?という男達の混乱が、自然と逃げ足を鈍らせていたのだった

 

「おめぇら 俺達が逃げる間を稼げ! いけっ!」

 

隊長格の男と副長格の男に指示され、周囲を護っていた男達が

次々と自身の武器を抜き放ち、前へと突撃し斬り込んで行く

 

「ぐっ・・・((あいつ|・ ・ ・))と同じ能力かい 

 なんと厄介な・・・ まるで梟だな (ぉぃ 飛び込むぞ 今は俺達自身の命を護る事が最優先事項だ 急げ!)」

 

そう愚痴りつつも、隊長格の男は副長格の男へだけ聞こえる声で囁いた

 

「隊長 わかってはいるがよ これどうすんだよ」

 

副長格の男が言ってる、これが指しているものとは・・・捕縛した蓮華しかいない

蓮華の重みは大したことはない 細身である女性なのだから当然と言えば当然なのだが・・・

 

1人が全力で走って逃げるのと、1人でも担ぎながら逃亡を図るのとでは、速度が全く違うのは今更言うまでもない

また恐怖の為逃げ足も鈍っている以上、仕事の都合上攫ってきたとはいえ、逃亡を図る上で蓮華はもはや邪魔でしかなかった

 

隊長格の男は、思い通りに事が運ばない事に苛立ちを隠せず、舌打しつつ黙り込んで思考をする

 

攫った時の逃げ足の速度を鑑みて、夜になって逃げ易くなると踏んで日が暮れるのを待ち

隊を三分割し分散させ囮を作って時間稼ぎまでさせたのだが・・・

 

読まれた上に、ここまで追い込まれる事になるとは・・・ 

隊長格の男の顔にも、さすがに焦りの為か、額やこめかみから流れる汗が止まらないのであった

 

しかもこうして必死に眼を動かし、周囲の気配を探っているというのに、全くどこにいるのかすら判らない

声が響いてくる方向に、敵対相手である女の姿がないのである

 

「蓮華様を置いていきなさい さもないと・・・」

 

姿が見え後方から追ってくる女の声さえも、まるで幻術にでもかけられたかのように

傍近くからハッキリと聞き取れ位置情報が混乱をきたしはっきりしない

 

そうして混乱している間にも、刃を抜き放ち閃くと同時に随分離れている筈だというのに

壁となった男達の断末魔の呻き声が響き渡ってきて、不気味に耳にこびり付いて離れないのである

 

ケ艾が身内だった時には、一向に気にしなかったものだが・・・

相手が同様の事が出来るとなると、これほど厄介な代物だとは、男達にとって誤算もいい所であった

 

「任務をここで放棄する お前ら担いでいる女を刺して、後方へと思いっきり投げ捨てろ!!

 ここからは全力で逃亡を図る いいな!」

 

それは男が言葉を発している間のほんの一瞬の出来事であった 

 

「ぐわぁぁー あがっ、ぐうぅ、げぇ ーーーーーーーーーー」

 

隊長格の男が放った命令の言葉を、蓮華を担いでいた全ての男達が最後まで聞くことはなかった

蓮華を担いでいた男達の鈍い悲鳴が、闇へと瞬時に吸い込まれていったの為であった

 

「油断大敵ですね あらよっと! これで無事保護完了っと!

 いらぬ手間が省けました いらないのでしたら、こちらで頂戴いたします 

 明命様 隊長 あとの処理はお任せします ではおさらば!」

 

男の言葉を聞くため、前方へと意識を向けた一瞬の隙を狙われ 

闇から突然現れた周魴に、あっという間に手際よく4人全員やられてしまっただけでなく

麻布を被せ抱えてあげていた蓮華を、まんまと奪い去られてしまったのである

 

どんな原理なのか理解不明だが、麻布を被せたままの蓮華ごと、周魴の姿は再び闇夜へと吸い込まれ

あっという間に何処へか姿を晦ませてしまっていたのである

 

人質も奪い返された以上、逃げる時間を稼ぐ事も出来なくなったのである

 

(ちっ 時間稼ぎにも使えないとは・・・ 何のために誘拐したのかわからねぇな 全く・・・)

 

こちらを嵌めるために、わざと孫権を誘拐させたのではないだろうか? 

隊長格である男が、そんないらぬ詮索をしたくなるほど、敵である3人の連携に全くの無駄がなかったのである

 

「蓮華様を確保した以上、殺気を出してこちらに注意を向ける必要もなくなりました あとは・・・」

「足掻き苦しみぬいてから地獄へと逝け!」

 

明命と瑠璃の言葉に、何も出来ぬまま死ぬ事への恐怖が襲い、男達の背筋が凍りついた

 

「盾となって我ら2人を生かせ! 家族の事は心配するな それがお前達の使命だ」

 

副長格の男がそう呟くと、恐怖におののいていた男達の表情に、再び男達の瞳に生気が戻ったのである

 

その後は明命、瑠璃の2人による凄惨で一方的な殺戮劇であった

 

明命の魂切が、瑠璃の不撓不屈の一撃が、男達の首元、心の臓へと吸い込まれ、容赦なく一撃で命を刈り取っていった

追いついては時間稼ぎをする護衛達を、次々と殺しては追うという繰り返し・・・

 

2人を守る護衛の輪がみるみる小さくなり、数を瞬く間に減らしていった

 

護衛の最後の者を屠った明命と瑠璃の2人は、長江間際まで追い詰めたものの・・・ その後どうなったのかは判らない・・・

というのも、隊長格、副長格の男2人は長江へと飛び込み、以後2人の見える範囲で水上へと浮かんで来なかったのである

 

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「むぅぅぅ〜〜〜〜〜 逃した」

「でしょうね この機に一気に殲滅といきたかったのですが・・・ 残念ですがこれまでのようですね」

 

2人は手にしていた己の武器を納刀しつつも、まだ諦めらめきれないのか川面を睨みつけていた

 

追う人間が仮に思春であったなら・・・ おそらく男2人の命脈は、ここで尽きていたことだろう

明命や瑠璃は長時間泳ぐ、潜む為の訓練はしていても、速く泳ぐ訓練などしてはいなかった為である

 

逃げる男達の護衛を1人、また1人と削り迫り、長江に連なる場所まで追い詰めたものの・・・

今回の誘拐の主犯格である隊長、副長の男達2人を最後には逃がしてしまうこととなってしまった

明命と瑠璃、2人の言葉には、その悔しさが滲み出ていたのだった

 

「今は孫権様をお守り出来たことで、一先ずは良しとしませんか?」

 

2人の後ろから、周魴の穏やかな声をかけられたことが切欠となり、2人の険しい表情も幾分和らいだようである

 

「ふぅーーーーー そうですね ところで副長さん 蓮華様は?」

 

明命は気分を変えようと話を切り替えてみせた

 

「後方から来た者に任せておきました 

 まだ気を失われたままでございますが、怪我なども一切ない模様なのでご安心を」

 

との周魴の答えに安堵の声をもらした明命の表情は、依然と変らぬ可愛いらしい表情へと戻っていたのである

 

「それはよかったです! 私は蓮華様の元へと行きますね」

 

そういうと明命は2人へ軽く目礼をすると、足早に去っていったのである

 

「隊長はどうなされますか?」

 

未だに長江に揺れる波紋を、ジッと眺めて物言わぬ上司に声をかける周魴

 

「念のために周囲を警戒しとく・・・

 ところで副ちょー 一刀様に撫で撫でしてもらえるかな?」

 

時に拗らせ我侭で振り回される事もあるが、こうした年相応の可愛らしく頼ってくる仕草が

上司である瑠璃の憎めない所であり、未だに周魴が離れられない所以なのであった 

 

「それはもちろん 大手柄でございますからな いつもより長めに我らからもお願いしてみましょう」

 

そう周魴が笑顔で答えると、満面の笑みを浮かべてはしゃぎ出す瑠璃

 

「むふぅ〜〜〜 ぐっ! じゃ 警戒態勢維持しつつ帰ろ〜」

 

機嫌の良くなった瑠璃は副長と手を繋ぎながら、意気揚々と大きく天へと拳を突き上げながら歩いている

 

「ハッ! 周囲への警戒を怠るなよ! 総員撤収っーーーーーーーーーーー」

 

周囲から見れば、危ない男と幼女、はたまた親子?にしかみえない2人なのではあるが・・・ 

この2人こそ、一刀直属の諜報部隊を率いているNo1、No2なのである

 

長江の水面は男達を吸い込んで尚、静かに徐々に波紋を広げながらも

次第に何事もなかったの如く波紋を打ち消し、戦が終わった今も元の波音を奏ながら、刻々と時を刻み続けるのであった 

 

 

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蓮華が無事保護されたとの伝令の知らせを聞いた琥珀と穏は合流を果たし

今回の蓮華誘拐から始まった作戦の総括していた

 

「おつかれさん いや〜 蓮華様の誘拐なんて・・・ なんて大胆な・・・実に恐れいったよ」

 

「お疲れ様です〜 ですね〜 敵の参加人数と退路が確保されていれば、こちらの方が危うかったですね〜」

 

琥珀と穏は溜息をつき苦笑しながら、お互いの健闘を讃えあった

 

「両者ギリギリの所まで煮詰めあい、削りあった結果ですから〜」

 

「そうだね こちらは蓮華様を捨て後顧の憂いを断つか 蓮華様を助け、相手を逃すのかの二択

 相手は蓮華様を荊南から強奪出来れば成功 自分達が捕まるか死ぬかすれば失敗」

 

「こちらにとって、かなり分の悪い賭けでしたね〜」

 

琥珀と穏、2人の知力を結集し事態を打開出来た訳なのだが

今の感想を聞いた限り、当たりをつけていたとはいえ、1つでもミスれば蓮華をそのまま奪い去られていた訳で

 

言葉を聴いた限りでは、落下する危険性を多く孕んだ、危うい綱渡り状態をなんとか渡りきったという感想なのであろうが・・・

琥珀と穏の口調が、どうしても緊迫感を孕んでいないだけに、緊張感がまるで伝わってこないのだが・・・

 

「蓮華様を無事に取り戻し、奴らを捕えられる確率はなかったのでしょうか?」

 

琥珀と穏の総括を周囲で聞いていた者が、感情を抑えられずに2人へ疑問を問いかけてみたのだが・・・

 

「無いでしょうね〜」

「無理だね」

 

穏、琥珀共に即答であった

 

「そもそも蓮華様を今回攫われた相手の手腕が、そもそも我らの想像の埒外だった」

 

「そして相手の手腕・思考から逆算しての綱渡りでしたからね〜

 正直なところ、最後の2人にまで追い詰められた事の方が奇跡といえるでしょうね〜」

 

琥珀と穏 互いに状況を1つ1つ交互に確認し合う

 

「うん 最後は相手も相当焦ったみたいだね あそこまで追い込めたのは、明命と瑠璃と周魴のお手柄といえるだろうね

 慎重を期さない相手なら、そもそも我々は今回のような遅れを取ったりはしなかった

 皆の神経が落城へと向いた一瞬の隙を見事突かれたからね」

 

「ですね〜 なら敵が取り得る手段は2つ 1つは混乱に乗じて脱出か 機を見計らった脱出のどちらか」

 

「潜入を我らに悟らせなかった為、相手は機を見計らった脱出の方が成功が高いと、敵はそちらを選択したんだろう」

 

琥珀と穏は今も相手の動きの推測を交えながら語っているのだが

全てを間近で見てきたかのようにほぼ正確であった

 

「その慎重さの結果、私達は捉える事が出来たのですけどね〜

 逃しちゃった以上、今後とも厄介な人達ですよね〜」

 

「あれだけ頭の回る手練の敵がいた事に驚きだった 大陸はまだまだ広い」

 

琥珀の言にうんうんと頷き、眼鏡をくいっくいっとかけ直す穏

 

「琥珀〜 ところで今回の敵ってどこの勢力の者と思われます〜?」

 

穏の質問は、この話を周囲で聞く者の最大の関心事であるといえた

 

「十中八九 曹操・・・」

 

「「曹操!!?」」

 

琥珀の解に思わず言葉が漏れ出す 曹操陣営はうちと同盟を結んでいる間柄じゃないか

その憤りたるや周囲の喧騒が一気に伝染し熱を帯び、聞く者の心を大きく揺さぶったのである

 

「・・・陣営の司馬懿の配下でしょうかね〜 確たる証拠までは今の所ないのですけどぉ〜〜〜」

 

「反董卓連合終盤時の対応を聞いた限りは、あいつら以外、思い当たる節は今の所皆無だからね〜」

 

反董卓連合での月達を救う最後での争いから

孫呉の参謀達内部では、もう司馬懿陣営だけに照準を絞っていたといってもいい

 

だが明命、思春、瑠璃と孫呉が誇る諜報部隊の皆が、荊南地方への切り取りに全集中していた為

曹操とは不戦同盟もあり、大っぴらに索敵する訳にもいかず、今となっては頓挫してしまっている

 

「それに((あいつ|・ ・ ・))と同じ能力って言ってた 間違いない」

 

瑠璃が珍しく話に混ざってきたのだが、瑠璃の放った言葉は司馬懿の関与を肯定するモノであった

この度の蓮華の誘拐騒動に1枚噛んできた事は、中々に司馬懿達の実力をよく知る上で大きな収穫といえた

 

「ほう? そういえば以前、姿を消す奴と戦ったって報告書にあったね たしか」

 

琥珀の言に対し、こくこくと頷く瑠璃

 

「なら後でこの事、報告書にまとめて提出しておきますね〜」

 

穏の言に対し、琥珀と瑠璃はよろしくと返事をし、長沙城西門をくぐるのであった

 

 

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お前はこれまで、ほぼ独力で全てを成し遂げ、運命を切り開いてきたと言ってもいい

孫呉もお前の力なくば、ここまでこれはしなかっただろう

 

だが天皇と即位したこれからのお前は、頂点に立って人を差配する立場にある 今までのような事であっては困るのだ

 

皆の力を信じろ 北郷 ・・・それが今のお前の務めでもある

 

蓮華を探しに行こうとした俺に対して、冥琳はそう言い放った

自身が今まで歩んできた道程を思い返して、今更後悔するつもりなど微塵もないが・・・

皆を信じていない訳ではない いや信じてはいる ・・・だがなんと表現していいのだろう

 

歯がゆいものだな 雪蓮 この・・・心が逸る気持ち 

 

同じ立場になりえて、漸く雪蓮の気持ちが分った気がする一刀でありました

 

冥琳に諭された一刀は、長沙城の玉座へと深く座り込むと

椅子の背に体重を預け、眉間に皺を寄せ瞳を閉じたまま、ひたすら仲間達の帰りを待っていたのだった

 

「皆 ご苦労だった ありがとう」

 

玉座にて蓮華と共に帰ってきた者達を出迎えた一刀は

安堵の表情を見せながら抱き合い、肩や背を叩き喜びを共に分かち合い、皆に向け1人づつ労いの声を順々にかけていった

 

その間蓮華は玉座入り口に立ったまま、ずっと俯き動こうともしなかった

全員への労いの言葉をかけ終えた一刀は、玉座の間入り口に佇む蓮華へと歩み寄っていく

 

蓮華を叱りつけるのだろうか? 慰めるのだろうか? それとも?

皆の視線が、一刀の蓮華に対する次なる行動へと、自然に注がれることとなった

 

「蓮華・・・ 辛かったろう?」

 

蓮華の頭を一度軽くコツくと、その手で肩をぽんぽんと手のひらで軽く2、3度叩く一刀

一刀は捕まって辛かっただろう?と蓮華に対して労って言った訳ではなかった

 

「兄様や皆に心配をかけた事だけが、ただただ申し訳なくて・・・ ごめんなさい」

 

上に立つ者が捕まればどうなるのか 今日の事で身に染みて分っただろう? 

蓮華に優しくはあるが、厳しくそう問いかけていたのであった

 

そして蓮華は、そんな一刀の言葉を正確に捉えていたいたのだった

 

今日はこれくらいにしていいかい? 蓮華の肩へ手を置いた一刀は、冥琳へと視線を向けたのである

当然の事ながら皆の視線は一刀が向けた先の冥琳へと注視されることとなった

 

甘い! 甘すぎる!と雪蓮ならガミガミと説教しないと気が済まない所であったろうが・・・

さすがに肩を落とし、真面目な蓮華の反省した言葉も聴いた今の冥琳には、皆の目もありそれ以上追求するのが躊躇われたのだろう

目を瞑り溜息を1つゆっくり深くつくと、蓮華を叱ることなく玉座の間を静かに退出していったのである

 

「・・・という事らしい 今日はゆっくり休むといい」

 

「「「蓮華様 ご無事で何より(じゃ・です・でした)」」」

 

祭や楓皆に一斉に駆け寄られ、頭を撫でられたり、抱きつかれたり、揉みくちゃにされたりと

その後の蓮華は涙を堪えつつ、はたまた苦笑を交えながら、皆へもう一度きちんと礼を言うことを忘れなかった

 

私が欲しかったもの・・・ 私が守りたいもの・・・ 全てがここにある 

だから・・・私の全てを賭けて、今この一瞬一瞬を悔いなく生きる あの時私はそう・・・心に誓いを立てたのだから・・・

 

蓮華の見つめる先には最愛の兄を捉え離さなかった

 

「言いそびれてしまってたよ おかえり 蓮華」

「ただいま 兄様!」

 

そう言葉を交わすや、蓮華は一刀の胸元へと遠慮なく飛び込んでいったのである

 

 

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「くっくっく お〜 お〜 お2人さん 水も滴るいい男っぷりだねぇ?」

 

隊長格、副長格の男が泳ぎ着いた先の船の縁から、顔をひょいと出しこうう言い放ったのだ

背丈は高くない、約4尺(120cm)ぐらい子供の部類に属するぐらいであろうか

 

少年と思しき人物に、面と向かってからかわれた物言いをされ、2人の男達の顔がみるみる険しさを増した 

舐めた口を聞くな! 殺すぞ? そんな声を発するのかと思いきや・・・ 男達2人はぶすっと黙ったままなのである

 

「そらっ このままじゃ風邪ひくだろ? 早くあがれ」

 

少年らしき人物はそうぶっきらぼうに言って、男たちが船へと上がるのを手伝うのであった

 

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「すぐで悪いが報告を聞こうか」

 

2人の男達を船へと引き上げ人心地ついた頃、少年はおもむろに言葉を口にした

 

「若 予想以上の強さでした 特に北郷一刀は、すでに人の域を超えた存在なのかもしれません」

「孫権も含めてですが、武将達も御使いに鍛えられ実力を引き上げられたのかもしれません」

 

隊長格、副長格の男が、先程まで見せていた険しい表情は消えうせ

少年のことを”若”と呼び、素直に自身の感想を述べていたのである

 

「ほう? お前達ほどの者がなぁ それほどだったのか?」

 

若と呼ばれた少年は、2人と視線を合わせるように屈み込んだ

 

「「我らの予想を遥かに超えておりました」」

 

寒さゆえか一刀の強さゆえなのかハッキリしないが、男2人はガタガタと震えながら答えたのであった

 

「ふむ・・・ ”俺の知っている北郷 一刀”とは、随分違うようだな ”アイツ”もそう言っていたようだが・・・

 荊州を奪う口実を与えてやろうと助力してやったのだが、いらぬお節介だったようだな」

 

若と呼ばれる人物は、2人から視線を逸らし呟きながら、少し考え込んでいる様子であった

 

「若 また大殿をそのような風に・・・」

「ほっとけ それより話を続けろ」

 

”アイツ”とは若と呼ばれる男の父親だったらしい その物言いを注意するものの・・・

若と呼ばれる少年は一向に気にする様子もなく、男に次の情報を話す様にと催促をする

 

「はい 若 孫呉はこの度の戦いで劉gを押さえたようで、それを口実として荊州全土を押さえる模様のようです」

 

孫呉が今後取る方針に関しては、ある程度の予測をつけていたのだろう

言葉の割りに余り驚きをもって捉えられていないようであった

 

「ほう? あくまでも正攻法でいくか なるほどな 奴らは本気でこの大陸を統べるつもりのようだな

 いいだろう まだまだ時期尚早だと考えていたが、お前達の報告で気が変った 我らもそろそろ本格的に動くとしよう

 それとアイツが言っていたのだが、筋肉達磨の変態2人が周囲を嗅ぎ回っている こちらの方も気をつけておけ」

 

「「筋肉達磨の変態? それも2人? 委細承知 ・・・それでは若!」」

 

男達は少年が指す筋肉達磨の変態というのが誰なのか?が全く理解できなかった為、聞きなおしてみるものの・・・

少年と筋肉達磨の変態との係わり合いなど、それ以上詳細を話すつもりはなかったようである

 

「ああ お前達も戦列に復帰しろ! 力こそ全てだ! さぁ 混沌の世の幕開けだ いくぞ!! 賈充 郭淮」

 

「「ハッ」」

 

若と呼ばれる少年の声が船内に大きく響き渡ると、2人の男達もそれに倣いかしこまった

漸く雌伏の時を抜け、蒼天を駆ける時がきたのだと、2人の体躯に気が満ちカッと熱くなっていくのが分った

 

隊長と呼ばれていた男、名を((賈充 公閭|かじゅう こうりょ))といい、副長の男は((郭淮 伯済|かくわい はくせい))という

2人の生き生きする視線は、不敵に哄笑する若と呼ばれる男へと熱く注がれるのであった

 

「((子元|・ ・))ちゃぁ〜〜〜〜ん どこぉ〜〜〜〜 置いてかないでよぉ〜〜〜」

 

そんな2人の男達の熱き視線が一瞬で凍りついた 当然の事ながら、哄笑していた若と呼ばれる少年の笑いも凍りついていた

 

「若・・・連れておいででしたので?」

「連れてきたとは人聞きが悪い・・・ いつものように勝手に着いてきたんだよ!」

 

賈充、郭淮と若と呼ばれる少年は、顔を突き合せ愚痴を呟き囁き合ったが

狭い船内で解決の糸口などあろうはずもない

 

賈充と郭淮の視線が、なにげに痛いと感じた若と呼ばれる少年は

声高に否定の言葉を口にしたのだが・・・ 時すでにお寿司・・・じゃなく遅し

 

「ああ ひっどぉ〜い ((子元|・ ・))ちゃん! ここにいたんだ いないから探したんだよ!」

 

物言いの文章だけなら、頭の弱い桃香ちゃんを連想させるのだが

声質がまったく甘ったるい感じではない むしろ冷たい感じなのであるが・・・全く伝わらないのが心苦しい所である

 

「ああ〜 分ったから大声だすな ((元姫|げんき))」

 

元姫が抱きついてきたことにより、耳元で大声を再生され、頭の中で元姫の声がゴォーーーンと鐘をついたかのように響き渡る

 

「・・・あら 貴方達いたの?」

「・・・先程復帰致しました」

「あっそ」

 

殺されかけさらに濡れ鼠となってまで情報を仕入れたというのにこの物言い・・・

ほんと若の事以外にはホントツレないねぇと、ツンデレ元姫ちゃんを冷静に分析する賈充と郭淮

 

「・・・あっ そうそう 子元ちゃん」

「なんだよぉ〜 恥ずかしいからそうくっつくな!」

「もう・・・ 子元ちゃんたら〜〜 照れちゃってこの〜」

 

この目の前で展開される夫婦善哉、木っ端恥ずかしいからどうにかしてくれと思う賈充と郭淮であった

 

「いつも思うが、若以外だと冷たさと素っ気無さが、一段と際立っているよな・・・」

「姫って、若とご家族以外全く興味ありませんからな〜」

 

「デレたらああなり・・・ 他にはツンだな 格差社会の典型例 厳しい世知辛い世の中だね〜」

 

賈充と郭淮の愚痴が炸裂するものの・・・ 当の本人である司馬師と王元姫に聞こえている筈もなく・・・

賈充と郭淮の愚痴は闇の中に葬り去られることとなる

 

今更説明するまでもないだろうが、若や子元ちゃんと呼ばれる人物

姓名を司馬師 字を子元という 文字通り、司馬懿仲達の息子であった

方や元姫と呼ばれる人物・・・王 元姫という子元の許婚である 

 

蓮華の誘拐未遂事件は、こうして未遂の形で幕を終えることとなる

しかし、こうして司馬一派の手が及んできた現在、孫呉の進む道筋はより混迷を増してきたようである

 

 

-6ページ-

 

 

孫呉陸軍 第2総軍の3分の1に当たる、約4800名の人数を長沙の防衛に回し、守将に楓、その補佐に紅を任命する

 

長沙の任命を終えるや、その後、各荊南地方を制圧すべく順次派兵していく

 

武陵には、祭が率いる孫呉陸軍 第2総軍の残り3分の2に当たる9500名の兵力を投入した

対して劉表側の武陵郡太守は、金旋という人物が守備する3千ほどの兵が、武陵城防衛の任に当たっていた

 

武陵に3千もの兵がいたのには訳があった もうご承知の方もいらっしゃるだろう

長沙から追い立てられた軍勢が混じっていたのである

 

「そぉ〜れ 全力でかかれい! 」

 

だがそんな人数などお構いなしに、祭は武陵城の包囲を終えると、猛然と襲い掛かるよう号令をかけたのである

祭の元気の良い号令に、意気軒昂な兵士達がこの機に功をあげようと、次々と武陵城壁へと梯子をかけ襲いかかっていく

 

「ひぃぃぃぃぃ 何なのだ あの下品なまでに強い女子はっはぁぁぁ〜〜〜〜〜」

 

祭は我慢できなかったのか 自身が率先して前線にて刀を振るって突撃を敢行していたのだ

 

攻撃側の大将に対して、防御側の太守がこれではどうしようもなかった 

長沙が落ち、次はこの武陵と聞いた金旋は、早々に篭城を決め込み長期戦に持ち込もうと企んでいた

 

しかし、いざ蓋を開けてみれば、どこからも援軍など来る筈もなく

祭率いる9500名もの軍勢に、一方的に押し込まれやられ放題な有様であった

 

「穏よ! ほれ お主も仕事をしてこんかいっ!」

 

「祭さま ひどいですぅ〜〜 穏はちゃんと仕事をしているじゃありませんかっ!」

 

やはり祭と穏とのコンビでの力関係は、祭の方が何枚も上手だったようである

すぐサボろうとする穏の尻を馬車馬の如く、後ろから容赦なく攻め立て蹴飛ばしていたのである

 

「ほりゃ! 何をごちゃごちゃ言っておるんじゃ! さっさと部隊を率いて落としてこんかい 馬鹿者!!

 そんなことでは、何時まで経っても城を落とせんではないかっ!!」

 

「ううぅぅ〜〜〜〜〜 なっなんでこんな無茶ぶりを仕出かす事にぃ〜

 やっやめ・・・むっ無理やり押し出すのは、ひっ卑怯ですよぉ〜〜〜〜〜 ひぃぃぃぃぃ〜〜〜〜」

 

穏の部隊が戦っている後ろから、祭の本隊がどんどんと部隊を展開させ、容赦なく押し上げてきたのである

 

「ほれほれ! 本隊はこのまま各城門を順次確保、穏の部隊はさっさと武陵城内へ入り各拠点を制圧せよっ!」

 

こうして穏は自身の意思に関係なく、祭に追い立てられて這う這うの体で、武陵城内へと侵入していったのである

穏にとっての話に限ってだが・・・ 楓とは随分違い、やはり祭とのコンビは相性最悪と、今度は心の中で愚痴る穏でありました

 

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零陵には、霞・高順が孫呉機動軍第1軍として、零部隊・約2800名を率い進軍を開始していた

対して劉表側の零陵郡太守は、劉度という人物が守備する5千にものぼる人数の軍勢であった

 

この人数を集められた理由は武陵と同じ ただ武陵より遠い分、動ける者がこちらに回されていたのである

 

「人数が我々より多いようですね どうします? 何か策はおありですかな 藍里殿?」

 

長沙城北門攻略時の軍師は紅であったが、紅は長沙守将の楓の補佐へと回った事もあり

代わりに藍里が軍師として随行していたのだった

 

「高順・・・ そこは指揮を任されとるう・ち・に、意見を聞く所やろがっ!!」

 

むきぃ〜〜〜〜と激昂する霞を他所に

高順は無視を決め込み、藍里へと笑顔を浮かべ、ささっどうぞ遠慮なくと先を促した

 

「はっはぁ〜 それでは具申いたしますと、劉度は我々より多い人数の兵数を擁しており

 篭城するより討って出てくる可能性が高いです」

 

ええっ 藍里ちゃんもうちを無視かいなっ とほほっ この軍の教育はどないなっとんねんっ!!!

霞は、詳細な策を説明している藍里や高順へと怒りを向ける事無く、居並ぶ周囲の者達へと憤懣をブツけ当り散らしている 

周囲に居並ぶ者達にとっては、なんとも迷惑この上ない霞の所業といえた

 

「ですから相手の行動を逆手にとって、思い切って部隊を2手に分けたいと思います

 本陣は相手と対陣しつつ、もう1隊は本陣左手にある森へと伏兵部隊を予め伏せておきます」

 

「ですがそれだと、相手に2手に分けたと見破られませんかな?」

 

高順は思い当たる当然の内容の質問を、藍里へとぶつけてみたのだった

 

「本陣に予め旗を多く挿して、兵数を偽装しておきますから、その心配はご無用かと存じます」

 

当然の事ながら、藍里としても高順の質問に関する事に関しては、きちんと対策を講じていた

 

「なるほど良い案かと承知致しました さすがは長年一刀殿の補佐を務めたお方ですね」

 

自身の質問くらいで揺るいでもらっては困るのだが、初めて藍里を軍師として迎え入れた以上

最低限信頼できるかどうかは、自分の目で確かめておかねば気が済まなかったのだろう

 

幸い藍里の言には、全くの揺ぎがみられなかったことから

これなら安心して任せられると踏んだ高順でありました

 

「藍里殿の策、お聞きになられておられましたでしょう? どちらになさいますかな?」

 

高順は隊長である霞へと話を振ってみるものの・・・ 

 

「うぅ〜〜〜ちぃ〜〜〜はぁ〜〜〜 おぉ〜〜やぁ〜〜すぅ〜〜みぃ〜〜やぁ〜〜でぇ〜〜〜〜」

 

本陣にある大机に顔を伏して寝そべり、霞は大いに不貞腐れていたのである

 

「お休みって・・・ 拗ねてないでちょっとはちゃんと答えてくださいよ? 

 答えないようなら・・・ そうですねぇ〜 私が伏兵隊を指揮し森へ展開させますよ? それでいいのですね?」

 

霞の気持ちを知ってか知らでか、高順は淡々と話を進めてくるのであった

 

「うぐっ・・・ なんでいっつも、美味しい方を取ろうとするんやっ! このぼけなす!」

 

霞の堪忍袋の尾が切れ、大机の地図に置かれていた碁石を、高順へと向けて思いっきり投げ捨てるが

高順は霞の行動に対し、何事もなかったかの如く、霞が投げた碁石を掴み取り、地図へとちゃんと戻したのである

 

「・・・という事のようですから 藍里殿 本陣にてよろしくお願いします」

 

こうして愚痴り合いながらも、最後はビタリと意見を合致させてしまう霞と高順

本当に不思議な間柄の2人だと、見ていて感心しきりの藍里であった

 

「あはは・・・ こっこちらこそ ところでお2人は・・・付き合っておられるのですか?」

 

「付き合っとるかいっっ!」

「・・・冗談はよしてください」

 

霞と高順の2人は、藍里の言を息を合わせて即否定し、同時に互いに顔を背けあう

 

これほど馬の合うお似合いの2人ですのに・・・ 

2人に交互に視線に移しながら、ただただ惜しいと思う藍里でありました

 

まぁ こうして息が合っているんだから、この2人の関係はこのままそっとしておくのが無難なのだろう 

そう心の中で思い込むことにした真面目な藍里さんでありました

 

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「それ! 今だ 皆突撃だ!」

 

劉度は藍里の予想通り、零陵に僅かの兵を残して

殆どの兵を引き連れ、夜陰に紛れて本陣を奇襲したのである

 

しかし、本陣に突撃した者達が中々出て来ない 漸く1人の兵が顔を出してきたと思ったら、顔が青ざめていたのだった

 

「どうした 何事だ?」

 

焦れた劉度は、青ざめた表情をした兵へと声をかける

 

「そっそれが・・・その〜 敵の本陣にへっ兵が1人もいませんっ!」

 

当初の藍里の作戦では、本陣にて迎え討つ作戦ではあったのだが

劉度が夜陰に紛れて来ることを事前に予期できた事から、急遽作戦を変更し

本陣に大量の篝火を焚いたまま、本陣をもぬけの空にしたのだった

 

勢い良く突撃した兵士としては、敵が1人もいないのだから、青ざめるのも無理からぬ事であった

 

「なっ!? それはどういう・・・」

 

劉度が再度聞こうとした言葉は、最後まで紡がれることはなかった

 

劉度達の耳に、すでに大きな地響きの大音量が周囲の暗闇から一斉に迫ってきたのだ

その恐怖たるや日中の比ではなかった

 

的確な時機に、左手の森から颯爽と飛び出す霞率いる別働隊は

劉度達が帰るべき零陵城の最短距離を駆け抜け、見事に封鎖し終えると・・・

今度は本陣の篝火で照らされている劉度本隊の最後方へと一気に迫るべく疾駆しだしたのであった

 

そして劉度本隊の前方からは、本陣から数間退いて静観していた高順率いる本隊が

こちらも、劉度本隊が空っぽの本陣へと突撃した時を見計らって、突撃を開始してきたのである

 

これが劉度本隊の周囲から、大音量の地響きが聞こえてきた理由であったのだ

 

こうなってはもはや、劉度本隊はイワシ玉と同じであった              ※イワシ玉=鰯の群れが防御の為に集まって作る

 

霞率いる別働隊と高順率いる本隊は、劉度本隊へあと一歩の所まで迫り来ると、途端に周囲を勢い良く旋回し出したのである

 

しかも、今回は間の悪いことに、野戦のみならず霞の軍のみの編成であり

他部隊との連携を気にする必要性も皆無と、暗闇であろうが、馬を扱わせれば孫呉でも右に出る部隊などいないのだ

 

劉度の優位点は兵の多さにあったのだが、藍里の策に嵌まってしまった時点で無に等しかったことから

今更劉度がいくらもがこうとも、敵う道理などなかったのである

 

そうしている内にも、イワシ玉と化した劉度本隊は

敏捷性優れる鯱やイルカといった位置づけの霞の隊、高順の隊に、次々と縦横無尽に斬り込まれ軍はたちまち大混乱となった

 

劉度が頭を抱え、部下へと泣き喚き、何かを叫んでいる間に

軍を四分五裂に崩され、朝を迎えることなくあっけない幕切れとなったのである

 

この戦いでの霞率いる孫呉機動軍・零部隊の死傷者数が0という、終わってみれば完勝という内容であった・・・ 

 

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桂陽には、珊瑚・子虎・桜が孫呉機動軍第2軍として、約6800名を率い進軍させる

対して劉表側の桂陽郡太守は、趙範という人物が守備する、500名にも満たない少数の軍勢であった

 

桂陽郡太守である趙範が早々に降伏を申し出て、城門を開け放ち恭順を示す一方で

自身も城外へと出て、珊瑚の前にて頭を垂れ拱手したのであるが・・・

 

「がるるぅぅぅーーーーーーーー」

「ガルルゥゥゥーーーーーーーー」

 

孫呉機動軍第2軍を指揮している珊瑚と相棒の((狼|ラン))の唸り声に他ならない 

この孫呉側の対応に、さすがの桂陽郡太守である趙範も、冷や汗をダラダラと流しながら困惑を隠しきれないのでありました

 

では何故この主従が、降伏を申し出た趙範に対し、唸り声をあげ続けているのか?

 

従っている将で、桜は一騎打ち、子虎は前半戦、一刀に付き従った後半戦と、それなりに手柄をあげていたのである

自身はというと・・・ 今の今まで全くの手柄をあげていないからであった

 

このままでは・・・と手柄がないので焦る珊瑚と

一刀から貰える追加褒章のお肉がないっ! 狼にとっては長として仲間に振舞う大事な行事だったりする

・・・という個人的理由で主従は唸っていたのである

 

そんな個人的事情を、桂陽郡太守である趙範が知る筈もなく・・・

ただただ、額から流れ出る汗を必死に拭いつつ、黙って見詰め合っているのである

一種異様な光景であるといえた

 

そんな個人的な事情での睨みあいも長く続く筈もなく・・・

 

「こら珊瑚殿! 太守殿の出迎えもあるというのに、主従して唸っているのは失礼でござろう!」

「あうっ! ガゥ!」

 

桜の拳骨が容赦なく睨み合う主従に炸裂したのである

 

「珊瑚 狼 何やってるんだよ〜 大将なんだからシャキッとしろよ〜〜」

 

と子虎がうな垂れる珊瑚と狼を引き締めると同時に

 

「本当に申し訳ござらん 先の長沙戦で気が立っておるのでござる

 それにしても花が咲き乱れ、誠に綺麗でござるなぁ〜」

 

と桂陽郡太守である趙範に、何故か頭をぺこぺこと下げ、言葉巧みに誤魔化し出す桜に

率いられてきた孫呉の兵達は、その様子が可笑しくて一斉に噴出し笑い出したのである

 

そうした問題?もあるにはあったのだが、誰一人死傷者を出すことなく、無事に桂陽郡を奪取することに成功したのであった

 

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この長沙の戦いでの孫呉側の死者は僅かに138名

重軽傷者が約1000名あまりと多いものの、その殆どがすぐにでも動ける者達であった

 

対して劉表側の損害のほとんどが、最後の激戦と撤退戦にて被っていた

その被害は半数近くに当たる、約2400人もの大量の死傷者を出しながら、武陵を経由して江陵へと撤退していったのである

 

堅城と名高い長沙城を、力押しで制した激しい戦いがあったにも関わらず

孫呉側の損害は劉表側と比べても軽微といえ、もはや奇跡的な数値であるといえた

 

それから荊州の各地方へと散っていた者達の損害は、それよりさらに微々たる損害であり

占領し終えた時には、全ての派遣した地で、当初編成した軍勢より人数が、圧倒的に増えていたという

 

大陸の安寧をもたらす第1歩として、広大で肥沃な荊南地方を、劉表軍から紆余曲折を経て大きく切り取ってみせた

この度の戦いで、司馬一族との戦いはもはや不可避となっていた

 

荊南を制した孫呉の次なる目標は、荊北の襄陽か?それとも袁術が拠を構える寿春へと照準を向けるのか

今後の動きは益々激しくなることが予測され、孫呉の大陸安寧へと向けた取り組みは道半ばで、まだまだ前途多難であるようだ

 

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●『真・恋姫†無双 − 真月譚・魏志倭人伝 −』を執筆中

 

※本作品は【お気に入り登録者様限定】【きまぐれ更新】となっておりますので、ご注意を

人物設定などのサンプル、詳細を http://www.tinami.com/view/604916 にて用意致しております

 

上記を御参照になられ御納得された上で、右上部にありますお気に入り追加ボタンを押し、御登録のお手続きを完了してくださいませ

お手数をおかけ致しまして申し訳ありませんが、何卒ご了承くださいますよう、よろしくお願いいたします<(_ _)>

 

■■■【オリジナル人物紹介】■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 ○孫堅 文台 真名は緋蓮(ヒレン) 

 

  春秋時代の兵家・孫武の子孫を称し、各地で起こった主導権争いに介入し

  『江東の虎』の異名で各地の豪族を震撼させた

  優秀な人材を率い転戦、やがて軍閥化し孫家の基礎を築いた

 

  容姿:髪は桃色で、孫家独特の狂戦士(バーサーカーモード)になると、右目が赤色に変化するのが特徴で、平時は量目とも碧眼である

  祭と同じく胸が豊満で背は祭より高い 体格は祭よりすこし大きい 顔立ちは蓮華というより雪蓮に似ているだろうか

 

 ○張紘 子綱 真名は紅(コウ) 

 

  呉国の軍師の一人で主に外交を担当。 魏の程c(風)の呉版と考えていただけると理解しやすいだろう

   『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の張氏の出 雪蓮直々に出向き、姉の張昭と共に臣に迎え入れられる

  張昭と共に『江東の二張』と称される賢人

 

  ※史実では、呉郡の四性でも張昭と兄弟でもありませんのでお間違い無きように。。。 

   呉郡の四性の中で張温しか見当たらなかった為、雪月の”脳内設定”です

 

  容姿は青眼で背丈は冥琳より少し低い 顔は姉の王林とは似ておらず童顔で人に安心感を与える顔立ちである

  髪は腰にまで届こうかという長く艶やかに保った黒髪を束ね、ポニーテールと呼ばれる髪型にしている事が多いが

  その日の気分により、長髪を肩辺りで束ね胸の前に垂らしている場合もあるようである

  服装は藍色を基調とした西洋風ドレスを身を纏っている

 

 ○魯粛 子敬 真名は琥珀(コハク)

 

  普段は思慮深く人当りも良い娘で、政略的思考を得意とし、商人ネットワークを駆使し情報収集・謀略を行う

  発明に携わる時、人格と言葉遣いが変化し、人格は燃える闘魂?状態、言葉遣いは関西弁?風の暑苦しい人に変化する

  このことから「魯家の狂娘・後に発明の鬼娘」と噂される

 

  ※穏(陸遜)は本をトリガーとして発情しちゃいますが、、琥珀(魯粛)は発明に燃えると・・・燃える闘魂に変身って感じです

 

  容姿は真名と同じく琥珀色の瞳をもち、髪は黒で肌は褐色がかっており月氏の特徴に似通っている

  背は明命と同じくらいで、服装は赤を基調としたチャイナドレスを身に纏っている

 

 ○張昭 子布 真名は王林(オウリン) 

 

  呉国の軍師の一人で主に内政を担当。 冥琳とはライバル同士で互いに意識する間柄である

   『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の張氏の出 雪蓮直々に出向き、妹の紅(張紘)と共に臣に迎え入れられる

  張紘と共に『江東の二張』と称される賢人

 

  妹の紅は「人情の機微を捉える」に対して「政(まつりごと)の機微を捉える」という感じでしょうか

 

  容姿は冥琳より少し高めで、紅と姉妹でありながら顔立ちが似ておらず、冥琳と姉妹と言われた方がピッタリの美人系の顔立ちである

  眼鏡は使用しておらず、服装は文官服やチャイナドレスを着用せず、珍しい”青眼”でこの眼が妹の紅と同じな事から

  姉妹と認識されている節もある 紫色を基調とした妹の紅と同じ西洋風のドレスを身を纏っている

 

 ○程普 徳謀 真名は楓(カエデ)

 

  緋蓮旗揚げ時よりの古参武将であり、祭と並ぶ呉の柱石の一人 「鉄脊蛇矛」を愛用武器に戦場を駆け抜ける猛将としても有名

  祭ほどの華々しい戦果はないが、”いぶし銀”と評するに値する数々の孫呉の窮地を救う働きをする

  部下達からは”程公”ならぬ『程嬢』と呼ばれる愛称で皆から慕われている

 

  真名は・・・素案を考えていた時に見ていた、某アニメの魅力的な師匠から一字拝借致しました・・・

 

  容姿は祭と同じくらいの背丈で、端正な顔立ちと豊かな青髪をうなじ辺りでリボンで括っている

  均整のとれた体格であるが胸は祭とは違いそこそこ・・・ちょっと惜しい残念さんである

 

 ○凌統 公績 真名は瑠璃(ルリ) 

 

  荊州での孫呉崩壊時(※外伝『砂上の楼閣』)に親衛隊・副長であった父・凌操を亡くし、贈った鈴をもった仇がいると

  知った凌統は、甘寧に対して仇討ちを試みるものの・・・敵わず返り討ちにあう間際に、一刀に救われ拾われることとなる

  以来、父の面影をもった一刀と母に対してだけは心を許すものの・・・未だ、父の死の傷を心に負ったまま

  呉の三羽烏の一人として日々を暮らしている

 

  容姿はポニーテールに短く纏めた栗色の髪を靡かせて、山吹色を基調とした服に身を包んでいる小柄な少女

  (背丈は朱里や雛里と同じくらい)武器は不撓不屈(直刀)真名の由来で目が瑠璃色という裏設定もございます

 

  ○朱桓 休穆 真名は珊瑚(サンゴ)

 

  『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の朱氏の一族

  槍術の腕を買われ、楓の指揮下にいた 一刀の部隊編成召集時に選抜された中から、一刀に隊長に抜擢された『呉の三羽烏』の一人

  部隊内では『忠犬・珊瑚』の異名がある程、一刀の命令には”絶対”で元気に明るく忠実に仕事をこなす

 

  容姿:亞莎と同じくらいの背丈で、黒褐色の瞳に端正な顔立ちであり黒髪のセミロング 人懐っこい柴犬を思わせる雰囲気をもつ  

  胸に関しては豊満で、体格が似ている為よく明命から胸の事で敵視されている  

 

  ○徐盛 文嚮 真名は子虎(コトラ)

 

  弓術の腕を買われ、祭の指揮下にいた 一刀の部隊編成召集時に選抜された中から、一刀に隊長に抜擢された『呉の三羽烏』の一人

  『人生気楽・極楽』をモットーにする適当な性格であったが

  一刀と他隊長である珊瑚と瑠璃・隊長としての責に接していく上で徐々に頭角を現し

  後に部隊内では『猛虎』と異名される美丈夫に成長を遂げていくこととなる 

 

  容姿:思春と同じくらいの背丈で黒髪のショートヘア 体格も思春とほぼ同じく、遠めからでは瓜二つである 

  二人の区別の仕方は髪の色である(所属部隊兵談) またしなやかな動きを得意としている為、思春の弓バージョンと言える 

 

  ○諸葛瑾 子瑜 真名は藍里(アイリ)

 

  朱里の姉 実力にバラツキがあった為、水鏡から”猫”と称される

  その後、水鏡と再会時に”猫”が変じて”獅子”になりましたわねと再評価される

  天の御遣いの噂を聞きつけた藍里が冥琳の元を訪れ、内政・軍事・外交とそつなくこなす為

  未熟であった一刀の補佐にと転属させられる 

 

  初期には転属させられた事に不満であったが、一刀に触れ与えられる仕事をこなす内に((蟠|わだかま))りも消え

  一刀に絶大な信頼を寄せるようになる

  後に亞莎が専属軍師につくと、藍里の内政面への寄与が重要視される中で、藍里の器用な才を愛し、軍師としても積極的に起用している

 

  容姿は朱里より頭一つ高いくらい 茶髪で腰まであるツインドテール 朱里とよく似た童顔でありながらおっとりした感じである

  服装に関しては赤の文官服を着用しており、胸は朱里と違い出ている為、朱里とは違うのだよ 朱里とは・・・

  と言われているようで切なくなるようである(妹・朱里談)  

 

  ○太史慈 子義 真名を桜(サクラ)

 

  能力を開放しない雪蓮と一騎打ちで互角に闘った猛者  桜の加入により瑠璃が一刀専属の斥候隊長に昇格し

  騎馬弓隊を任されることとなった(弩弓隊・隊長 瑠璃→子虎、騎馬弓隊・隊長 子虎→桜に変更)

  本来の得物は弓で、腕前は祭を凌ぎ、一矢放てば蜀の紫苑と互角、多矢を同時に放てば秋蘭と互角という

  両者の良い処をとった万能型である

 

  武器:弓 不惜身命

  特に母孝行は故郷青州でも有名であり、建業の役人街が完成した際に一刀の薦めもあって一緒に迎えに行く

  隊長として挨拶した一刀であったが、桜の母はその際に一刀をいたく気に入り、是非、桜の婿にと頼み込む程であった

   

  容姿はぼん・きゅ・ぼんと世の女性がうらやむような理想の体型でありながら身長が瑠璃ぐらいという美少女系女子

  眼はブラウン(濃褐色)であり、肩下までの黒髪 気合を入れる時には、白い帯でポニーテールに纏める

  一刀の上下を気に入り、自身用に裁縫し作ってしまう程の手先の器用さもみせる

 

  真剣に話している時にはござる口調であるが、時折噛んだりして、ごじゃる口調が混ざるようである

  一時期噛む頻度が多く、話すのを控えてしまったのを不憫に思った為

  仲間内で口調を指摘したり笑ったりする者は、自然といなくなったようである

 

 ○高順

 

  「陥陣営」の異名をもつ無口で実直、百戦錬磨の青年 

  以前は恋の副将であったのだが、恋の虎牢関撤退の折、霞との友誼、命を慮って副将の高順を霞に付けた

  高順は恋の言いつけを堅く守り続け、以後昇進の話も全て断り、その生涯を通し霞の副将格に拘り続けた

 

 ○馬騰 寿成 真名を翡翠(ヒスイ)

 

  緋蓮と因縁浅からぬ仲 それもその筈で過去に韓遂の乱で応援に駆けつけた呉公に一目惚れし

  緋蓮から奪おうと迫り殺りあった経緯がある

 

  この時、緋蓮は韓遂の傭兵だった華雄にも、何度と絡まれる因縁もオマケで洩れなくついて回ることとなるのだが・・・  

  正直な処、緋蓮としては馬騰との事が気がかりで、ムシャクシャした気持ちを華雄を散々に打ちのめして

  気分を晴らしていた経緯もあったのだが・・・当の本人は、当時の気持ちをすっかり忘れてしまっているが

 

  この事情を孫呉の皆が仮に知っていたのならば、きっと華雄に絡まれる緋蓮の事を自業自得と言いきったことだろう・・・

 

 

 ○孫紹 伯畿 真名を偲蓮(しれん

 

  一刀と雪蓮の間に生まれた長女で、真名の由来は、心を強く持つ=折れない心という意味あいを持つ『偲』

  ”人”を”思”いやる心を常に持ち続けて欲しい、持つ大人へと成長して欲しいと2人が強く願い名付けられた

  また、偲という漢字には、1に倦まず休まず努力すること、2に賢い、思慮深い、才知があるという意味もある

 

  緋蓮、珊瑚、狼をお供に従え?呉中を旅した各地で、大陸版・水戸黄門ならぬ

  ”偲”が変じて”江東の獅子姫様”と呼ばれる

 

 

 ○青(アオ)

  白蓮から譲り受けた青鹿毛の牝馬の名前 

 

  白蓮から譲られる前から非常に気位が高いので、一刀以外の騎乗を誰1人として認めない 

  他人が乗ろうとしたりすれば、容赦なく暴れ振り落とすし蹴飛ばす、手綱を引っ張ろうとも梃子でも動かない

  食事ですら・・・一刀が用意したモノでないと、いつまで経っても食事をしようとすらしないほどの一刀好き

 

  雪蓮とは馬と人という種族を超え、一刀を巡るライバル同士の関係にある模様

 

 ○狼(ラン)

  珊瑚の相棒の狼 銀色の毛並みと狼と思えぬ大きな体躯であるが

  子供が大好きでお腹を見せたり乗せたりする狼犬と化す

 

 

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-8ページ-

 

【あとがき】

 

 

常連の読者の皆様、お初の皆様 こんばんは 雪月でございます

いつも大変お世話になっております

 

皆様この度のお話いかがでございましたでしょうか?

 

この度の話で長沙並びに荊南地方制圧が完了いたしました

 

振り返ってみますと、もっと短く纏めるつもりだったのですが

やはりどんどんと書きたいことが多くなり長くなってしまいました

 

長沙編全般に関する感想なども受け付けておりますので、よかったらご感想のカキコよろしくお願い致します<(_ _)>

 

また今後の予定につきましても、前話にも書きしました通りでございまして

次回は新しい内容へと移る前にキリもよいので、魏志倭人伝の4話めをUPする予定でおります

 

お気に入り登録者でいられない皆様には、申し訳ないのですが、1週お休みの後、新しいお話へと突入する予定でいます

今しばらくの間、お待ち戴けます様、よろしくお願い致します

 

これからも、皆様の忌憚のない御意見・御感想、ご要望、なんでしたらご批判でも!と何でも結構です

今後の制作の糧にすべく、コメント等で皆様のご意見を是非ともお聞かせ下さいませ 

 

それでは完結の日を目指して、次回更新まで(*´∇`)ノシ マタネ〜♪

説明
常連の皆様&お初の方もこんばんは いつもお世話になっております

この作品は真・恋姫†無双・恋姫†無双の2次創作となっております
主人公は北郷一刀 メインヒロインは雪蓮と蓮華と仲間達でお送りしております
※猶、一刀君はチート仕様の為、嫌いな方はご注意を! ※オリキャラ紹介は本文下記参照のこと

長沙城包囲戦の最中攫われた蓮華を無事奪い返す事ができるのだろうか?
また、蓮華を攫った人物達の正体とは!?

そして荊南を巡る戦いにも、漸く決着の時が刻一刻と迫りくる
それぞれの地方を制する戦いもまた開幕の時を迎えるのであった

それでは心の赴くままに・・・ 作品を心行くまでゆるりとご堪能くださいませ どうぞ!
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コメント
>以後も皆様からのご意見・ご感想・ご批判などなど、何でも結構ですので、お気軽にカキコくださいませ またいつもご支援ボタンを押し、ツイートしてくださる皆様、心より感謝申し上げます&lt;(_ _)&gt;(雪月)
>観珪様 この度も瑠璃のボーナスステージをお楽しみ戴けましたようで(笑 そうですね 一時の休息、安寧といった所です いずれ物語の真相、裏面を明かす時が来るでしょうが、ご指摘戴きました通り、司馬懿勢力とは今後ガチバトルに展開する事でしょう(雪月)
>たっつー様 祭さん>穏という力関係を分って戴くには格好の・・・(ゲフンゲフン 霞の場合、もう修整不可能でしょう 高順さんも諦めて受け入れているようですし、そういう人間味溢れた霞だからこそ、高順以下勢力が変わった今でも尚、従い着いてきているのでしょう(雪月)
>下記続き 合う、合わない、面白い、面白くないという感情は、個人それぞれ皆さんの中で持っていらっしゃるでしょう 私が窺い知る事は中々難しい点でして、賛否のご指摘戴ける事は、今後の話を展開していく上におきまして、本当に為になります 制作者として譲れぬ部分、修整出来ない部分もあるとは思いますが、今後ともよろしくお願い致します&lt;(_ _)&gt;(雪月)
>禁玉⇒金球様 そうですね 皆様からの御指摘がございましたように、司馬懿に絡める事情もありましたので、単に『隊長格の男、副長格の男』という括りでした 使用した名前に関しましては、三国志に興味を持つ皆様にとっては、今更私が語るまでもないと思います 皆様が制作している作品とは違う作品を作りたいという想いは持ち続けております(雪月)
>h995様 前者の突っ込みに関しましてはこちらの『意図的』にですね 武陵郡太守につきましては、本編や逸話を使用したお話ではありませんので、正史、演技という括りでは考えておりませんでした ただ誰かな?ってぐぐって一番上にいたので、そのまま説明文すら読まずに名前を使用してしまいました こちらの完全なるミスでして、御指摘戴きましてありがとうございます すぐ修整させて戴きました(雪月)
>naku様 負の側面はありますが、生きるための手段ですからねぇ〜 口は災いの元といった所でしょうか え!?変ってない・・・(汗 え〜〜〜〜〜仕事は出来るんじゃないですかね? あはは・・・(滝汗(雪月)
>naku様、h995様、禁玉⇒金球様、たっつー様、観珪様 感想・ご指摘カキコいつもありがとうございます&lt;(_ _)&gt;(雪月)
とりま瑠璃ちゃんのなでなでシーンを想像してニマニマしてましたww これにてひとまずは平穏が訪れたんでしょうけども、司馬家とは確執が深まるばかりですねー(神余 雛)
傍目に変態の男と少女のコンビに吹いた。小物どころかかなり有能だった密偵部隊の皆さんに敬意を払います。作者様の独特/独自の解釈と展開の恋姫作品は楽しくて良いですね、あまり細かすぎる点は拘らずに執筆して頂いて結構ですよー。(禁玉⇒金球)
王元姫の旦那は子元でなく子上だ、というツッコミ所もありますが、それ以上にツッコミ所が武陵郡太守にありました。この物語では演義のみの架空の人物の「鞏志」となっていますが、それでは史実・演義の双方で彼の上司にして太守だった金旋は一体どうしたのでしょう?(h995)
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