超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 プラネテューヌ編
[全1ページ]

ーーー世界は掻くも美しい、しかし同時に残酷だ。

 

ーーー僕はあの日々に戻りたい。

 

ーーー僕はあの結末を求めない。

 

ーーー始まりに立つ前に何度も終わりを刻もう

 

ーーー幾千の時を幾万の嘆きを幾億の屍を越え

 

ーーーもう一度、彼女と会う為に

 

 

 

 

それは、少し時間を遡る。ネプテューヌ達の健闘によって封印された((魂動兵|ソウル・マキナ・ソルジャー))を前に空とポチの姿があった。

 

「テケリ・リ?」『どうでしょうか?』

 

「うーん……」

 

従者の問いに空は難しい顔で唸りながら、地獄に囚われた悪鬼が現世を恨むように体を浮き上がらせようとしている姿の((魂動兵|ソウル・マキナ・ソルジャー))を見つめていた。空の手の中には鎖で繋がれていた懐中時計の((左回りをしようとする針|・・・・・・・・・・・))が抑制されているように動かない。

 

「ダメだ。僕の持っているド・マリニーの時計より上位時間制御兵装を使われていて、時間制御が出来ない」

 

はぁと空は深いため息を吐いて懐中時計を後ろにいたポチに放り投げた。視界から入っていないままの投擲は、寸前歪まずポチの掌に落ちた。封印されし氷像に背を向けて歩き出す。それに追うように後からポチが足を進める。

 

『待ってください』

 

それを((魂動兵|ソウル・マキナ・ソルジャー))の氷像をバックに置かれた祭壇に設置されたゲイムキャラが静止を命じた。空は足を止めて無言で悩んでいるのか、それとも面倒だと思っているのか、手で頭を掻いた。ポチは空の少し後ろの所で主の決定を待っているように足を停止した。

 

『この世界の支配者よ。私には貴方が分かりません』

 

「……何が?」

 

背を向けたまま、顔を横にずらしてゲイムキャラを視る。細く閉じられ微かに除く銀眼の視線は確かにゲイムキャラだけに向けられていた。体もない器に閉じ込められたゲイムキャラには空の眼光がまるで死神が持つ鎌の刃が放つ冷徹な光に見えた。到底、((自分たちを生み出した存在|・・・・・・・・・・・・))に向けられる物ではなかった。その双眸に映るのは鬱陶しさ、後悔、怒りーーー。

 

『貴方は女神を使い、人を使い、モンスターを使い、何がしたいのですか?』

 

「………」

 

『異常なまでに秩序を固執するように見えて、やっていることはまるで自分の手を汚さない卑劣な殺戮。平和に冷笑し、混沌を破壊する。なのに災いを操作する貴方は私達からは矛盾しているように見えます』

 

目の前にいる畜生は、この世界の裏にある人の負が集い、モンスターの誕生の地の管理者。ゲイムキャラ自身は、夜天 空が理解できない存在で居た。人間や女神の様な肉体という器がない存在。そして女神のもしもの事態が起きた際に秩序と循環を司る存在であること、それがこの世で初めて光を受け|造物主《空》から伝えられたことだった。ゲイムキャラ自身も生まれた存在価値を理解してこれを遣り甲斐と感じているからこそ、分からない。目の前の存在はあっさりと破壊して、あっさりと創造するまるで赤子が遊ぶ積木のように世界を扱っているのだ。

 

『狂気を感じるほど貴方が固執していたこの世界。七万年前突如今までの摂理を破壊したこの世界。モンスターだけではなく、女神を操り、人間を家畜のように裏から操作していた暴君が一体どうして、こうも柔らかくなった経緯は知りませんが、これ以上の好き勝手は許しません』

 

「それで?」

 

『貴方の言葉がゲイムギョウ界にとって害と見做した場合、ロボットが勝手に暴れる事になります』

 

真意が見えない。世界の味方と自称するが、やっていることは人々の負を煽り、女神を翻弄することばかり、絶妙なバランスで保たれている人の女神のモンスターがいつ何かの拍子でどちらかに傾けばそれこそ、秩序と循環は木端微塵に破壊されてしまう。それはゲイムキャラが最も恐れる事。造物主はゲイムキャラと立ち位置が対極であるが故にゲイムキャラ視点からの論理とこの世界の結末やあらゆる悲劇と喜劇を知っている目の前の存在を理解することは到底できない。非常識の存在を理解しろと言っているようなものだ。

 

「それは不味いね」

 

黄金の髪が舞い、漸く空はゲイムキャラと対面した。限定的とは言え『旧神の鍵・儀典』を三回使用し、更に強制発動で因果操作をした代償に空自身の体がボロボロになっている。更に犯罪神との戦いで消耗しているこの体では、初めて紅夜と会った時の半分の力も出せない。空の体は限界に近かった。それも押せば倒れる程に。|封鎖術式展開《グレイプニール》を一つでも解除されば全く話は別になるが、その場合は全く異なる次元からの介入時のみに使用すると決めている。決して自身の体調不良如きで楽になろう空は考えもしない。

 

しかし、ラステイション時に何をトチ狂ったのか『大いなるクトゥルフ』を召喚しようする紅夜に殴り込みに行ったが少し遅く『影』が召喚されておりそれを撃退するために最大火力で一気に散滅したり、リーンボックスでは邪神の中の長である神の力を借り一時的に不完全とは言え((魔龍|ジェノサイド・ドライブ))を使用した精神的に不安定であった紅夜を何とかネプテューヌ等の協力によってなんとか鎮圧したり、果てはルウィーでの犯罪神『マジェコンヌ』を倒したり。空は思い出しただけで深いため息を吐き出した。絶対に可笑しい。なんで大陸渡るごとにラスボス級な相手をしているのかと。しかしーーー。

 

「だからどうしたって話なんだけど?」

 

空からすれば人間はプログラム、女神はハード、モンスターはバグのような物だ。デバック作業は決して終わらない。人間という不完全なプログラムがバクを永遠と増やさせ、いつかハードの処理限界が訪れるその終焉も慣れた。しかし、自身はゲイムキョウ界だけの味方であることを決めている空にとっては至って些細な問題だ。目の前のゲイムキャラもそう、大事なことはゲイムキュウ界の寿命をどこまで長く出来るかが課題だ。

 

『………』

 

「そんなことを言っても、外面的に僕の事を知っている賢い君なら分かっていると思うけど?例え、頭潰されても、体中触手とかで蝕まれても死なない僕にそんなことを聞いてところでやることは決まっている」

 

だからこそ、ゲイムキャラの脅しを空は軽く流す。告白してしまえば、今の空に((魂動兵|ソウル・マキナ・ソルジャー))に勝てる程回復はしていない。もし、ゲイムキャラが封印を解けば、空はあっという間に倒れるだろう。しかし、勝負する必要もない。この場には空だけでなく空の従者であるポチもいる。ポチ自身も犯罪神との戦いで消耗しているが、空と共に逃げ切れるだけの余力はある。

 

ゲイムキャラにもし口があれば歯を鳴らしている状態だろう。結局の所、どれだけ唱えても空は止める物はいないのだ。また、全ては繰り返されるのだ。人の負を煽り生み出したモンスターが人を蹂躙し、女神がそれを討伐して人々は女神を信仰し続ける。そんな、誰から見ても聞いても憧れる様な正義の物語が。

 

『……何が欲しいのですか?』

 

そして改めて考え、はっとゲイムキャラは思い浮かんだ質問を空に聞いた。彼の作り出す偽りの秩序と正常な混沌。それについて理解は出来ないまま出るが、これだけのことをしても空自身は得したことをしていない。富を権力も女も何一つ空自身が欲のままに動いた事はなかった。そうまるで空はーーー何かを待っているように感じられた。

 

「−−−−キヒッ」

 

『ーーー!?』

 

ゲイムキャラの思考が止まる。それほどまでに笑みを浮かべた空が恐ろしい以外、何物でもなかった。既に目と鼻の先には覗き込むようにしてこちらを見る空の姿。満身創痍とは思えない動き、認識できない速さで移動したのか、妖しい銀の双眸が狂気を物語る。

 

「地雷って踏んじゃダメなんだよ?せっかくネプテューヌが主人公っぷりを発揮してヘタレなブランが決めてみんなハッピーエンドでいいじゃないないかなのにどうしてずげずげと入ってくるんだよ?死ぬの?壊されたいの?砕かれたいの?消されたいの?ダメじゃないか僕は仕事に出来るだけ私情はいれたくないんだよここでお前が居なくなってしまえば困るみんな困る僕が困る黙ってろ口を閉じろ干渉するなお前に理解してほしいなんて一滴も思っていない憎むなら怨むなら怒るのならどうぞご自由に正直な所なんだけど僕にとってゲイムギョウ界は子宮なんだよ大切な人を生むだけのだから守らないといけないの朽ちてもらっても困るのだから無理やりでも寿命を延ばす可能性が導き出すその時までひたすらモンスターも人間も女神を回帰して『ご主人様』………ん、ごめん落ち着いた」

 

人とは思えない肺活量で淡々と呪うように吐き出される思いにゲイムキャラの器であるディスクが震える。恐ろしい恐ろしい恐ろしい。並のモンスターであるのなら簡単に喰われるほどの負の瘴気を放ちながら語られる言霊の相手がゲイムキャラでなければ恐ろしいことになっていただろう。闇に落ちていく光を繋げるような鋭いポチの声に空は止まり、自身を落ち着かせる様にゆっくりと深呼吸をしてゲイムキャラからな放たれた。

 

「…ごめん」

 

「テケリ・リ」『いえ、これも従者の役目なので』

 

「あはは、情緒不安定な主でごめん」

 

「テケリ・リ」『二度も謝らなくても結構ですよ。貴方の示す道が外れないように支えるのが私の役目です』

 

空は自身の胸に手を置く。人間いう心臓と言える器官がないのでただ冷たい。作ろうと思えばいくらでも作れるが、それは同時に急所を作れという意味であり、自ら弱点を作る気はない。

 

最早語ることないと空とポチは歩き出す。それを黙って見送ることしか出来ないゲイムキャラ。二人が闇に消えるその時、ふと空の声が空間に響く。

 

 

 

 

 

『最低な、奴だよ。僕は、結局、ただ一人の女神と、会う為に、全てを糧にする奴だ』

 

 

 

これからも続けていくための自分にも言い聞かせるような、そんな悲しい声がゲイムキャラに伝えられる。

 

 

『……どこまでも、醜い人間の様なお方ですね』

 

それにゲイムキャラは子供を寝かしつける子守唄のような優しげな声でゆっくりと封印に力を注ぐ作業を集中した。

 

 

 

 

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超次元ゲイムネプテューヌ 遂に最終章突入! 

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