超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 プラネテューヌ編
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『皆さん−−−お久しぶりですね。』

 

そう幼くも意思の強い声が頭に響く。念話の類だろう。

空によって渡された最後の鍵の欠片によって遂に揃った四つの欠片を組み合わせた時にネプテューヌに鍵の欠片を収集を頼み、行方不明であったプラネテューヌの教祖イストワールだ。

ブランと共に(妙に距離を空けられていた)協会本部に戻った俺達は全員同じ部屋にいた。まだ、ロボット戦で所々に巻いた包帯が痛々しいが、本人は特に苦しそうな顔をしていないので安心した。

 

「本当に久しぶりね。先生と呼んだ方がいいかしら?」

 

『何千年前の話ですか?貴方達は私の元を卒業した立派な女神です。まぁ、ネプテューヌさんはちょっと別でしたけど』

 

「ふふ、私達の中ではチャランポランでしたわね」

 

ネプテューヌは記憶がないので頭を傾げているがなんか納得。それにしても、もっともおっさんのような貫禄ある姿を予想していたが声的にロムちゃんやラムちゃんよりちょっと年上って感じな声だ。とは言え、ノワールが言っていたが先生か……。

 

「私だけ記憶がないのは不公平だよー!」

 

『安心してください。ネプテューヌさんは記憶があってもなくてもあまり変わりませんから』

 

「なんだっ―!?」

 

さらりと毒舌を吐くイストワールにコントのツッコミのように返すネプテューヌ。女神と教祖に距離が近かったのか仲はいいとと感じる。ベールやブラン尊敬するようにイストワールに色々と話している。アイエフもコンパも話に混じっている。暫くすると満足したのか、イストワールはそろそろ本題に入りますねと言い俺に意識が集まった。姿が見えないのに、見られている感覚がある。

 

『初めまして、今代のブラッディハード』

 

呼吸が止まる。まるで喉を締めつけられているような気迫が声に乗せられていた。

 

『今までのブラッディハードとは違って理性と判断能力に優れた知己的のようですね。良かったです』

 

「……その口調だと今までのブラッディハードはかなり乱暴だったということか?」

 

『皆さんが知っているか知りませんがはっきりとここで明らかにさせてもらいます。ブラッディハードはモンスターを統べる王であると同時に神。その気になれば冥獄界から数多のモンスターを召喚し操作して、人々の絶望を煽り己が殺戮衝動のまま暴れる紅き魔神です』

 

誰もが息を呑んだ。俺は不思議なぐらいに納得できた。一番最初にブラッディハードになった時、俺は知らない誰かの『意識』と混雑して俺が俺じゃなくなっていた。『混沌』に触れ飲まれた時は違う。色んな意思が叫びが怨嗟となり、生き者を否定するあの憎悪。モンスターが負の集合体であるなら、それを凌駕する負を使えば操作することも可能なんだろう。

 

『(確かにこんな憎悪、よっぽどの意志が強い人間じゃないと扱えないぞ?僕と破壊神が付けてくれたペンダントがなかったら今頃?まれていたろうね)』

 

「(未熟…だな)」

 

首から垂れるペンダントと俺の中にいるデペア。これが俺の理性の境界線。これがなかったら本当にやばかったんだろうな。内心デペアと会話する。イストワールは女神達にブラッディハードについて話す。全員徐々に顔が青くなっていく。

 

前代の女神達と前代のブラッディハードは殺し合い、ブラッディハードは討たれその代償が四女神のうち三人の『死』んだそうだ。それと同じ力が俺にあるんだ。俺に対しての警戒レベルが全員上がっているな。

 

『さて、ブラッディハード』

 

「俺には零崎 紅夜ってちゃんと名前があるんだけど?」

 

『……そうですね。失礼しましたでは紅夜さん、貴方はこれからどうするのですか?』

 

「人が人して生き、女神が女神としてある世界、モンスターなんていないほうがいい」

 

『その選択の意味を理解しているのですか?』

 

「あぁ、勿論」

 

世に希望あれば、希望を疎い。

世に絶望あれば、絶望を喰う。

悪を背負い、負を纏う闇を掲げる柱となるーーーそれが己。

俺はへっぽこだから暴走した時も考えて、ネプテューヌ達に殺してもらう必要があるかもな。

 

『−−−そうですか、では女神よ。ここから本題です』

 

「本題って?それにしてもなんだか、凄くシリアスっていうか空気が重いよ…?」

 

「ネプテューヌ、空気を読みなさいよ………」

 

「また、私は……」

 

「…………」

 

無理に元気を付けようとするネプテューヌが声に覇気はない。ノワールも複雑な顔で俺から顔を逸らし、ベールは分かってる。ブランは静かに黙っている。

冷静に考えて、空より俺の立場の方が重要だな。ぶっちゃけ俺は存在しているだけで世界にとって害でしかないのだから。

 

混乱する女神達に容赦なくイストワールはこの世界の理を話し始める。知っているという事は空とは関係あるんだろう。

 

ため息が出た。そういえば空ばっかで俺自身の立場とか漠然としか分かっていない。この際だからゆっくりとまとめようかな。

 

『(君ももう少し、周りを見た方がいいよ。かなり君はゲイムギョウ界中では危険な存在だ)』

 

「(やろうと思えば最終戦争でも起こせそうだな。…まぁ、やる気はないけど)」

 

正気である今はだけど。……あれ?ブラッディハードになった時点で俺の人生ってほとんど詰んでない?

 

『(それを冷静に考えれる君は大物だよ)』

 

「(なんか実感が沸かないんだよ。それにこれより恐ろしい物を触れたからな)」

 

リーンボックスでマジェコンヌにやられた時に、狂った俺が心から渇望して溢れたーーあの『混沌』。

とんでもない力の塊、それに考えればブラッディハードの時に受ける負なんて蟻と象どころか次元差だ。理解しようと思えば簡単に砕けてしまう、受け止めてしまえば簡単に壊れてしまう『●ザ●ース』の破壊と創造が泥沼のように混ざり螺旋を描くそれに触れて正気を保っている。否、保たれるように調整されているのか?

 

『おいこら、それ以上考えるな。(罪遺物の所有権を持つ今の紅夜が部屋に意識すれば、本体を((召喚|よぶ))ことになるぞ?しかも旧神に封印されるまえの全盛期状態で)』

 

「(あ、あぁ…)」

 

うぷっ、なんだか気持ち悪い。トイレでも行こうかなと思ったが掌に温かい感触がした。顔を上げるとコンパが顔色を伺うように見ていた。

 

「大丈夫です?顔色が悪いですよ…?」

 

「心配ないさ……それより話は?」

 

ネプテューヌ達を見た。話しは済んだみたいだが、全員が恐ろしいほど黙っていた。

 

『(結局、君の目的は女神の協力無しで完遂できない。こればかりは女神達が自分で決めないといけない)』

 

「……そうだな」

 

 

 

 

 

 

気分を悪くした紅夜はコンパと共に部屋を出た。

去っていく背中、ゆっくりと閉じられた扉。

アイエフは頭を抱えた。イストワールから伝えられたのは正気を疑う様な内容だった。

 

「(モンスターは人の負によって造られた生物。それを人に襲わせ、新たなモンスターを造る糧とし、それを女神さまに討伐させることでシェアを確保させる。……これじゃ良くできた牧場ね)」

 

女神達がどのような思いを孕んでいるかアイエフには分からないが、それでも人間側として思えばこの理は知らなければ幸せだったと胸を張って言える。

 

「(知りたくは……なかったわね)」

 

イストワールの真意が分からないが少なくても紅夜のあの目は死を受け入れた物だ。

モンスターの存在を否定することは、人の負の排除だという事。

しかし旅をしてある意味で、紅夜の足りない経験を得ているアイエフからすればそれは無理だとはっきりと言える。

人と人は同じ生き物であっても違う生き物なのだ。だから争いや欲に溺れる。

そこから生まれるのは嫉妬傲慢怠惰絶望等の感情はモンスターの糧となってしまう。それを否定することは出来ない。その感情は人が進化するうえでは絶対に必要な物で、それがなければそもそも女神に信仰することが出来ない。

 

「(あのバカ…全部、一人で背負うつもり?)」

 

王は民の負担を重くしたり軽くしたり出来る権限がある。

負担を重くすれば重いほど王の重圧は軽くなり、逆に軽くすれば軽くするほど王の重圧は重くなる。

つまり、自分を柱にしてモンスターという存在が出来ない程に紅夜は負を背負うつもりだ。その先には破滅しか見えない。

 

「−−−うん」

 

黙る四女神の中で一番最初に口を開いたのはネプテューヌだった。数回考えをまとめるように頭を掻き決意するよるように口を開いた。

 

「私は空ちゃんと戦うよ。なんか嫌だ」

 

ネプテューヌの言葉にノワールはも誘われるように立ち上がる。

 

「……そうね」

 

『ネプテューヌさん、ノワールさん…』

 

「女神としてじゃなくて、私は私で空ちゃんのやり方が嫌だ。これじゃみんなが笑えないもん」

 

「個人的に気にいらないわ。女神としての価値をモンスター討伐に押し付けている所が特にね。これじゃ私が今まで国に発展にした心血が全部不定された気分だわ」

 

「−−−私も協力するわ」

 

二人の背を追うようにブランも立ち上がった。

 

「恩を仇で返すようだけど……今の話を聞いてしまえば退くことは出来ない」

 

静かに怒りを込めてブランは語る。

ロムやラム、そしてミナを救ってくれた恩がある。しかしこれは次元が違う。自国にする民だけではない世界に関わる問題だ。

 

ブランには空の作り出した理がまるで性質の悪い魔界に思えた。全ての存在にやるべきことを定め、循環させる。その間に秩序はあっても自由はない。運命という道筋を限りなく絞り、因果を定め、胸が躍るような展開を書きながらどこか違和感を覚える物語を作り出しているように思える。

 

三人の視線が自然と未だに座ったままのベールに注がれる。それに答えるようにベールは立ち上がり−−−部屋のドアに向かった。

 

「……紅夜に会ってきますわ」

 

激情を無理やり沈めているような葛藤の声で部屋から出たベールの背中にネプテューヌ達は頭を傾げたが、アイエフだけは分かっていた。

 

紅夜とベールが一番付き合いが長く、恐らくこの中で一番仲が良くてお互いの事を思っている。

だから、誰よりもブラッディハードの事を理解してネプテューヌ達のように女神として活動したのちに紅夜が修羅の道を歩まないといけないことになることを。

 

「本当に最悪ね……」

 

世界を取るのか、大切な人を取るのか。

アイエフは、世界の理不尽を誰にも聞こえないほどの小さな声で呪った。

 

 

 

 

 

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その2
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