超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 プラネテューヌ編
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あまりに衝撃的な真実から、プラネタワーの一室(ポチさんが用意してくれた)で全員が集合していた。どんな力を使っているのか不明だがふわふわと浮かぶ厚い本の上に座る妖精の様な容姿のイストワール。彼女は空との関係を親と言っていた。正直な所、全然似てない。

みんなも不自然な目で観察するようにイストワールを見つめる。彼女は頬を掻きながら渇いた笑い笑みを浮かべた。

 

「全然似てないけど、えっと……お父さんだったの?」

 

「見た目があれじゃ、父と言うより母と言われた方がまだ頷ける。しかし、そもそも見た目からして歳の離れた姉妹の方が納得できる」

 

全員がうんうんと頷く。髪や瞳の色、容姿も面影がない。

 

「私もそう思います。けどそれは人とは違う生まれ方で、空さん曰く好みの少女を思い描いたのがこれなんですよ」

 

「よく分からない」

 

また全員が頷く。あいつが摩訶不思議な力を持っていることは知っているので、それ関係か?というか新しい疑惑が浮かぶ。空はロリコンの可能性あり。

 

「私は詳しくは知りませんが、『旧神の鍵・儀典』が破壊された際の欠片で私は創造されたと言っていました。だから、人のように血は繋がっていません、育ての親と言った方がしっくりしますね」

 

そもそも概念の様な存在なので血はありませんが…と付け足すように呟くイストワール。ノワールやベールはともかく俺達がその力がどれほどの力をこの目で見ている。((世界改変|テラ・ザイン))と呼ばれる因果律を歪ませ奇跡を起こさせる想像を絶する禁断の技。世界の歴史に己を介入させ、無理やりに起きたことを起きなかったことにして都合のいいように幻想を現実で塗り替える行為をした後の空の悲惨な姿はまだ記憶に焼き付いている。

 

「確かに、あれなら何が出来ても可笑しくはない」

 

「紅夜達から聞いたアク〇ョンリプレイのようなアイテムですか…私としてあまりいい気分にはなりませんね」

 

そりゃ、課金とは訳が違うからな。ベールの様なゲームを愛している人からすれば簡単にコンプリートとか直ぐにレベルが最大値になるとか嫌だろうな。人生のように少しずつやるから面白いんだ。

 

「私の役目はこの世界の歴史を記録し、その膨大な知識を元に女神達を教育して、同時にプラネテューヌの教祖としての役目を全うすることです」

 

「神界では、色々とお世話になったわ」

 

「いえいえ、ノワールさんが四女神の中で一番優秀で手のかからない女神でした」

 

女神の先生か、確かに服装や声から貞淑な賢者のような雰囲気だ。

 

「私は!?」

 

「ネプテューヌさんは…………はぁ………」

 

目をキラキラしながら自身に指を向けるネプテューヌにやつれたため息を吐くイストワール。その表情や言動が全てを物語っていた。

 

「え、なにその反応……」

 

「ネプテューヌは勉強が嫌だと女神化して逃げて誰も知らない所で昼寝したり……」

 

「遅刻は当たり前で戦闘能力だけならそれなりでしたけど、逆に言えばそれぐらいでしたわね」

 

「わ、私は体を動かすことが好きなの!そしてやれば出来る子なの!大丈夫、明日から本気出すから!!」

 

記憶を失っても変わらないってネプテューヌらしいな本当に。まぁ、その困っている人を放っておけない活動力と女神としてのカリスマ性があるのか、気づけばその背中を追っていたのが俺達だけどな。

 

「本当に変わらないのですねネプテューヌさんは……さて、失った記憶を今から復元できますがよろしいですか?」

 

「うん、お願いね!」

 

ふわりとその小さな手でイストワールはネプテューヌの頭に触れ、復元作業に入ったのか静かになった。

それを見ながら、隣にいるアイエフとコンパが安堵のため息を吐いた。

 

「漸く……だな」

 

「やっとねぷねぷの記憶が戻るです。良かったですぅ…」

 

「なに泣きそうになっているのよコンパ」

 

コンパは記憶が失ったネプテューヌと一番付き合いが長いし感動しているんだろう。ここまで来るのに色々合ったからな。そういえばデペアが先ほどから一言を喋らないな、空が絡んでくると解説役として色々と喋るんだがゲイムギョウ界の事に関してはあまり喋らなくなるんだよなコイツ。

静かに見守っているとイストワールがネプテューヌから離れた。ネプテューヌは暫く思い出した記憶を処理しているのか黙り、一気に顔を険しくて部屋から飛び出た。

 

「ネプ子!?」

 

「やっぱりこうなりましたか」

 

「ど、どういうことですか?」

 

「ネプテューヌさんには妹のネプギアがいます。長い時間、離れ離れになりましたから会いたいんでしょう。因みにネプギアさんはネプテューヌさんとは違ってとても真面目で良い娘ですよ」

 

所謂反面教師として育ったのか?どんな娘なんだろう会ってみたいな。

 

「全く、いま大事な話の途中なのに…」

 

「まぁまぁ、可愛い妹に会いたいのは貴方もでしょう?」

 

むっと顔を歪めるノワールだが、直ぐに顔を何度も振るい真剣な表情に戻る。

 

「イストワール、聞かせてほしい。私、私達はあの夜天 空と戦って勝てる?」

 

「絶対に勝てません」

 

ブランの質問をばっさり切った。

 

「私にも歴史として記録されていない原初のゲイムギョウ界から存在しているあの人は、あらゆる可能性を歩んできたこの世界を知り尽くしています。その中で女神と言う価値を安定させるためのモンスターとその誕生地である冥獄界、そして女神が降臨してくる場所として神界を作り出しました」

 

「冥獄界はともかく、神界も彼が…?」

 

……ちょっと待て、あらゆる可能性?それじゃ確かに女神に勝ち目はないというより、相手にもならない!?

 

「紅夜さん、分かりましたか?」

 

「あぁ、つまりあいつは今のネプテューヌと近いネプテューヌと会ったことがあると言う事だろう?」

 

だから、あんなに((上手く|・・・))ネプテューヌの攻撃を躱せる。未来予知と疑うほどの精度でノワールの連撃を回避してカウンターを決めていたことにもこれで納得が出来る。空レベルなら一度見た技術なんて対処することなんて容易だろうな。

 

「……えっと、つまりどういうことなんですか?」

 

「あの人は繰り返される歴史の中で限りなく似たネプテューヌさん…女神達の特徴を把握しているのですよ」

 

「なっ、それじゃ私達の手は空にとって筒抜けってこと!?」

 

「勿論多少の誤差はあると思いますが……」

 

それでも空さんの勝率は絶望的なほどありますとイストワールは静かに呟く。なんていうムリゲーだよ!?

こっちはあっちの手札すら使えさせるほどの強いか分からないのに、あっちからすれば俺達の手札がほとんど知っている状態なんて、卑怯過ぎだろう!?

 

「正に運営と戦うようなことなのですね」

 

「言い方があれだけど、それが的を得ているわね……」

 

全員が一斉に頭を抱える。数での暴力ということがあるが、あっちは大火力の銃弾や炎の太刀がある。まとまっていけば逆に危険だし、そもそもロボットとの戦いでもあるが元々戦い合っていた女神達のコンビネーションは最悪だ。今の状態で戦えば絶対にいいように遊ばれる。デペアが言っていた連戦方式があるが、本当に賭けになるぞ?

 

「最も効果的な物は、あいつにとっての【未知】を叩き込んでいい訳ね」

 

「はい、ですが……」

 

簡単じゃない。というか、あいつがどこまで知っているかその範囲が分からない。

 

「とにかくやるしかないでしょう。私達にできることはそれぐらいだし」

 

「…そうですわね。個人としてはあまりいい気分ではありませんが、藪を突いてみないと何も分かりはしませんから」

 

「私達のスキルを磨くと同時に新しい技を考えないといけないわね」

 

俺は結構引き摺っている話題なのにあっさりと対策を考え始めた。やることを背一杯やろう。

黙っているデペアに静かに声を掛ける。決意を込めてやるぞと。それに答えるように右手の甲に黒い闇色の宝玉が浮き出ていた。

 

『【未知】か、いいね。……僕に考えがある。ただし、死ぬほど辛いけど問題ないよね?』

 

悪戯を思いついた子供のような裏のある声に俺は迷いなく頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

大地の息吹を連想させる力強い風が吹き荒れ木々が降れ、その咲いた桜の花を天へと巻き上がらせていく。

広大な緑の草原に並べられる銀色の十字架、それが天と大地の境目まで並べられている。ここは神界の中でも最奥地、ネプテューヌ達ですら存在すら知らない特別な場所。

 

『女神の墓場』そこはそう呼ばれている。とは言っても、この場所を知る者は冥獄界の管理者である夜天 空とゲイムギョウ界と冥獄界を繋ぐギョウカイ墓場と呼ばれる墓地に住まうモンスターの中で間違いなく頂点である『ゼクス』と呼ばれるモンスターしか知らない。

 

人が死ぬように神にも死はある。それは世界によって様々だが、この世界の神である女神は寿命と忘却だ。

人と同じように生活を営む女神は人とは超越した寿命を持つが、人と同じような構造故に心臓や脳に損傷をすれば簡単に死んでしまう。限りなく人に近い神であるこの世界の女神は、その人智を超えた力を持っていても人に近い存在なのだ。そして彼女達は|信仰力《シェアエナジー》と呼ばれる意志の力によって顕現している。それは人によって存在を維持しているということであり、逆に人から女神に対して意識が薄れていけば女神は力を失っていき、人々から神という存在が消えた時、それは女神という存在は消去された瞬間。

 

どこまでも蒼穹の走る空に羽ばたく様に舞う桜の花びら、どこまでも続く悲しく神秘的な光景の中で一人。孤独に孤高に地面に膝を落とし静かに祈る者がいた。

人々から畏れられていた魔王ユニミテスが消滅した。しかし、その傷跡は人の心に深く残るかもしれないが、彼女−−−ディープハートの存在を知る物は人間には存在しない。ブラッディハードのパンデミックのように広げる絶望の旋律に抗った四女神は、ディープハートを残してその一生を終えた。悲しむ暇さえなく、ゲイムギョウ界の発展の為に己の全てを奉げた女神はこの墓地の新しい住人だ。

 

とはいえ、元から概念に近い存在である女神が消滅すれば人間のように遺体が残る筈もなく、この墓地には何も入っていないか、遺品が入っているかの違いだが。

 

「お疲れ様」

 

一億七五二三万九六二六回。役目を終えた女神に伝える言葉を新しく作った十字架に送りその場から立ち去る。

何度もこんなことをしても意味はないと思っている。しかし、何もないのは悲しい気の迷いから作り上げてしまったこの墓場。桜舞い散るこの場所にいつか、今を司っている四女神を入れるようになるだろうか?と軽く考えながら、空は呆然と空を見つめる。

雲一つもない晴天の空、清々しいほどに何もない空虚な青い空。

 

「−−−来る」

 

第六感がそう訴える。

((守護女神|ハード))と((冥獄神|ハード))。

希望と絶望。

光と闇。

そんな関係だった彼女達と彼がお互いに絡み合い、この世界の理を否定する。こんなことはいままではなかった。そもそもお互い殺し合う関係であった者達が手を結んだことすら前代未聞だった。微かな喜びと大きな悲しみに空から視線を外して歩み始めた時、地面が黒く染まり夜が来たように暗くなる。

 

「ギョウカイ墓場はどうしたの?」

 

『若さゆえの過ち…とでもいいましょう』

 

後に立つ若い男の声に空はため息を吐いた。

 

「っで、本音は?」

 

『妹に会いたい』

 

シスコンと心の中で突っ込む。もし口に出したら悪いのか?と真面目な顔をする息子が頭に浮かび空はため息を吐く。

 

『そして貴方が焦がれている女神の可能性を見てみたい』

 

「……はぁ?」

 

意味が分からないと空は後ろに聳え立つ巨大なモンスターに頭を傾げた。

 

『今までの貴方ならもっと傍観的な姿勢、しかし今回の女神に積極的に逢着した。これは今までになかった。故に興味をそそられる』

 

「戦う気?」

 

『私はモンスターでありながら女神に近い存在。番龍としての立場、それに対して私は不満はない。だが、私は私の目で女神の価値を測りたい』

 

だから戦わせろと空はゼクスの思いに頭を少し乱暴に掻く。机上でいくら教え込んでも実際に感じてみなければ本当の意味で理解したとは言えない。しかし、ゼクスの立場はかなり特殊で重大な責任を伴う。冥獄界はモンスターの誕生地であるが貯蔵庫ではない。モンスターが過剰に増えない為にギョウカイ墓場である程度の負を処理して冥獄界に送る大切な場所だ。今までの|道筋《ルート》で占領されたことも多々あったが、ほとんどの輩はギョウカイ墓場を便利な占領地ぐらいしか思っていない。故に対処は簡単であるが、故にいつ何が起きても対処できるように緊張感を持ってゼクスに住ませている。

 

『母様!!』

 

「それはやめて、今は男だから」

 

『貴方その体と容姿は紛らわしい!!』

 

逆ギレ!?と内心ツッコミを入れる空。しかし、先から背中に刺さる力強い意志の視線に今日で一番深いため息を吐いた。その沈黙を肯定と察したゼクスは勝ったと内心ガッツポーズを作った。

 

『ブラッディハードはそちらにお任せします。私の興味はあくまで女神なので』

 

「ブラッディハード…ねぇ」

 

『どうしましたか?』

 

あれはブラッディハードなのだろうか?根源は同じであるが、その力の使い方は全く異なる。希望である女神を激しい怨嗟と殺意をぶつけ殺戮する神が、あんなに穏やかで女神の為に在れるのだろうか?それは最早、絶望の紅い魔神として言えるのだろうか。

 

「今までにない神。存在しえなかった可能性。この世界を破壊するために羽ばたく翼。うん、あれはーーー」

 

女神の為にある負の神。

負を受け入れながら苦悩する矛盾の神。

この世界の摂理では決して生まれるはずない魔の神。それは正に−−−

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「((未知なる魔神|・・・・・・))に相応しい」

 

 

説明
その6
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