超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 プラネテューヌ編
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「…………」

 

『よし、とりあえず使えるようになったね』

 

「…………」

 

『女神達も近くのダンジョンで猛特訓中らしいよ?ついでシェアも上がって一石二鳥!素晴らしいね』

 

「…………」

 

『何も喋らない。どうやら屍のようだ』

 

死ぬ。痛い。動けない。

デペアが教えてくれたデペア自身の固有性質を使わせてもらった俺は仰向けに倒れていた。因みに場所はオリジナルが眠っていたとされるまっ白い空間の中。

 

『いやー、よく耐えたよ?一般人だったらあまりの痛みにショック死する可能性もあったからね』

 

全身の体を内側と外側やら焼かれた気分だ。

最初に襲ってきたのは全身の体の皮膚を一気に引き千切られたような重くて鋭い鋭い痛み。更にそこから塩を全身に塗されたような形容できない激痛と同時が急激な速さで腐敗していく燃えるような痛み。それを30秒耐えた。それだけでもう、何も出来ない。動くことを考えればあっという間に精神に限界がくる。

 

『喋る余裕がないみたいだね。ま、それもそうかな?神格を得た紅夜が使ったのは神格を呪う毒だからね』

 

まさか、お前が元((天使|・・))なんてな。

 

『あの名前はキャプテンの使い魔になる時に捨てた。本当にボクがここにいるということが不思議で堪らないよ』

 

過去を懐かしく思うように俺を見下ろす醜悪なドラゴン。

まだ体中を蝕む蛆虫の這いずるような痛みに体は全然動けない。ここでは時間という概念がないから、ゆっくりと過ごすことが出来る。かと言って、肉体的な鍛練が出来るわけじゃないし精神的な鍛練しか出来ない。そしてさっきので最後だ。後は空との戦いで一回使えばもう使えない。それ以上使おうとすればデペアの毒に溶かされ呪いを吐くドラゴンへとなるか、あまりの激痛に廃人となる。なんとか『毒』を使いながら動くことが出来るようにはなった。後は運と気合だ。

 

『一撃決めれば勝機はあるんだけどね』

 

デペア曰くドラゴンという種族はプライドが高く過去の物をひっぱりださないと思っている可能性が高いということらしい。まぁ、デペアの詳細も空は把握済みなので奴が対処していないことを願うしかないんだけどな。でも、お前はそんな簡単に意志を曲げていいのか?

 

『あいつの顔に泥を塗れるなら、プライドの一つや二つ犬に食わせれるよ』

 

残酷で無垢な子供を連想させる声でデペアは笑う。

時間はあるのだから、もし良ければ聞いてみたい。お前はどうして空を嫌っているんだ?空自身の性格を嫌っているのは知っているのだけど、それだけじゃないような気がするんだ。同じお前は既に墜ちた天使なのはさっき聞いたけど、同じ立ち位置なら話しは合いそうだけど。

 

『……それ、あの女神達に言える?』

 

すまん、失言だった。

同じなら、何千年も戦えないよね。

 

『あまり過去は思い出したくないんだよね。若気の至り全開の失敗だったし……まぁ、あれだよ。ボクがこんな怖くて醜くて恐ろしい姿になったのは破壊神の所為なんだよ』

 

口を濁らせながらデペアはポツポツと語り始めた。

デペアは元々別世界でかなり偉い立場で、ある楽園を守護する蛇に変化していた天使だったらしい。そこは原初の人間と言われる特殊な二人の夫婦が暮らしていたそうだ。その夫婦はとても仲が良かったがそれを見守っていたデペアに二人しかいないこの世界で彼らは本当に愛し合っているかと疑問を抱いて、同じく楽園に住む神様の言いつけを守れるか試したらしい。その方法は彼らに知恵を授ける事だった。聞くにその人間を創造したのは神様で、神様はこの娘を愛せと強要したらしい。それは神様の決定であって彼らの愛ではない。故に知恵を持った二人の愛が本物であるのか、試す為に神様に食べることを禁止されていた禁断の実を食べてしまった。

 

『ボクって死を司る天使なんだ。だからこそ、神に命じられ神に従い神の為に生まれた愛がどんなものか知りたくなった。死が二人を分かつその瞬間まで、あの二人は神に言い渡された愛を貫けるか…とね。それにあの楽園だと死ぬものはなかったからどうしてもボクは浮いている存在なんだよ』

 

そして禁断の実を食べた二人は神の怒りを買い楽園を追放され、デペアは地獄に叩き落とされた。

 

『神様って純粋で乱暴なんだよ。自分の属性に固執して、それを否定することは絶対に許さない。例で言えば育ちが良すぎてちょっと歪んだおぼっちゃまって感じかな?』

 

なんかネプテューヌ達にも繋がる話だな。あいつ等も結局、モンスターについては否定的だ。

もし、俺が出会いなしでブラッディハードとしてネプテューヌに出会っていれば問答無用で敵同士になっていたかもしれない。

 

『話しを続けるけどーー……』

 

デペアはその判決に怒った。神に対して、造られた愛に意味はなくお前らがしたことは押し付けだと。しかしその地獄からの訴えは天国の楽園に届かず、また新たな((二人|おもちゃ))を作ろうとした。それに憤慨したデペアは地獄に住んでいた悪鬼を力で支配して、楽園に戦いを挑んだ。そして、楽園が差し向けたのが空だった。

 

『鎧袖一触って言うんだっけ?まー、ボッコボッコにされたよ。ボク以外は殺戮されて、ボク自身も十二の翼の中で四つ引き千切られて元の姿に戻れないぐらいに傷だらけにされてねぇ……命からがら逃げれたけど回復した』

 

う、うーん。それで?

 

『今度は地獄から呪ってやるぅ〜って叫びまくったら今度は地獄に破壊神がやってきて領分だったから今度こそと思ったけど四つ羽千切られて更にボッコボッコにされてぐっしゃぐっしゃにされてこの容姿になったんだよ〜。酷くない?』

 

……えっと、すまん。確かにデペアは被害者であるが同時に加害者になるよな?

この場合に怒るのは寧ろ楽園に住む神様だろ?怒る方が違うんじゃない?

 

それにデペアは九つの目を丸くして腹を抱えて笑い出した。それも瞳に涙が溜まるほど。

 

『いやー、それキャプテンも言っていたよ。逆ギレじゃんってね。だけどね正しいことをした気分の時にそこらに転がる石ころをみるような目つきでぶっ飛ばされたらムカつくじゃん?』

 

気持ちは分からなくもないけど…まぁいいや。個人的な善悪での行動について議論して埒がないよね。

 

『はは、上手い事言うじゃん。ボクとしてあいつの苦い貌が見れればそれでいいのさ』

 

それで俺は精神的に廃人一歩手前になるまで鍛練か。

ブラッディハードでなければ存分に使えたが、俺自身が人間であることを想い女神に憧れると同時に嫉妬していた時代でこの力はあまりに危険だからデペアが俺にこれを隠していたのは正解だな。

 

『デメリットを力を配分することである程度緩和していたけど、これを使えばそれは出来ない。ボクは全力で力を使い、紅夜も惜しむことなく力を使う』

 

そして、それはお互いに反発し合う。

それに伴う負荷は想像を絶する物であることは嫌でも分かってしまう。だけど、これを使えば勝てるかもしれないんだろ?あいつに。

 

『あいつがボク等にとって非常識である限り勝ち目はない。だからボクが奴を同じ非常識の領域に達しなければ勝ち目はない』

 

世界の強さの定義を突破する者になるために…か。

 

『けどこれは仮初だから、一度しか使えない。二度使おうとすれば紅夜が耐えれてもブラッディハードとしての神格が砕ける。そうなれば君も道ずれになる』

 

『毒』の操作もとりあえず流すだけで精一杯だし、使うのならネプテューヌ達と大きく離れた場所じゃないと殺しかねないから注意が必要だな。

 

『じゃ、後は現実世界でゆっくり休むこと。こういう時はやっぱりおっぱいを見れば癒されるよ』

 

拳を作り親指だけを立てて笑うデペア。会った事から今まで全く変わらないなと思いながら、俺も手を振るう。これからもその先も大変な毎日が訪れる事になることは承知の上だ。

だからこそ、それが頼まれたことであっても、俺が生まれた時からずっと傍にいてくれた相棒、頼むぞ。

 

『−−−……任せろ相棒』

 

お互いの拳を合わせるそれを合図に心で構築された世界から目覚めるために瞳を閉じた。

 

 

 

 

「うぁ―…」

 

見知った天井を見ながら自分でも呆れるほどの腑抜けた声が出た。

『毒』の扱いや濃度はある程度デペアがしてくれたおかげとは言え、自分から毒を飲んで体に塗りつけたことをしたんだ。ブラッディハードとしての神格にとって、それは物凄い苦痛が生じてぶっちゃけて死ぬかと思った。現実世界でないとしても、その影響は容赦なく体に残っている。

 

「アイエフもコンパもいないのか…」

 

確かイストワールもその身に記録された歴史を元にして女神達をサポートしているらしい。俺は俺で鍛錬できるし、なんだかんだ四女神全員と共闘した経験があるし、それに実際戦うとしたら空に対して連戦を仕掛ける形になるだろうから、コンビネーションもあまり重要にならないかもしれない。それ以前にあいつ等に必要な物はお互いに警戒心を解くことだろう。数千年も戦い続けて共通の目的が生まれたとしても、直ぐに仲良くなることなんて難しいだろう。

 

「でも、好きでも嫌いでもお互いの存在を許し合うのなら、それでもいいよな」

 

ソファに寝転がっている体制で呟く。

そういえば、俺一人になるのは久しぶりになるよな。

デペアは準備で今呼びかけても返してくることはないだろうし。大きく負荷をかけた体を休めようとしたとき、ゆっくりとドアを叩く音が耳に届いた。ドアの方に顔を向けると少しだけ開かれたドアに顔半分ほど出してこちらを除いていた少女と視線が合った。そして、その少女は直ぐに隠れた。気配はまだドアの付近で止まっているので逃げてはいない。

 

「……誰?」

 

全く知らぬ少女に会ったことがあった思い返してみると見覚えがある。プラネテューヌのゲイムキャラの力を借りようとプラネタワーに来た時にずっとこっちを見ていたネプテューヌの面影を感じさせる少女だ。だとすすると、もしかして…

 

「お前がネプテューヌの妹…か?」

 

壁の向こうでびくっと驚いたような声が聞こえる。恐がらせたかなと思ったが、暫く黙っているとまたそっと半開きのドアからこちらを除く卵のような丸い瞳。

好奇心と少しだけ怯えがあり、あと一歩が進めない様子。もし俺が動けたとして近づいてもあっちから遠ざかるだろう。だから、俺はそのまま少女を見るのを辞めて天井に視線を移した。

 

「すまない。俺はお前の姉を戦場に連れて行く」

 

「−−!」

 

アイツの事だから、勝っても負けても女神の身柄は保障できるとしても、危ない所に連れて行くことは変わりない。そして、そこに行かせる理由を作ったのは間違いなく俺自身だ。

 

「だけどこれはとても必要な所―――と言っても関係ない」

 

「……どうしてあやまるんですか」

 

「けじめ、だ」

 

俺達がしようとしていることは、未来に産まれる人を沢山救える。しかし同時に切り捨ててなければならない。モンスターがいなければ、俺の様なモンスターを討伐することで収入を得ている人が困ることになる。それは世界からすればちっぽけなことかもしれない。だけど、だからってそれを仕方がないことで切り捨てることはしたくない。何らかの行動には何かを失いことを忘れていけない。とても大切な事を忘れずに進まなければならない。

 

「…………おねえちゃんの説明はよくわからなかったけど、それは今しないといけないことなんですか…?」

 

沈黙から放たれた言葉は棘があった。既に体全体を出した少女が仇を見る目で俺を睨んでいた。

 

「おねっちゃんがいればそれでいいのに、やっといっしょにいられると思ったのに…」

 

「会えるよ。俺が守るから」

 

「…まもる?」

 

今まで以上に俺があいつ等をネプテューヌを守る事を誓った。

その為にブラッディハードになった。その為に人を捨てた。

 

 

 

「その為に俺はここにいる。何もかも終わらせるために、空を助けるために」

 

闇の中で蹲って、誰にも言えないような負を貯めて苦しんで、それでも救いを求められず嫌なことを繰り返すことしか出来ない可哀そう奴を手を伸ばす為に。

 

 

 

 

 

 

 

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その7
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