超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 プラネテューヌ編
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この世に存在する者とは思えない幻の様な美しい容姿が微笑む。

戦意を纏わなければ思わず見惚れていただろうが、その後ろに腕を組んで立つその巨大な影を見てしまえば寒気が襲い掛かり冷や汗が流れる。鬼のような恐々しい兜に胸と肩部分には龍らしき顔がある。背中には六対の雄々しい翼が広がってその姿は今までにない戦慄を震わせた。どこかで見た事があるその竜騎士の様なモンスターの瞳が刀のように鋭くなりこちらを見つめ口を開く。

 

「イストワール、久しいな」

 

「あなたは……ゼクス!?」

 

知り合い?と隣にいたネプテューヌが聞くとイストワール様は深く頷いた。

 

「ゲイムギョウ界とモンスターの生まれる地、冥獄界を繋ぐギョウカイ墓場を守護するモンスターでありながら、その存在は女神と近いモンスターです」

 

「ちょっと待て、モンスターは人の負によって生まれるんだろう?なのにどうして女神に近いんだ?」

 

「……多分、人の負だけじゃないのよ」

 

顎に手を置き冷静しているアイエフの言葉に空は口笛を鳴らて口を開く。

 

「正解、こいつは人の負の意志と人の正の意志の両方で造られている。オマケというか制御用に僕の力も入っているけどね」

 

問題が解けたことに祝う様に空は手を叩く。その表情は微笑んだままだが更に深みが増して俺達の警戒心は更に上がった。

 

「いきなり、強キャラ登場とかやばくない…?」

 

「いきなりじゃないよ。リーンボックスならともかく、−−−この姿は見覚え、あるでしょ?」

 

空が手を鳴らすとゼクスと呼ばれたモンスターは頷きその姿が朧げになり、空中に四つの姿が薄れて映りだされる。その姿を見た時、ベール以外が息を呑みこんだ。まずラステイションに行く理由を作り出した大斧を持った鬼の様なモンスター。ノワールと共に討伐した炎を吐くドラゴン。リーンボックスでネプテューヌ達と共に特に問題なく倒せた風を操るドラゴン。ルウィーで空を乗せて飛び立った青空色の鱗をしたドラゴン。全て今までの旅で戦ったモンスター達だった。

 

「ラステイションの軍隊が大した怪我が無かったのも、貴方の指示だったのね…!」

 

「キラーマシンが生み出されるのはもう止めようがなかった。いや、女神なら止めれていたかもしれないけど、どっちにしろ全滅は不味かったからね。感謝してよ?何時もの僕なら、さぞ喜劇的な血祭を開いているから」

 

「あなた…ッ!」

 

空は涼しげな顔でもう一度指を鳴らすと四体のモンスターは再び一つになり、同じ態勢に戻った。手を出して今にも飛び出しそうになっているノワールを止める。人間が嫌いと言っていたが、俺は勘違いしていた。あれは感情を押し殺した声で本当は嫌い所の話じゃないんだ。憎いんだ呪いたくなるほどの憤怒が抱いているんだ。負を使う神となったこの身だからこそ、分かったかもしれない。空の瞳には悍ましいほどの憎しみが悲しみが怒りが渦巻いていることに。

 

「…ねぇ、空ちゃん」

 

「どうしたのパープルハート?」

 

ネプテューヌではなく、パープルハートと呼んだ。つまり、空はもうネプテューヌが記憶を戻った前提で女神として対峙しているんだ。

 

「難しい事を考えすぎても、仲間は大切なんだと思うの」

 

「……?そんなこと言われても反応に困るけど、絆とかで強くなるとか君達らしいけど……それが?」

 

「えっとね。私、うまく言えないけど、伝えれないかもしれないけど、誰だって幸せになりたい、誰だって楽しくいたい、その結果で他人に迷惑を掛けちゃうこととかあるんだ。ってこと私はこの旅で学んだんだ」

 

「ネプテューヌ……」

 

努力に裏切れ努力をする人を否定する人がいた。

女神の信仰が強すぎるあまり他の女神を否定する人がいた。

自由を欲しくても世間に否定され人知れぬ場所で隠れて住む人達がいた。思い返せば、みんなが歪んでいてもそれが善い行いであるということを信じてていた。それが例え、自分の世界だけだとしても。

 

「だから、私はすごくいいことを思いついたんだ」

 

「…へぇ、どうするの?誰かが幸せになれば誰かが不幸になる。そんな天秤の上で君は何を吠えるのかな?」

 

その言葉を待っていたと言わん限りにネプテューヌは瞳を輝かしながら胸を張り、このゲイムギョウ界全員が聞こえる様な高い声で言い放った。

 

 

 

 

 

「私達が幸せで楽しく過ごせばいいんだよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………はい?」

 

空は目を白黒させた。俺達はネプテューヌらしいと笑った。

 

「私が笑っていればあいちゃんやコンパ、こぅちゃんが笑ってくれる!その笑顔が広がっていけばみんな笑っていられるんだよ!名付けて笑顔パンデミック!!」

 

「お前バカぁ!?そんな単純な物じゃねぇんだよ!!他人の不幸を幸福とする畜生や自分より弱い奴を奴隷にして甚振るような輩はゴミの中にいくらでもいるんだよ!!幾ら焼いても切り裂いても駆除しても!どこからともなく溢れて下品な笑みと共に他人を貪り生きるような寄生虫がいる!結果的にそんなクソ野郎が他人を比べて幸せに生きるんだ!幸福と不幸は同じ重さで暴力と悪知恵でお互いの幸福と不幸を奪い合うのが世界だ!!何が笑顔パンデミックだ!お前の見ている生易しい世界と人の理不尽で非論理な世界を一緒にするなぁぁ!!!」

 

「あら、まさかあなたがそんなに汚い言葉を吐くとは思いませんでしたわ」

 

感情をむき出しにして叫び空に微笑むベールがネプテューヌに続いて口を開く。

 

「貴方の言うとおり、人の世とはそういう物だと言うことを私は実感しましたわ。私を信仰するものが私のようになれる訳ではありません。故に私達は女神であり続けないといけない。私を慕う者の為に人の世を守る女神として」

 

「ッ……!!」

 

一歩、俺の後ろにいたブランとノワールが前に出た。

 

「あなたが何に怒っているのかは知らない。しかし、そんな心で描くような夢なんて私達からすれば悪夢でしかないわ。貴方が行動の前に貴方の意志そのもので世界を動かすこと自体が私にとって許しがたい事よ」

 

「う、……う…ッ!」

 

「気に入らないのよね。貴方を見ていると悲しい目に合いました苦しい目に合いました。だからこうじゃいけない、こうあり続けなきゃいけないって強迫観念で動いているように見えるのよね。舐めてるでしょ?何度も色んなことを試しながら続けられるようになった時、初めて結果が出るわ。貴方のしていることは同じことの繰り返しよ」

 

肩を震わして口をカタカタを鳴らしてこちらを睨む空。

俺には、そんな時に慰めてくれる仲間がいた。空にはそれがいなかった。何故なら、あいつは一人でなんでも出来過ぎたから、例え仲間がいたとしてもあいつは隣に立つぐらいの小さな勇気すらない。

 

「空、この世界には女神がいるんだ。お前の座るその場所は違う場所にあるんだ」

 

「……だ」

 

ぼそっ、玩具を取られて泣く子供のような嘆きが呟かれた。

 

「…い…や……」

 

ギリギリと歯を鳴らして声を殺しながらの嗚咽が聞こえる。誰にも見せないように空は地面を見つめながら肩を震わした。イストワール様とゼクスはその姿を心配そうに見つめていたが小さな深呼吸の後、空が表を上げて静かに語りはじめた。

 

「一億七五二三万九六二八の女神を使い潰してきたんだよ?今更、君達の正論にはいそうです僕が間違っていましたこの場所は譲りますから後は頑張ってくださいって−−−−−−−言えるかァァァァァァ!!!!!」

 

魂からの叫びだった。空の雄叫びと共に凄まじい魔力が渦巻き黒曜日を地面に突き刺した。そうしなかったらこの体は吹き飛んでいた。嫌な汗が流れると共に空の手には既に白き魔銃が握られており、その銃口は地面に向けられていた。

 

「たった一人の為にここまで来たんだぁ!!そんな事ぐらい、最初から分かってて、でもこうしてなきゃ一体僕は誰にこの思いをぶつければいんだよ!!紅夜を精神崩壊させて!ティシフォネからは罵倒させられ!空亡ちゃんからは泣かれて!僕はただあの娘が人間として育ってほしいだけなのにぃ!?」

 

「お前は孤独の強さがある、けどそれ以上に優しすぎるんだよ!!」

 

「うるさいうるさいうるさい!!怨め憎め怒れ狂えぇぇ!!ヴァルヴァドス《神獣形態》!!!」

 

実体化された魔力の白龍が地面に向かって離れて世界は一瞬白い闇に染まる。

そして地面を蜘蛛の巣のように広がる白い閃光、同時に響く龍のような高い咆哮がこの島を崩壊させている。

 

「ネプテューヌ!!」

 

「こぅちゃん!!」

 

崩れる足場の中で咄嗟に手を伸ばすが届かなかった。金色の閃光が腹部を貫き、壊れていく島が遠くなっていく。

 

「ぐぅ!?−−−空ぁ!!」

 

口から血を吐きながら空を離そうとするが俺の手は虚空を貫く。捕まれる瞬間空は後ろに下がっていたからだ。襟首を掴まれ空は宙に舞っている状態で一回転をして加速を付けて投擲した。咄嗟に風を操作して衝撃を和らげるようにしたが地面に激突した衝撃で意識が一瞬黒く染まった。

 

「げほっ、ネプテューヌ達は……!」

 

急いで立ち上がりクレーターとなった周囲を見渡すとネプテューヌ達と居た大きな島は崩れているがその中で四色の光が見えた。ブラッディハードとしての本能がそれが女神であることを伝えてきており、とにかく無事であることに安堵した。

 

「……この世界の、どこに不満があるのさ」

 

「全部だよ。バカ空」

 

先ほどの島と一回り小さいがそれでも大きな島のようだ。距離と広さを冷静に考えながら顔に影が差し込んでいる空に向けて黒曜日の剣先を向けた。

 

「変わらない世の中でいいじゃないか。誰かが笑うときは誰かが泣いている時なんだよ。それに善も悪も関係ない」

 

「そうであっとしても、お前は人の遺志を勝手に使っていることが許せないんだよ。ネプテューヌも言っていたけど世界はお前が思っている以上に簡単な物だ。お前が難しく考えすぎなんだよ」

 

空はシェアクリスタルが握られた手をこちらに向けた。

俺はそれに合わせて体を前かがみに黒曜日を振り払い何も持ってない方の手を空に向けた。

 

「世に福音に満ちることを願い」

 

「世に希望あれば、希望を疎い」

 

同時に唱えた。俺の中にいるデペアも今日は本気で全力な様子で伝わる覇気は体を滾らせる。

 

「世に禍音が満ちることを憎む」

 

「世に絶望あれば、絶望を喰う」

 

あいつが求めるのは希望だけだ。誰にも理解できないような先にある夢幻のような楽園。

それに届くのであればどんなことでやるだろ。その道に屍を積むだろうが、あいつは優しんだ。

 

「虹神の骸殻にして理を掴みーーー」

 

「悪を背負いーーー」

 

優しいから、優しいからこそ、あいつは自分を((許すことが出来ないんだ|・・・・・・・・・・・))。

 

「汝の名を世界に示す!!!」

 

「負を纏い闇を掲げる柱となる!!!」

 

負の神として相応しき禍々しきプロセッサユニットに力を込めて紅蓮の双翼は高く空に舞い上がった。

 

 

 

説明
その9
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