魔法使いの大家族 第7話:お忍びの魔法使い
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「秋?秋!」

甲高い声が秋の耳元で響く

ここは屋上、秋の中で間違いなく学校ベストプレイスランキングで五本の指には入る場所

そこで昼寝真っ只中の秋を奈々がゆすって起こした

そもそもこの場所は秋と、今日の秋のこの憂鬱の原因しか知らないはず

秋は眼をこすりながらゆっくりと起き上がった

「なんだ・・・木野村か

僕は忙しいんだ後にしてくれないか?」

「そもそも今日は授業が無いから帰らないといけないでしょ?

秋は私と違って部活入ってないんだから帰らないと」

お前の声のせいでここにいるのがばれるかもしれないんだが・・・

と秋は心の中で密かに思いながら木野村を見た

「大丈夫大丈夫・・・

あと一時間だけ寝るだけだから」

秋は再び昼寝をしようとするがそれを奈々が秋を揺さぶって邪魔をする

それでも寝ようとする秋はある異変に気付く

秋の感覚でだが奈々だけに触られてるだけではないと感じたのだ

薄目を開けてみるとそこには満と見知らぬ男子生徒が一人

秋の太ももを掴んで揺さぶっていた

「たっ!?田畑さん!?

それと君は・・・?」

秋の驚いた顔を見て二人は顔を見合わせ笑う

「名前、覚えてくれていたんですね!嬉しいです!

こちらは新庄宰(しんじょうつかさ)さんです

同じクラスの人で雁間君に興味があるらしいんですよ」

秋はどちらかというと一人でいる時間の方が好きだ

区別されるのを誰よりも嫌い

誰よりもその苦痛を知っている

だから秋は一人を好む

ただでさえ自分が風評被害を受けているのに

それで他人を巻き込みたくないと思っているからだ

「さっきも紹介された通り

俺の名前は新庄宰!

勉強はできないし魔法は少ししか使えねぇけど

雁間の妹の演説っていうのか?

あれを聞いてたらお前はすごい奴なんじゃないかって思ってよ」

「そうか、だけど僕は・・・」

秋は友達にでもなろうと誘われる前に逃げようと断りを入れようとした

「俺もある意味、お前と一緒というか・・・

なんというかまぁ・・・区別されてる人間なんだよ

いろんな意味でさ」

秋は宰の名前を聞いて魔法使いの血統を受け継ぐ一つの名家を思い出した

「新庄ってことは・・・新庄家の跡取りってことか

噂は聞いていたけど・・・別に君がひどいってわけじゃない!

名家に産れたけどそれについていけないとかあるんだろう・・・?」

「いや?俺は本当に産れたときから魔法は一切使えなかったぜ?」

その言葉に秋は絶句した

魔法使いの両親を基本的に持つ跡取りは生まれつき魔法関連の何等かの取り柄は持っているはずなのだ

血が濃いということもあってより魔力も強い子供が生まれやすい

新庄家の両親は両方とも権威のある魔導士

その二人から魔法の才能の無い子供が産まれる可能性は限りなく低い

秋ですら禁忌魔法という取り柄があるが本当に宰からは何も感じられない

下手したら奈々や満よりも魔力が少ないかもしれないと秋は感じ取った

「そういうことか・・・お互い親が偉いと苦労する」

「いやいやいやいや!秋!お前の方が苦労してるだろ!?

俺なんかよりもよっぽど苦労してるぜ!?」

いきなり名前で呼ばれ戸惑う秋

初対面にも関わらず名前で呼ぶなんて図々しいと秋は思ったが

彼の目を見てその思いはすがすがしさに変わった

まっすぐ秋を見る曇りの無い目

今まで秋の事をここまで直視する人間は極めて少なかった

秋を憐れむことなく同情する事もなく一人の人間として見ている目

宰の隣にいる満も秋をじっと見つめている

「ありがとう

そう言ってもらえると嬉しいよ

ありがとう宰」

「これからよろしくな!」

宰と秋が握手を交わす

それを見て満も二人の手の上に覆いかぶさるようにして両方を載せる

「わっ!私もよろしくお願いします!」

「あっ!私も私も!」

静かに話を聞いていた木野村も三人のさらに上に手を覆い被せた

「皆、わざわざありがとうあと一時間したら僕は帰るからさ

先に帰っててくれごめんな」

秋の一言に一同の顔が笑顔に変わる

秋はそれに少しだけ疑念を覚えながら三人をその場から帰した

「いいお友達じゃない」

再び眠りにつこうと秋が腕枕を組んで倒れこもうとすると誰かの脚に引っかかった

声を聴いて嫌な予感を感じて寝たふりを決め込もうとすると

殺気を感じて即座にその場を離れる

秋が寝ようとしていた場所にはナイフが刺さっていた

「お前!僕を殺そうとしたな!?」

「私はただ雁間君の頭についていた虫を殺してあげようとしただけよ」

「そんな簡単な事であぶなかっしい凶器を出すんじゃない!

それと僕ごと虫を殺そうとするな!」

「雁間君は虫さんと同じ扱いだから仕方ないわね

そもそもあなたを殺そうとしたもの」

秋はただただ絶句した

「やっぱりそうじゃないか!殺されてたまるか!

それに神ヶ原!君のせいで僕は少し憂鬱なんだ!

家にも帰りたいわけじゃないし!」

「じゃあ私の家に泊まっていく?」

「は・・・・・・・・・・・・・?」

秋は凍り付いた

「大丈夫よ

お父さんとお母さんならいないから」

葵の頬が赤くなるが顔の表情は全くといって変わっていない

こいつには感情が無いのかと秋は心の中で思った

「そういう問題じゃないんだよ!

俺が野獣だったらどうするんだ!?

お前を取って食っちまうかもしらないんだぞ!?」

「私を食べる?

雁間君にはカニバリズムのお趣味があったの?」

「急に丁寧語にするんじゃない!

今更上品ぶっても遅いぞこのお嬢様め!

そういう事じゃないんだよ!だから!」

秋が話を続けようとすると葵が秋との間合いを詰め

一気に秋を押し倒した

そしてボタンをはずして秋を挑発するかのように顔を近づける

「こういうことでしょう?」

秋の頬が真っ赤になる

女子に押し倒されるなんてなかなか人生では味わえないだろう

秋は戸惑いながらもその時間を堪能していた

「この場合は立場が逆だけれど

よく見ると肌が白いのね

嫉妬しちゃうわ

雁間君みたいな童貞がこんなにお肌が綺麗だなんて」

「なっ!余計なお世話だ!」

秋を見かねて待機していた伊邪那岐が動く

その動きに合わせまるで予測していたかの様に伊邪那岐の顔擦れ擦れに神ヶ原はどこから出したのか

カッターナイフを投げつけた

伊邪那岐はあまりのできごとに固まってしまってる

「伊邪那岐は優しい召喚者なのね雁間君と違って頼もしそうだし」

「なぜだろうか・・・悪い気分にはならないのだが・・・」

伊邪那岐は恥ずかしそうに頭を掻く

「伊邪那岐!?君は一応僕の召喚者なんだぞ!?」

「伊邪那岐は優しい召喚者だもの女の子を守ってくれる騎士なはずだわ」

「なぁ伊邪那岐!伊邪那岐は僕の味方だよな!な!」

「秋、私は女の子にたのまれると断れないタイプでな・・・」

秋に押し倒した葵は今度は秋の太ももに跨った

こんなところを教職員やほかの生徒に見られたら大変な事になると秋には容易に予測できていた

いかがわしい行為をしていた疑われても言い訳は通用しないだろう

それに秋は二等生、葵は一等生そしてこの学校の顔でもある

この現場を秋は見られてしまうとただではすまないことは目に見えていた

「こんなチャンスを逃すわけ?

こんな超絶美少女魔法使い女子高生から交わりをお願いされているというのに」

「一世一代のチャンスとは思ってるけど・・・誰かに見られてるぜ?」

「あらそうだったの

脅しに来られてもそれは困るわね

伊邪那岐が守ってくれるといいのだけれど・・・」

伊邪那岐を後ろ目で流し見する

葵はシャツのボタンを止めながら立ち上がった

秋も立ち上がるとブレザーを掃って着直した

「わかったよ・・・家まで送ってやるよ・・・ただし家までだからな!?

それに車とかに乗せてもらうんじゃないのかよ!」

「今日は運転手に帰りはいいって伝えておいたの

とてもいいボディーガードを日雇いしたから大丈夫よって」

葵が少しだけほほ笑んだかのように秋は見えた

しかし、それが気のせいだったかのようにすぐにいつもの無表情に戻ってしまった

歩き去る葵を見て伊邪那岐は秋の肩をとった

「どうやら伊邪那岐、君には気付いてないようだ」

「センサーにでも引っかかったのか?」

コクリと秋は伊邪那岐にうなずく

無駄な動きは避け伊邪那岐と話すところを見せないように

召喚者は普通の人間や魔力の低い人間には見えない

秋はセンサーに引っかかった人間のおとなしさに気付いた

伊邪那岐を見たりもすればセンサーに引っかかった人間はきっと極度興奮状態に陥ることが多い

しかしおとなしいといってもそれはおかしなことになる

「鼻息が・・・荒いな」

「さしずめ怒っているのだろう

神ヶ原さんはこの学校のアイドル的存在なのだろう?」

「伊邪那岐・・・

さん付けしてるぞ」

「あっ」

秋は伊邪那岐に手でサインを送るとその場をそそくさと立ち去って葵の後を追いかけた

「吾輩の葵に・・・許さぬぞ・・・!

二等如きが吾輩の葵にぃぃぃぃぃぃぃぃ・・・!」

怒りを表情に浮かべるお河童頭の男子生徒、制服の色は純白に限りなく近い白、胸には一等生のエンブレム

そして彼の右手にはTと表記された腕章が付けられていた

 

説明
かなり更新が空いたというよりも
さらに更新が空いてしまいました
申し訳ないです
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だらしのない主人公 あほ毛 

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