真・恋姫無双 〜新外史伝第125話・前編〜
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紫苑たちは黄河を利用して、現在の魏の本拠地である青州・北海に到着した。

 

到着すると直ぐに会談となったのだが、華琳との会談に向かう途中、周りは何も無かったが、雰囲気から何

 

か異質な物を感じとっていた。

 

紫苑・星・真里(徐庶)・秋蘭はそれぞれ無言であったが

 

(やはり予想通り、歓迎されていないようね…)

 

(どうやら『虎口』に飛び込んだようだな。さあ鬼が出るか蛇が出るか楽しみだが、最悪の場合、紫苑だけ

 

でも逃がす様にしないとな…)

 

(さて曹孟徳の器、はっきりと見させて貰うわよ)

 

(華琳様…一体貴女は何をするつもりですか…)

 

内心そう感じながら会見場に向った。

 

そして会見場に到着すると、紫苑たちはその光景を見て驚いた。

 

会見場に完全武装した兵士が並べられ、そして居並ぶ将も同様に完全武装。親衛隊の長である流琉と季衣も

 

完全武装をして恰も紫苑たちを威嚇するように華琳の背後に立っていた。

 

更に会見場の一角には、炊き出し用の大釜を設置して湯を滾らせていたのであった。

 

紫苑たちの驚きの顔を見て、これを考えた桂花はどや顔をしていたが、たまたま桂花の表情を見た真里は今

 

回の仕掛けが桂花の仕業と看破した。

 

異様な雰囲気な中、紫苑は動揺をせず冷静に挨拶をする。

 

「お久しぶりでございます、魏王閣下。本日は蜀王北郷一刀に代わり不肖北郷紫苑が使者として参りまし

 

た」

 

「久しぶりね、北郷紫苑。まずは私の家臣である”夏侯妙才“を助けて貰って礼を言わせて貰うわ。それとど

 

う誑かしたかしれないけど、私の秋蘭を奪うとはどういうことかしら?」

 

華琳は秋蘭を一刀に奪い取られたことで、まだ怒りが冷めていない為、早速詰問を始めようとしたため、秋

 

蘭は紫苑の為に弁護しようとするが

 

「華琳様、それは…」

 

「秋蘭、貴女に聞いてないわ!黙っていなさい!」

 

華琳は秋蘭の弁解を聞こうともせず一蹴する。

 

「改めて聞かせて貰おうかしら、私の家臣であり、そして私の物であった秋蘭を奪った理由を」

 

華琳は凄みを聞かせて紫苑に詰問する。

 

華琳は態とこのような異様な雰囲気を作り上げて、交渉を優位に持ち込み、そして紫苑を屈服させた後、秋

 

蘭を取戻そうと考えていた。

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だが紫苑は華琳の質問に対して臆せずに堂々とした態度で

 

「それについて回答しますが、その前に一つ宜しいですか」

 

「何かしら」

 

「貴女が秋蘭さんの事を物と言うのであれば、秋蘭さんからそれなりの事情を聴くのが筋では無いのです

 

か?それすらしないということは、貴女は秋蘭さんの事を信頼していないというか本当に物として扱ってい

 

るということかしら」

 

「よく言うわね、貴女!」

 

紫苑の指摘に華琳は怒りの声を上げる。秋蘭を奪い取った当事者からそのような事を言われるとは思っても

 

いなかったからだ。

 

そんな怒りの表情を見せた華琳を、紫苑はそれについて予想していたのか、軽く受け流し

 

「そうですか、では説明させていただきます」

 

紫苑は記憶喪失になった秋蘭を発見した経緯から、一刀暗殺未遂の際に一刀が秋蘭を庇い負傷したこと、そ

 

して晋との和平とそれに伴う秋蘭の扱い等について説明したのであった。

 

紫苑の説明を聞いたものの、華琳の不機嫌な表情は変わらず、

 

「何、勝手な事言っているの!私たちが晋に負ける訳無いでしょう!そう言って秋蘭を騙したのでしょ

 

う!」

 

「それは秋蘭の弱みを付けこんだ脅迫でしょう!」

 

列席していた明華(曹仁)、陽華(曹洪)が紫苑に文句を言う。

 

「魏の方々は恩を言う言葉を忘れているようですな。元々秋蘭殿は負傷され、命が失われるところを助け、

 

更に建物の下敷きになるところを我が主が身を挺して助けたのですぞ。その行為に秋蘭殿は主に惚れた事は

 

事実。その結果、秋蘭殿は我が主の妻になったことに何の文句がありますかな」

 

丁寧さが欠ける星の回答に

 

「ふざけるな!」

 

と更に罵声が出るが

 

「では聞くけど、記憶喪失になっていた秋蘭さんを当時混乱の極みであった魏に無事に送り届ける方法は

 

あったの?まずはそこから聞かせて欲しいですわ。それにこのようなこけおどしの出迎え、何処の誰かが

 

やったか知れないけど、よく恥ずかしくも無くやれたわね。身体や胸も小さいけど器も小さいわね」

 

「誰が身体や胸、器が小さいのよ!」

 

「あら、誰も貴女の事は言っていないわ。もしかしてこんな下策、貴女が考えついたの」

 

「ぐぐぐ…」

 

真里からそう言われると桂花は悔しさの余り歯軋りするしかなかった。少々心が弱い朱里や雛里であれば、

 

桂花の策は成功したかもしれないが、胆力がある星や軍師として戦える真里では桂花の策も唯のこけおどし

 

しか見えていなかった。

 

「出迎えの件についてはそちらの興に合わなかったようね。申し訳ないわ」

 

華琳は自分が命じた事を億尾に出さず謝罪する。

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「秋蘭の事は後でじっくりと話を聞かせて貰うことにして、貴方たちが兵も出さず、私たちを助ける方法と

 

やら教えてくれるかしら、下らない案だったら承知しないわよ」

 

華琳は、ここはあっさりと自分たちの非を認め、更に紫苑を試すかのように質問する。紫苑もこれを華琳の

 

挑発と受け取り、微笑を浮かべながら

 

「…ええ正直に言わせて貰いますわ。このまま魏と晋が戦ったとしても兵の士気、地の利これを鑑みて勝つ

 

のは難しいかと、そこで我が主は曹操様はじめ家臣の方々を率いて、蜀に来て頂きたいと、これは我が主北

 

郷一刀からの提案ですわ」

 

「なぁ…」

 

「何!貴様、我々に蜀に尻尾を振れと言うのか!」

 

「ふざけないで!何で私たちが蜀に頼らなくてはいけないの!」

 

華琳は一刀からのとんでもないも無い提案に驚き、春蘭と桂花は紫苑の提案に真っ向から噛みつく。

 

「それはいい考えかも、もし袁術様も無事に保護して戴けるのであれば、私はこの案に賛成しても構いませ

 

んよ」

 

だが元袁術軍の将で現在、魏の将として属している張勲こと七乃が袁術の安泰を保障してくれるのであれ

 

ば、紫苑の提案に乗ってもいいと言ってきたのだ。だがこれにも桂花は反対の声を上げる。

 

「何、勝手な事言っているのよ!」

 

「だってこのままでしたら、魏が滅亡する可能性が高いですから、その前に美羽様を連れて蜀に避難した方

 

がいいかと思ったのですが♪」

 

現在、主君であった美羽については、現状何においても力量不足であったので小間使い兼再教養を受けてい

 

る身であった。魏に仕えているとは言え、未だに美羽第一と考えている七乃にとっては紫苑の提案は魅力的

 

な案であった。

 

「もし私たちが蜀に行った場合、私たちの扱いはどうなるのですか?」

 

今まで一言も発しなかった風が紫苑に質問する。

 

「取り敢えずは、貴女たちを何れかの領土を預ける形にして、そこで再起を図っていただいたらと思ってい

 

ます。こちらの要望は一点、いずれ訪れる晋との戦いの時に参戦してくれることが条件で、これは晋との約

 

定により兵を出す事が出来ない我が国の誠意と秋蘭さんとの約束ですわ」

 

「なるほど〜それは好待遇ですね〜」

 

風はこの状況で蜀に行った場合、飼い殺しされる懸念があったが紫苑の回答を聞いて少々驚きを隠せないで

 

いた。だが言葉と違い表情には出さなかったが。だがそれを聞いた華琳は怪訝な表情をしていた。

 

「秋蘭との約束…貴女、私を救う為に人身御供として北郷一刀に身を差し出したの!」

 

華琳の言葉に秋蘭は首を横に振って

 

「いいえ、それは違います。華琳様」

 

「華琳様や姉者たちを救いたい。これは事実ですが、それだけが理由でありません。上手く言えませんが、

 

私も女として男に愛されたいという部分が残っていたのでしょう…」

 

「秋蘭…貴女…」

 

「はっ!申し訳ありません。ですが…」

 

「黙れ!!」

 

華琳は秋蘭の話を聞いて、秋蘭の心が一刀に奪い取られたと感じた。それは自分でも言葉に言い表せない不

 

快感となり、秋蘭の言葉を最後まで聞こうとせず一喝する。そして一呼吸置くと華琳は

 

「……秋蘭」

 

「はっ」

 

秋蘭を真名で呼ぶと華琳は

 

「貴女が本当に私の為にと思っているのだったら、北郷紫苑を切りなさい。そうすれば、今までの事は水に

 

流してあげるわ」

 

華琳の予想外の言葉に場は一気に凍りついたのであった。

 

説明
今回はこのままだと話が長くなり投稿が遅くなると思いましたので、前・後編と分ける形になりました。

ただ場面的にいい所で話を切ってしまったので、「何でここで切るんや!」と突っ込みがきそうですが、その辺は許して下さい。

そして今回作って、この物語の華琳は器が小さく見えてしまいますが、これも許して下さい。

では第125話前編どうぞ。
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コメント
不利であるが秋蘭の返還要求と魏と晋との争いの不介入で手を打てば多少晋とは粘れたでしょうに…呉の援軍は蜀から使者使わしているから援軍の可能性は高いでしょうに…華琳さんご乱心ですなぁ(はこざき(仮))
雪月さん>正直、この状況では晋に勝つことはおぼつかないでしょうね。全てにおいて(天地人)利に適っていないですから…。(殴って退場)
D8さん>ここの華琳はここの桃香同様酷い状態になっています。更に自分に自信を持っているだけに余計に質が悪い。(殴って退場)
雷起さん>暴走モードに入ってしまっている華琳を止める方法があるのかどうか難しいところ、次回紫苑の動きに注目です!(殴って退場)
雪風さん>風が蜀に降るとしても、罠に掛けられた桃香と愛紗がいたら降るのは難しいでしょうね。(殴って退場)
nakuさん>この会談が無事収まるのか、それとも血が塗られるのか、次回のお楽しみということで。そして紫苑の矢がnakuさんに向けられるのかww。(殴って退場)
牛乳魔人さん>今の華琳は覇王という言葉は似合わず、嫉妬心丸出し状態です。(殴って退場)
naoさん>華琳にとっては恩人というよりは、秋蘭を奪い取った極悪人扱いになってしまっています。(殴って退場)
たっつーさん>誤字指摘ありがとうございます。訂正しました。今の華琳は秋蘭を思いやるより、自分がコケにされたという感覚になってしまっています。(殴って退場)
ataroreo78さん>華琳は秋蘭を奪われ嫉妬して、紫苑に対して不倶戴天の敵となっています。七乃の場合は沈没船から逃げる様な感覚ですかね。(殴って退場)
陸奥守さん>自分でも書いていて凄く劣化させてしまったと思っています。(殴って退場)
禁玉⇒金球さん>あまりにもドロドロとして来た展開。華琳ファンにとっては不本意な展開になるかもしれませんが。(殴って退場)
神木ヒカリさん>このままだったら魏の崩壊を避けれらないでしょう。次回の結果次第でどうなるか。(殴って退場)
Kyogo2012さん>今の華琳は覇王としての欠片は無く、プライドだけ残っている状態です。これを一旦粉々にしないと再起は望めないでしょう。(殴って退場)
makeさん>完全な外道な命令。魏も一つ間違えれば桃香教と同様、華琳教の信者が多くいますから。春蘭が信者であれば華琳の命令は正義ですから、その時は間違いなく…。(殴って退場)
h995さん>正史の曹操と比較したら、華琳は純粋であり、強かさが足りないというところですね。まあここの華琳はそれよりも劣化してますが…。(殴って退場)
ohatiyoさん>普通であれば見放されてもおかしくない状態ですね…。(殴って退場)
Jack Tlamさん>ここの華琳は、仰る通り愛と所有欲を完全に履き違え、自分の物を取られて駄々っ子になっています。ある意味我儘状態です。(殴って退場)
レヴィアタンさん>華琳ファンにとっては、ここの華琳は最悪でしょうね…。(殴って退場)
秋蘭のことひとつとっても、華琳の器量の小ささが目立ち、なんともいえず物悲しい これでは晋に勝てるとは到底思えない (雪月)
完全に自分の思い通りのことしか認めないただの駄々っ子ですね。心酔している信者以外全員から離反してもおかしくないぞコイツ。もはや王とも呼ばないわ。つーかこんなやつが王とは認めない。(D8)
いやもう”駄々っ子華琳様”ですね。紫苑がこの状況をどう打破するのか、ますます楽しみに後編を待ってます!(雷起)
元袁術勢としては、魏から離脱するあるいみ美味しい好機。風は・・どうするか・・このまま暴走覇王に尽くすか・・それとも見限り伝手を頼りに蜀へと行くか・・。(雪風)
もうアカンなこの自称覇王(笑)様は。自分の思い通りにならないと気が済まない我侭な子供そのものですねコレじゃ。(牛乳魔人)
この華琳ひどい劣化覇王だなw恩人を切れって・・・ないわぁ〜^^;(nao)
仮にも使者にしかもその国の重鎮中の重鎮に対して斬れとか、その後に待つ未来も分からないほど視野狭窄になってるとは・・・。もしかして秋蘭の覚悟を試してるつもりなのかもしれないけど、現在の魏の立場を鑑みればそれは悪手じゃないかなー?蜀どころか秋蘭にまで見限られるんじゃないかな?少なくとも外様の七乃はダメだこの君主って切り捨て決意したかも。(ataroreo78)
なんつーかここの華琳には原作華琳の影も形も残ってないな。まあ原作華琳もわけわからん行動ばっかだったけど、ここまでゴミじゃなかったぞ。(陸奥守)
耐え忍んできたのに自失か華琳、隙を突き自分がやられたら不快な事を平然とやってのける紫苑、ドログチャ外交戦は恍惚感を覚えます。秋蘭て高待遇の後脅迫と強要で妾になったのですが紫苑に洗脳されている印象しかない紫苑と蜀の対応こそ秋蘭を道具/物としか見ちゃいめぇ、それは良いけど対漢戦以降の蜀の解離性が凄いような。(禁玉⇒金球)
まともの人間ならこんな命令を出す主に不信感を抱く。この命令で内部崩壊が始まるのは避けられないでしょう。(神木ヒカリ)
決裂ですかね。ま、後々、後悔するでしょうね。蜀に保護してもらっておけばと・・・・・。ケケケケケケケケ。小娘は小娘らしく、縮こまってりゃいいものを。・・・・。なまじ、覇王と呼ばれているから、有頂天になっているのですね。この決断が後々、どう響くのか、楽しみです。(Kyogo2012)
今の華琳は『覇王』ではなく、ただの『外道』に成り下がってしまいましたね・・・・はてさて、秋蘭はどんな行動に出るのか・・・・あと春蘭の動きも気になりますね。(make)
呉√における大失態の後は身持ちを崩しがちだったのを思えば、案外こんなものかもしれませんね。堅い、しかしそれ故に一度傷が付くか転落してしまえば砕け散ってしまうほどに脆い。それが華琳であり、何度も大敗してもそのたびに立ちあがり続けられた、しなやかで強靭だった正史の曹操とは比べ物にならないでしょう。(h995)
完全に亀裂が生じたかな?(ohatiyo)
身勝手ここに極まれり、ですかね…自分が自分がと主張している時点でかつての桃香と何ら変わりない、力を持ち過ぎた小娘ですね。まだましかもしれませんけど、恩知らず、礼儀知らずの二拍子に、秋蘭に「恩人を斬れ」と完全な外道の命令。愛と所有欲を取り違えた哀れな子ですね、本当に…(Jack Tlam)
待ってました!そして今回は魏の方々が荒れてんな〜、冷静なのは風くらいなもんか。まあ、今回を一言でまとめると「・・・華琳(´・ω・`)」ってとこかなw 次回秋蘭がどうするか、楽しみにしてます!(レヴィアタン)
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恋姫†無双 真・恋姫†無双 紫苑 華琳 

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