IS 飛翔する白き翼 第11話
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ラウラからの嫁宣言から1週間・・・一夏の朝は常に波乱に満ちていた。

 

 

時刻は午前8時になろうとしていた・・・

 

 

「ラウラ!?また俺の所に来ているのか!」

 

「何を言う・・・私達は夫婦なのだからこれくらい当然のことだといつも言っているだろう?日本ではこれくらい普通だとクラリッサはいっていたぞ」

 

さも当然のように言うラウラに一夏はため息しか出ない。しかも全裸だから、視線の方向にも困る。

 

(誰だ、こんな間違った日本の知識をラウラに植え付けたのは・・・)

 

 まさか、これを植え付けたのがドイツ軍IS配備特殊部隊「シュヴァルツェ・ハーゼ」の副隊長ともあろう方とは一夏が知るはずはない・・・

 そして、この副隊長の言葉を信じ込んでいるラウラは、毎夜に一夏のベッドに忍び込んでいる。いくら説得し、実力行使として鍵やチェーンをつけていても『コイスルオトメ』(ここテストに出ます)の前には何の意味をなさない。

 しかも、下手に追い出そうとするなら軍隊仕込みの拘束術をかけられる。動けなくなるだけでなく、ちょっとでも動けばかなりの激痛が走るのだ。しかも、その際いろいろと触れる・・・触れるのだ。

 このような朝が一夏の日常の始まりだった。(五反田あたりが聞けば、間違いなく一夏は半殺しだろう・・・しかし、唐変木・ズ・唐変木である一夏にはそんなことは関係ない。)

 

「勘弁してくれ・・・」

 

一夏のつぶやきはラウラの耳には届かない・・・

 

第3アリーナ

 

 その頃、一夏の同室者であるヒイロは第3アリーナに来ていた。昨日更識 簪の専用ISが完成したというので、試験運転に付き合って欲しいという申し出をうけたのだ。以前に約束していたことと、別段の用事もなかったためヒイロはすぐに承諾した。新型の情報を得るためにも好都合だった。

 

「・・・お願いします」

 

 打鉄弐式改を身に纏った簪が超振動薙刀『夢現』を構える。機体自体は以前データで見た弐式とは背部の荷電粒子砲がなくなっただけのようだ。

 FAウイングを展開したヒイロは、ガトリングを構えて簪に相対する。

 

「では、開始!!」

 

 沙紀の合図で、2機が同時に動く。ガトリングから放たれた弾丸が弐式改に迫るが、簪はそれを冷静に避け、ミサイルを発射する。

 

「向かって!」

 

 ヒイロは、その場から動かず放たれた10数発のミサイルに照準を合わせる。

 

「迎撃する」

 

 ウイングの全身に装備されたミサイルとガトリング、マシンキャノン、背部2連装レーザー砲が一斉発射され、ミサイルを一つ残らず駆逐していく。

 

「これくらいは想定済みです」

 

 その隙にヒイロの後ろに回り込んだ簪は、夢現で斬りかかる。

 

「その程度は」

 

 それをヒイロは左手で抜き取ったサーベルで受け止める。夢現はアーチは長いが、間合いに入ってこられれば、攻め手に欠けるという弱点がある。だが、それは簪が一番わかっている。

 

「これなら!」

 

 簪は、右手に大型のライフルを展開した。銃自体はバスターライフルより長く、脇で抱え込みながら持っている。力押しでガンダムを押しとばすと、簪はトリガーを引いた。しかし、銃口から放たれたそれはレーザーではなく、真紅の粒子ビームだった。

 

「ビーム、倉持が言っていたのはこれか」

 

 砲の大きさから見れば、AC世界に比べればまだまだだ。しかし、ビーム兵器はビーム兵器。この世界の技術力をもってすれば、小型化できるのはそう遠くはないはずだ。

  観客席でみていた沙紀は、『陽炎』が上手く発射できたことに笑みを浮かべていた。

 

「カートリッジ方式にすればいいなんて、なんで今まで考えなかったんだろう」

 

 この世界における携行サイズのビーム兵器の問題は2つあり、それは粒子発生装置とエネルギーの消費量であった。粒子発生装置はヒイロが来て少したって開発されたが、その大きさ故に護衛艦か基地に設置されようとしているぐらいだ。また、エネルギーの消費はISに関して言えば死活問題である。しかし、ウイングガンダムのバスターライフルを参考にカートリッジ方式にしたことで粒子発生装置の問題、戦闘中のエネルギー消費の両方の問題がなくなったのだ。

 

「当たって!」

 

 山嵐からの牽制ミサイルと陽炎からビームが放たれるが、ヒイロは避けるか、シールドで防ぎつつ、攻撃をしかける。その中で、ウイングのヒートロッドが陽炎を傷つけた。

 そして、その後陽炎からビームを発射されたときだった。陽炎の銃身あたりに一瞬だが電気がはしる。

 その直後沙紀が表示させている打鉄弐式改のデータに異常を知らせるアイコンが表示される。

 

「いかん、制御装置が暴走しちゅう!簪ちゃん、陽炎を捨てて!!」

 

「えっ?」

 

 通信回線で簪にも聞こえたが、既にトリガーを引いた後だった。ビームが放たれると同時に陽炎が爆発を起こした。

 

「きゃあ!?」

 

 残っていたカートリッジに誘爆し、打鉄弐式改を飲み込むほどにまで爆発が大きくなる。シールドバリアーと絶対防御がなければ、簪の命はなかっただろう。右山嵐が喪失、装甲の何割かを破損したが、簪自身は軽い火傷を負ったぐらいで済んだ。

 

技術室

 

 「あちゃー、外装だけかと思っていたのに・・・駆動系がかなりやられちゅう」

 

 陽炎の爆発は外装だけでなく、内部までダメージを与えていたようだ。特に右腕関節部が損傷がひどく、右腕は全て入れ替えなくてはならなくなっている。

 

「直りそう?」

 

「時間が掛かりそうやね。今は、神識と白式の方に人手が回っているし・・・来週の臨海学校には間に合わんかも」

 

 神識が打鉄にかわる次期主力機として決定したため、量産に向けて倉持技研は体制を整えなければならなくなった。また、残りのスタッフは白式にまわされている。なにせ白式は、ガンダムを除く唯一の男性である一夏が運用しているのだから様々なデータを得なければならない。これは、日本国政府からの命令でもあり、どうしようもないのだ。

 なぜなら、ガンダムのデータはヒイロによって厳重に秘匿されているために入手できないから白式から得るしかないのである。

 

「また、また、あの男のせいで・・・」

 

 そのつぶやきをヒイロは聞き逃さなかった。打鉄弐式改の完成自体が一夏によって遅れていたのだ、簪が一夏に対して敵対心を持つのは当然だろう。

 

「まあ、可能な限り早くするから・・・」 

 

 本音の所属するIS学園整備科の生徒に頼む方法もあるが、整備科は臨海学校用に送られてくる装備の調整があるため、忙しいので頼めない。このままでは臨海学校へは確実に間に合わないことは確実だった。ヒイロは再び損傷状況をみた。

 

「この程度なら俺も協力する。機体だけなら来週までには完了するだろう」

 

「え?」

 

 その言葉に簪は思わずヒイロの顔を見た。

 

「倉持、パーツはあるのか?」

 

「あるよ。山嵐も前型のならあるし、打鉄弐式改のベースは打鉄と神識だから部品の互換性は問題ないき、それは大丈夫・・・」

 

 武装に関しては陽炎と山嵐を一時的に失ってしまった。しかし、山嵐は改修前の物があり、神識と同様のパック用コネクタを装備しているため問題ではなかった。

 

「なら、パーツを明日の朝までにここに用意しておけ。今日はここまでだ」

 

そう言ってヒイロは、あっけにとられる2人を置いて整備室を出た。

なぜ、あのようなことを言ったのか、ヒイロ自身もわからなかった。ただ、簪の自身の機体に対する思いに動かされたのかもしれない。

 

「俺も人としての気持ちを取り戻したとでもいうのか・・・まさかな」

 

その答えにこたえられる人は『この世界』にはいない・

説明
簪の新型打鉄弐式改との模擬戦が始まる・・・
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ヒイロ・ユイ クロスオーバー ガンダムW インフィニットストラトス 

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