「真・恋姫無双  君の隣に」 第22話
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久しぶりだな、こんな静かな時間を過ごすのは。

月の邸の庭で寝転がって、のんびりと日光浴に甘んじてる俺だった。

今、邸にいるのは俺と月だけ。

明日の出発の準備は出来てるから、美羽達は星の案内で洛陽の街に繰り出してる。

本当は俺も行きたかったけど、見つかると人に囲まれて身動き取れなくなるからと止められた。

翠と蒲公英は妹達に兵の引渡しに行ってる、挨拶しようと思ったけど翠に同じ理由で却下された。

恋とねねはセキト達と散歩。同行しようとして以下略。

こうしてると昨日の事が嘘のようだな。

「・・俺が、王か」

美羽が自分で出した答えは、俺への王の禅譲。

俺が思っていたよりも美羽はずっと成長していた、そして俺も決意する。

大陸の王になる。

華琳にも雪蓮にも負けない、この大陸に生きる人達の思いを全部受け止めてやる。

「一刀様」

「ああ、月。こんな格好で失礼するよ」

「いえ、お気になさらないでください。お隣、よろしいですか?」

「歓迎するよ。でも服が汚れないか?」

「その事を言われるなら一刀様もですよ。そうですね、それではこう致しましょう」

そして俺は月に膝枕してもらってる。

何ていうか、幸せです。

 

 

「真・恋姫無双  君の隣に」 第22話

 

 

「お姉様、本当に半分も連れて行っていいの?二人も困惑してたよ」

「仕方ないだろう、まさか兵の殆んどが従軍を申し込むとは思わなかったんだから」

「一刀様と今後も一緒に戦いたい者って言ったのは拙かったねえ。お姉様だけだと三千位だったのに」

「その辺は器の差だから気にしちゃいないが、まあ大丈夫だろう、国に何かあっても長安からなら直ぐに駆けつけられるし」

「そうだね。それに一刀様が言ってたように、長安の治安が良くなれば涼州全体に好い影響が出るよ♪」

長安は涼州からだと他州への玄関みたいなもんだからな。

発展すれば人も物も動いて、その結果涼州は栄える。

西域から来る商人達とも積極的に交易して、五胡とも月を通して外交を続けていく。

これまでの経緯から直ぐに仲良くするのは無理だけど、何十年かかっても会話をしていきたいって一刀が言ってた。

本当の意味で涼州人が戦ってきた事に報いる為に、か。

「ホント、かなわねえや」

「ん、何のこと?」

「一刀だよ。あたしらより涼州の民の事を考えてる」

「そうだね、流石はたんぽぽ達の旦那様だよね♪」

「ブッ、だ、誰が旦那様だよ、あたしは認めないぞ」

くそっ、何でこんなに顔が熱くなるんだよ。

蒲公英、何だよ、そのにやけ顔は。

「だって七乃さんが全員責任取ってもらうって言ってたじゃない。良かったね、お姉様。叔母様もずっと心配してたんだから、「あのじゃじゃ馬の婿なんて馬以外この世にいるのか」って」

母様、あたしの旦那は馬なのかっ。

 

美羽達に街を案内しているのだが、反応はいまひとつの様子だ。

「う〜ん、めぼしいもんがないなあ。都やから期待しとってんけど」

「こっちもなの〜、数はあるけど目新しいものは全然無いの。美羽ちゃんに似合いそうな服を探してたのに」

「これでも月さんの政で随分良くなったらしいですけどねえ。仕方ありません、買い物は諦めてお茶にでもしましょうか」

「むう、寿春なら何処からか美味しい匂いがしてくるのじゃがのう」

「美羽様、我々から離れないでください。残念ですが、治安が行き届いているとはいえないようです」

厳しい評価だが止むを得んな、寿春ほど栄えている地は他では無かったからな。

「それでは私のいきつけの店に案内しよう。この人数でもくつろげる部屋があるところなので丁度良かろう」

明日は互いの領地に戻る。

主が王と名乗りを上げるのはまだ先の話。

今しばらくは袁術軍、董卓軍として別行動だ。

翠と蒲公英は月を支えてほしいと主に頼まれ長安に共に来る。

表面上は大きな変化が見られないので、漢や諸侯を刺激することは無いという訳だ。

連絡は密に取るし、政も主の方針にて行っていく予定だ。

・・うん?何やら騒がしいな。

騒ぎの元に近づくと、翠と蒲公英が何やら言い合っていた。

「翠、蒲公英、往来で何を騒いでおるのだ。兵の引渡しは済んだのか?」

「済んだよ。お姉様は一刀様の事でちょっと興奮しててね」

「興奮なんてしてない、おまえが変な事を言うからだ!」

ほほう、何やら楽しそうな会話をしていたようだな、・・これは問い詰めねばなるまい。

「今から美羽達とお茶にしようと店に向かっていたところだ。良かったら二人も来ぬか」

「うん、行く行く♪」

「そうだな、咽も渇いたし付き合うよ」

店に着き部屋に通してもらい、軽くつまむ物と飲み物を注文する。

お茶を飲み、頃合いと思い皆に質問する。

「貴公ら、主とは既に閨を共にしたのか?」

 

「美味いな、月は料理が上手なんだな」

へう、照れます。

「私の母から教わった天水の郷土料理なんです。各家庭によって少しずつ味も変わっているので、お店では出ないんです」

「受け継がれていく味、いや心か。月のお母さん、きっと素敵な人だったんだろうね」

「はい、綺麗で優しくて自慢の母でした」

いつか母様のような素敵な女性になりたいと思っています、ですが母様もそうでしたが身体が小柄なのはどうにもならないのでしょうか?

母様は小柄でも母性豊かな体型だったのですが。

「月のお父さんが羨ましいな。俺も月のお母さんみたいな嫁さん欲しいなあ」

明日から特訓です、必ず母様を超えてみせます。

 

「星!おまえは何を聞いてんだ。美羽もいるんだぞ」

「これは、お嬢様の大人の階段を昇る時機の到来?お嬢様が恋する姿、あんな表情やこんな行動が遂に見られる時がきたのでしょうか、ハァハァ」

「ほほう、ウチ等にそれを聞いてくるとは、星、アンタも狙っとんな」

「え〜、恥ずかしいの〜、でも話しちゃおうかな、なの」

「聞かせて、聞かせて。どうなの、やっぱり凄いの?」

「凪、何故耳を塞ぐのじゃ。妾は仲間はずれか」

「いけません。まだ早すぎます」

「ふむ、反応から見るに七乃、真桜、沙和は既に手がついているようだな。凪はまだのようだが、主との空気が甘くみえる、何かはあったな」

「凪、他はともかくお前もなのか!」

「い、いえ、何もありません」

「凪、ウチと沙和の目を誤魔化せると思うてんのか?」

「凪ちゃん分かりやすいの。きっと口付けはしたと思うの」

「戦の後で空気が変わってましたから、戦の最中ですね。流石は一刀さん、戦時中でも獣ですね」

「ち、違います。最初は明命殿が現れて未遂だったんです。宰相がお疲れで添い寝を頼まれた時に魔が差しただけなんです」

「添い寝なら妾もいつもしとるぞ?」

「そうなの?たんぽぽも負けてられないね」

「あ、あのエロエロ魔神、まさか美羽にまで手を出しているとは」

「ふむ、流石は我が主。英雄たるものそうでなくてはな。よし、酒を頼もう、まだまだ面白い話が聞けそうだ」

 

ふう、気持ちいいな、露天風呂があるとはね。

やっぱり健康や衛生面を考えると公共の入浴施設も造っていきたいな。

石鹸も作れば産業の一つになるし、真桜と相談してみるか。

でも今はアレの作成が第一だしな、予算を抑えられて手間が少ない簡易サウナを増やす方向でいくか。

あれこれ考えていると、

「か、一刀様、お背中お流しします」

幻聴?か細い声が聞こえて振り向くと、手拭い一枚の月がいた。

 

「ほう、それでは孫家の孫策、孫権姉妹も主に惚れているのか」

「家臣の甘寧さんと呂蒙さんもですね。態度は正反対のお二人ですが好意が駄々漏れです」

「亞莎、抜け駆けしてしまった私を許してくれ」

「凪、最初に抜け駆けしたんは沙和や。アンタなんてかわいいもんや」

「一番最初に口付けしたのは真桜ちゃんなの、人の事言えないの」

「ね、ね、どんな感じだったの。やっぱりドキドキした?」

「たんぽぽ、そんな事聞くんじゃない。美羽がいるんだぞ」

「ふむ、確かにドキドキしたの。体中が痺れた感じじゃった」

「「「「「「「 !!!!!!! 」」」」」」」

「お、お、お、お嬢様!いつの間に?絶対見届けようと思ってましたのに」

「さ、宰相。まさか」

「大将、それは流石に拙いやろ」

「鬼畜、鬼畜なの〜」

「たんぽぽも早くしたいな〜♪」

「み、美羽まで毒牙にかけてたなんて」

「驚いたな、主は本当に私の想像を超える」

「一刀は寝とったがの。七乃が時々寝てる一刀に口付けしとったんで妾もやってみたのじゃ」

「「「「「「原因はお前かーーーーーーっ!!!!!!」」」」」」

「お嬢様、起きてらしたんですか?でも薄目で私と一刀さんの姿を見てドキドキしてた美羽様、それはそれでハァハァ」

「まさか美羽がおる横でヤッとるんちゃうやろな」

「変態、変態なの」

「だって一刀さん、寝ながら色々触ってくるんですよ。変に昂ぶらせられたこっちの身にもなって下さい。あれは生殺しです」

「・・確かに、私の時もそうだった」

 

「大丈夫、辛くない?」

「はい、大丈夫です」

一刀様の腕の中で私は幸せに包まれています。

好きな人に愛される事は言葉に出来ないほど幸せな事でした。

「月、好きだよ」

「一刀様」

お風呂から出るまで、一刀様に包まれてました。

 

「今なら言うてもええやろけど、大将出会うたその日の晩に、華琳、曹操はんと夜中に逢引しとんねん」

「初耳だぞ!翌日に真名で呼び合ってらしたので、何時の間にとは思っていたが」

「以前から知り合ってたらしい桂花、筍ケちゃん達だけじゃなくて、他の娘達とも凄く打ち解けてたの」

「まあ、そこは一刀さんですから特に不思議ではありませんが、曹操さんの事は後でしっかり問い詰めましょう」

「七乃、何か怖いのじゃ」

「何で孫策とか曹操とか他国の王と仲良くなってんだよ。おかしいだろ」

「ホントに規格外だね」

「英雄、色を好むとは言うが、これは他にも居ると思っていた方がよさそうだ」

「劉備はんと諸葛亮はんも間違いないやろ」

「尊敬されてただけではないのか?」

「凪ちゃん鈍いの。あれは自覚する手前ってところなの」

「一刀さんは基本受身ですから、せまらなければ手は出しませんよ。この間の袁紹さんのように普段は無意識に口説き落としますけどね」

「麗羽お姉様も一刀を好きなのか?あんなに怒っていたのに驚きなのじゃ」

「ちょっと待て!敵の総大将まで口説いてんのかよ」

「お姉様、だから無意識だって」

「う〜む、これは悠長に構えていては拙いか?」

 

「恋、ねね、お帰り。わっ、セキトくすぐったいよ」

セキトが胸に飛び込んできて、堪えきれずに尻餅をつく。

「ただいま、セキトずるい、恋と代わる」

恋がセキトを摘み上げて後ろに放り投げる、見事にねねのところに、あっ、転んだ。

そのまま恋に抱きつかれて押し倒されてしまう、嬉しいけど月とねねがいるよ?

胸でスリスリしていた恋が顔をあげて月を見る。

「月の匂いがする」

恋の無垢な目で見つめられた月は真っ赤になって、

「へう〜」

と言いながら邸に走っていった。

俺はどうしたものかと考えてると、

「恋の匂いもつける」

恋に唇を奪われる。

へう?状況の理解が脳に届かない俺に、ねねの叫び声が聞こえてきた。

「恋殿ーーーーーーーーーーっ!」

 

「お姉様、意地張ってる場合じゃないよ。積極的に行かないと皆ずっと先に行っちゃうよ」

「ずっと先って、あたしにどうしろってんだよ」

「問答無用で押し倒して唇を奪えばよかろう」

「出来るかっ!」

「凪、アンタもやで。気持ちはハッキリしとんやから躊躇うとったらアカン」

「そうなの、大丈夫、宰相なら優しく受け止めてくれるの」

「し、しかしどうすればいいのだ。既に二回も機会を逃してしまったんだぞ」

「そうですね、一刀さんがお風呂に入っている時にお背中流しますと言って、そのまま雪崩れ込むというのはどうでしょう」

「そ、そんな事をしたら宰相の裸を見てしまうではないか」

「お風呂じゃから裸で当然じゃろ?」

 

「いいですか、一刀殿。確かに恋殿は大陸最強の神々しいまでの武勇をお持ちで可憐で玉のような肌をお持ちでお優しくて純情で奇跡のような素晴らしいお方ですから一刀殿が劣情を持ってしまうのも仕方ない事かもしれませぬがそれでもこのような場所で押し倒しなおかつ唇を奪うなど男としてなす事ではありませぬぞ恋殿の繊細な御心に傷がついてしまったらどうするのですか確かに恋殿はねねと共に一刀殿に忠誠を誓いましたが女子としての心まで捧げた訳ではないのでありまして・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

一刀、正座してる。

ねね、話長い。

つまらないから一刀に抱きつく、あったかい、ここ恋の場所。

「一刀殿!ねねの話を聞いているのですか!どうして恋殿を抱きしめるのですか!」

「ねね、出来れば冷静に状況を判断して欲しいんだけど」

「ねねは軍師なのです。いつでも冷静に判断してるのです」

ねね、怒ってる、怒るのよくない、お腹空く。

「ねね、こっち来る」

「恋殿〜」

「ねねも一緒にする、ねねならいい」

「いや、恋、それは」

「そうです。恋殿とねねは一心同体なのです。恋殿を抱きしめる時はねねも一緒でなくてはいけないのです」

「・・そうなの?」

「当然なのです」

 

うん、お店で聞いた話は間違いなく真実だね。

邸に帰ってきたら庭で恋さんとねねちゃんが一刀様に抱きついてたし、月さんの様子が朝と違うって七乃さんが言ってたし。

お姉様は許容量が超えたみたいで気を失っちゃった。

大丈夫かなあ、やっぱりたんぽぽが先に経験して教えてあげたほうがいいかな?

一刀様は七乃さん達が連れて行っちゃったから、たんぽぽも星さんも夜這いできなくなっちゃった。

明日お別れだから次に逢えるのはいつだろ。

でもきっと直に逢えるよね、一刀様は負けないもん。

だってみんな一刀様が大好きで、一刀様は好きな女の子を泣かせたままにしないから。

どんな状況になっても、きっと何とかして笑顔にしてくれるよ♪

 

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あとがき

小次郎です。今回ももしくは初めて御覧いただけた方もお読みいただきありがとうございます。

ゴールデンウィーク何それ?という状況の私ですがどうにか投稿出来ました。

やはり疲れているのでしょうか、これまでの世界観、ぶっ壊しかねない話が出来ました。

もしご不快に思われたなら拠点話ということで割り切っていただけたらとご容赦願うものです。

最後にコメント蘭にご記入していただけてます方、話の参考にもなり、モチベーションもあがりとても嬉しく思っています。

それでは次回もよろしくお願いします。

説明
美羽たちの思いを受けた一刀は大陸の王になる決意を固める。
そんな一刀の傍にいる恋姫たちは
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コメント
さすが種馬というエピソードでしたb(はこざき(仮))
目星いもんが→めぼしいもんが:「めぼしい」は辞書を見る限り漢字がないようです。「目星」と「めぼしい」は異なる単語だから直したほうがいいと思う。(XOP)
コマさないチンコはただの泌尿器だ…一刀=チンコの証明。(禁玉⇒金球)
落とす速度がはんぱねぇwさすが一刀w(nao)
たまには閑話休題も必要ですよ♪この作品すごく好きです!次回も楽しみにしてます♪そして凪ェ・・・亜沙はとっくにチューしとります・・・(kazo)
店の会話がそのまんま一刀の行動になっとるwwwそして月と恋可愛いよ(´д`)hshs マイペースで良いので頑張って下さい!続き楽しみにしてます!(レヴィアタン)
一刀さん・・・さすがです(戦慄)(黒乃真白)
茶店でガールズトークしてる面々の悶々とした話題の外でさりげなく月を手籠めにしやがったぞこの種馬…やれやれ。(Jack Tlam)
さりげなく月に手だした!(地球ジェット…)
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 北郷一刀 真・恋姫無双 

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