魔導師シャ・ノワール月村偏 第三十二話 月村騒動
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二度目、いや、これで三度目。

 

広い森とも言える庭を持つ月村邸。

 

鮫島にリムジンで送られて到着した。

 

徒歩で門をくぐり。ゆっくりとした足取りで屋敷へと向かう。

 

どことなく機械的な視線が突き刺ささっていた。

 

すぐ傍を歩くなのはにだけ、聞こえるように小さく呟いた。

 

「歓迎はされてないな」

 

「そっかな?いつもと変わらないけど」

 

俺の言葉にニコニコと笑いながら返してくる。

 

いや、確かに俺一人に向けられた視線なのだろう。

 

既に何度も訪れている、なのはは警戒する対象ではないのだろう。

 

 

「あ、あの・・・」

 

「なんだ?」

 

すずかが不安そうに俺に語りかけてくる。

 

「そんなに警戒しないでください。なにもしませんから」

 

「ああ、俺も恩のある相手に対して先に刃を向けるつもりはない」

 

そう、先にはな・・・。

 

「ノワールくん?」

 

「あ?アイダダダッ!?」

 

突然、なのはによってほっぺたを引っ張られる。

 

「そういうのは良くないと思うの」

 

「ほっとぉ!?」

 

「そう殺気だってるとちゃんとお話もできないよ?」

 

「わひゃった!わひゃったてば!!」

 

「うん、よろしい」

 

引っ張られていた頬が開放され。その様を見ていたすずかとアリサが微笑ましそうに笑っていた。

 

 

なんか、最近遠慮なしだな。こいつ(なのは)は

 

 

 

 

まあ、なのはも居ることだ。悪いようには転がらないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

??side

 

「目標が網に掛かりました」

 

「ああ。あの魔導師だな?」

 

「肯定...」

 

「なら決行だ。屋敷に居る者を全員血祭りにあげるぞ」

 

「全人形兵を起動させます」

 

 

 

??side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいノワールちゃん。なのはちゃんにアリサちゃんもよく来たわね」

 

「・・・どうも」

 

「忍さんこんにちは」

 

「おじゃまします」

 

 

玄関を入るとすずかの案内ですぐに洋室の客間に通され。先に部屋のテーブルには月村忍が席に付いていた。

 

部屋は窓が少なく。やや、薄暗い。

 

屋敷に入ってからよく目を凝らしてあたりを見てきたが。

 

天井や置物のインテリアなどにはカメラやセンサーが複数存在している。

 

猫の姿で助けられた時も少し疑問に思っていたが。

 

やはりただの金持ちの家ではない。夜の一族か・・・・。

 

 

「すずかから話はさっき電話で聞きました。まずは妹を助けてくれたこと感謝します。ノワールちゃん」

 

 

忍は笑を浮かべているがそれはとって貼り付けたような笑顔だ。感謝よりも警戒心の方が高いのだろう。

 

「別に、借りがあったからな」

 

視線が交差し。互の目を見つめ真意を探り合う。

 

部屋にいるなのはを含めた他の人間はそのやりとりに固唾を呑んで見守ってしまった。

 

「借り、ですか・・・。ああ、ごめんなさい。気にせず席に座って。今、ノエルにお茶を用意させてるから」

 

長方形の長いテーブルの席の中、忍の向かいの席に腰を下ろした。

なのはとアリサも隣へ座り、すずかは忍の横に座る。

 

着席すると同時にノエルというメイドが現れ。紅茶を人数分入れて配膳を済ませるが。

 

俺は一口も手を付けずに忍と見つめあう。

 

「早速だけどノワールちゃん、質問させてね。貴方は何者?」

 

 

「自分の屋敷に態々呼んでおいて行き成りそれか?まず、自分の事を話したらどうだ?」

 

 

先ほどよりもやや敵意の篭った視線が互いにぶつかり合う。そんな時...

 

 

「あ、あの忍さん」

 

「ん?な〜に〜なのはちゃん?」

 

なのはに突然、話しかけられたにも関わらず。忍は、普段と同じ態度に切り替わって言葉を返す。

 

「わたしからノワールくんの事とかお話させてもらってもいいですか?いいよね?ノワールくん」

 

 

確かに、なのはからの言葉の方が無駄な警戒はないだろう。

 

 

「勝手にしろ」

 

「うんっ!」

 

なのはは、任されたことが嬉しいのか元気に返事を返してゆっくりと話を始める

 

魔法のこと、俺達の出会い。この街で起こった事件のことなどが、なのはの口から語られていく。

 

なのはから語られた俺の経歴については眉を潜められるも話は続き。

 

なのはに用意されて居た紅茶が無くなり。俺の手付かずの紅茶は話が終わるころには冷めていた。

 

全て話が終わってからというもの、皆、思うところがあるのか、難しい顔をしている。

 

 

「ちょっと聞きたいんだけどいいかしら?ノワールちゃん」

 

「なんだ?」

 

最初に比べるとかなり柔らかくなった口調で尋ねられる。

 

「なのはちゃんから話を聞いた限りだと。すずかに何か助けられたようなことは語られなかったような気がするんだけど?」

 

「う〜ん。わたしが知ってる事は全部話したんだけど...」

 

「あ、そういえばそうだね」

 

「うん、私も気になってた」

 

なのはとすずか、それにアリサまでが声をあげる。

 

だが、どうにも言いづらい。海岸で拾われた黒猫が俺だったとは。

 

しかし、こういった小さな疑問は。相手との疑惑という摩擦を生む結果になるわけで、好ましくない。

 

 

「はぁ・・・前に黒猫をすずかが拾っただろ?あれは俺だ」

 

「「「「え?」」」」

 

全員が目を丸くしてこちらを見つめてくる。信じてもらえてないか?

 

なら、見せたほうが早いな。

 

「術式 シャ・ノワール」

 

体が光り輝くと。体が縮んでいき。椅子の上に乗っかる形で黒猫へと変身した。

 

そのままテーブルにピョンとジャンプして上る。

 

そして、しなやかな黒いしっぽを体に纏わせるようにして座った。

 

「どうだ?信じてくれたか?」

 

 

 

 

 

「「「「かわぁいいいいいいいいい!!」」」」

 

全員が一斉に叫んだ。

 

「え?そっち?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごほんっ・・・では、私達のことをお話しましょうか」

 

「あ、ああ」

 

今では猫の姿から人に戻っているが、あれから一通り抱っこされたり撫でられたりして。

 

精神的に疲れてしまった・・・。

 

 

「私達のこと...と言っても、あまり深いことまで言うと長い長い昔話になってしまいますから

 簡素にだけ話すことにしましょう」

 

 

つまりは込み入った話は言いたくないと。ま、興味もあまりないからいいが。

 

 

「私達は簡単に言えば物語に出てくる吸血鬼に似ています。無論、日光に弱いわけでもニンニクや聖水が苦手でもありません。ただ、人よりも身体能力が高かったり。異形の力を持っていたりします。」

 

「ふむ・・・」

 

こういった話を聞いても、俺自身が魔法を使うので反応に困る。俺は非一般人なのだ

 

「フフッあんまり驚いてませんね?」

 

「まあ、魔導師としては、あまり驚くことじゃないな。数ある世界にはドラゴンに似た生物とかも存在してるし」

 

「そう・・・。話を続けるわ。力に関してはそんなものよ。私達が人と違うのはもう一つあるわ」

 

 

吸血鬼という単語から想像は付くが。

 

 

「血か?」

 

「・・・ええ。私達はある一定の年齢を迎えると定期的に血液を摂取しなければ生きて生けません。私も妹のすずかも」

 

それを聞いたなのはとアリサは固唾を呑むが。俺は疑問を口にする。

 

「それで?」

 

「それでって?」

 

「いや、だから血が必要なのはわかったけど。それでどうかしたのか?」

 

「それになにか思うところはない?」

 

「特にないが?」

 

 

俺からすれば病気などで定期的に薬や人工透析をする人と違いが感じられない。

 

確かにいろんな力も増えるのだろう。一般人からしたらバケモノと呼ぶかもしれない

 

すずかとアリサを誘拐したあの誘拐犯のように。

 

だが、少し人と違うなら俺やなのはにも言える。

 

傷ついた俺を助けた心優しい少女がバケモノならば。この世界に人間は存在しないと俺は思う。

 

 

「そう・・・。貴方ならすずかも《ブーッ!ブーッ!》警報ッ!?」

 

 

屋敷の内部が慌しいサイレンが鳴り響き。部屋の扉が開かれメイドであるノエルが入って来た。

 

 

「忍お嬢様、侵入者です。この前のすずかお嬢様を攫った一味の残党かと」

 

「そのようね」

 

 

鋭い視線が二つ俺に向って突き刺さる。

 

確かに俺が屋敷に入っている状態で侵入者が出るとは出来すぎている。

 

偶然に偶然が重なった結果だが。それで衝突した結果になろうとむざむざと殺されるつもりはない。

 

ネックレスのクローシュを握り。座っていた椅子を倒しながら後ろへと下がった。

 

突然の行動になのはもアリサも反応できていない。

 

ノエルが忍の前に出て、何時でやり合える間合いに近づいて来る。

 

一気に一触即発の状態になってしまった。

 

 

 

「クローシ「待って!ノエルさんッ!ノワールさんッ!」月村すずか!?」

 

「すずかお嬢様・・・」

 

 

 

突然、俺とノエルの前にすずかが立ちふさがり。声を上げた。

 

「待って二人とも!ノワールさんはわたしを。危険を冒してまでわたしとアリサを助けてくれた人です!

 確かに怪しいところもあるけど・・・。それでも私は彼が悪い人だとは思えないの」

 

悪い人じゃないか・・・。

 

「クローシュ・セットアップ」

 

体が光に包まれ、一瞬で真っ黒なバリアジャケットが展開され。右手にはクローシュが握られる。

 

「すずかお嬢様!離れてください!」

 

「の、ノワールさん?」

 

「ノワールくんッ!?」

 

恩返しは誘拐の件で返しているとも言えるが。なのはの友達を危険に晒すわけにもいかない。

 

 

「そう早るな。なのは、お前はここを守れ。俺は奴らを狩って来る」

 

「あ、うんっ!気をつけてね!」

 

なのはの言葉に頷くと。忍達も警戒を解いてくれた。

 

「なるほど、そういうことですか。早とちりが過ぎましたね。では、私も参るとしましょう」

 

メイドのノエルが部屋の扉を開いて外へ向う。

 

「ああ、道案内は頼んだ」

 

 

 

 

 

「あ、あの!」

 

「ん?」

 

ノエルと共に部屋から出るところですずかに呼び止められる。

 

「なんで・・・わたしたちを助けてくれるんですか?」

 

問われれば理由は複数ある。恩人、なのはの友達、店のアルバイト店員にその妹という知人。

そして、なによりこいつらは。悪い奴らじゃない・・・。

 

そうか、この気持ちは傭兵時代などにはない感情。

 

 

 

 

助けたいんだ。この人達を。

 

 

 

だが、時間もない。色々と端的に述べて置こう。

 

「大切な人だからだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すずか side

 

 

「大切な人だからだ」

 

そう言うとノワールくんはノエルと共に部屋から出て行ってします。

 

 

 

 

「ねぇ、なのはちゃん」

 

「うん?」

 

なのはちゃんに向き直って尋ねます。

 

「わたしの事、今でも友達って思ってくれるかな?」

 

「そんなの...」

 

「・・・」

 

やっぱり...だめかな?

 

バケモノでこんな危険な目に遭わせてるわたしなんて。友達には....

 

「当たり前だよ。すずかちゃんとは、ずっと友達だもん」

 

「ッ!!」

 

「そうよ。すずかに前にも言ったけどなのはも友達のまま居てくれるって」

 

「アリサちゃんなのはちゃん・・・ありがとう。うぅ....」

 

感極まって泣きそうになるわたしをなのはちゃんとアリサちゃんが抱きついてくれます。

 

 

「なんだか上手く纏まりそうね。あとはこの騒ぎとノワール君か・・・」

 

一人、月村 忍が部屋の窓から外を眺めて目を細めていた.....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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珍しく連日投稿。

 

月村編はだいたい書き終えてるので。細かい修正が終わり次第の投稿です。

 

内容的には少々荒い部分もありますがどうぞお付き合いください。

 

 

 

 

 

 

 

 

※読んでくれてありがとうございます!感想などなどはお気軽に!

 

 

 

※誤字脱字などの指摘もどんどんお願いします。

 

 

 

※また誤字脱字や妙な言い回しなど見つけ次第修正しますが特に物語りに大きな影響が無い限り報告等は致しませんのであしからず。

 

 

 

 

 

説明
神様などに一切会わずに特典もなくリリカルなのはの世界へ転生した主人公。原作知識を持っていた筈が生まれ育った厳しい環境の為にそのことを忘れてしまい。知らず知らずの内に原作に介入してしまう、そんな魔導師の物語です。 ※物語初頭などはシリアス成分が多めですが物語が進むにつれて皆無に近くなります。 ※またハーレム要素及び男の娘などの要素も含みます。さらにチートなどはありません。 初めて読む方はプロローグからお願いします。
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コメント
面白い展開に成ってきましたね(アサシン)
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