真・恋姫無双「武人として、一人の男として?」7
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とある荒野

 

 

 

夏侯惇「押せ!押せ!押し切れぇい!」

 

季衣「春蘭様!敵、撤退していきます!」

夏侯惇「なに、もうか!?」

季衣「・・・はぁ。見ての通りです。」

夏侯惇「ちっ。益体もない。」

 

 

陳留から少し離れた場所で、春蘭と季衣は秋蘭と共に近頃になって現れ始めた暴徒の鎮圧を行なっていた

 

 

季衣「追撃はどうしましょう?」

 

夏侯惇「そうだな、必要とも思えんが・・・・・・まあいい。隊列を整えた後、一応出しておけ。ゆっくりでいいぞ。」

 

季衣「はいっ!」

 

夏侯惇「相手はただの町人。殺さず、追い払うだけにせよ。分かっているな?」

 

季衣「はい。・・・今日だけで、三度聞きましたから」

 

夏侯惇「そうか。もう三度目か・・・・・・」

 

 

今日だけでも三度、暴徒の鎮圧を行なっていた。それだけに、二人の表情も流石にうんざりといった感じだった。

 

 

夏侯惇「やれやれ・・・我々は、蜘蛛の子を散らす為に訓練をしているわけではないのだぞ・・・・」

 

夏侯淵「姉者、こちらも片付いたぞ。」

夏侯惇「おお、秋蘭。どうだった?」

夏侯淵「桂花の言う通りだ。これを・・・・・・」

 

 

戻ってきた夏侯淵が見せたのは黄色い布。暴徒を鎮圧する際、必ずと言っていいほど暴徒が身に付けているのだ。

 

 

夏侯惇「やはりか・・・・。こちらもだ。」

季衣「何なんですかね、これ」

 

 

二人は何故賊が黄色い布を身につけているのかを考えていた。そして夏侯淵は、

 

 

夏侯淵「・・・・・・二人とも。」

 

夏侯惇「ん、何だ?」

 

夏侯淵「分からないなら、分からないで構わんぞ。」

 

夏侯惇「・・・そ、そうか。・・・まぁ、それを考えるのは我々の仕事ではないからな。華琳様や桂花に任せるとしよう。」

 

季衣「はーい!」

 

夏侯惇「追撃部隊が戻ったら撤収するぞ!帰ったらすぐ、華琳様に報告だ!」

夏侯淵「了解した。ならこちらの隊も撤収を始めておこう」

 

季衣「あ、ボクもお手伝いしますー!」

 

 

春蘭達は撤収の準備を始めた。そして、追撃部隊が戻ってきたところで早々に撤収した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏侯惇「・・・・・・というわけです。」

華琳「そう・・・やはり、黄色い布が・・・・」

 

 

春蘭達が戻ってきた次の日、この日の朝議は、昨日の暴徒鎮圧の任の報告から始まった―――ここ最近、増えてきた謎の暴徒達、各々が黄色い布を身に付け、何の前触れも無く現れては春蘭達に悉く鎮圧されていく。そんな日々がもう数日は続いていた。

 

 

華琳「桂花。そちらはどうだった?」

荀ケ「は。面識ある諸侯に連絡を取ってみましたが・・・どこも陳留と同じく、黄色い布を身に付けた暴徒の対応に手を焼いているようです。」

 

華琳「具体的には?」

荀ケ「ここと・・・ここ、それからこちらも。」

 

 

桂花は呟きながら広げた地図の上に磨かれた丸石を置いていく。

 

 

荀ケ「それと、一団の首魁の名前は張角と言うらしいのですが……正体は全くの不明だそうです。」

 

華琳「正体不明?」

荀ケ「捕らえた賊を尋問しても、誰一人として話さなかったとか」

夏侯惇「……ふむ。剣を振り上げれば逃げ回るクセに、そこだけは口を割らぬのか。何やら気味が悪いな。」

 

 

ここにいる皆が難しい顔をしながら考えているとき、真はある名前を口にした。

 

 

真「・・・黄巾党・・・・」

 

華琳「黄巾党?」

 

夏侯淵「知っているのか?剣崎。」

 

真「・・・いや、…具体的には知らん。…だが、いつまでも暴徒っていう名じゃ、なんか…悪いだろう。」

 

華琳「・・・・そうね。敵を呼ぶにも名前は必要だわ。黄巾党という名前はもらっておきましょう、それで皆、他に新しい情報はないの?」

 

夏侯淵「はい。これ以上は何も・・・・」

 

夏侯惇「こちらもありません。」

 

華琳「ならば、まずは情報収集ね。その張角という輩の正体も確かめないと・・・」

 

魏兵39番「会議中失礼いたします!」

 

 

場の空気がふっと緩んだその時一人の兵士が慌てて場に駆けこんできた

 

 

夏侯惇「何事だ!」

 

魏兵39番「はっ!南西の村で、新たな暴徒が発生したと報告がありました!また黄色い布です!」

そんな火急の報せに皆は表情を引き締める。周りの皆も既に表情をキリッとさせていた。こういうところは、女子であってもやはり軍人といったところだ。と真は思ったらしい。

華琳「休む暇もないわね。・・・さて、情報源が早速現れてくれたわけだけど。今度は誰が行ってくれるのかしら?」

季衣「はいっ!ボクが行きます!」

華琳「ダメよ。」

真「!」

 

季衣「何故ですか?」

 

夏侯惇「・・・季衣。お前は最近、働きすぎだ。ここしばらく碌に休んでないだろう。」

季衣「だって春蘭様!せっかくボク、ボクの村のように困ってる村を、沢山助けられるようになったんですよ・・・!」

 

「華琳様。この件、私が・・・」

 

季衣「どうしてですか、春蘭様!ボク、全然疲れてなんかいないのに・・・・!」

 

華琳「そうね。今回の出撃、季衣は外しましょう。確かに最近の季衣の出動回数は多過ぎるわ」

 

季衣「華琳様っ!」

 

華琳「季衣。あなたのその心はとっても貴いものだけれど・・・無茶を頼んで体を壊しては、元も子もないわよ。」

 

季衣「無茶なんかじゃ・・・・ないです。」

 

華琳「いいえ、無茶よ。」

 

季衣「・・・でも、みんな困ってるのに・・・・」

 

華琳「そうね。そのひとつの無茶で、季衣の目の前にいる百の民は救えるかもしれない。けどそれは、その先の救えるはずの何万という民を見殺しにすることにつながることもある。・・・・分かるかしら?」

 

季衣「だったらその百の民は見殺しにするんですか!」

 

華琳「するわけ無いでしょう!」

 

季衣「・・・・・・っ!」

 

 

華琳の強い一言は季衣だけでなく皆をも身を縮こませた。そして、そんな季衣に春蘭が小さく語りかける。

 

 

夏侯惇「季衣。お前が休んでいる時は、私が代わりにその百の民を救ってやる。だから、今は休め。」

 

季衣「ううー・・・・・・」

 

華琳「今日の百人も助けるし、明日の万人も助けてみせるわ。そのために必要と判断すれば、無理でもなんでも遠慮なく使ってあげる。・・・けれど今はまだ、その時ではないの」

 

季衣「・・・・・・・・・・・」

 

 

春蘭の言葉にも、華琳の言葉にも、季衣は下を向いたままである。

 

 

華琳「桂花、編成を決めなさい。」

 

荀ケ「御意。・・・・では秋蘭。今回の件、あなたが行ってちょうだい。」

 

夏侯惇「なにっ!? この流れだと、どう考えても私だろぅ!どうして秋蘭が出てくる!?」

 

真「…今回は戦闘より、情報収集が大切だと・・・華琳が言ってただろう。それとも出来るのか?」

 

夏侯惇「うぐっ・・・・」

 

華琳「決まりね。秋蘭。くれぐれも情報収集は入念にしなさい」

 

夏侯淵「は。ではすぐに兵を集め、出立いたします。」

 

季衣「秋蘭様!」

 

夏侯淵「どうした?何と言われても、連れてはいかんぞ。私とて気持ちは華琳様や姉者と同じだ。」

 

季衣「あの・・・えっと・・・・ボクの分まで、よろしくお願いしますっ!」

 

夏侯淵「うむ。お主の想い、然と受け取った。任せておけ。」

 

 

こうして会議が終わり、皆がこの場から退室する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仕事が早めに終わってたため、真は散歩していた。そして城壁の上にあがると。

 

 

真「…ここにいたのか。」

 

季衣「あ、兄ちゃん。」

 

 

真は季衣の隣に腰をかける。

 

 

真「・・・華琳に怒られたのがそんなにか?」

 

 

季衣は城壁の上に腰をかけて、ぼんやりしながら足をブラブラさせている。見るからに落ち込んでいる。魏のムードメーカーの二つ名が泣いている。そんな名はないが。

 

 

季衣「うん・・・・。ボク、全然疲れてなんかないのに……。そりゃ、ご飯はいつもの倍は食べてるけどさ…」

 

真「・・・・・・でも、良かったじゃないか。怒ってくれてさ。」

 

季衣「え?」

 

真「それだけ愛されている証拠さ。」

 

季衣「そうかな?」

 

真「そうだ。・・・・・俺は逆に羨ましいな。俺はずっと一人だからな・・・(ブツブツ) 」

 

季衣「ふえ?兄ちゃんなんか言った・・・・」

 

真「いいや。」

 

季衣「ん?」

 

真「・・・まぁ、それは置いとき。…世の中には適材適所というものがある。場所や状況において一番適した人材を選び任せることだ。」

 

季衣「うん。」

 

真「この件に関しては、季衣は適材では無い。俺はそう思う。」

 

季衣「…ん〜・・・・兄ちゃんの言ってることがよくわかんないよぉ。」

 

真「まぁ、つまりは・・・・季衣が本気を出すのはこの場面じゃなく、張角たちの正体を見破って…それからだ。」

 

季衣「うん・・・・・」

 

真「…今はきちんと休み、この騒動を起こした連中をぶっ飛ばすだけの力を溜めておけってことだ。」

 

季衣「・・・・・分かったよ。」

 

 

季衣は元気よく答えると、ひょいっと城壁の上に飛び乗った。そして、そのまま城壁の上で歌を歌い始めたまぁ、大声を出すだけであんまり上手くはない。その歌が聞こえたのか、下の夏侯淵隊の兵士達がこちらを見上げて手を振ってくる。季衣はその元気を分けるかのように力一杯手を振って見送った

 

 

真「・・・・どこかで聞いたことがある歌なんだが・・・何て歌だ?」

 

季衣「さぁ?ちょっと前に、街で歌ってた旅芸人さんの歌なんだけど・・・確か、名前は張角・・・・」

 

真「・・・・何っ!?」

 

季衣「あっ!兄ちゃん!」

真「華琳に報告するぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

華琳「・・・間違いないのね。」

 

 

その日の晩遅くに、討伐から戻った夏侯淵を含めた主要メンバーが集められ、緊急報告会が開かれた。

 

 

夏侯淵「確かに今日行った村でも、三人組の女の旅芸人が立ち寄っていたという情報がありました。恐らく、季衣の見た張角と同一人物でしょう。」

 

季衣「はい。ボクが見た旅芸人さんも、これに映っている女の子の三人組でした。」

 

荀ケ「季衣の報告を受けて、黄巾の蜂起があった陳留周辺の幾つかの村にも調査の兵を向かわせましたが・・・大半の村で同様の目撃例がありました。」

華琳「その旅芸人の張角という娘が、黄巾党の首魁の張角ということで間違いはないようね。」

 

真「…これで正体は分かった・・・・」

 

華琳「正体が分かっただけでも前進ではあるけれど・・・。可能ならば、張角の目的が知りたいわね。」

真「・・・・案外、周りが暴走してるとかな、張角がうっかり『私、大陸がほしいのー』…とか言ってな。」

 

荀ケ「何?それ。」

 

華琳「だとしたら余計にタチが悪いわ。大陸制覇の野望でも持っていてくれたほうが、遠慮無く叩き潰せるのだけれど。」

 

真(・・・叩き潰すのが前提かい。)

 

華琳「夕方、都から軍令が届いたのよ。早急に黄巾の賊徒を平定せよ、とね。」

 

真「今頃だな・・・・」

 

華琳「ええ、今頃よ。」

 

 

流石の真もため息をつかざるを得ない。ここまで騒ぎを起こさせておいとくのは鈍いっというレベルではない。

 

 

華琳「…まぁ、これで大手を振って大規模な戦力も動かせるわけだけど。」

 

夏侯惇「華琳様っ!」

 

華琳「どうしたの、春蘭。兵の準備は終わった?」

 

夏侯惇「いえ、それが・・・また件の黄巾の連中が現れたと。それも、今までにない規模だそうです。」

 

華琳「・・・そう。一歩遅かったということか。」

 

真「・・・・・・・・」

 

 

華琳は後手に回らされたのがよほど悔しいのだろう。イライラした様子だ。

 

 

華琳「春蘭、兵の準備は終わっているの?」

 

夏侯惇「申し訳ありません。最後の物資搬入があすの払暁になるそうで・・・既に兵に休息を取らせています。」

 

華琳「間が悪かったわね・・・。恐らく連中は、幾つかの暴徒が寄り集まっているのでしょう。今までのようにはいかないわよ。」

 

真「集まってるだけじゃないのか?」

 

荀ケ「人が集まるという事は、集まろうとする意志か、集めようとする意志が働いていると見るべきよ。集団同士が合流するなら、なおさらね。」

 

真「・・・?」

 

夏侯淵「一つ二つの集団が集まったならただの偶然だろう。だが、それが数十の集団が集まった軍団となれば・・・・それはもはや偶然ではないということだ。」

 

夏侯惇「集めた奴・・・・指揮官がいる、という事か。」

 

夏侯淵「そうだ。仮にいなかったとしても…それだけの能力を持つ奴は、集団に一人二人はいるものだ。そいつが必ず指揮官に祭り上げられる。」

 

華琳「秋蘭の言うとおり。万全の状態で当たりたくはあるけれど、時間もないわね。さて、どうするか・・・」

 

季衣「華琳様!」

 

 

この状況で、今まで黙っていた季衣が手を挙げた。

 

 

華琳「・・・・・・・」

 

季衣「華琳様!ボクが行きます!」

 

夏侯惇「…季衣!お前は暫く休んでおけと・・・」

 

季衣「だって!華琳様はおっしゃいましたよね!?無理すべき時は、ボクに無理してもらうって!それに百人の民も見捨てないって!」

 

華琳「・・・・・」

 

季衣「華琳様!」

 

華琳「・・・そうね。その通りだわ。」

 

季衣「華琳様・・・・」

 

 

季衣は頷いた華琳を見て嬉しそうにその顔を見ていた。

 

 

華琳「春蘭。すぐに出せる部隊はある?」

 

夏侯惇「は。当直の隊と、最終確認をさせている隊はまだ残っているはずですが……」

 

華琳「季衣。それらを率いて、先発隊としてすぐに出発なさい。」

 

季衣「はいっ!」

 

真「華琳…俺も行っていいかいな?」

 

 

真は華琳に自分も行っていいかと言った。

 

 

季衣「兄ちゃん?」

 

華琳「真。貴方も行くの?」

 

真「…猫の手も借りたくなった時なんかに・・・入ればいいかと・・・・」

 

華琳「・・・そう。わかったわ。準備をしておきなさい。」

 

真「(コクッ)」

 

 

華琳の言葉に真は頷く。

 

華琳「それから、補佐として秋蘭を付けるわ」

季衣「え…?秋蘭様、が・・・?」

華琳「秋蘭にはここ数日無理をさせているから、指揮官は任せたくないの。やれるわね?季衣。」

季衣「あ・・・は、はい・・・・・。秋蘭様、よろしくお願いします。」

夏侯淵「うむ。よろしく頼むぞ、季衣」

季衣「へへ…っ、なんか、くすぐったいです・・・」

華琳「但し、撤退の判断は秋蘭に任せるから、季衣と真はそれに必ず従うように。すぐに本隊も追い付くわ。」

夏侯淵「御意。」

季衣「わかりました!」

真「(コクッ)」

華琳「桂花は後発部隊の再編成を。明日の朝来る荷物は待っていられないわ。春蘭は今すぐ取りに行って、払暁までには出立できるようになさい!」

夏侯惇・荀ケ『御意!』

華琳「今回の本隊は私が指揮します。以上、解散!」

 

こうして、華琳はそれぞれに指示を出し解散となった。そして真と季衣は準備を早々に済ませた。

 

真「・・・・・・・・・」

 

季衣「どうしたの?兄ちゃん。」

 

真「…いや、何でもない。」

 

 

真はその後黙ったままだった。

 

 

そして、真と季衣と夏侯淵率いる部隊が進軍した。

 

 

 

説明
今の気持ちを顔で現すと、

(´Д` )

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