英雄伝説〜運命が改変された少年の行く道〜
[全2ページ]
-1ページ-

 

7月25日――――

 

翌日、エリオットと合流したリィン達は実習課題の消化を始め、課題の一つである手配魔獣の撃破をした後、地下道からオスト地区への抜け道に出るとちょうど正午の鐘がなり、マキアスの提案によってランチをテイクアウトした後マキアスの実家で食べる事になり、マキアスにコーヒーをご馳走してもらい、くつろいでいた。

 

〜オスト地区・レーグニッツ家〜

 

「ふむ、これが帝都名物のフィッシュ&チップスか。聞いていたよりも十分すぎるほど美味に感じるな。」

「ジャンクフードは今まで何度か食べた事がありますけど………こんなにも美味しいジャンクフードは初めてです。」

「うん、確かにあのお店、かなり美味しいみたいだね。」

ラウラとツーヤに地元の料理を褒められている事に嬉しさを感じたエリオットは笑顔になり

「まあ、味がいいのは認めるが所詮はジャンクフードさ。冷めたら驚くほど不味くなるのは変わらないんだがな。」

マキアスは苦笑しながら説明した。

「でも、戦闘レーションよりは遥かにマシだと思う。」

「はは、それを言ったら何でもマシになりそうだけど。……セレーネは大丈夫か?」

フィーの意見に苦笑したリィンは王宮育ちで高級な料理しか口にしていなかったであろうセレーネに心配そうな表情で尋ね

「はい。初めて食べる味ですけど、とっても美味しいです。」

尋ねられたセレーネは微笑みながら答えた。

 

「しかし、このコーヒーはかなり本格的で香りもいいな。さっき豆を挽いていたけど買い置きでもしているのか?」

「ああ、少し前に父さんが買い置きして行ったみたいだ。たまに公務の合間に戻ってきて休憩して行くみたいで……忙しい毎日での、ちょっとした贅沢のつもりみたいだ。」

「あはは……さすがレーグニッツ知事だね。」

「ふむ……好感の持てる方だな。この家も、帝都知事のような要職にある人物の自宅とは思えぬというか……」

「ぶっちゃけ小さいね。」

「フィー、あのな……」

はっきりと言ってしまったフィーにリィンは冷や汗をかいて呆れ

「?知事という役職はよくわかりませんが、フィーさんの仰る通りなのですか、お姉様?」

「え、えっと…………」

首を傾げているセレーネに尋ねられたツーヤは言い辛そうな表情でマキアスを見つめた。

 

「はは、言ったように正真正銘の平民出身だからな。帝都庁で出世してからもわざわざ生活スタイルを変えるほど父も僕も器用じゃなかったし。それに……こんな小さな家でも思い出がないわけじゃないからな。」

リィン達の様子を見たマキアスは苦笑しながら説明し、懐かしそうな表情をした。

「そっか……」

「確かに居心地がいいというか落ち着ける雰囲気だよね。」

「やっぱりずっと住んでいる場所には愛着がありますものね。」

「はい……この家にはたくさんの思い出が詰まっているのですね……」

「あ……写真発見。」

マキアスの話を聞いたリィン達がそれぞれ納得している中、フィーは写真を見つけた。

「ああ、それか……」

そしてリィン達はフィーが見つけた写真に近づいて写真を注目した。

 

「うわあああ……マキアスが可愛いっ!」

「ふむ、昔は何とも言えぬ愛らしさを持っていたのだな。」

「これが、こんなにガンコで口うるさいのになるとは……」

「フィ、フィーさん。」

写真に写っているマキアスの幼い姿を見たフィーは今のマキアスを思い出して呆れた表情をし

「ええい、人の昔の写真で盛り上がるんじゃないっ!」

自分の幼い頃の姿を見て盛り上がっているエリオット達を見たマキアスは呆れた表情で指摘した。

「はは、さすがにお父さんは今と雰囲気は変わらないけど。隣にいるのはお姉さんか何かなのかな?」

「とても綺麗な方ですね……」

「…………?(この人……どこかで見たような……)」

かつてのレーグニッツ知事の隣に写っている女性に気付いたリィンは尋ね、セレーネは女性の整った容姿に見惚れ、ツーヤは眉を顰めて女性の容姿をジッと見つめた。

 

「父方の従姉でね。近くに住んでいたからよく遊びにきてくれたんだ。男二人の父子家庭……色々と世話になってしまったな。」

「ふむ、過去形という事は……もう結婚されて家庭に入られたのか?」

「………………………亡くなったよ。6年くらい前にね。」

ラウラの質問を聞いたマキアスは押し黙った後静かな口調で答えた。

 

「え……」

「……………そうか。マキアスが……貴族を嫌っている理由だな?」

「…………!」

「あ……」

「そ、それって……」

リィンの質問を聞いたラウラ達はそれぞれ顔色を変え

(え?貴族を嫌っている……?それって一体……)

(後で説明してあげるわ……)

事情を知らないセレーネが戸惑っている様子を見たツーヤは小声で話しかけた。

「……本当はこんな話、誰にもするつもりは無かったんだ。だが、そろそろ僕も少しは吐き出した方がいいかと思ってね。長くなるけど……みんな付き合ってくれるか?」

「も、もちろんだよっ!」

「…………」

「……是非とも。」

「どうか、聞かせてくれ。」

「お願いします。」

「え、えっと……昨日出会ったばかりのわたくしでもよければお願いします。」

「ありがとう。」

リィン達の返事を聞いたマキアスは過去を話し始めた。

 

「”姉さん”は……僕より9歳年上で…………美人で、気立てもよくて僕にとっては最高の女性だった。……さっきも言ったようにうちは正真正銘の庶民でね。でも、父さんは役人としてかなり優秀だったみたいで……帝都庁で重要なポストを任せられて、頭角を現していったんだ。清廉潔白を地で行ってたから、煙たがる連中もいたみたいだが……それでも、大きなプロジェクトを幾つも成功させたことで内外でかなりの評価を得ていった。母は僕が小さい頃にはもう亡くなっていて……でも、近くに住んでいた”姉さん”が男所帯を世話してくれた。父さんも、姪にあたる姉さんのことを凄く可愛がっていて…………一緒に住んでたわけじゃないが本当の意味で家族同然だった。僕にとっては自慢の”姉”で……幼いながらも憧れの存在だったんだ。

 

当然だけど……そんな女性を、周りの男たちが放っておくわけはなくて。随分モテていたけど、しっかりとしていた人だったから僕もちょっと安心だったんだ。―――”彼”が現れるまでは。”彼”は―――帝都庁に勤める父さんの部下にあたる青年だった。といっても、平民ではなくて由緒正しい貴族…………それも伯爵家の跡継ぎという、正真正銘のサラブレッドだった。ただ、貴族にありがちな傲慢さや尊大さは欠片もなくて……僕も会ったことはあるけど……誠実そのものと言った人柄だった。

 

そんな彼が、父に紹介される形で姉さんと知り合って……二人はお互い惹かれあって身分を超えた恋人同士になった。……正直、子供心に悔しくて仕方なかったよ。でも僕の目から見ても彼と姉さんは本当にお似合いで……姉さんが幸せそうだったから仕方なく諦めるしかなかったな。そして、父さんが仲人に立つ形で二人は婚約して……それが―――終わりの始まりだった。

 

相手の実家―――伯爵家が露骨に潰しにかかってきたんだ。どうやら”四大名門”の一つ、カイエン公爵家との縁談が急に持ち上がったらしくてね……平民の娘を娶るなどとんでもないと騒ぎ始めたんだ。父さんが帝都庁の要職だったから露骨な手こそ打ってこなかったが……ありとあらゆる嫌がらせや脅しが姉さんに対して密かに加えられた。愛する人を困らせたくなかったのか、父の立場を慮(おもんばか)ったのか……姉さんは結局、一言も相談せず、ただひたすら耐え続けた挙句――――河に身を投げて自らの命を絶った。

 

僕達父子が経緯を知ったのは全てが終わり、投身自殺をした姉さんの遺書が見つかった後だった。どうやら”彼”は最後の最後で姉さんを手酷く裏切ったらしい。『わ、私は彼女に言ったんだ!”愛妾”として大切にするからどうか我慢してくれと!なのにどうして命を絶つ!?』

 

その後……父さんはそれまで以上に実績を上げた。そして、盟友であるオズボーン宰相と協力する形で帝都庁の貴族派を押し退けて…………4年前に帝都庁長官―――つまり帝都知事に任命された。これが、レーグニッツ家の事情さ。」

「ひっく……マキアスさんのお姉さんを裏切ったその人、酷すぎます……!お姉さんはその人の事をずっと信じていたと思うのに……!」

「セレーネ……」

マキアスの過去を聞き終えて泣きじゃくるセレーネの様子を見たツーヤはセレーネの頭を撫で

「……そんな事が……」

「だから”貴族”が嫌いになったの……?」

エリオットは悲痛そうな表情をし、フィーは尋ねた。

 

「……ああ。僕は……姉さんを死なせた”敵”を求めずにはいられなかった。相手の男に、伯爵家、横槍を入れて来た公爵家……しまいには貴族の全て……貴族の文化や制度すら敵と思った。そして……彼らに勝てるだけの力を必死になって追い求めてきたんだ。」

「「……………………」」

マキアスの話を聞いたリィンとラウラはそれぞれ重々しい様子を纏って黙り込んだが

「――だけど、頭のどこかでとっくにわかってはいたんだ。結局それは、ただの”八つ当たり”だったんじゃないかって。」

「え…………」

「………………」

静かな口調で答えたマキアスの答えを聞き、それぞれ驚きの表情でマキアスを見つめた。

 

「貴族や平民に関係なく、結局は”その人”なんだろう。相手の男は、誠実ではあったが愛する人を守りきれるほど強くなかっただけだろうし……伯爵家も”自分達の利益”をただ優先しただけなんだと思う。平民だろうと悪人は悪人だし、貴族にも尊敬できる人間はいる。ユーシスのヤツはともかく……リィン、ラウラ、ツーヤ、そしてこの場にはいないプリネ―――君達にはそれを教えられてきたからな。」

「マキアス……」

「…………」

「マキアスさん……」

「父さんがどう思ってるのかは僕にもわからないが……これが現時点での僕自身の偽らざる気持ちだ。」

「そうか……そなたに感謝を。」

「――ありがとう。話してくれて。」

「……ありがとうございます。」

「え、えっと……昨日会ったばかりのわたくしにまで話してくれて本当にありがとうございます……!」

「ハハ……セレーネにはまだ早い話だろうし正直、泣かせてしまった事に申し訳ないくらいだよ。」

お礼を言うセレーネをマキアスは苦笑しながら見つめた。

 

「そんな事はありません……!マキアスさんのお話はわたくしにとっても色々と勉強になりました………!」

「そうか……なら話した甲斐はあったよ。」

「ふふ……」

「うーん、でもマキアスも素直じゃないよねぇ。ここまで来たらユーシだってちゃんと認めてあげればいいのに。」

「じょ、冗談じゃない!あの尊大で傲慢なヤツを断じて認められるものかっ!いつもいつも人のことをガリ勉だの余裕がないだの……!」

呆れた表情で指摘したエリオットの言葉に大声を上げて反論したマキアスはユーシスの姿を思い浮かべて厳しい表情をした。

 

「そ、そこまでは言ってないと思うけど……それにほら、ユーシスってある意味天然っていうかそんなに悪気はないと思うし。」

「ええい、それが一番、腹が立つんじゃないかっ!!」

「やれやれ……」

「ふふ……」

そしてエリオットの指摘に再び怒鳴ったマキアスの様子をフィーとラウラは微笑ましく見守り

「……コーヒーと一緒にいい時間が過ごせたな。」

「はい……!」

リィンの言葉にセレーネは頷いた。

 

「…………あの、マキアスさん。辛い事をお聞きする事になりますが、先程話に出て来た”姉さん”の遺体は見つかっているのですか?」

「ツ、ツーヤ!?い、一体何を……」

その時考え込んでいたツーヤが尋ねた質問を聞いたエリオットは驚き

「………いや……結局見つからなかったよ。姉さんが投身自殺をした日はちょうど大雨の日でね……もしかしたら雨で増水した影響で河の流れが激しくなって、海まで流されたんじゃないかって憲兵達や父さんが姉さんの遺体の捜索を依頼した遊撃士が言っていたらしいけど……それがどうかしたのか?」

マキアスは重々しい様子を纏って答えた後ツーヤを見つめて尋ねた。

 

「えっと……もしかしたら、その死んだ”姉さん”ですが生きているかもしれません。」

「へ……」

「お、お姉様?一体どういう事なのですか……?」

ツーヤの答えを聞いたマキアスは呆け、セレーネは戸惑った。

 

「一つ確認しておきたいのですが……その”姉さん”の名前はもしかして”フィオーラ”ですか?」

「!!あ、ああ……で、でもどうしてツーヤが姉さんの名前を…………」

「……………………………あった。」

自分の発言にマキアスが驚き、リィン達が戸惑っている中、ツーヤは制服の内ポケットにある家族写真を取り出して机に置いた。

 

「この写真は一体……」

「見た所どこかの貴族の家族写真にしか見えないが……」

「バリアハートの時に助けてくれたツーヤの義理の母親もいるね。」

「この方がお姉様の…………」

写真に写っている人物達をエリオットとラウラは戸惑いの表情で見つめ、見覚えのある人物―――サフィナが写っている部分を見て呟いたフィーの言葉を聞いたセレーネは驚き

「サフィナ元帥とツーヤさんも写っているけど……もしかしてミレティア領を収めている分家の?」

ある事に気付いたリィンはツーヤに尋ねた。

「はい。金髪の青年の隣に写っている女性を見て下さい。」

「………………え…………………………」

ツーヤに言われたマキアスは金髪のまさに”貴公子”を現すような貴族の青年と貴族の子女らしき幼い女の子に挟まれてドレスを身に纏い、赤ん坊を抱いて幸せそうな表情を浮かべている自分にとっては見覚えがありすぎる女性を見て呆けた…………

 

-2ページ-

 

 

マキアスの死んだ”姉さん”の名前はオリジナルにしましたので、閃Uでわかったら変えるつもりです。まあ、わからないと思いますが(オイッ!)そしてお気づきと思いますが、ここでもまさかの原作崩壊ですww

説明
第111話
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
1981 1799 3
コメント
感想ありがとうございます kelvin様 マキアスのお姉さん救済は実はkelvin様のネタを見て、思いつきましたww(sorano)
まさかの原作崩壊……でも、許す!私が許します!w(kelvin)
感想ありがとうございます レシオン様 実は他の方が書いている小説でマキアスの姉を救済していたのでそれをヒントに思いつきました(オイッ!) 本郷 刃様 確かに見てみたいですねww kanetosi様 エステル達を投入したらマジで滅ぼされますねww(sorano)
どうせなら軌跡メンバー全員ディル=リフィーナ入りさせようよwそうなったらそうなったで嵐の神バリハルト以下敵対する国が跡形もなく滅ぼされるだろうけどねw(kanetosi)
こうなってくるとZ組メンバーにもディル=リフィーナ入りしてほしいですね〜、エステル達みたいな反応が見てみたいと思ったりww(本郷 刃)
まさに、もまさかの原作崩壊ですね。あの話に救いがなかったのでよかったです。(レシオン)
タグ
他エウシュリーキャラも登場 幻燐の姫将軍 空を仰ぎて雲高くキャラ特別出演 閃の軌跡 

soranoさんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。


携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com