恋姫無双SS魏√ 真・恋MIX 2話
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秋蘭は驚く俺たちを前に冷静に話し出す。

「先日、管輅と言う占い師から”天から来る者が我らの主になる”という卦を貰いました。」

「その際は眉唾だとは思いましたが、昔読んだ文献に『天から来る者、光を伴い、光を纏う。』と書かれているのを思い出しました。」

「光の落ちた場所に北郷殿が居て、光る衣装を纏い、そして天から来たという。これこそ天佑でありましょう。」

そして春蘭の方を見つめて言う。

「どうだ、姉者。この方を御印に一旗揚げてみないか?」

しかし春蘭は訝しげな表情を崩さない。

「ふーむ、確かに普通とは違う雰囲気を持っているが・・・・・それより秋蘭、お前はあまり乗り気ではなかったのではないのか?」

今朝方は結構乗り気だった春蘭だが、秋蘭の方があまりに乗り気なので逆に引いてしまっているようだ。

「眉唾ならな。しかし、これだけの材料が揃っているのだ。それとこのお方なら乗っても良い気にさせられる。不思議とな。」

 

そんな台詞を聞きつつ、俺は真剣に考えさせられる。

『さて果てどうしたものか、このままでは多分のたれ死にだろう。』

『実際彼女たちを仕えさせると言っても、どうしたらいいか解らんが・・・・・』

そんな考えを見透かされたように秋蘭が話しかけてくる。

「どうでしょう北郷殿、こんな場所で話していることもありません。街に帰って詳しいお話でも。」

「・・・・・そうだな、俺もここに来たばかりで状況が全然解らない。街に連れて行ってくれるかい?」

そう尋ねながらも女性を前にしていつもの軽口がでる。

「それに、こんな可愛いお嬢さんの誘いを断ることは出来ないな。」

「か、可愛いだと・・・・・・・・・。」

照れる春蘭に対して、相変わらず冷静さを崩さない秋蘭。

「お世辞でも可愛いと言われれば嬉しいもの。北郷殿はなかなか口がうまいのですね。」

「お世辞じゃないのだけどね。まぁいいや、それではよろしく。」

そして3人は帰路についた。

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3人が街に近づいたときに、秋蘭が異変に気づく。

「むっ、あれは?」

街から煙が上がっている。

急いで街に近づくと、街はかなり荒らされた状況だった。

「これは、どうしたことか?」

春蘭たちが混乱していると、守備兵の隊長らしき人物がこちらを見つけて走ってくる。

「夏侯惇将軍、夏侯淵将軍、ご無事でしたか。」

「これは、何が起きたのか?」

「黄巾党の先兵が村に襲いかかってきまして、何とか撃退したのですがこの有様で。」

「くっ、我らが留守の間に。」

春蘭は唇をかんで悔しんだ。

「それで、城の方は?」

「城は無事ですが、刺史殿が逃げ出そうとしています。」

「なんだと、どういう事だ。」

春蘭は怒り出す。

「そっ、それが黄巾党の本体は1万の勢力がいるらしくとても守りきれないと・・・・。」

「一万だと!それは本当なのか?」

「今、斥候を出していますが、結構信憑性の高い話です。」

「そうか・・・・。」

秋蘭はその言葉を聞いて考え込む。

「ともかく、刺史殿に会って話をしてくる。」

「まて、姉者。」

秋蘭は怒りながら城の方に向かおうとする春蘭を呼び止めた。

そして、隊長に向かって尋ねる。

「その話が本当だとして大体本隊が来るのはいつ頃になりそうなのか?」

「詳しい話は斥候が戻ってからになりますが少なくとも二日三日は掛かるかと。」

また少し考え込むと、秋蘭は俺の方に向かって話しかけた。

「どうやら荒事が起きてしまっていますが・・・・・ちょうど良いかもしれません。」

「ちょうど良いとは?」

俺は秋蘭の言うことが若干は解るが、一応聞き返す。

「つまり、刺史殿に退場して頂ければ私たちには旗揚げの機会だと言うことです。」

「それは、黄巾党1万を撃退すると言うことで良いのかな?」

「ええ、それが出来れば北郷殿は天の御遣いとしてかなりの名が売れることとなるでしょう。」

「夏侯淵さんの言うことは最もだが・・・・・。」

俺の言う台詞を制して秋蘭は言う。

「私のことは秋蘭とお呼びください。」

「秋蘭・・・・・って先ほどからその名前で夏侯惇さんは呼んでいたね。なにか特別な呼び名なの?」

聞いた俺の横から驚いたように春蘭が言う。

「おい、秋蘭。こいつに真名を許すのか?」

「うむ、先ほどからの理解力と判断力。充分仕えるにふさわしいと判断した。我が主となる方に真名を許すのは当然だろう。」

「そうか・・・・・なら私のことも春蘭と呼ぶが良い。」

「春蘭に秋蘭か、それで、その真名というのは?」

「真名とは心を許したものだけに呼ばせる大切な名前。他人が決して口しては成らないものでもあります。」

「そうなんだ・・・・。ありがとう、俺を信じてくれたんだね。」

「ええ、それより北郷殿の真名はないようですが・・・・・」

「うん、真名はないけど下の名前は一刀って言うんだ。そちらを呼んでもらえれば嬉しいかな。」

「では、一刀様と呼ばせて頂きますね。」

「ああ、秋蘭。ところでこの先の件だけど・・・・この城の守備兵はどのくらい居るの?」

「すべて集めて2000と言ったところでしょうか。」

「それは厳しいね。町の若者とか臨時で義勇兵とかは募れないの?」

「ほう・・・・・・今の刺史では人望がないのでダメでしょう。しかし・・・・。」

「俺の天の御遣いという名前を使えば出来る、と。」

「そう言うことです。・・・・・・・・・やはり間違っては居ませんでしたね。」

「ん?」

「いえ、こちらのことです。それでは刺史殿には速やかに退場して頂きましょう。」

そう言うと、城の方に向かって歩いていった。

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「おいおい、なんだか話はまとまったみたいだが結局どうするのだ?」

仲間はずれにされていたのを気にした春蘭が歩きながら口を挟む。

「まぁ、いつも通り姉者は戦に力を出してくれればいい。」

いつも通り冷静に秋蘭は言う。

「そうか。まぁ、難しい話はわからんが、北郷が結構出来ると言うことはなんとなく解ったな。」

「それは結構だ姉者。そろそろ主様らしい呼び方に変えたらどうだ?」

「でもまだ認めておらん。この戦次第だな。」

「ふむ、まぁ尤もだ。どのみちこの戦を勝たなければ先はない。」

城の司政室に来るとそこには刺史がいた。

なにやら慌てて部下に指示を出している。

「刺史殿、ただ今夏侯惇、夏侯淵が帰りました。」

「おお、夏侯惇将軍に夏侯淵将軍。どうだ、城は守りきれそうか。」

「現状では無理ですね。敵の戦力は1万五千とも言われています。」

「そうか、なんとか守り抜けば直に援軍も現れるだろう。私も力を尽くそう。」

白々しい嘘を吐く刺史だがあえて相手にはしない。

「どうでしょう、さすがにこの戦力差では守り抜くことも難しいです。刺史殿だけでも先に脱出されては。」

「おお、夏侯淵将軍もそう思うかね。実は心苦しいのだが、他の部下からもそう進められてね。」

「私が脱出して、他の城から戦力を引き連れた方が勝ち目があるのではと思うのだよ。」

脱出を夏侯淵にも認められたのがよほど嬉しかったのか刺史は嬉々として話す。

「それでは急ぎましょう。実は黄巾党が周囲を囲みに掛かっていると言った報告も入っています。」

白々しい嘘は好まないが、現状その方が都合が良いので口を合わせる秋蘭だった。

 

『そうなのか・・・・財宝は馬車に積めるだけとしよう・・・・・・』

 

そう考えた刺史は近くの兵を目配せで呼び、なにやら耳元で囁いた後こちらに向かって慌てて話し出した。

「どうやら部下が馬車の用意をしてくれていたようだ。それでは我は先に脱出するな。」

「ええ、御無事を。」

そうして刺史を見送ると、秋蘭は部下に対して指示を出した。

「城下に張り紙をしろ。内容は”刺史が逃げ出したが、この城に天の御遣い様が光臨された。天の御遣い様が我が町を守ってくれる。”」

「それと”天の御遣い様に仕える義勇軍を募集する”と言う内容だ。」

横で聞いていた俺は少し口を挟んだ。

「それだけだとちょっと弱いかな。義勇軍参加者には十分な食事と褒美を与えると書いた方が良いんじゃない?」

「それだと質もかなり低下してしまう可能性がありますが・・」

秋蘭が言うがあえて俺は否定する。

「今回は質よりも数だと思うよ。黄巾党も実際は食い詰めた農民とかが主戦力だと思うし。」

「なるほど・・・・・でも天から来たばかりだというのにお詳しいですね?」

「天界の知識かな、昔話に同じような内容が天界でもあってね。大体解って居るんだ。」

俺はあえて未来だと言う言葉は避けた。現状を見て解るとおり不確定要素が有りすぎる。

「それではその知識を持って我々を導いてください。」

見つめる秋蘭に俺はニコッと笑って答えた。

「あぁ、出来るだけ頑張るよ、見捨てられないようにね。」

そうして戦の準備を進めていった。

 

秋蘭は刺史が馬車にて去るのを見送ると部下に耳打ちした。

「刺史殿もあれだけ馬車が重くては黄巾党に捕まってしまうかもしれないな。」

「そうですね・・・・・・。」

察しの良い部下は何かを感じ取ったらしい。

「こんな時代だ、何があってもおかしくはない・・・・」

「ですね、それでは見回りをしてきましょう。」

「よろしく頼む。」

そうして秋蘭は執務室に戻った。

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戦の準備は割と順調だった。

天の御遣いの名に釣られてなのか、褒美に釣られてなのか、自分の町を守りたい気持ちに火のついた民達が1000人ほど集まった。

春蘭にはその中に使えるものとそうでないもののより分けを頼んだ。

「春蘭の見立てで良いよ。戦で使えそうな人間を100人ぐらいより分けてくれ。」

「ふむ、解った。それ以外は返すのか?」

「いや、それ以外の人にも手伝って貰うよ。戦力は多い方が良いからね。」

「あと、必ず勝てると言い聞かせておいて。こういうものは気持ちが大切だから。」

「そうだな、私が居るんだ。必ず勝てるさ。」

「うん、期待しているよ。春蘭。」

「うむ・・・・・・・・・・・ぽっ」

照れて赤くなる春蘭を尻目に。

「それじゃぁよろしく頼むよ。」

そう言いながら司政室に俺は戻った。

斥候の報告によると、黄巾党の足は思ったより遅く、到着まではあと三日は掛かるとの報告だった。

「所詮はより集めの集団なんだろうなぁ。」

その手の集団は数が多くなればなるほどまとまりは付かなくなる、1万の部隊の統率は難しいのだろう。

「秋蘭、どう?候補地は見つかった?」

「一刀様、仰った地形に最も適しているのは城から2里ほど離れたこの山間部になります。」

「しかし、数が少ないときは籠城するのが基本ですが本当に打って出るのですか?」

「向こうは先日の偵察でこちらの戦力は推し量っていったはずだし、多分嘗めているからこれだけ行軍も遅いのだと思うよ。」

「当然打って出るとは思ってないし、だからこちらの策にも嵌ってくれる。」

それから二日、義勇兵の調練と計略の練り込みに時間を要し、準備万端で黄巾党を迎え撃った。

一刀の策はまず間道の途中で500の兵をもって敵に当たり、適当に戦って逃げ出す。そして1500の兵を正面から伏兵として出しそしてまた逃げだす。

そうやって敵の戦列を伸ばしたところに火計を仕掛け本当の伏兵として500ずつ持たせた秋蘭と春蘭に側面から挟撃させる。

その策はものの見事に嵌った。

その際、一刀は天の御遣いとして先鋒に立った。

秋蘭は反対したが一刀はこう言った。

「俺を信じて付いてきてくれるのだから後ろで震えている訳にはいかないよ。大丈夫、無理はしないから。」

「一刀様の実力は理解していますが、貴方が生きていなくては意味がありませんから。」

「うん、でもね、戦場を体験しなければこの先やっていけないと思うんだ。」

「それよりよろしく頼むよ。秋蘭達に勝利は掛かって居るんだから。」

「はい、必ず生きて・・・・。」

「いや、勝ってだろう。」

ニコッと笑う一刀。そうして戦場に立った。

 

 

 

「いや、意外と行けるものだな。」

戦闘でも10人ほどの兵を倒した。

さすがに、まだ斬る勇気はなくすべて峰打ちだが真剣の峰打ちは当たり所しだいで当然人を殺せる。

戦う前はかなり高揚していた気分が大分落ち着いてきた。

「じっちゃんはウチには坂本龍馬の血筋が流れているとか言ったことがあったなぁ。」

その時はかなり眉唾だとは思ったが、こうしてみるとあながちほらとは言い切れないなと思えてきた。

「しかし、ちょっと変な気分だな。」

この策は三國志で読んだ諸葛亮孔明が10万の曹軍を退ける際に使った手を参考にしている。

「その時の曹軍の総大将って夏侯惇だったか。」

まぁ策に名前が付いている訳じゃないし、著作権料とか取られる訳じゃないよな。

そんなことを考えながらも帰途についた。

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部隊を収拾させ、春蘭、秋蘭を出迎える。

「お疲れ様、春蘭たちのお陰で勝てたよ。」

「一刀・・・・・、いや、一刀様の策が良かったから勝てましたのです。」

春蘭も一刀を認めたのであろう、言葉が若干怪しい敬語になっている。

「たしかに。ここまで危なげない勝ち方が出来るとは・・・・・。我が軍の損害はほとんどありません。」

秋蘭が感心したように言う。

「圧倒的な勝ち方も名を広めるためには必要だろう?少しやりすぎかなとも思ったけどね。」

俺はさもありなんと言った風に返事をする。

「まぁこれで、人も兵も集まるだろう。目標は天下統一だ。」

大男に言われた台詞を反芻してみる。

しかも、その気になっている自分に少し驚いてもいた。

だが、春蘭たちはうっとりしていた。

「秋蘭、私はこの方に仕えようとして本当に良かったと思ったよ。」

「姉者、遅いな。私はもう身も心も捧げても良いと思っている。」

「な、・・・・・・・・・・私だって・・・・・」

「まぁ、その辺は後でね。まだ事後処理がいくらでも残っているし。秋蘭頼むよ。」

「はい。でも我が城には文官が足りませんね。今居るものもあまり優秀とは言えないものばかりです。」

「そうかぁ、軍事のトップの秋蘭が内政までかり出されているようでは確かに拙いね。」

しかも、事実上内政のトップの位置でもある。

「トップとはなんでしょう?」

聞き慣れない言葉に秋蘭が尋ねる。

「あぁ、天界の言葉で一番上という意味だよ。他にもたまに天界の言葉を言うかもしれないけどその都度尋ねてね。」

横で大人しく聞いていた春蘭がここぞとばかりに口を挟む。

「軍事で一番なのは私ですよね?」

「あぁ、君たちは我が軍のツートップだ。」

「なるほど。」

うれしがる春蘭だが多分意味はわかっていない。

「で、文官だけど、せっかく名も広がったんだし募集してみたらどうだろう。」

「そうですね、張り紙にて通達しておきます。」

「俺も出来ることは手伝うよ。」

 

そうして今回の件は解決した。

 

問題は山積みだけれど・・・・・・・

 

説明
前作の続きです
真・恋姫無双のSSではなくてあくまで恋姫無双の魏ルートSSです。
ただしキャラは真・恋のキャラ総出です。

無印恋姫無双は蜀ルートでした。
そして桃香の代わりが一刀でした。
このSSは魏ルートなので華琳の代わりが一刀です。
この外史には華琳出てきません。

その代わり一刀は華琳の代わりが出来るほど強化してあります。

そして、華琳大好きな魏の面子は一刀大好きになってます。

ブログとは若干改変しています
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コメント
この話は曹操の変わりに一刀が魏を治める話なのか?(タケダム)
つまり!!この話は全体的に魏の将軍全員がデレデレ状態なのかな?(motomaru)
[andou kiyohiko]さん、この一刀は祭に対しても多分お嬢さんって言いますよw(とにー)
一刀は祭に対して妙齢の女性と言っているのでまるで問題ないかと(atuantui)
[フィル]さん、えぇ−、歳が解らなかったらとりあえずお嬢さんでしょう。実際歳は一刀と変わらないくらいの筈ですからそこでお姉さんとか言ったら、カチンと来そうですよw(とにー)
[柘榴石] さん、桂花は男嫌いと言うよりは、華琳大好き過ぎるのだと私は考えたので今作ではあまり男嫌いが出ていません。本編でも華琳以外の女の子に靡くシーンはないですしね。(とにー)
[クォーツ]さん、[toto]さん、[munimuni]さん、[Poussiere]さん、[YUJI]さん、支援ありがとうございます。今まで書いた文章をまとめるのって結構あらが目立って勉強になります。次のは明日くらいに上げますのでお待ちください(とにー)
お疲れですw 二人の外見的に1ページ目の一刀の「お嬢さん」発言にちと疑問です???(フィル)
男嫌いの桂花の反応が楽しみです。(柘榴石)
続き待ってますww(YUJI)
お疲れ様です。(Poussiere)
続きをお待ちしますよw(toto)
お疲れ様です。之からの躍進楽しみにしています 次作期待(クォーツ)
タグ
恋姫無双 真・恋姫無双  一刀 

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