call your name <another pieces 星と猫>
[全2ページ]
-1ページ-

 先ほどの腑抜けた表情とはうって変わって、将としての覇気に満ちた姿で先頭を駆ける張遼。

 

 

 

 主、将、部下――仲間の為に身を汚すことも侮蔑を浴びることも厭わず、それどころか命まで差し出そうとした副官。今は殿を務めながら、周囲への警戒や一行全体の歩調に気を配っている。

 

 

 

 あの戦乱の中、これほどの絆を築き、育てた天の御遣い――北郷一刀という『男』に、いまさらながら興味がわいてしまった。

 一命を懸けて仕えられる主、忌憚なく意見を交し合える仲間たち。

『将』としての自分――武を極めんとするものとしては、これ以上ないほどに恵まれていると言えるだろう。

 武を志し、生涯を捧げると決め、生きてきた。そのことに関する後悔は微塵もない。

 でも。

 それでも。

 どこか、物足りなさを感じる自分がいた。

 風流を愛で、杯を傾け――そんな風に過ごしているときふと、心に差す影。

 それが何だったのか、今気付くことができた。

 

 

 

 ――ああ、私は

 

 ――『女』としての自分

 

 ――『愛される』ということを望んでいたのか――

 

 

 

 例えば愛紗なら、「軟弱な!」と一笑に付すか、顔を真っ赤に染めて「そ、そんなものは必要ない!」と狼狽した(可愛らしい)顔を見せてくれるに違いない。

 そう想像すると、少し口元が緩んだ。

 人によっては、歪んだ、と取るかもしれないが。

-2ページ-

「趙雲さん。どうかされましたか?」

 

 思わず表情が緩んだところへ声をかけてきたのは、ちょうど隣に並んでいた呉の武将、周泰だった。

 幼い顔立ちに小柄な身体と、一見子供のようにも見えてしまう外見だが、背に負った長大な剣とその立ち居振る舞いを見れば、決して気を緩めることの出来ない相手だと推して知れる。

 とはいえ、今朗らかに語りかけてくれる彼女からは、剣呑な空気はまったく感じられない。あくまで私を気遣って声をかけてきただけのようだ。

 ……いや。このわずかな表情の変化を鋭く感じ取るあたり、流石は呉の将と言うべきか。

 

「趙雲さん?」

 

 黙ったままの私へ、再度気遣うような言葉がかけられる。

 

「ああ、すまない。少し考え事をしていてな」

「なんだ、そうだったんですかー。どこか悪くしたのかと思っちゃいましたよ」

「いやいや、そんなことはない。ただ、思うところがあってな」

「そうですねー。御遣いとか種馬とか、そんな噂だけじゃ判断できない人だったみたいですし」

 

 その言葉を聞いた瞬間、反射的に手に力が篭った。背筋が、伸びる。

 

「そんなに身構えないでくださいよー。……きっと、趙雲さんだけじゃないと思いますよ。そういう風に思ってる人。わたしも、そうですから」

 

 にこりと、まったく邪気のない笑みを向けてくる周泰。

 明るさに釣られるように、強張っていた身体から力が抜けた。

 

「ふうぅ……心臓に悪いな、お主は」

「えへへー」

 

 また、笑う。

 まったく。こう笑われては腹も立たぬ。

 

「でも、みなさんがそう思うの、わかる気がします」

「ほう?」

 

 一息ついたと思ったら、今度は向こうから話を振ってきた。

 手綱を繰り隣の馬に速度を合わせながら、耳を傾ける。

 

「だって、もういなくなったんですよね? その、天の御遣いさんって。なのに、張遼さんも、副官さんも、その人のことを忘れられないでいる……って言い方だと、失礼になっちゃいますかねー」

「ふむ。だが、言いたいことはわかるつもりだ。何かを持っている――肩書きだけの男ではなかったようだな。皆が興味を持つのも、当然と言えるかもしれん」

 

 

 

 ――その『男』ならば、私の『女』としての部分も満たしてくれたかもしれんな――

 

 

 

「何という名前だったかな、その天の御遣いとやらは」

「えっと、確か……

 

 

 

 北郷、一刀、って名前だったと思います――

説明
まさかの三夜連続投稿。

……自分でも信じられません。



……本編マダーのつっこみは無しの方向でお願いします……。

追記:タイトルについての指摘があったんですが、ナンバリングはしたくなかったのでこういう形にさせてもらいました。
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
8104 5620 98
コメント
YOROZUさん>そろそろ一刀くん動かしたいので、次は本編更新できるようがんばってます!(京 司)
本編の続きを期待しております!(YOROZU)
雪蓮の虜さん>これからもいろんな一刀をお見せできるようにがんばります! ……最大の壁はギャグ・コメディ系だなぁ……(汗(京 司)
一刀、居なくても種馬なんですねwでも種馬以外の一刀も見れて満足ww!次回も待ってます。(雪蓮の虜)
totoさん>出来る限り原作から逸れないようにしているつもりなんですけど、どうしても「こうあってほしい」という作者の希望(妄想とも言う(汗))が入り込んでしまうんですOrz(京 司)
混沌さん>ですよね〜。最初は帰還して再会するだけの話を書くつもりだったのに、いつの間にか膨らみまくってる……(汗(京 司)
meruさん>何故かウチの一刀くんは、本人のいないところでいろいろやらかすコになってしまったようです……(汗(京 司)
零壱式軽対選手誘導弾さん>諜報・隠密担当の明命なら気付いてもおかしくないよね、ということでw(京 司)
一刀君は凄い子なんですよね・・・・ww(toto)
あれ?これってハーレム話だっけ?w続きをじっくりこってり待ってますw(混沌)
一刀ガンバ〈合掌〉(いずむ)
星と明命のからみっていいものですな!!!(零壱式軽対選手誘導弾)
フィルさん>イヤイヤ、一刀自身は何もしてませんよ?w(京 司)
まさか星がくるとは………他国の人に手を出したら一刀、首刎ねられるんじゃないかと………首刎ねるの大好きな国だしwww(フィル)
りばーすさん>上手い表現での叱咤激励ありがとうございます! 答えきれるかわかりませんが、精一杯書きます!(京 司)
霊皇さん>星を! というとある方の熱いプッシュがありましたのでw すぐには難しいですけど、いただいたリクエストには出来る限り答えたいと思ってます。(京 司)
逢魔紫さん>絶賛て……お願いこれ以上重り増やさないで〜〜〜Orz w(京 司)
マーサさん>そこはry 一応、進める努力はしてますんで(汗(京 司)
ここで星と明命とは話の広がりが出ていいチョイスですね・・・・・これは楽しみ・・・・連夜で大変かもしれないですが頑張ってください・・・(霊皇)
munimuniさん>ちょっとわかりにくい形になってしまったな、と不安でしたが、皆さんに好評でほっとしてますw(京 司)
次回が楽しみです!玉は色々な方向から切断していかないとできませんよ?だからもっと上げてくれれば私はとても嬉しいです!!(りばーす)
YUJIさん>期待を裏切らないようがんばります!(京 司)
だめぱんだ♪さん>星のリクエストが来てて、たまたまアイディアの神が降臨したので、すぐ形にできたのですw(京 司)
sinさん>すいません、わかりにくいですよね(汗 でもこのタイトルじゃなきゃならない意味があるのですよ……(京 司)
本編のほうも絶賛楽しみに待ってますからヾ(*´∀`*)ノキャッキャ♪(トウガ・S・ローゼン)
本編m・・・イヤナンデモナイ(マーサ)
オッケ〜イ!! 良いですね〜このまま頑張っていきましょうwww(YUJI)
GJ!ここでまさかの星ですね^^視点がナイス( ´∀`)b本編期待して待っとります!!(だめぱんだ♪)
komanariさん>こういう切り口もありかな、と。でも、本編のハードルを自分で上げちゃってる気がするのは気のせいでしょうか……(汗(京 司)
Poussiereさん>本当に短い、掌編程度のものではありますが(汗 楽しんでいただけたなら何よりです!(京 司)
まさかの星陥落の予感ww続編も、本編も頑張ってください!(komanari)
ひゃっほ〜い!!!! 奇跡・・・ちゃうな 必然ってやつだ。 良いよ!作者!良いよ!wwww  星だしてくれてありがと!^^w(Poussiere)
タグ
真・恋姫†無双 魏ルートアフター  明命 

京 司さんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。


携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com