リリカルHS 57話
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はやて「士希!」

 

私は咲希から戦闘が終了した事を聞かされ、一目散に士希の実家へと向かった。

士希はアルテミスを討つ際、傷が開いてしまったらしい

 

私はバンと勢いよく扉を開ける。そこには、何食わぬ顔でリンゴを食べてる士希がおった

 

士希「おう、お疲れはやて」

 

そして、何てことない様子で話しかけてきた

 

はやて「ッ!」

 

 

パチーン!

 

 

私は士希の頬を思い切り引っ叩いた

 

士希「ッ!テメェ!なにしや…」

 

はやて「あんた…私がどんだけ心配したと思てんねん…

あんたが傷だらけになって、死にそうになって、どんだけ不安になった思てんねん…

やのにあんた、なんでそんな何事もなかったみたいに振る舞うんや…

心配したこっちがアホみたいやろ……」

 

私は士希を抱き締め、涙を流した。

こんなんを言いたかった訳やない。ホントは、無事でいてくれて、ホンマに嬉しかった。

せやけど、士希の態度が少し頭にきてしまった

 

士希「ごめん…」

 

士希は一言そう呟き、私の頭を撫で始めた

 

はやて「ほんとに…無事でよかった…」

 

私は涙を止める事ができやんだ

 

 

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士希「落ち着いた?」

 

はやて「……うん」

 

しばらくして私は泣き止み、落ち着きを取り戻す。

せやけど、私は士希から離れたくなく、ベッドに上半身を起こして横になってる士希にくっついたままやった

 

士希「……!?その指輪、誰から?」

 

士希は私の人差し指にはめていた指輪に手を触れて聞いてきた

 

はやて「ばけもん…貂?からもらった」

 

士希「あいつが?」

 

士希はとても驚いた表情をしていた

 

はやて「なぁ、士希はいったい、何者なん?」

 

私は聞いて見た。ずっと謎やったことを。ずっと聞きたかったことを。

士希が頑なに喋ろうとしやんだことを

 

士希「俺がいったい何者なのか、か。はやてはこの世界について、貂?から何を聞いた?」

 

はやて「この世界が外史って事と、外史の管理者と時空管理局が古い付き合いって事と、

そしてここの舞台が三国志って事だけや。

あぁ後、貂?らが東の人らに厳しいって事も言ってた。詳しくは、士希に聞けって」

 

私は貂?との会話を思い出しながら言った。

すると士希は、少しため息をつき、真剣な瞳で私を見た

 

士希「……あいつなりの気遣いか。何を今さら…」

 

はやて「いったい、外史と士希の間に、何があったん?」

 

多分、ただ事ではないやろうけど…

 

士希「…そうだな。ここは外史の一つ。とある人物が作った、三国志を舞台とした世界だ。

そして、ここでの俺のもう一つの名前は司馬昭、字は子上。

これでも、王になれる器の人間なんだぜ?」

 

司馬昭って、あの司馬懿の息子やんな?めっちゃ有名人やん

 

はやて「あんた、そんな凄い人やったんかいな」

 

士希「はは!それはいわゆる正史の司馬昭の事で、問題はこの世界での俺なんだ。

正史と外史は似ているようで違う。そのわかりやすい例が、

正史世界では男だった武将や軍師が、この世界では女であることだ。

咲希っているだろ?あれ、もう一つの名前は司馬師な」

 

はやて「あの人が?この世界じゃ、性転換しとるってこと?」

 

うわぁ…それなんてギャルゲ?三国無双ならぬ、恋姫無双って感じか?

 

士希「ま、全員が全員、性転換してるわけじゃないけどな。

俺もそのうちの一人。おかげで肩身は狭いけどな」

 

何てことを、苦笑いで語っていた。きっと、この世界の創造主が女好きなんやろうな

 

士希「話を戻すぞ?この世界は正史とはまた違う歴史を辿っている。

歴史授業の復習だ、三国を統一したのはどこの国でしょうか?」

 

うおっ、唐突やな。せやけど、私これ答えれるで

 

はやて「魏でも、呉でも、蜀でもない。答えは晋やろ?」

 

士希「正解!なんだちゃんと頭に入ってんじゃん」

 

いや、歴史の授業てか、ゲームの知識やけどな。やってて良かった三国無双

 

士希「まぁ正史では晋なんだけどさ、外史は違うんだ。

なんと、魏、呉、蜀が一人の男を中心に同盟を組んで終結させた。

晋なんて国、この大陸にはないんだ」

 

はやて「そ、そうなん?あれ?せやったら…」

 

確か晋の王になるのは…なら、今目の前におる人って…

 

士希「晋を建国するのは、司馬昭の息子にあたる司馬炎だ。

だけど、この世界において晋は不要な国だ。

だって、三国は既に手を取り、争う必要がないんだから。

そして何より、この世界の創造主は晋を望んでなんかいない。

それは新たな争いの火種になるからだ。

何より、この世界の『主役の座』を創造主からぶん盗っちまうんだからな」

 

士希の瞳は徐々に悲しみを帯び始めた

 

士希「そんな世界に、俺は生まれた。何も知らずに育った俺は、自分の正義感に従い、

自分の力が役立つと信じて軍に入った。それが四年前、12歳の事だ。すげぇだろ?

たった12歳のガキが、いっちょまえに戦場に出て、人の命を奪ったんだ。

何のためらいもなくな…」

 

士希は自虐的な笑みを見せる。その姿が、見てられへんだ。

せやけど、私は最後まで聞かなアカン。

じゃないと、こんな事を話してくれた士希を裏切る事になる

 

士希「俺は軍人として功績を挙げ、やがて自分の部隊を持つようになった。

と言っても、30人ほどの小隊だがな。俺はその小隊の隊長を務めた。

自分の指揮で部隊を動かす。堅実に確実に、兵士は使い捨てじゃないを信条に、

俺は部隊員全員が生き残れるような策を考え実行していた。誰もが無事に帰れるように。

そしていつしか、俺の部隊は『奇跡の部隊』と呼ばれるようになった。

あいつの部隊は無傷で帰ってくる、絶対に負ける事はないなんて言ってな」

 

その話をする士希は少し誇らしげやった。かつての栄光なんやろうな

 

士希「だが、そんな『奇跡の部隊』も、ミスを犯した。

いつものように賊討伐に乗りでた俺達は、いつものように策を使って追い込み、

いつものように殲滅していった。だが、この時の俺は慢心していた。

賊共の、最後の悪あがき。決死の攻撃。俺は乱戦だったこともあり、少し反応が遅れた。

そこを、仲間が身を呈して俺を助けてくれた。あいつは、俺の代わりに攻撃を受けて戦死した」

 

はやて「ッ!?そんな…」

 

士希「後にも先にもあいつだけなんだ。俺の部隊の戦死者は。

しかも死因が俺をかばってだぜ?ほんと、情けねぇよ…

あいつらが生き残る為に策考えたのに、そいつに助けられたんだ。

しかも、今でもあいつの最期の言葉が忘れられないんだ…

なんだよ…死ぬってのに幸せだったって…」

 

士希は涙声やった。きっと、私が思っとる以上に、士希の悲しみは深い。

私はただ、士希を抱きしめる事しかできやんだ

 

士希「残った俺の部隊も、俺に非はないと言った。

死んだ仲間の親族も、あまり気を病まないでと言ってくれた。

だけどな、そいつの死は俺の中じゃかなりトラウマなんだ。

それまで、俺は死について深く考えていなかったんだ。

だが、自分の部隊で出た初めての戦死者。身近な、家族に近しい者の死。

それを理解すると、途端に命の重みを感じた。

きっと、俺が殺してきたやつの中にも、家族がいたかもしれない。

俺も、そいつらの大切なものを奪ってきたのかもしれない。

そう考えた瞬間、俺はもう本気で戦えそうになかった」

 

士希は自分の手を見つめて答える。まるで、その手に血が着いているかのように…

 

士希「そして、さらに追い打ちをかけるように、あいつらは突然現れた」

 

はやて「あいつらって?」

 

聞いといて、私はほとんど答えを導いていた。恐らくは…

 

士希「貂?達、管理者の連中だ」

 

予想通り、管理者やった。士希の声には怒りが感じられる。いったいあいつら何したんや

 

士希「あいつらは言った『これ以上、司馬昭が活躍されるのは好ましくない。

司馬昭が戦えば、死ななくていい人間が死ぬ』ってな」

 

はやて「どういうこと?」

 

士希「ここに似た外史は、何も一つじゃない。

ここ以外にも、三国志を舞台にした外史があって、同じ人間が同じように生きている。

だけどな、晋はもちろん、他の外史に司馬一族は存在していないんだ」

 

司馬一族が存在しない?三国は同盟で終結…創造主…『主役』……あぁ…そんな…

 

はやて「まさか、司馬一族は邪魔な存在やからって、排除されとるんじゃ…」

 

私が聞くと、士希は力なく頷いた。そんな…そんな事って…

 

士希「物語に『主役』は二人もいらない。

司馬一族が生きていたら、創造主が『主役』になれるチャンスが低くなる。

なら、司馬一族には舞台から退場してもらおう。

こうして、数ある外史世界でも、司馬一族が表舞台に上がることは一度とてなかった」

 

でも、目の前におるこいつは、自分の事を司馬昭と名乗った

 

はやて「なら、士希はいったいなんで…」

 

士希の話通りなら、司馬昭は存在してないはずや

 

士希「この外史はな、異例中の異例なんだ。

東零士っていう正史世界からのイレギュラーの登場によって、

本来死ぬはずだった俺の母、司馬懿が生き延びた。

そしていろいろとあり、月日が経ち、俺と咲希が生まれた。

俺と咲希、そして母さんが生きているのは、全部父さんのおかげなんだ」

 

いったい零士さんは、何があってこんな世界に…

 

士希「俺達は生まれ、そして生きている。

だけどな、この外史においても、俺達司馬一族は邪魔者なんだ。

強過ぎる力を持つが故に、『主役』の座を奪いかねない。

だから貂?達は、俺に戦うなと言った」

 

はやて「戦うと死ぬ人がおるから?士希は多くを救ってきたんやろ?せやったら…」

 

士希「貂?が言うには、その死んでいった俺の仲間な、本来死ぬ予定じゃなかったらしい」

 

私が言葉を発する前に、士希の悲しい声音が、私の発言を止めた

 

士希「それどころか、俺が頑張って助けてきた人達もな、

俺が助けなくても助かってたらしい。つまり、俺がいなくても、多くの人間は助かるんだ」

 

はやて「そ、そんな…」

 

それはつまり、司馬昭がおらんでもこの世界は回る。

むしろ、司馬昭の役目なんてものはない。おるだけ邪魔って、言っとるようなもんや…

 

士希「それを知った瞬間、俺は俺がわからなくなった。ただ、言われた通り軍は抜けた。

これ以上活躍すると、今度は家族を危険に晒すと脅されたからだ」

 

貂?は、そんな事まで言ったんか?

そこまでして、この世界の創造主の立場を守りたかったんか!?

 

士希「それから俺は、何をするでもなく過ごした。

表舞台に立たなきゃ何してもいいって言ってたから、家の仕事手伝ったり、

せっかく次元世界を渡り歩けるんだから、それで世界旅行したり。

それが、2年くらい前の事だ」

 

ルネちゃんが言ってた、2年前から様子がおかしくなったって言うのは、これが原因なんか。

士希は、この世界での存在理由を奪われてしまったんや…

 

士希「何をしても満たされなかった。

美味い飯を作っても、無意味に金を溜めても、美しい絶景を見ても、何も感じなかった。

かつての父さんも、同じ気持ちだったのか。

そう思い、俺は正史世界、はやてのいる世界に行く事にした。

父さんがやって来た事は、無駄なんかじゃなかったらいいなぁって思ってな」

 

そんな経緯があって、士希は私らの世界に来たんか。そんな悲しい過去があったなんて…

 

士希「そして俺はレーゲンと、そしてはやてと出会った。

この世界とは違う世界で出会った護るべき対象であるレーゲン。

この世界とは違う世界で、夢に向かって、平和を目指して全力で生きているはやて。

どっちも、かつての俺が成し得なかったことだ。

俺はこことは違う世界で出会ったレーゲンを護って、はやての夢を応援してあげたいと思った。

この世界に居場所がなくても、俺はあの世界に居場所を見つけた気がしたから。

レーゲンと、はやてのおかげなんだ。レーゲンとはやてが、俺の存在理由なんだ…」

 

士希はとうとう泣き出した。

きっと、今まで一人で抱え込んで、無理をしてきたに違いない。

存在を否定され、頼れる人もおらず、この事を私に話したくても話せず、

士希は今までずっと、溜め込んできたに違いない

 

はやて「私がおる。士希が誰であろうと、過去にどんな事をやってこようと、

私は士希を支え続ける。それに私は、士希を誇りに思っとるよ。

だって士希は、自分の手を汚してまで、いろんな人を救ってきたんやろ?

助かる人らやったかもしれやんけど、その人らを実際に救ったんは東士希や。

それは、この世界での代わりようのない事実。

誇っていい、この世界の士希を証明する不変の事実や。

世界の全てが認めやんでも、私だけは認める。だからさ、もう我慢せんでもええんやで。

一人で戦おうとせんでもええんやで。私がしっかり、受け止めるからさ。

だから無理せんと、今は休み…」

 

士希「ッ!?……うっ……ごめんな……はやて……ありがとう……」

 

私はすすり泣く士希を優しく抱き締め、子どもをあやすように頭を撫で続けた。

思えばこれが、士希が見せた本当の涙なのかもしれない

 

 

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翌日

 

 

 

いつの間にか私と士希は一緒に寝てしまっていたようやった。

目を覚ました時、お互い抱き締め合い、顔がめっちゃ近くにあったから、

二人してめっちゃ驚いてしまった。一応言っとくけど、なんもなかったでな?

まぁ、八神家と東家はニヨニヨしとったけど。シグナムだけが殺気ビンビンやったな

 

私らは士希の家族に朝食をご馳走してもらい、団欒と過ごした

 

士希の妹ちゃんらである秋菜ちゃん、蓮鏡ちゃん、悠香ちゃん、凪紗ちゃんらには、

士希との関係をえらい突っ込まれたけど、仲良くなれたと思う。みんな可愛い子達やった

 

義理のお姉さん達である月さん、詠さん、そして恋さんとも仲良くなれた。

三人とも、えらい美人さんやのに、なんで結婚してへんのやろう?

てか、恋さんの食べる姿が、反則級に可愛かった

 

士希の親にあたる零士さん、咲夜さん、そしてそれぞれの妹の親である秋蘭さん、

雪蓮さん、悠里さん、凪さんとも挨拶を済ませた。みんな、ホンマに子持ちの親やんな?

桃子さんといい、リンディさんといい、この世の母親はいつまで経っても若いもんなんやろか?

 

そして、士希の双子の姉である咲希は…

 

咲希「お前結構良い体してるよなぁ。C?いや、Dくらいあったり?」

 

士希「ブゥーッ!」

 

はやて「ちょ!あんたどんなエロ親父やねん!デリカシーなさ過ぎやろ!」

 

なんや微妙に、私はこの人が苦手やった

 

朝食を済ませた私らは、それぞれが思い思いにゆったりと傷を癒していた。

そんな中、ガイアが急に立ち上がり…

 

ガイア「あ、これから優雨との約束があるから、先帰ってていい?」

 

士希「おう、構わないぞ」

 

ガイア「サンキュー!」

 

はやて「っておい!あんた負けたやん!なんでそんな自由やねん!」

 

士希も士希で、なんで勝手させてんねん!

 

ガイア「いやいや、ちゃんと条件通り、神器のマスターとして認めてるって!」

 

士希「そういうこと。あの条件な、どっちにしろこういう事なんだわ。

俺が勝てば、神器として認める代わりに魔力供給を得る。

ガイアが勝てば、そんなの関係なしに魔力供給を得る。

ガイアの本当の目的は、ただ魔力源が欲しかっただけなんだ」

 

ガイア「そういうことー!なんかありゃ今回みたいに手伝うが、基本は自由ってな!」

 

はやて「うぇぇ?あんた、それわかってて勝負受けたん?」

 

士希「あぁ。別に悪い奴じゃなさそうだし、いっかなぁって」

 

んな、適当な…

 

ガイア「んじゃ!士希!はやて!また優雨とゲーセン行こうね!」

 

そう言って、ガイアは転移して行った。確かに、悪い奴ではないかな

 

 

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その後、私ら八神家は、それぞれこの街を案内してもらっていた。

私らの世界にも、ミッドにもない文化。どんな物にも、職人の魂を感じる造形物。

どれも物珍しく、飽きさせやんだ。そして、日も暮れる頃、

そろそろ元の世界に帰ろうというところで、士希は私を連れてお城へとやって来た

 

はやて「うわぁ…これがリアル三国志の城かいな。想像以上やな」

 

士希「はは、なかなかすげぇだろ。

つか、一般人は入れなかったりするから、結構レアな体験だぜこれ?」

 

ほぇー、めっちゃ豪華やなぁ。1800年前の世界ってこんな感じなんや

 

兵士1「し、司馬昭殿!?何故こちらへ?」

 

兵士2「なに!?司馬昭殿だと!?えぇい!皆を呼べ!」

 

城に入った途端、私と士希は鎧を着た兵士に囲まれてしまった。

すんごい威圧感や。管理局のむさい男なんて目じゃないでこれ

 

士希「い、いいってお前ら!ちょっとした野暮用で、すぐ帰えらねぇといけねぇし」

 

兵士1「し、しかし!あなたに会いたい者は多くいます!皆、あなたを心配しております!」

 

士希「うぇぇ?」

 

兵士2「こら!司馬昭殿も御多忙だろう。あまり困らせてはいけない。

司馬昭殿、申し訳ありませんでした。

しかし、かつてあなたの部隊に所属していたものは皆、あなたを心配していることは事実。

いずれ、会う機会があることを切に願います」

 

兵士の二人は揃って頭を下げた。この人の言葉は、心の底から言っとるように思えた

 

士希「あー…わかった。じゃあ、また時間作って会いに行くよ。

そん時に、皆で同窓会でもやろうぜ」

 

兵士1・2「「ッ!!ありがとうございます!」」

 

兵士二人は頭を下げ、凄い勢いでどこかに行ってしまった。

そんな様子を見た士希は、ため息をついていたけど…

 

はやて「ふーん…えらい慕われてるやん」

 

士希「ほんと、ありがたい事だよ」

 

とても、嬉しそうやった

 

 

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やって来たのは城の奥。ここは…

 

はやて「ここって、お墓?」

 

地面には、数千を越えるかもしれへんほどの墓石らしきものがあった

 

士希「あぁ。許昌の英雄が眠る土地。ここに、あいつが眠っている」

 

それはきっと、士希をかばって亡くなった仲間のことやろう

 

士希「ッ!?お前…」

 

墓の前には、既に先客がおった。金髪ショートの、とても綺麗な女性…

 

「士希?珍しいな。ここでお前と会うなんて」

 

士希「あぁ。ずいぶん久しぶりだな、友紀」

 

友紀と呼ばれた女性は微笑を漏らし、再びお墓を見てから立ち上がった

 

友紀「いい加減、前に進めたみたいだな。その子のおかげか?」

 

士希「あぁ。今日はその報告だ。俺はもう、この世界に縛られない」

 

友紀「そうか。そりゃ良いことだ。なぁあんた、士希をよろしく頼むな」

 

友紀さんは私をチラッと見て言った。とても綺麗な人、やのに、どこか寂しそうな瞳…

 

士希「お前、何をしようとしてる?」

 

友紀「別に。ただ、私も過去に向き合うつもりでいるだけさ。

じゃあな、士希。縁がありゃ、また会おうぜ」

 

そう言って友紀さんはどこかへ行ってしまった

 

士希「あいつは、俺の部隊で俺の補佐官をしていた王異ってやつだ。

今は確か、秋菜の補佐官をしているらしい」

 

あの人が、王異…

 

はやて「なぁ、あの人大丈夫なん?」

 

あの感じは、何かを思いつめとるような感じやった。それこそ、士希に似た…

 

士希「さぁ。ただ、あいつの中で何かを決心したらしい。

それが、悪い事じゃないことを祈るだけさ」

 

士希と友紀さん。言葉数は少ないけど、信頼感、絆みたいなんはあるように見えた。

昔は、どんな感じやったんやろ…

 

士希「…別に、あいつとは何もなかっぞ」

 

はやて「あれ?顔に出てた?」

 

士希「あぁ、バッチリな」

 

士希は意地悪顔で言ってきた。なんや、調子戻ってきたやん

 

士希「さて…なかなか墓参りに来れなくて悪かったな。

俺の中でいろいろ纏めるのに時間がかかった。ほんと、悪かった」

 

士希は墓の前に屈み、独白を始めた。私は士希の肩に手を置き、様子を見守る事にした

 

士希「あの日、なんでお前が俺をかばったのか、

最近になって、同じ事をして、ちょっとわかった気がした」

 

あの時の…

 

士希「俺はもう、この世界ではやっていけないけど、別の世界でやりたい事ができたんだ。

俺はこの子、八神はやてを護る。お前の期待には応えてあげられないが、

お前が護ってくれたこの命を、俺ははやてに捧げたい。

今日は、それを許してもらいにきた」

 

もし、今日がまだお盆期間やったら、士希は幽霊と会話できたかもしれやん。

だけど今日は10月。だからこれは一方的な報告になる。それでも士希にとっての第一歩や

 

士希「俺はようやく、自分の生の意味を見つけたんだ。それを全うしたい。

だから、見ていてくれるか?俺の進む道を。お前が繋げてくれた道を…」

 

そして士希は黙祷し、立ち上がる。その時の士希は、とても晴れやかな顔をしていた

 

はやて「もうええの?」

 

士希「あぁ。とりあえず、今日の分は全部言っておいた。続きはまた今度、話しに来るよ」

 

はやて「そっか」

 

私は士希の手を握り、腕を組み、抱きつく。何故か、こうしていたい。

士希の体温を、感じていたい

 

士希「はやて、一緒にいてくれて、ありがとう。俺、はやてに会えて本当によかった」

 

きっと、心の底からの笑顔やろう。

とても優しく、とても温かい、今まで見てきた中で最高の、士希の本当の笑顔やった

 

 

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あとがき

 

 

 

夏の暑さは苦手だけど、エアコンの風はもっと苦手!

 

どうも、こんにちは!桐生キラです!

 

 

 

今回はこの作品には似つかわしくない、シリアスが続いた回となりました。

 

主人公の士希は過去の経験から、自分自身の存在理由に自信を持てなくなります。

居ても居なくても一緒、むしろ状況が悪くなる。誰にも求められていない。

そう錯覚し、逃避の意味も込めて正史世界で過ごすようになります。

そして、正史世界で出会ったはやてのおかげで恋を知り、レーゲンのおかげで護るべき対象を得た士希は、二人のおかげで徐々に心が癒されていき、現在に至るといった感じです。

 

必要とは言え、シリアスを書いていると重くなってしまうのが難点。

 

もっと明るい作品を書きたかったんだ!

 

なのでガイア戦でちょっと遊びました(笑)

 

久々の戦闘描写だったので、かなり苦戦して書きました(笑)

 

墓参りでの最後のシーンでは、乙女ゲーのラストのワンシーンのごとくCGがドンと出て、エンディングテーマが流れるのをイメージして書きました。

個人的には「志在千里」か桐島愛理さんの「EVE」という曲が脳内再生されました(笑)

 

 

 

ルネッサ・マグナスについて

 

サウンドステージXより、ルネッサは割と好きなキャラクターなんですよね。

なんか絡めやすそうだったし、士希が保護した事にして登場させました。

ルネッサは今後もちょいちょい出てきます。

そして出したからには、ああしたいなというのがあるので、今後も頑張って書き続けようと思う次第です!

 

 

 

作中に出てきたガイアの友達の優雨というキャラクターについて

 

実はこのキャラクター、私が某所で投稿しているソードアート・オンラインの二次創作の主人公だったりします(笑)

なので完璧な一般人。話の展開にはまったく関係のないキャラです(笑)

 

 

 

神器も残すところ後一つ、つまりはもうすぐ終わりなのです!

 

後数話、高校生活っぽい話を書いて、最後の神器、ミネルバを登場させようと思います。

 

このシリーズも結構長く書いてきたものですが、どうか最期までお付き合いしてくださると、こちらも幸いでございます。

 

それでは、また次回にお会いしましょう!!

 

 

説明
こんにちは!
シリアス編がようやく終わります!
士希という存在と過去と外史世界
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コメント
ああ、もう少しで終ってしまうのか……(ohatiyo)
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