機動戦士ガンダムSEEDDESTINY 失われた記憶を追い求める白き騎士
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「まさかザフトの戦闘艦とはな。姫もまた面倒なもので帰国される」

 

オーブ連合首長国・オノゴロ島にある軍港。

プトレマイオス寄港の要請を受けて、その準備が整えられていた。その様子を見ながら宰相ウナト・エマ・セイランとその息子ユウナ・ロマ・セイランが話し合っていた。

 

「今のところ我々は中立を保っていますから。でもどうします父上。その間に連合が動いたら」

 

「まだ正式に同盟を締結したわけでもないし、言い訳は何とでもできるさ。それに我々の動きを無視して事を始めるほど、連合も間抜けではあるまい」

 

ウナトは冷静な表情で言ったが、ユウナの表情からは不安が払拭されていない。

 

「どうでしょう。今ブルーコスモスを牛耳っている男、ロード・ジブリールはアズラエルと違って、プロパガン ダの演出の為にそう言った打算が後回しになりそうな人物ですから」

 

「それならそれで、オーブはまた様子見をすれば良い。重要なのは土壇場で前大戦の過ちを繰り返さないと言うことだ」

 

「そうか……それもそうですね」

 

「それに、わざわざわが国の代表を届けて下さったのだ。無碍に扱うわけにもいくまい」

 

「最低限の補修、それに食料と推進剤の補充程度ならさすがに連合もどうこうは言ってこないでしょうしね」

 

2人が話し合っている間にも、入港の準備が整えられた桟橋にプトレマイオスが入港してくる。

湾内で着水すると、タグ・ボートの力を借りず、自力でゆっくりと接舷を始める。

 

「全推進器停止。速力0。機関アイドルです」

 

プトレマイオスの艦橋で、男性オペレーターがそう告げる。

 

「では、私とアーサーはオーブ側へ挨拶に行ってきます。よろしく頼むわね」

 

タリアはプトレマイオスの停止を確認すると、そう言ってから制帽を被りなおしてからアーサーを伴って艦橋を後にした。

桟橋から、ミネルバのメインデッキ左舷側にタラップが寄せられる。気密扉が開き、まず姿を現したのはカガリとアスランだ。それに続く形でタリアとアーサーが降りてくる。

 

「カガリぃ〜!」

 

先程までとは一転、ユウナは甘ったるい声を出しながらタラップから降り立ったカガリに駆け寄っていき、抱きついた。

 

「あ、ユウナ……っておい、ちょっと待て」

 

表情の緩んだユウナとは対照的に、カガリは露骨に不快そうな顔をしながらユウナを解こうとする。

 

「これ、ユウナ。気持ちは解るが場を弁えなさい。ザフトの方々が驚かれておるぞ」

 

「あ、ウナト・エマ」

 

ウナトがユウナを制すると、ユウナはカガリを離してウナトの傍らに立った。その際、ちらりと挑戦的な視線をアスランに送る。

 

「…………?」

 

だが、アスランはそれに何の反応も示さなかった。ユウナは拍子抜けして、思わずアスランを見つめてしまう。

 

「大事の時に不在ですまなかった。留守の間の采配、ありがたく思う。被害の状況はどうなっている?」

 

「沿岸部などはだいぶ高波にやられましたが、幸いオーブには直撃は無く」

 

カガリに訊ねられ、ウナトはそこまで答えてから、ちらりとタリアたちを見た。

 

「詳しくは後ほど行政府で。急ぎ御報告しなければならない事案もありますので」

 

ウナトはそう言い、軽くカガリに礼をしてから、タリアと向き合った。 「ようこそオーブへ」

 

「歓迎を感謝します、ウナト・セイラン閣下。火急の事態に余計な手間を増やしてしまい申し訳ありません」

 

タリアは笑顔で言い、ウナトと握手を交わした。

 

「いえ、こちらこそ代表の帰国にこのような取り計らいをして頂き、まことに感謝いします」

 

ウナトも、少なくとも表面上は屈託の無い笑みでそう答えた。

 

「いえ、不測の事態とは言え、代表を連れまわす形になってしまったのは我々の方ですので。それに、この度の災害につきましてもお見舞いを申し上げますと共に、我々の努力の至らなかった事を謝罪いたします」

 

手を下ろした後、タリアはそう言って、深く頭を下げた。

 

「いえいえ。こちらも事情は把握しております。どうか頭をお上げください」

 

ウナトが言い、ようやくタリアは頭 を上げた。

 

「お気遣い、重ね重ね感謝いたします」

 

タリアは再度、軽くだが頭を下げた。

 

「改めて紹介します。この艦の艦長、タリア・グラディスです」

 

そう言ってから、タリアは直立不動で敬礼した。

 

「それから副長のアーサー・トラインです」

 

アーサーも、タリアに倣って敬礼のポーズをとった。

 

「ようこそオーブへ。クルーの方々もお疲れでしょう。まずはゆっくりとお休みください。補給と整備に関しましては、後ほど責任者の方を寄越しますので」

 

「お気遣い、感謝いたします」

 

ウナトが言い、タリアはそう答えた。

 

「お互い取り込んでいるようですゆえ、社交辞令はこの辺りで」

 

ウナトはタリアを見て言う、対してタリアも頷いて肯定した。

 

「代表、早速ですが行政府の方へ」

 

「あ、ああ……」

 

それまで、ウナトにタリアとのやり取りを任せきりにしていたカガリは、はっと我に返ったように声を漏らした。カガリは、一度タリアの方に振り返る。

 

「グラディス艦長、短い間だが世話になった。礼を言う」

 

「いえ。こちらこそ、お手間を取らせて申し訳ありませんでした」

 

カガリとタリアが握手を交わし、 オーブとプラントの首脳陣は別れた。

 

「あー、君も本当にご苦労だったねぇ、アレックス。報告書なんて後で良いから、まずはゆっくりと休んでくれ給え」

 

わざと嫌味な態度を作り、牽制するようにユウナはアスランにそう言った。

 

「あ……ええ、はい、ありがとうございます……」

 

しかし当のアスランはユウナへの返事は上の空で、後ろ髪を惹かれるようにプトレマイオスをちらちらと振り返っていた。

 

「?」

 

ユウナの方も毒気を抜かれて、首を傾げるばかりだった。

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軍事島だと言うオノゴロ島へ案内されたプトレマイオス。オーブは幸いにもユニウスセブン落下による被害は少なかったそうだ。オーブのモルゲンレーテに運ばれたプトレマイオスの修理には、数日はかかるらしい。進水式もまだだと言うのに、まるで歴戦の艦のようになってしまっていて、クルーたちは複雑な気分になる。上陸許可が降りると、さっそく街へと足を運ぶ者と、艦に残って自主訓練をする者の二つに別れた。それから数時間後、シンからの罰ゲームとしてオーブ限定のシュークリームを買わされたルナマリアは、プトレマイオスクルーに渡しに回ったのだが、肝心のシンとついでに刹那の姿がどこにも見当たらなかった。

 

「どうしたルナマリア?」

 

プトレマイオスに戻って最初に渡しておいたレイとばったり遭遇したルナマリアが尋ねる。

 

「あ、レイ。シンと刹那を知らない?頼まれたシュークリーム渡そうと思ってたんだけど」

 

中に入れたばかりの保冷剤と件のシュークリームが入っている箱を掲げて見せながらルナマリアが言った。

 

「シンならさっき刹那と一緒に街に出たぞ」

 

ルナマリアが戻ってくる数分前に、ちょうどここで何かに堪えるような表情を浮かべるシンと、そんな彼女を心配した様子で見ていた刹那を目撃していたレイ。

しかし、二人がどこへ行こうとしてるのかを察して、あえて声をかけずにハイネと共に訓練に入ったのだ。

 

「ふ〜ん、せっかくシンにオーブ案内してもらおうと思ったのになー」

 

プトレマイオスの中で唯一のオーブ出身であるシンならば、色々なことに詳しいとふんでいたルナマリアだったが、どうやら今回は諦めざるを得ないようである。

 

「仕方ない。ここは、シンの故郷って言っても、家族を亡くした場所でもあるんだ。そのままオーブにいても良かったのに、わざわざプラントに移住して来たんだ。さぞかし辛かったろうさ」

 

「そっか、上陸だって浮かれる気分にはならないわよねぇ」

 

ルナマリアと妹のメイリンには、ちゃんと両親がいる。だが、もしもシンのように戦争ではなくとも、家族を失えって一人になれば、それを必要以上に思い出すような地には近寄りたくないと思う。

 

「恐らく今は、家族の墓参りだろう。おそらく刹那はその付き添いか」

 

「じゃあ、シンには悪いけど私たちは楽しみましょうよ。せっかく出てきたんですから」

 

オーブは、前大戦時結構な被害を蒙ったと聞いていたが、復興振りは凄かった。それもこれも、侵攻した地球連合軍のおかげだというのだから大した皮肉だ。

 

「にしても随分と早いのね、復興するの」

 

「前大戦時で最後は一応連合側だったからな。現在宰相を務めているウナト・エマ・セイランは大西洋連邦寄りの政治家だ。かなりの金が大西洋連邦の復興資金に流れ込んだらしい」

 

「……そうなのか?」

 

デュランダルの家にはちょくちょく遊びに行く感覚で通っているハイネではあったのだが、政治方面の知識に関わることは全く以て無かった。

 

「ああ、大西洋連邦と言う大国のコネと金の力で復興を成し遂げたんだ。オーブは一度滅んだからな、自力だったらまだマスドライバーを再建するのが限界か。その代わり、国の結構な部分が大西洋連邦の紐付きになってしまった。表向きは中立でも、国全体として見るならもうこの国は中立じゃない」

 

「……気を抜かない方がよさそうね」

 

「ああ」

 

「だな」

 

夕暮れに映し出されているオーブが、その影で密かに自分たちへ向けるナイフを研いでいるかのように、ルナマリアたちは感じていた。

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オノゴロ島の旧市街は現在、慰霊のための記念公園となっており、巨大なモニュメントが立っている。

そしてそれとは別に、そこから程近い岬にも白くて小さな慰霊碑があった。

海と街との境界線となっている砂浜を通りながらその岬に向かってシンと刹那は歩いていた。

 

「なあシン。この国はお前の故郷なんだろう?今のオーブのこと、どう思っているんだ?」

 

ユニウスセブン落下事件の前にカガリへとぶつけた激情に注意を配りがら刹那が尋ねる。

 

「……理念だけの国、かな。マユたちを守ってくれなかったオーブの理念は嫌いだけど……この国自体は嫌いじゃないよ。学校に通っていた時に出来た友達や、小さい時からの知り合いがいるからね……」

 

「そうか……」

 

そこから二人に会話は無かった。

シンは道中の花屋で買った花束を握り締める。そうして彼女はゆっくりと慰霊碑へ歩み寄っていく。シンは少しだけ、目を閉じた。

二年前、この道を慌てて下っていった。オーブは連合軍の攻撃を受け、悲惨な状態となり、シンの家族は避難することになる。

しかし避難の最中、シンと少しだけ離れた家族に、フリーダムの流れ弾が凶弾となり━━それが家族の運命を変えた。

シンを残し、父も母も妹も死んだ。

しかし戦闘中のため、その遺骸を葬ることさえ出来ずに、彼女は一人プラントへ移住することとなった。

そしてシンは軍人になったのだ。あの日、守れなかった自分の無力さが許せなかったから。

家族全員が同時に亡くなった場所につく。焼け焦げた木々はそのままで、しかし新芽がところどころ芽吹いていた。

刹那はシンの家族に黙祷をするために目を閉じた。

シンは花束を置いた。

 

「お父さん。お母さん。マユ……私ね、少しの間だけオーブに帰ってきたんだよ。ザフトの軍人になったから、お父さんやお母さんは怒るかもしれないけど……でも、もう大切な誰が目の前からいなくなるのは、嫌なんだ。だから許してくれるよね?」

 

ふっと、シンは悲しげに微笑みを浮かべる。

それからして、また口を開いた。

 

「私ね、今楽しくやってるんだよ。軍の仲間と馬鹿やったり、皆と一緒に訓練したり、それから私の隣にいる━━刹那・F・セイエイっていうんだけど、彼と一緒に色々な楽しいことをしたり……今はまだまだ弱いけど、いつかは皆を守れるくらいに強くなる……だから私は戦うよ。手に入れたこの力で、皆を守ってみせるから……だから、見守っててよ。私が正しい道を進めるように。もう二度、あんな悲劇は繰り返させはしないから」

 

二年間、溜まっていた家族への想いを吐き出す。彼らの耳に海風が鳴っているのが聞こえてくる。

あの日は昨日のようであり、しかし遠い昔のようだった。

 

「もういいのか?」

 

包み込まれるような優しい声音で刹那がそっとシンの手に触れた。それを嫌がる素振りも見せずに逆にシンも刹那の手に触れると同時に握った。

暖かい、彼の温もりがシンに伝わってくる。

 

「うん。伝えたいことは全部伝えたから」

 

「……そうか」

 

少し涙を堪えた笑顔でそう返す。これ以上無理に感情を吐き出させるのは、彼女に酷であると思っていた刹那もそれ以上この話題を口にすることはなかった。

そうして手を繋いだまま、刹那とシンは来た道を二人寄り添いながら戻り、プトレマイオスへと帰ることにしたのであった。

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【O☆MA☆KE】

 

??「あれ?僕の出番は?」

 

━━そんなものは永遠に訪れません━━

 

???「では、私は……?」

 

━━島の隠れ家にお帰り下さい━━

 

??「でも僕たちがいないとある意味物語が……」

 

━━その時は代役を立てますので。それでも納得がいかないのなら武力行使させていただきます━━

 

??「やめてよね。ナチュラルのあなたが僕に勝てるわけないでしょう?」

 

━━か〜め〜は〜め〜…………━━

 

???「えっ?」

 

??「ちょっ、ちょっと待って!タンマ、タンマ!!」

 

━━破ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!━━

 

この日、オーブのどこかでジェネシス並の光線が空へと放たれたが、その正体は誰にも知らされることはなかった。

説明
PHASE8 オーブでの過去
今週中にはSEED投稿します!
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コメント
biohazar-dさんへ なんでこんなネタになったんでしょうね?あと生存報告とリメイクアンケートとります(アインハルト)
やべぇ、思わず唖然としてしまった(O☆MA☆KEで)。(biohaza-d)
ジンさんへ あっちはちょっと書き直そうと考えてます……春風で。まあ、書き直すと言っても機体を最初からラから始まる騎士にしてさらにゲルググ量産するだけなんですがね(笑)(アインハルト)
REGIONさんへ 打ち上げ……うーん、やるとしたらカガリ誘拐後かな?もしかするとカガリ真っ当になりそうだから。あとでそちらの小説読ませていただきますね(アインハルト)
マユ生存ルートの更新も楽しみにしてます^^てかそっちのほうが続きが気になる^^;(ジン)
あっ、次の花火(きたねぇ)の打ち上げがあるなら私が書いている投稿小説登場キャラをスタンバらせておきますよ?(隣に邪神と黒岩さんスタンバイ中)(REGION)
た〜まや〜♪(REGION)
げんぶさんへ 残念。O☆MA☆KEは所詮、作者の遊び場なだけであって、本編に強い影響は与えられません。つまりは、そういうとなんですよ(アインハルト)
ジンさんへ そんなこと言われたらもっとしたくなっちゃうじゃないですかヤダー。アスランはハゲラン・ヅラまたはクソラン・ヅラにするつもりです。カガリたちは……以前書いてたマユ生存ルートでもいいのからそうしますが?(アインハルト)
O☆MA☆KEはいいぞもっとやれ!カガリとアスランに関しては改心の可能性がある感じかな?ウナトたちもまともな思考をしている感じですかね?SEED白式委託リメイクと合わせて更新楽しみに待っているので頑張ってください応援してます。(ジン)
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