超次元ゲイムネプテューヌmk2 希望と絶望のウロボロス
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「……そう、ですか。ゲイムキャラの回収は失敗、そして紅夜さん……いえ、禍々しきモンスターの王であり、神である絶望の象徴、ブラッディハードもこの世界に……」

 

黒コートを身と纏った謎の人物の来襲を突如として出現した紅夜の手によってなんとか無事にバーチャフォレストから撤退することに成功したアイエフはイストワールの元へ報告していた。

その場にはユニやネプギア、コンパの姿はない。ユニの治療の為にコンパは付き添い、ネプギアは部屋に閉じこもってしまった。

 

「直ぐにでも他のゲイムキャラ、他の大陸に向かう必要があります」

「イストワール様、ユニには治療の時間が必要ですし、ネプギアは……」

「………」

 

あんなことがあったのだ仕方ないと慰めの言葉は言いたくても言えない。彼女意思関係なく彼女達は女神を求めるしかないからだ。辛いことがあったのだからゆっくりと休みの時間を用意出来る程に猶予はなく、ここで指を銜えていれば、シェア率は完全にマジェコンヌ側が独占してしまう。そうなってしまえば例えゲイムキャラの力を全て回収したとしてもこの状況をひっくり返すのはほぼ不可能だ。あの四女神を打ち倒した人物と会ってしまったのは明らかな自分の情報収集不足だったという事に頭を痛めた。

 

「貴方達が会ったあのレイスと名乗った人物にまとめた報告書が先ほど提出されましたが、ご覧になりますか?」

「……見せてください」

 

最初に会った時、感覚と空気が違い咄嗟に紅夜と違うと叫んだアイエフだが、冷静に考えればどうしても重なってしまう。声も性格も違う、深いフードで容姿は確認できないが、どことなく親近さがあった。まるで紅夜とよく似た、兄弟でも見ているような感覚だ。

しかし、紅夜の家族なんて実際聞いたことがない、本人も分かっていない。アイエフ達が知っている紅夜という存在は『零崎 紅夜という元の形を修復する為に用意された仮初の意識と感情』でしかない。故に家族と呼べる存在はいない筈だ。どうしたのかと頭を傾げるイストワールであったが、何でもないと言うアイエフに頷き、その小さな体で机から一枚の書類の入った封筒を取り出して、机に置く。失礼しますとそれを受け取り封筒から報告書に目を通す

 

「マジェコンヌ唯一の幹部【レイス・グレイブハード】。普段は裏工作するマジェコンヌメンバーへ作戦立案、同時に前線指揮者。マジェコン開発の代表取締役。力を象徴する四天王とは違い、マジェコンヌという組織を運営、管理しているのは彼の功績による。異様なカリスマ性以外にその戦闘能力は四女神を同時に相手にして打ち倒す程。口調は荒々しい所もあるが、その人格は真摯であり部下と上司からの信頼も厚い謎の人物。戸籍履歴は一切不明の絵に描いたような超人。こんな奴の相手はぶっちゃけムリゲーだと思います。……気持ちはわかるけど最後どうなのよ」

 

愚痴りたくなるのも分かるが、報告書に書かないでほしい。酒と共に流してと心の中で名も知らないこの報告書を製作した人物に感謝しながら、ため息を吐く。

 

「分かりませんわね」

「えぇ、だけどこれだけははっきりと言えるわ」

 

それは…?と頭を傾げるイストワールにアイエフは今までの事を思い出しながら答える。

 

「あいつは犯罪神を信仰していない。あいつには別の……何かがあるわ」

 

女神を倒す程の実力者。

そして組織を束ねる程のカリスマ性を持ちながら、マジェコンヌに信仰していないことは今までの事ではっきりと分かる。まず、女神を救助に向かったアイエフとコンパを見過ごしただけではなく、来襲してくるだろう骸骨の騎士を遠回しに予言したのだ。あれがなければ女神救出所か、アイエフ達も含めてギョウカイ墓場から無事に出る事すらなくあそこが墓場になっていだろう。

そして、先ほどの邂逅した時だ。逃げた女神に再び捕らえることすらなく、むしろあの戦い方はまるでアドバイスを送っているように感じて、更に謎が深まるが、レイスという存在は犯罪神マジェコンヌを信仰する行動としてあまりに破綻しているからこそ、奴には信仰心の欠片もない事は分かる。

 

「だとすれば、犯罪組織としての目的とは別の目的がある。そしてレイス・グレイブハードは目的を叶えるために犯罪組織に所属していると…そう考えているのですねアイエフさん」

「はい、敵意とか殺意が全くあいつにはありません。女神候補生とは言ってもユニの射撃を初見で完全に見切り、一撃で沈黙化させました。四女神全員を一人で圧倒したという情報は間違いないでしょう。でも、仕事という名目であいつはこれからも襲ってくる可能性が高いです。……これからは、奴の目から逃げるように行動するしかありません。……私が行きます」

 

今、情緒不安定のネプギアを無理やり外に出すわけにもいかない。

コンパも元々は看護師なのだ。戦いには向かない、ユニも怪我はある、そしてレイスと再会すればまたペースを崩され冷静さを奪われるだろう。また都合よく紅夜が現れる保証はない。

 

「……あなた一人、何が出来ますか?」

「もう、ここで指を咥えていられないんです。女神でもない私はどう足掻いてもシェアも集めれないでしょうが、ネプ子達と紅夜の作り出した今が壊されていくことが我慢ならないんです……!」

 

かつて魔王『ユニミテス』と名乗った元女神マジェコンヌによる災害があった。

モンスターによって沢山の傷ついた人がいた。

だがそれは既知の中で女神の必要性を上げるために利用する者がいた。

許せなかった。何もかもを積み木のように命を思わず重ねていく言動と利用価値だけを考えたあの外道から世界を変えたいとお互いに手と取り合い集まった女神達の想いとそれを裏から支えると決意した少年の信念と覚悟の上に進みだした未来が穢れていく。

 

「私は、もう、誰も、見捨てたくないんです……!」

 

あの状況ではどうやっても女神を救えなかった。

だから見捨てた。見捨ててしまったのだ。

唯一無二の親友に手を伸ばせても、掴めなかった。何故なら、それをやってしまえば失敗する確率が高かったから。

己が無力に涙を流れた。イストワールも同じだ。ギョウカイ墓場で守護を担当している親愛なる義兄から連絡が途切れ心配で心配で、感情を優先してしまい真面な情報が無い状態で、女神達に依頼してギョウカイ墓場に向かせたのが、そもそもの過ちであったと。

望みは限りなく薄い、否それはあるかないかすら分からないこの状況に二人はこれから先の事を考える勇気がなく、黄昏ていた。

 

 

「−−−ヒーローじゃないけど、遅れて来たよ」

 

その扉が空くまでは。

 

「……え?」

「え?じゃないよ。全くもう……関わる気なんてゼロだったのに、……あぁ、もう、娘が泣いている気がしたから勝手に来ちゃったよ。畜生」

 

ヤレヤレとため息を吐きながら薄暗い部屋の中に入室する黄金の影。

まるで高名な絵師が己の想像する絶世の美少女を作り出したように絵の中で描いたそれが動いているように。

それぐらいに現実感のない程の美貌。独特の光沢を放つ畏怖を覚える銀色の双眸がアイエフ達を映し、一歩踏み出すと同時に腰まで伸びている神々しい黄金の髪が揺れた。

何色に染まっていない孤独な白いコートを身に纏って、かつて狂うほどに恋をした彼/彼女はアイエフ達の前に止まった。

 

「……夜天…空」

 

一人を生み出す為に他の生物を全て操った外道で冒涜的な最悪者。アイエフはこれが現在なのか夢幻なのか疑いながら震えた口を開く。

 

「状況は絶望ど真ん中ストレートって所かな。僕が来たから安心しろ−−−なんて頼りにされる気も頼りにする気もないけどさ、あの時の同じ仲間ではなく協力者として、本ッッッ当に仕方なーく手を貸す」

 

コートのポケットから取り出したのは白い特徴的な物がないただのハンカチ。

それを未だに涙を流していたアイエフに渡した。もう片方から取り出した物にイストワールは顔色を変え直ぐに目を細めて冷静になる。

 

「それを…どこで?」

「プラネテューヌに合った小規模のマジェコン開発工場から」

 

机に置くそれはゲイムギョウ界で流行っているハッキングツール『マジェコン』だ。

空は机に腰を軽く落して口を開く。

 

「さっき((潰して|・・・))取ってきた。ああ、死者は出してないよ。全員牢獄にぶち込んでいるから煮るなり、焼くなり、拷問するなり、好きにして」

「あ、相変わらずやることが過激ね…」

 

さっきまでの悲哀はどこへやら、イストワールとハンカチを受け取り涙を拭きとったアイエフからは渇いた笑いしか吐き出てこない。

 

「さて、後でネプギアとユニにドキッ☆腑抜けた女神を調……洗……復活させようポロリ(グロ)があるかも阿修羅☆モードをさせるとして「いま、調教とか洗脳とか言いかけたでしょ!?」お、これが問題児の書類?見せてもらうよ」

 

右から左にアイエフのツッコミをスルーしつつ、アイエフが持っていた書類を手に取り、目を通すと面倒だと言っているように頭に手を当てながら深いため息を吐いた。

 

「こっちに来ながらマジェコンを((解体|ばら))していたんだけど、ブラックボックス部分に今のゲイムギョウ界の科学力じゃ実現不可能な技術が組み込まれていた。しかもこれは魔術術式と言って特別な物で−−−邪神が一枚噛んでいるかもしれない」

 

三人しかいない広いエリアに嫌に響く声に二人のごくりと喉が鳴る。ルウィーでの悪夢が思い出される。

四女神と紅夜の手でも結局、封印することしか出来なかった邪神が生み出した悪魔。

 

「ルウィーの方で封印しているあれを解読しようとするアホはいるかもしれないけど、いくらなんでもこれは完成度は異常だ。普通なら天才と呼ばれる分類でも十年は必要、しかも知ってはいけない事を知って精神的にやられるデメリットもあるから、どんな天才や超人でも無理だ。邪神の叡智か加護を持つ者がいれば話は別だけど……」

「現実的じゃないわね。確かに信仰自由化しようとしたときの衝突でそういう者に手を出そうとする輩は居たかもしれないけど、ゲイムギョウ界は空が相手をする邪神と因縁めいた伝承とかアイテムとかないのよね?」

 

表情を歪めなら手を空は横に振るう。

歪んだ形であったがゲイムギョウ界の守護者として活動していた空からすればそれは絶対に容認できない存在だ。

 

「ないない、合ったら全力で排除するよ。状況によればゲイムギョウ界の全ての生物から記憶を抹消することもする」

「ですよね……」

「だとすればやっぱり、空さんのような異世界からの……?」

「うーん、あのルウィーでの事件から邪神レーダーをゲイムギョウ界に表面上に貼っていたんだけどなぁ……。ごめん、こればかりは調査不足」

 

お手上げとばかり手を伸ばす空に二人はため息を放つ。

 

「ま、難しい事はゆっくりと片付けるよ。そろそろ紅夜について知りたいじゃない?」

「………あれはもう紅夜と呼べるものなの?」

「モンスターという存在が溢れないために人々の負の総意の器となることをあいつは決意した。自ら地獄に墜ちた苦しみと痛みは想像を絶する……例え肉体がもっても他人の負によって精神汚染が激しいだろうね。自我を失うのも………時間の問題だろうね」

 

淡々と伝えられる言葉にアイエフは眩暈がして、思わず机に手を付けた。その表情は青い。覗き込む心配するイストワールを大丈夫だと言うように手で押して、最悪な事態が頭から浮かび吐き気がする。

女神は希望の象徴となってみんなの笑顔をすることを夢見た。だが人の意志は喜びと共に苦しみもある。モンスターによって苦しみに火と油を注ぐことを辞めさせるために紅夜は全てを?み込むことにした。それがどれだけ愚かであろうとも前に進むと決めたのだ。だが実際、死を受けれる瞳になった紅夜は死そのものとなってしまっていた。この三年間、女神が捕らわれたからマジェコンヌよって支配されつつあるこの世界に一体どれだけ負が溢れたのか、その結果どれだけ紅夜に負担を掛けることに繋がるのか、それは調べれば出てくるモンスターの被害、そして女神の加護の薄い地域で頻発する【汚染化】したモンスターが物語っている。

 

「これが君達が選択した未来だ」

 

爆発しそうな思いを必死に止めようとしているアイエフの姿に静かに空は呟いた。

 

「ッ……!」

「空さん……!その言い方は!」

「紅夜にも言った後悔はない?って、女神にも言ったそんな未来は不可能だってーーー((それでも|・・・・))そう言った結果がどんなことが起きようと僕は知らない」

 

世界を焼くほどの狂愛した空は変わった。静観して、ただ当たり前の事をいう普段に戻りつつある。何がそうさせたのか、女神と冥獄神が突き進んだ結果であった。

 

「君達は夢を見て鳥かごから羽ばたいた。見える景色がどんなものでも、どんな過酷な環境が待っていても、飛ぶしかない。もし、墜ちてしまえばーーー世界は簡単に終わる」

説明
その6
これにて序曲は終わる。
劇場は本番に向けて間奏を入れよう。
まだ終わっていない。踊れ踊れ踊れ。
最初は何人かな、最後は何人に増える/減るのかな?
頑張れ、頑張れ。
生きるために
死ぬために
さて私の出番はまだ先かな?
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超次元ゲイムネプテューヌmk2 終末のプレリュード終了 次回ギャク回を挟んで次章 女神側の副主人公登場!(最低系チート) 

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