独立国家ヤマト戦記〜異世界チートは鉄の味〜
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第五話 サンドリア王国 対親子魔獣編

 

 

 

 

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「(さぁて・・・格好つけて飛び出してきたはいいけども・・・)」

 

 三体の野獣に襲われている少女を見つけた途端、考えるより先に行動を起こした亮輔は、背後に少女を庇いながら前方で体勢を立て直しつつある獣達から目を離さないようにしながら考えを巡らせていた。

 

 左手に持ったベレッタM1951での牽制射撃後、RGD手榴弾一発を目の前に放り込んだおかげでまだ相手は満足に動けずにいるようだが、それでも虎やそれに類する存在であることはわかる。しかし、彼が知る虎種に比べて異様に爪が鋭い上に、肩や首の後ろからも刀のような突起が生えている。正直いって、あまり近寄りたい相手ではない。

 

 かと言って、さっきの銃撃時に見たように、ベレッタM1951は牽制程度にしか役に立たず、さりとてAKのような長物はこの至近距離で振り回すには不利だ。MP5A1を使うという手もあるが、荒れとて弾丸はM1951と同じ9×19oパラべラム弾だ。連射力と命中精度、それに再装填の手間などを考えると現実的とは思えない。となれば、あとはやはり接近戦で決めるしか有効な方法はない。

 

 

「(少なくとも、星田少佐達が応援に来てくれるまでは耐えるしかないか)」

 

 実に救いがない現実に冷や汗をかきつつ、亮輔は右手の軍刀を構えた。

 

「あ、あの・・・」

 

「すまないが、あいつらを相手に君を守りながら戦える自信がない。近くに俺の仲間達がいるはずだから、彼女らに保護してもらってくれ」

 

「え?でもそれじゃあなt「急ぐんだッ!!!」ッ!?は、はいッ!!」

 

 背後の少女が声をかけてきたが、亮輔は正直それに構っていられるほど余裕はなかったのでつい怒鳴ってしまった。

 

 弾かれたように立ち上がった少女は、そのまま彼に背を向けて走り去っていく。ちらと背後を確認し、少女の影が見えなくなったところで、彼はようやく目の前に集中を向けた。

 

 ようやく立ち直ったらしい獣達は、ゆっくりと亮輔を包囲するように扇状に広がり、唸り声を上げつつ威圧を加えてくる。

 

 

 

 

 

 

「さぁて・・・どこまでやれるか――ねッ!!」

 

 

 

 

 

「「「グルアアアアアアアアアアアアアッッ!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 正面の大型の個体――恐らく母親と思われた――に向かって裂帛の気合とともに駆け出すと同時に、三体もまた咆哮を上げながら亮輔に向かっていく。

 

 こうして、亮輔がこの世界に転生して初となる、対魔獣の白兵戦が幕を開けたのであった。

 

 

 

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「はぁ、はぁ、はぁ、・・・」

 

 一方その頃、亮輔の助けを得てなんとか魔獣の前から逃げ出した少女は、暗闇に包まれた林の中を、息切れしながらも必死の思いで走り続けていた。

 

「(あの人は近くに仲間がいるって言ってた。早く見つけてあの人を助けに行ってもらわなくちゃ!!)」

 

 自分を助けてくれた恩人を見殺しにしたくない。ただその一心で彼女は林を駆ける。と言っても所詮は軍人でもないただの一般人の少女である。周囲が林ということもあっては、気が急くばかりでそれほど速く走れるはずもなかった。

 

 だが、運良くそんな彼女の視界に黒い人影が映る。

 

「ッ!!すみません!そこの人!!」

 

「ッ!!?」

 

 その人影が彼の言っていた仲間であることに望みを託し、あらん限りの声で叫ぶ。人影もその声を認識したのか、一瞬遅れてこちらへ駆け寄ってくる。

 

 

「すまない!君、このあたりでこのようなものを持った男を見なかったか!?」

 

 

「ええ。私は魔獣に襲われたところを、その人に助けられました!そして、その人に、近くにいる仲間を呼んできてほしいと頼まれたんです!!」

 

 

「なんだって!?そ、それで、その人は一体どこに!?」

 

 

「えっと・・・多分私はあそこから一直線にここまで走ってきたので、この道をまっすぐ行けばッ!!」

 

 

「わかった!情報提供に感謝する!!『総員に告ぐ!副長の星田だ!ただいま、遭難者と思しき少女を確保!しかし、ご主人様が現在単独で魔獣の群れと交戦中との情報を得た!総員直ちに林の東側へ向かえ!』すまない、では私も応援に向かう!君はこのままこの道を行くんだ!1〜2分も走れば野営地が見えるはずだ!いいか、絶対に後ろを振り返らずに行くんだぞ!ではな!」

 

 

「あっ・・・」

 

 少女から情報を得た人影の主――星田少佐はすぐさま無線機で周囲一帯にいる隊員達に応援を要請。そして少女にも指示を出すと、何か言いたげな少女に目も呉れず、一目散に少女が指した方角へ疾走し、あっという間に彼女の視界から消え去った。

 

 

 

 

 

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「ふんっ!」

 

「ガアッ!?」

 

 再び場面は戻って、亮輔と三体の魔獣の交戦場所。

 

 凄まじい速度で飛びかかってくる三体のうち、右後方の個体(やや大きめの子供と思われる)に向かって斬りかかり、口の中に手を突っ込んで、内側から上あごを軍刀で勢いよく突き刺し、脳天(と思しき場所)を貫く。

 

 見事図に当たったのか、不意を突かれたその個体は一瞬にして絶命し、亮輔を引きずりながら地面に横たわる。

 

 

「まず一体!!」

 

 急いで軍刀を引き抜き、返す刀でもう一方の子供の顎を斬り付ける。

 

 だが、流石に魔獣。毛や皮膚は頑丈であり、刀でも傷一つ付いていない。それに気がついた亮輔は横から飛びかかってくる母親を屈んで躱し、こちらに向き直った子供の口に間髪入れずRGD手榴弾を放り込む。

途端、口の中で大爆発を起こした手榴弾によって、小虎の顔は吹き飛び、あっという間に息絶える。

 

 ほんの十数秒の間に二頭の子供を屠られ、母親は怒りに任せて咆吼し、猛攻を加えてくる。亮輔もまた子供の時のように簡単には行かないと瞬時に悟り、即座に左手にMP5を持ち、牽制射撃を放ちながら立ち回る。

 

 スラッシュクーガーの爪が、肩が、牙が、尾が、変幻自在に怒涛の連撃を繰り出し、亮輔の刀が、手足が、MP5がそれに対して反撃を繰り返す。

 

 

「グアアアアアアアアアアアッッ!!!」

 

 

「ちぃッ!!(なんて強さだ・・・正直神様特典がなかったら間違いなくやられてる!!)」

 

 見かけからは想像出来ない驚異的な俊敏性でもって苛烈に攻め立てる魔獣に、亮輔は神からの固有加護で得た能力『術の達人』を駆使して捌き、反撃する。

 

 この『術の達人』という加護、と言うか特典能力。名前だけ聞くとイメージが湧きづらいが、実際にはとんでもないチートである。それこそ亮輔の希望特典がほぼ無意味と化す程の。

 

 “術”と名の付くあらゆるものを操ることが出来る。

 

 言葉にすればただ一行で済むが、これは正直とんでもないことである。地球の現代社会を支えているのは科学技“術”であり、亮輔も希望した特典も、簡単に言えば一種の召喚“術”である。現在亮輔が魔獣と渡り合っていられるのも、前回の馬賊の首領を生身で圧倒できたのも武“術”、戦“術”、戦闘技“術”を操れるためである。また、特典のもう一つである洗脳も、催眠“術”の一種であることを考えると、この『術の達人』という神様特典一つで、彼はほぼなんでも出来ることになるのだ。

 

 

「(正直言って俺には過ぎた力だと思うけど、今この時ばかりはありがたい!!神様本当にありがとう!!!)」

 

 己には過ぎた力だと畏れを抱きつつも、亮輔は生き残るためにその力を使い続ける。憖っかデメリットがないだけに、その使用には躊躇いが無いのが救いか。

 

 

 

 

 

 とにもかくにも、両者の激闘はその後30分にも渡って繰り広げられることとなり、周囲は魔獣の爪によってなぎ倒された木々の残骸と、人間の銃撃によって穿たれた無数の弾痕によって荒廃することとなった。

 

 そして、その頃になってようやく救援に駆けつけられた星田少佐以下、ヤマトの軍人達が目にしたのは、全身血塗れで地に伏した巨獣と、その傍らで同じく血に塗れながらも、片膝を付き一心に巨獣の亡骸に祈りを捧げる、自らの主君の姿だったという。

 

 

 

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どうも。前回の投稿から一ヶ月半が経ちましたm(_ _)m

 

大学の研究室が恐ろしくキツくて(超音波とか使うんで主に頭ががががが―――)、中々手がつけられまシェン(´;ω;`)

 

ですがそんな苦労になど負けず、完結目指してこれからも邁進してまいりますので、どうか今後共応援並びにご指摘など、よろしくお願いします。

 

 

それでは、今回はこの辺で。また次回にお会い致しましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

説明
長々遅々として話が進みません・・・申し訳ありませんが進展はもうしばらくお待ち頂きたく思います
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タグ
ミリタリー 現代軍事 異世界 魔獣 神様転生 

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