魔法少女リリカルなのは〜原作介入する気は無かったのに〜 第百二十六話 2人の転校生
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 〜〜サウザー視点〜〜

 

 さて……。

 雄真とハチが対峙するネズミ2匹は置いといて、またこの場に現れたネズミの処理はどうするか……。

 他の者共に任せても良いが、雄真やハチに比べると戦闘力は低いからな。

 あのネズミ、おそらく実践を経験しているのであろう。雄真、ハチの目の前にいる2匹のネズミよりも実力が上だというのが窺える。

 

 「いたいた。見付けたわよサウザー」

 

 む?

 俺の名を呼んだ者がいる。

 

 「……貴様か」

 

 それは俺と同じお師さん専用のユニゾンデバイスである小娘だった。

 

 「貴方、こんな時間まで子供達を引き連れて何やってるのよ」

 

 「見て分からんのか?この街の掃除を行う所だ」

 

 ネズミ達を駆除して街を綺麗にしないとな。

 

 「そんな事はどうでもいいから子供達を解散させて貴方も帰ってきなさい」

 

 「何だと?貴様、誰に命令している」

 

 第一小娘。何故貴様がここにいる?俺の邪魔をしにでも来たのか?

 だとしたら俺自らの手で貴様を屠ってくれる。

 

 「私は買い物を頼まれて買う物を買ったから帰る所よ。それと貴方に早く帰って来る様にいったのは貴方の敬愛するお師さんよ」

 

 「何だと!?」

 

 お師さんからの命令!?

 

 「それを早く言え小娘」

 

 『退かぬ!媚びぬ!省みぬ!』が聖帝としての俺の信条ではあるが、例外が存在する。

 それは偉大なるお師さんからの命令だ。

 お師さんの命令は何事においても全てに優先される。

 そこに俺の意思を挟む余地は毛頭無い。

 

 「雄真、ハチよ。ネズミの駆除は次の機会に持ち越しだ。俺達はお師さんの命に従わねばならぬ」

 

 「「御意!!すべてはお師さんの意のままに!!」」

 

 俺が言うと2人は構えを解く。

 そしてネズミ達を一瞥して一言。

 

 「今宵は見逃してやる。感謝するのだな」

 

 俺は聖帝軍を解散させ、自らの足をお師さんの居城に向けて歩き始める。

 ネズミの駆除は出来なんだが、献上品を手に入れたのは儲けものだったな………。

 

 

 

 〜〜サウザー視点終了〜〜

 

 〜〜遥視点〜〜

 

 ……また新しい人物が現れた。

 今度は黒いドレスを纏った黒髪の女の子。

 その子が大人の人に何か言うと、大人の人は私と葵ちゃんを睨んでいる男の子2人に指示を出し、大勢の子供達を引き連れて去って行った。

 

 「た…助かったよぅ」

 

 …怖かった。

 正直、あの男の人も、男の人に付き従ってた子供達も敵意が半端無かったんだもん。

 

 「…何だったんですの、あの男は?」

 

 「アイツが迷惑を掛けたみたいでゴメンなさいね」

 

 「……まあ、良いですわ。それよりも…」

 

 私と葵ちゃんが安堵の息を吐いてる間に、銀髪の女の子と黒髪の女の子が何やら話している。

 

 「先程の男と、貴女は一体何者なんですの?」

 

 「……不本意ながら私とアイツは身内なのよ」

 

 「そういう意味で聞いたのではありませんわ。貴女と先程の男………((人間ではありませんわね|・・・・・・・・・・・))?」

 

 「あら?初対面の相手に対していきなり人外発言だなんて酷い事言う人ね(当たってるけど)」

 

 「生憎と、人の姿をした((ナニカ|・・・))と遭遇、戦闘を行ったのは過去に幾度も経験してますの。先程の男や貴女から感じられる存在感は明らかに人のモノとは思えませんわよ」

 

 にゅ?

 身内?人外?何の事だろ?

 

 「そう…。で、私が人外だとすれば貴女はどうする気かしら?」

 

 「貴女が妖なら全力で((DEATH|デス))る所ですが、妖気の類も感じられないという事は妖じゃないのでしょう?だからどう対応しようか困っているのですわ。もっとも人に害をなす存在なら妖じゃなくても((DEATH|デス))りますけど」

 

 「なら私を屠る必要は無いわね。私は妖でも人間に害をなす存在でもないもの」

 

 ………うにゃああぁぁぁぁぁ〜。

 何だか話の流れについていけないよー。

 

 「葵ちゃ〜ん……」

 

 「遥さん。ここはもう少し様子を見ましょう」

 

 葵ちゃんは女の人達の会話に耳を傾けている。

 会話の内容についていけてるのかな?だとしたらやっぱり葵ちゃんは賢いなぁ。

 

 「ですが貴女の正体については是非とも聞かせて頂きたいですわね」

 

 「申し訳ないけれど私の主の許可も無く言える事じゃないのよ」

 

 「……なら力尽くで聞き出すと言えばどうします?」

 

 「出来るモノならどうぞ、と返答させて貰うわ」

 

 2人の女の人達の間に緊張が走る。

 これって確かい…いい……一触即発?って言うんだよね?

 

 「……止めておきますわ」

 

 けど銀髪の女の人が先にふぅ、と小さく息を吐いて緊張を解く。

 

 「私よりも貴女の方が力が上だと嫌でもわかりますもの。正直、勝てるイメージが沸きませんわ」

 

 「そう。こちらとしても無駄に戦わずに済んで良かったと思っているわ」

 

 それから二言、三言交わした後で踵を返し、この場を去って行く銀髪の女の人。

 残った黒髪の女の人はコチラを向いて頭を下げた。

 

 「貴女達にもアイツが迷惑を掛けそうになったみたいでゴメンなさいね」

 

 「い、いえ!あの人凄く怖かったので正直助かりました!」

 

 「そう。アイツの事に関しては私から主を通じてよく言い聞かせて貰っておくから。……それよりも、この場を離れた方が良いんじゃない?」

 

 ホラ、と彼女が促すと稀に街中で聞くサイレンの音がコチラに近付いてくる。

 

 「ここに向かって来ている彼等の事情聴取に付き合うつもり?」

 

 「それは正直ゴメンですね」

 

 私の代わりに葵ちゃんが答える。

 

 「なら早く行きなさい。((彼女達|・・・))はもうここから離れたわよ」

 

 彼女達?

 疑問に思う私に答えるかのように黒髪の女の人が指差す先には

 

 「あーーーはっはっはっはっは!!!今日の所は見逃してやるっしょツインエンジェル!!」

 

 「お前等ぁ!!サロメ様の寛大な心に感謝しろよーー!!!」

 

 巨大ロボットを操縦していた2人がいつの間にか気球に乗ってこの場からゆっくりと離れていくのが見えた。

 

 「じゃあ私ももう行くわ。縁があればまた会う事になるかもね」

 

 「ま、待って!!」

 

 この場から去ろうとする女の人を私は呼び止める。

 しかし女の人は振り返る事も立ち止まる事も無く、この場を後にし、残ったのは私と葵ちゃんだけになった。

 

 「あうぅ……名前教えて貰えなかったよ」

 

 「遥さん、落ち込む気持ちは分かりますが今はこの場を離れましょう」

 

 「……うん」

 

 若干ションボリしつつも、私と葵ちゃんはこの場を後にする。

 また、会えるよね?その時はちゃんと名前を教えて貰おう………。

 

 

 

 〜〜遥視点終了〜〜

 

 「どうぞ、これを納めくださいお師さん」

 

 サウザーとレスティアが家に帰って来た。

 レスティアはちゃんと砂糖を買ってきてくれたので、ようやくすき焼きを作る事が出来るのだが、サウザーが懐から出した物を見て俺は深い溜め息を吐かざるを得なかった。何気に頭痛もオマケ付きだ。

 ……どっからどう見ても((7つの聖遺物|セブンアミュレット))の1つ、ティアラ…しかも本物です。

 何でもツインエンジェルと強奪犯の間に乱入したかと思うと、コレパクッてきたとか。

 

 「お前は何つー事してくれたんだ」

 

 俺に『ツインエンジェル』の原作にも関われというのか?

 

 「ネズミ共には勿体無い物ですよお師さん」

 

 「知らんがなそんな事」

 

 てかこれ、美術館で一般公開する筈の物だろ?パクッたりしたらマジヤバいじゃん。

 どうやって返しに行こう?

 サウザーに持っていかせるか?けどコイツがツインエンジェル達と問題起こさないとは思えないし。

 てか十中八九問題起こすだろう。

 レスティアに持っていかせる?

 レスティアなら問題は起こさないだろうけど、ツインエンジェル側は警戒してそうだしなぁ。

 俺が直接行くのは論外だな。

 サウザーもレスティアも俺の名前は出してないみたいだから、俺がサウザー、レスティアと繋がりがあると思われてはいない筈。

 ここで俺が返しに行ったら確実にサウザー、レスティアとの関係を疑われる。

 うーん……

 

 「それとツインエンジェルと名乗った2人の子達についてなんだけど、あの子達、ひょっとしたら((魔導師|・・・))の可能性が高いかもしれないわよ」

 

 「嘘!?マジで!?」

 

 レスティアの報告に俺は驚かざるを得ない。

 

 「あの子達の衣装からは魔力反応を感じた。多分アレ、バリアジャケットだと思うわ」

 

 何てこった!

 この世界でのツインエンジェルは魔導師なのか!?

 

 「て事は管理局の局員なのか?」

 

 「それは無いんじゃない。もし彼女達が管理局員だとしたら私やサウザーについても知ってると思うし」

 

 それもそうか。

 特にサウザーは悪い意味で管理局員、犯罪者達には有名だし。

 という事はフリーの魔導師になるのか?変身用のアイテム、ポケてんは実はデバイスとか?

 色々憶測を立ててみるが特に答えは出てこない。

 

 「…ま、いずれ分かる事かもしれないし今はいいか」

 

 砂糖を鍋に入れてすき焼きの下ごしらえを行う。

 

 「それともう1つ」

 

 え?まだあんの?

 

 「ツインエンジェル以外にも1人、銀髪の女性と遭遇したわ」

 

 銀髪の女性とな?

 

 「服装はゴスロリっぽいドレスで額には三日月の紋様があったわ」

 

 「あー……ソイツが誰かは理解した」

 

 どう考えても神宮寺くえすしか思い付かないです。

 てかアイツ、実家に帰ってからコチラにはすぐ戻って来ず、別の地方で鬼斬り役として仕事して来るとかメールで連絡あったけど帰ってきたのか。

 宿泊地はやっぱホテル・ベイシティなのかねぇ。

 宿泊費は国が全額負担らしいし。

 

 「ヒマがあったら会いに行くか」

 

 くえすが習ったという魔術とかにも若干興味はあるし。

 下準備を終えた鍋に食材を入れ始めながらそう思うのだった………。

 

 

 

 次の日……。

 

 「((野井原|のいはら))((緋鞠|ひまり))じゃ。田舎者ゆえ皆には何かと迷惑をかけるかもしれぬがよろしく頼む」

 

 「((葉月|はづき))クルミ。飛び級でこの学園に通う事になりました」

 

 俺達のクラスに転校生がやってきました。

 しかも((2人|・・))…。

 

 「「……………………」」

 

 飛鈴ちゃんも九崎も転校生の1人である野井原をジト目で見ている。

 ……野井原ねぇ。

 つまりあの子が天河の護り刀かぁ。

 凛とした雰囲気。古風な喋り方。

 そして彼女の容姿とは裏腹に感じる異質な力。

 妖力、妖気の類から嫌でもあの子が妖だと認識させられる。

 そんな転校生、野井原だが先生が何処に座らせるか思案しようとした中、彼女は一直線に優人の側まで行き

 

 「一刻も早く皆の事が知りたいゆえ後ろより見渡せるここが良い。済まぬが席を譲ってくれぬか?」

 

 優人の席の隣に座る男子生徒にお願いし、男子生徒も二つ返事で了承し、席を譲っていた。

 ……後ろより見渡したいなら優人の隣じゃなく、後ろに座れよと言うべきなのだろうか?優人の席は最後尾の一列前だし。

 で、席に座った野井原、優人に面倒を見てやれと言う先生。

 

 バキッ!!

 

 ……そしてシャープペンシルをくの字に折る九崎。

 口元を吊り上げて『フフフ……』とか低い声で笑ってるのが怖えぇ。

 

 「で、葉月の席だが……バニングス」

 

 「はい」

 

 「お前の隣に葉月の席を準備するから面倒見てやってくれないか?」

 

 「分かりました」

 

 もう1人の転校生、葉月の席はアリサの隣になった。

 くぎみーの隣はくぎみーッスか。

 葉月は席に着いてしばらくクラスを見渡し、水無月の姿を見てからは一方的に水無月を睨んでいる。

 あぁ……初登場時の葉月は水無月がツインエンジェルである事を認めてなかったもんなぁ。

 何にせよ、今日は転校生への質問攻めでクラスはより一層賑やかになりそうだ………。

 

 

 

 今日の授業も終わり放課後……。

 

 「若殿、帰ろう」

 

 「あ、あぁ…」

 

 野井原が優人に声を掛け、優人も応える。

 クラスメイトの皆は何故野井原が優人の事を『若殿』と呼ぶのか分からないらしく、2人の関係について色々推察している。

 まあすぐに優人が『遠い親戚だ』と答える事でクラスメイト達は納得していたが。

 そんな中、俺も帰り支度を始めていると

 

 「転校生!!」

 

 九崎が呼び止めた。

 転校生という単語に反応するのは2人。野井原と葉月だ。

 しかし九崎の視線は常に野井原だけをロックオンしているので自分が呼ばれたのではないと分かった葉月は再び帰る準備をする。

 

 「おおっとぉ!!!ここで乱入するのは優人のカミさんこと九崎凜子選手だああぁぁぁぁっっっ!!!」

 

 「((幼馴染み|ほんさい))VS((転校生|あいじん))!!宿命の2人の対決の火蓋が今……」

 

 「「切って落とされようとしているううぅぅぅっっっっ!!!!!!」」

 

 テンション高く宣言するのは謙介と泰三。

 

 ドゴッ!!×2

 

 「下らない事言うな!!殴るわよ!!!」

 

 いや、口で言う前に殴っただろ九崎。

 

 「「ず…ずびばぜんでじだ……」」

 

 殴られた2人は顔面に良い一撃を貰っていた。

 

 「……何じゃ牝、いたのか」

 

 「最初からいたわよ!!」

 

 カリカリしてるなぁ九崎の奴。

 九崎はビシッと人差し指を野井原に向けて突き立て

 

 「勝負よ野井原緋鞠!!もし私が勝ったら優人から離れなさい!!」

 

 宣戦布告を告げる。

 

 「良いじゃろう」

 

 それに応え、了承する野井原。

 優人はオロオロと九崎、野井原に交互に視線を送るばかり。

 

 「勝負の内容は何にするつもりじゃ?」

 

 「スポーツで勝負するわ!異論は?」

 

 「無い」

 

 こうして2人の優人を賭けた(本人の意思は完璧無視)勝負が始まろうとしていた。

 

 「勇紀君はどっちが勝つと思う?」

 

 そんな俺の隣に来たすずかが尋ねてくる。

 

 「さあ?何のスポーツで勝負するかにもよるけど…」

 

 俺個人としては野井原に軍配が上がりそうな気がする。

 九崎の運動神経も良いけど、それはあくまで『同年代の人間』の範疇だ。

 妖であり、天河の護り刀として生きてきた野井原はおそらく相当な修練を積んでいるだろうから、身体能力は相当なモノだと推察する。

 九崎からすれば無理ゲーにも等しいんじゃないだろうか。

 

 「で、どうするの勇紀?2人の勝負見ていく?」

 

 すずかに続いてキリエも俺の側までやって来て、俺に聞いてくる。

 

 「帰っても特にする事無いしなぁ」

 

 折角だし見ていこうかな。

 

 「あの……すみません」

 

 ん?

 教室を出て行った九崎と野井原。

 その勝負を見物しようと、後を追い掛けるクラスメイト達。

 俺達もギャラリーになろうと思い、皆を追い掛けようとした所で声を掛けられ、呼び止められた。

 呼び止めた張本人は……

 

 「神無月さん?」

 

 神無月葵だった。

 

 「えっと…私達に何か御用かしらん?」

 

 キリエが神無月に尋ねる。

 

 「すみません。用があるのは長谷川君だけなんです」

 

 「お、俺?」

 

 はい、と頷く神無月。

 え?何で俺?

 神無月とは同じクラスのクラスメイトっていうだけで、これまで話した事は一度も無かった筈だ。日直とかも一緒になった事なんて無いし。

 そんな神無月が俺に用って一体何だと言うのだろうか?

 

 「おばあ様……学園長に連れて来る様言われまして…」

 

 学園長?

 学校のお偉いさんが何故に俺をご指名?

 

 「アンタ…一体何したのよ?」

 

 「何か悪い事でもしたんですか?」

 

 アリサやアミタまでもが会話に参加してきたが、学園長に呼び出される程の事なんてしてねーし覚えがねーよ。少なくとも俺の記憶の中には。

 

 「……まあ考えてても仕方ない。学園長に直接聞けばいいか」

 

 俺は九崎と野井原の対決が見れない事を残念に思いながらアリサ、すずか、アミタ、キリエに挨拶をして教室を出る。

 

 「じゃあ学園長室に案内しますね」

 

 神無月が俺の一歩前に出て案内役を買って出てくれる。

 てか同じ学校の生徒なんだし、学園長室の場所くらい知ってるよ………。

 

 

 

 「「……………………」」

 

 学園長室に案内されて早数分。

 神無月は学園長室前まで案内すると一礼して去って行った。

 豪華そうなソファに腰を下ろし、机を挟んで対面に学園長が座ってからというもの、お互い一言も言葉を発さず、静寂が室内を支配し、時間だけが過ぎていく。

 ……このまま無駄に過ごすぐらいなら九崎と野井原の対決を見に行きたいんだが。

 そう思った俺は自分から口を開き、この状況を動かす事にした。

 

 「あの〜……俺は何でここに呼ばれたんでしょうか?」

 

 「何故呼ばれたのか分かりますか?」

 

 「分かりません」

 

 分からないから尋ねたのに、その返し方は予想外だよ!

 てか本当に呼び出された理由何なん?

 

 「…ゴホン。失礼しました」

 

 わざとらしく咳を吐いて間を入れる。

 

 「貴方をここに呼び出した理由なのですが……回りくどい言い方は止めましょう。ティアラを返して頂けませんか?」

 

 「はぁ………………は?」

 

 あれ?今『ティアラ返して』とか言われた?

 

 「実は昨晩美術館にティアラを移送するため、ティアラを載せたトラックが何者かに襲撃されました。幸いにもツインエンジェルがその場に現れたため、トラックを襲った連中にティアラは奪われる事はなかったのですが…」

 

 そこで一旦言葉を区切り

 

 「その直後に現れた新たな勢力にティアラが奪われたのです」

 

 「……………………」

 

 「ツインエンジェルが言うには10数人の子供を引き連れた大人の男がティアラを持ち去ったとの事です。その男や子供達は『お師さん』なる人物のために行動しているとの事」

 

 「……………………」

 

 表面上は動揺していない様に装うが内心はかなりヤバいです。

 

 「それで『お師さん』という者について調べる事にしたのです。……平之丞」

 

 「は」

 

 突如、音も無く現れた老執事さん。

 学園長以外の気配を感じたから誰かいるのは気付いてたが、こうも静かに出て来られるとは中々の手練れだ。

 

 「私が調べた所によると彼等『海鳴聖帝軍』と名乗る集団は海鳴市だけではなく、近隣の県にも足を運び、学生や暴走族を取り込んで勢力を伸ばしているとの事です。ついこの間は群馬県を完全に支配下に置いたとも聞きました」

 

 ナニソレハツミミナンデスケド!!?

 俺の知らない所で聖帝軍の勢力が拡大していたなんていう事実を知り、頭痛の種が増えちゃったよ…。

 

 「彼等の行動理念は全て『偉大なるお師さんのために』との事でした。それでお師さんなる人物について調べた結果、この学園に通う1人の生徒が該当しました」

 

 そう言って学園長、執事さん共に俺を真っ直ぐ見詰めてくる。

 …どう考えても『俺=お師さん』ってバレてるやーん。

 

 「ここまで言えば貴方をここに呼んだ理由は理解出来たと思いますが?」

 

 「………はぁ」

 

 誤魔化しても無駄みたいだなぁ。

 サウザーがティアラを持ってきたのは昨日だというのに、もう俺と接触する程調べがついているとは思わなかった。

 

 「私達としてはあのティアラを第三者の手に渡したままというのは危ういと思っています。ですからティアラの返還と……ティアラを用いて何をするのか教えていただきたいのです」

 

 「……確かに海鳴聖帝軍が呼称するお師さんというのは俺の事を指しますし、聖帝というのは俺の身内であるサウザーだというのは認めますが、ティアラの事やツインエンジェルと遭遇したなんて事は今初めて聞いたんですが…」

 

 「それは本当ですか?」

 

 「はい。サウザーからは何も聞いてません」

 

 嘘は言ってないよ。

 この一件を俺に報告したのは((サウザーじゃなくレスティア|・・・・・・・・・・・・・))だもん。

 向こうは疑う様な視線を向けているが、俺は本当に知らないといった雰囲気や表情で対応する。

 この手の対談って管理局員として何度も経験済みだしねぇ。

 

 「そもそも俺は聖遺物なんかに興味も無いですし、聖杯戦争に関わるつもりも無いですから返せというなら返しますよ。サウザーには俺から言っておきます」

 

 「……聖遺物や聖杯戦争という単語を知っているという事は……どうやら貴方はかなり((聖杯|アレ))に関する知識もありそうですね」

 

 「そうなりますね。後は((天ノ遣|あまのつかい))……神無月家がそう呼ばれる一族であり、その一族に課せられる使命の事も大体は。それからそこで((隠れてコチラの会話を聞いている|・・・・・・・・・・・・・・・))のがツインエンジェルだという事もですね」

 

 俺がそこまで言うとガタッと音がする。

 学園長と老執事さんは大きく目を見開き、驚いていた。

 この部屋に入った時、明らかに学園長以外の気配が((複数|・・))あったしな。

 見聞色の覇気を持つと気配の感知には敏感になったもんだよホント。

 それにこの気配……教室で勉学を共にする誰かさん達と、今日転校してきた転校生の片割れと同じだし。

 

 「だからいい加減出て来たら?水無月、神無月、あと転校生の葉月」

 

 俺が苗字で呼んでやると3人の人影が物陰から姿を晒す。

 出て来たのは俺が言った通り水無月、神無月、葉月の3人だった。

 神無月に関しては学園長室前で別れた筈なのだが、おそらくは別ルートで学園長室に侵入し、聞き耳を立てていたのだろう。

 見聞色で気配が読める以上、俺には無意味だったが。

 しかし素直に出て来たな3人共。もうちょっと見つかってないフリして隠れてるもんだと思ってたけど。

 

 「うー……何でバレたの?」

 

 「3人共、気配でバレバレだな。もう少し気配を隠す訓練でもしたら?」

 

 「普通気配を読める学生なんていないわよ!」

 

 確かに……と頷きたいが現に俺は読めますよ。何事にも例外は付き物なのだ。

 

 「……私や遥さんがツインエンジェルだというのも知ってるのは何故ですか?」

 

 「…意外だな。もう少し誤魔化したりとぼけたりするかと思ってたけど」

 

 「何だか確信を持っておられる様子ですので」

 

 隠しても無意味だと神無月は悟ったか。

 

 「お前等お互いに『葵ちゃん』『遥さん』って普段通りの呼称で呼び合ってるだろ?変身してても呼び方変えなきゃ意味無いと思うんだが…」

 

 レスティアから聞いた当時の状況を思い返しながら俺は言う。

 身近な奴でそんな呼び方し合うのはコイツ等しかいないし俺、原作知識あるし。。

 ちなみにレスティアとの関係も暴露した。サウザーと関係がある以上、いずれはバレるだろうし。

 俺が指摘してやると水無月、神無月は『しまった!』という表情を浮かべていた。

 って、気付いてなかったんかーい!!

 

 「そんな…お姉様も気付いてなかったんですか?」

 

 葉月の奴も呆れた表情を浮かべている。

 原作では確か神無月に憧れてたんだっけか?

 その憧れのお姉様のポカミスに少なからずショックを受けた様だな。

 

 「…大丈夫なのか当代のツインエンジェルは?」

 

 実力があってもポカミスやらかして正体バレたらどうする気なんだ?

 俺は水無月、神無月を見て一抹の不安を感じずにはいられなかった………。

 

 

 

 次の日……。

 

 「どうぞ、昨日約束したティアラです」

 

 俺は朝一番に教室に向かうアミタ、キリエと別れて学園長室を訪れ、約束の物を差し出す。

 

 「……………………」

 

 学園長はポカーンとしている。

 あと、学園長室に来ていた水無月、神無月、葉月もだ。

 

 「あの…何か?」

 

 「いえ…本当に返して頂けるとは思ってなかったので」

 

 「昨日も言いましたけど、聖杯や聖遺物には興味無いですから」

 

 このティアラもサウザーが勝手にパクッてきた訳であり、俺が命令したんじゃない。

 

 「返す物もちゃんと返したし、これで失礼しますね」

 

 俺はさっさと学園長室を後にし、教室に向かう。

 

 「長谷川く〜ん。待って〜」

 

 ……と、少しして背後から俺を呼ぶ声が。

 振り返ると水無月、神無月、葉月が小走りでコチラに寄って来ていた。

 

 「折角だし、一緒に教室行こうよ」

 

 「…まあ、構わんが」

 

 ニコニコ笑顔の水無月の提案を俺は承諾する。

 何故コイツはこんなに笑顔なんだ?

 

 「だってだって!ちゃんとティアラを返してくれた事が嬉しいんだよ」

 

 「……それだけで?」

 

 「うん!!」

 

 「ていうか何で素直に返したのよ?」

 

 葉月が訝しげな感じで聞いてくる。

 

 「逆に聞くけど、もし俺がティアラ返さなかったらお前等どうする気だった?」

 

 「そうですね。長谷川君の家に侵入してティアラを回収してますね」

 

 予想通りの回答を示す神無月。

 この口ぶりからすれば俺ん家の住所知ってるな。

 

 「何度も言うが俺は聖遺物や聖杯戦争にゃ興味無いんでな。それに…」

 

 家には俺以外にもメガーヌさん、ルーテシア、ジーク、サウザー、レスティア、アギトといった人材及びユニゾンデバイスがいるし、戦闘にでもなったらツインエンジェルに対しての一方的なボッコ展開しか思い浮かばない。

 流石にクラスメイトをそんな展開に持ち込むのはちょっと気が引ける。

 

 「そもそも家に侵入って言ってもお前等サウザーに対して勝算あんの?」

 

 「「うぐっ…」」

 

 俺の質問に言葉を詰まらせる水無月と神無月。

 …もしかして行き当たりばったりの突撃作戦だったのか?

 だとしたら本当に無謀だな。

 

 「まあ、ティアラの事はもういいだろ」

 

 ちゃんと返したんだし。

 

 「そうですね。…それと長谷川君、私達がツインエンジェルだという事は……」

 

 「心配すんな。誰にも言う気無いし」

 

 そう言うと安堵した様子の水無月、神無月、あと葉月。

 

 「もう話はここまでで良いだろ。さっさと教室行くぞ水無月、神無月、葉月」

 

 「そんなの分かってるわよ!命令すんな」

 

 いや…命令なんてしたつもり無いんだけど。

 

 「ちょっと待って長谷川君!」

 

 しかも水無月の呼び止められる始末。

 『一体何なのだ?』と思い、水無月に視線を移す。

 

 「遥」

 

 「は?」

 

 「私の名前は遥だよ」

 

 「いや…知ってるし」

 

 クラスメイトの名前ぐらいはちゃんと覚えてるよ。

 

 「そうじゃなくて!私の事は苗字じゃなくて名前で呼んでほしいの!」

 

 「………何で?」

 

 「『何で?』って、私と長谷川君はもうお友達だからだよ」

 

 「唐突過ぎて理解出来ないんですけど!?」

 

 いつ俺がお友達になるフラグ立てたよ!?

 

 「長谷川君、正確に言えば遥さんは『ティアラをちゃんと返してくれて、私達の秘密を護ってくれる長谷川君はとても良い人だからお友達になりたい』って言ってるんですよ」

 

 「……そうなの?」

 

 神無月の翻訳を聞いて俺が水無月に聞き返すと当の本人はコクコクと首を縦に振る。

 

 「友達にねぇ…」

 

 俺が若干戸惑っていると水無月が俺の手を自分の両手で包み込む様に握り

 

 「簡単だよ……友達になるの、すごく簡単。名前を呼んで!初めはそれだけで良いの」

 

 キラキラと瞳を輝かせながら言ってきた。

 その言葉を聞いた俺は…

 

 「(コイツ、本当は変身魔法使ったなのはなんじゃね?)」

 

 と内心思っていたりする。

 だって、無印最終話でフェイトと友達になる時のあのセリフが出て来たんだぜ。

 中の人が同じとはいえ、偶然で済ませられねえよ。

 

 「……………………」

 

 「ワクワク♪」

 

 「……………………」

 

 「ワクワクワクワク♪」

 

 「……………………」

 

 「ワクワクワクワクワクワクワクワクワクワク♪」

 

 「……遥。これで良いか?」

 

 「うん!!」

 

 結局根負けした俺は水無月を名前で呼ぶ様になった。

 

 「これからよろしくね勇紀君♪」

 

 しかも俺の事名前で勝手に呼んでるし。

 別に嫌じゃないから良いんだけど。

 

 「(やっぱコイツなのはとしか思えねぇ…)」

 

 俺の頭の中では今頃教導に勤しんでいるサイドポニーの知り合いの顔が浮かぶのだった。

 それから教室に戻る俺達だったが、教室でみな……遥が俺の事名前で呼ぶもんだからクラスの連中…特に顔見知りの女性陣に『昨日の今日で何があったの!?』と問い詰められる始末。

 ツインエンジェルの事を隠しながら説明するのには骨が折れたぜ………。

 

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 〜〜あとがき〜〜

 

 もうじきお盆休み。

 休日出勤が無いのを祈ろう…。

 

説明
神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。
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コメント
↓おい、バカやめろ(setuna)
嫁が増えるよ!やったね勇紀♪(海平?)
↓×5遥が「友達」ポジに甘んじてるうちはまだ大丈夫。問題は次になんかあってフラグが立ったときかとwww(プロフェッサー.Y)
↓セイバーもあり得ますよね……?(肉豆腐太郎)
女性の英霊・・・ジャンヌやキャス狐あたりとか(青髭U世)
勇紀は聖杯や聖遺物には興味無いが結局聖杯戦争に巻き込まれてしかも女性の英霊を引き当てて嫁を増やしそうな気がする(ガアット)
俊殿>>おそらく友達理論(物理)のぶつけ合いが始まるんじゃないんですかね?w(黒咲白亜)
嫁のオンパレード、まだまだ続く?(紅天の書架)
その内に、原作組の話も挟んで欲しいですね。描写があまりにないと流石に原作勢が不憫な気がしますしw(ユジャ狗)
今、勇紀の嫁候補は何人だろう?365人中何人?(カミト)
そして、くえすが敵わないと見破ったレスティアが愛しい勇紀の関係者と知ったらくえすがどんな反応を見せるのか、期待しています。(俊)
増える〜増える〜、勇紀の嫁〜♪ しかし、名前を呼んだらお友達。なのはの友達理論を語る人物が此処にも居たよ。これはなのはと遥が出会った時が楽しみですね。(俊)
この男は北郷一刀を超える!!!!!(FDP)
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