真・恋姫†無双〜比翼の契り〜 一章第二話
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 袁紹が大陸各地へと放った檄文は、決して悪いことだけではない。

 あれには、連合軍結成の経緯から集結場所及び日程までを細かく記されており、また、大陸各地への諸侯へと放っていたため、最終目的である董卓の手に渡るのが時間の問題だということが、誰の目にも明らかだった点。

 これから大軍で攻めるぞと言われて、軍備を強化しない者はいない。

 連合に参加ぜす攻め込んだ場合と、参加して攻め込んだ場合。どちらが容易で自軍への被害が少ないか一目瞭然だろう。

 そう。あの檄文は董卓の絶望へのカウントダウンを刻むとともに、一時的な停戦状態を誘発していたのだ。

 

 

 

 

 連合軍が集結し進軍を開始したとの報が上げられた頃、俺と茉莉と愛李、華雄と霞の五人は洛陽への進軍ルートに位置する第一の関門『水関』にやってきていた。

 董卓達とは全員が顔を合わせた時に真名を預けている。ただ……。

 

「なんか嫌な感じ」

 

 後ろを歩く霞と華雄の部隊を肩越しに見ながら愛李が呟いた。

 実は真名を預ける時、霞は「月が信じたんなら問題ない」とエセ関西弁の口調で快諾したのだが、華雄だけは皆の真名を受け取らなかった。

 それには事情があるらしいし、だからこそ自分の真名を教えない代わりに皆の真名も呼ばないと宣言していた。月達も本当に華雄の真名は知らないようだったしな。

 愛李は信頼の証である真名を受け取らなかったことを根に持っているようだ。華雄も、それが万人に理解されないと分かっているのか、必要以上に愛李と関わろうとしなかった。それも余計に溝を深める要因になっていると思うが、愛李は俺の話に聞く耳を持たないし連合軍は待ってはくれない。

 この問題は後回しにするしかないな。

 

 っと、そろそろ見えてくるはずなんだが……。

 

「旦那〜!」

 

 辺りを見回していると、俺達の行軍の音を聞きつけたのか、探し人自らが正面に現れた。

 やってきたのは想愁。董卓軍との顔合わせのため一時的に洛陽へと戻ってきていたが、すぐに水関へとある仕事をするために出立していて、南陽以来、今の今まで会うことはほとんどなかった。

 想愁は俺の目の前までやってくると拳を振り上げ、それに俺も応じ互いの拳を中空でぶつけた。

 

「首尾はどうだ?」

 

「時間が時間だったんで予定の八割ってとこっすかね。詳しいことは莉紗ちゃんが竹簡にまとめてくれたんで、ひとまず中に入りましょうや」

 

「それもそうだな」

 

 何度か水関に来たことがある愛李に馬は任せ、兵達には土地を覚えてもらうため茉莉を付けるか。

 

「愛李は馬のことを頼む。茉莉は−−」

 

「兵達にここの事を教えれば、良いのですよね? それも想愁と手分けをして」

 

 言わなくても分かってたか。

 

「ああ。三人共また後で合流してくれ」

 

「あいあい!」

 

「はい!」

 

「あいよ」

 

 後は霞と華雄か。いきなりアレを見せるといらん不信感を買いそうだし、先に説明をしたほうがいいか。

 

「霞と華雄は俺についてきてくれ。先に伝えておくことがある」

 

 

 先に部屋に入った霞達に、なぜ水関にこれだけの武器の貯蓄があるのかを説明した。

 要約すれば、洛陽が『もし』大群に襲われたらを想定していた、という感じで。

 全て俺の実費から出ていることを告げると、霞は明らかに驚いた様子を見せたが特に何も言ってくることはなかった。

 華雄は「なるほど、そうか」ぐらいしか言っていない。あんまり気にしていない感じだった。

 

 日持ちのする糧食と武具の数々。予定の八割が集まったそれらは、水関に詰める総勢二千の兵達を二週間は籠城させることが可能なほどだ。

 もちろん予定外の問題が起きなければ、という言葉が付くが。

 

 連合軍が接敵するまでおよそ三日。

 それまでにできることを全力でしよう。

 

 

 

 

 梟による諜報活動、糧食はなるべく切り詰めつつ調練には手を抜かない。

 二日はそうして過ごし、三日目はぐっすりと寝て体力を温存する。

 概ね万全の態勢で連合軍を迎えることが出来た。

 

 すでに目視できる範囲に連合軍は展開し始めている。

 水平線は人で埋め尽くされているが、水関に一度に攻められる部隊の数は限られる。

 切り立った崖に阻まれ、崖と崖の間に作られた関所。それが水関だ。

 少数で守ること容易く、大勢で攻めるには難かたい。洛陽への難所の一つ。

 

 てっきり数を全面に押し出してくると思っていた俺達は、先鋒に掲げられている旗を見て首を傾げた。

 旗印は『劉』。左右に『曹』『孫』。

 おそらくこの連合最大の兵力を所持している袁家はどちらも後方に位置していた。

 

「……先鋒を捨て駒にする気か?」

 

「んー、でも少し違う服の人もいる」

 

 呟きに答えたのは愛李だ。

 確かに劉備軍の中には、明らかに他とは違う金の鎧を身に纏った者達がいた。

 どこの軍の者なのか。なぜ劉備の軍の中にいるのか。

 ここで考えても何も分からないことだが、どちらにせよやることは変わらない。

 

 この戦に口上などない。

 皆ただ、戦が始まるその時を待っていた。

 

 

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【あとがき】

 

 こんばんです!

 九条でございます。

 

 今回、あれ? 短いな……。なんて思った方もいるかと思います。

 ええ、すみません。かなり短いです。

 次の場面で視点を変えようと思い、それをそのまま書くとわかりづらいかな〜と思ったので

 いつもの半分(以下?)ぐらいしか書いてないんですが切りました。

 

 各々の視点で話を分けるというよりは、主人公視点とその他で分ける感じの予定。

 ご迷惑をかけるかもしれませんが、何卒! 何卒!

 

 

 完全に話が変わりますが、ニコニコ動画の方に戦恋のOPのFullverを上げました。

 …………消されないといいなぁ(URLは貼りません)

 

 以上!

 22日発売のゲームをやりまくっていたら次回の更新が遅くなるかもです。

 その時はついったーなどで罵ってやって下さい。

 たぶんやる気を出すと思います。

 

 ではまた次回でお会いしましょー!

説明
一章 反董卓連合編

 第二話「溝」
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コメント
>観珪さん 次回で好みが分かれるかもしれないしそうでないかもしれない……(九条)
本格的に連合戦が始まる…… ここからどういった方法で切り抜けるのか、楽しみな半面、何かやらかすのではと期待してます←(神余 雛)
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