いぬねこ!3 猫山鈴誕生日SS-2014
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いぬねこ!3(猫山鈴誕生日SS2014)

 

 とある日、犬神さんが今夜は家で一人だとみんなで昼食をとっていた時に耳にした。

その時、私にとっては珍しく積極的に犬神さんに声をかけていた。

 

「だったらさ、うちに泊まりにこない?」

「ふぇ…!?」

 

 その場で一番驚いていたのは犬神さんで秋や杜松さんは無表情のままパンや

お弁当を食べながら私たちの様子を見ていた。

 

 言ってはみたものの、言った本人である私は顔から火が出そうなほど熱くなっていて

そこから先は言葉が詰まって言葉が出なかった。

 犬神さんも予想していなかったのかその場で固まっていたのを隣にいた秋が背中を

強めに叩くような音を立てて。

 

「やったじゃん、犬神」

「う、うん…!」

 

 最近私たちの距離が近づいて半ば付き合ってる雰囲気を出していたのに秋は気づいて

いたのだろう。私たちに気を遣って背中を押してくれた。

 

 前までは私が怖がっていたから私を守るために犬神さんの邪魔をしていたのだけど。

今は逆の対応をしてくれている。本当にこういう親友がいるとありがたい。

 

「猫山さん!」

「はい!」

 

 つい返事が変な感じになっちゃったけど、犬神さんの顔を見るととろけそうな笑顔を

私に向けて今までにないくらい優しくて、聞いたこちらがとろけてしまいそうな声で

囁いてきた。

 

「ありがとうございます」

 

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「あ、あの家に猫山さんのお姉さんいますかね!?」

「わからない。あの人自由すぎて…」

 

「いたらご挨拶を兼ねて、クールそうなにゃんこお姉さんを愛でたいと思いまして!」

「あ、じゃあいないほうがいいや」

 

「そんな!?」

 

 学校から一度犬神さんの家へ寄って泊まりの準備をしてからウチへ向かう途中の

会話で私の前に一歩先に踏み出して振り返りながら聞いてきた。

 その際に犬神さんのポニテがぴょんっと跳ねるように揺れるのがまるで本当の

わんこの尻尾のようでとても愛らしく見えた。

 

 だけど口から出るのはお姉ちゃんや家族のことばかりで私のことには触れようとしない。

私もあまり犬神さんのこと詮索しようとしないからお互い様なんだろうけど

ちょっとムッとしていた。

 

 それから何も起こらないまま、家に到着した。特に寄り道はしていないけれど

元々早くない時間帯にお互いの家がそれなりに遠いせいか着いた時には

けっこう遅い時間になっていた。

 

「もう少し先だけど、ごはんどうしようか」

 

 食べに行くには周辺にはあまり気の利いたお店はないし、かといって遠くまで足を

伸ばすのは億劫になっていた。家に着いてまた出かけるって思う気持ちが原因だろう。

その時だった。

 

「だったら私が作りますよ〜」

 

 じゅーっ

 

 普段聞きなれない音が台所から鳴っていて私はすぐ傍で犬神さんの姿を見ていた。

フライパンを軽々と使いこなして振るい、どんどんと手作り料理を完成させていく。

その姿を見ると何だかいいなぁと、この人と一緒にいたら幸せそうだと思えた。

 

「すごいね、犬神さん」

「いえいえ簡単なものですし」

 

「家でもそうやって作り慣れてるの?」

「いえー…。一人だとちゃんと作るの面倒なんであんまり作ってないんですよ」

 

「えっ…」

 

 そういえばあんまり犬神さんの家事情は知らなかったけれど

ちょっと複雑なのだろうか?

 と、思っていると犬神さんは野菜のオイスターソース炒めを皿に盛り付けながら

私が思っているのを感じてか、軽い感じで否定した。

 

「何というか、両親とも忙しいからまともに家に帰ってこないだけですよ。

多分私が寂しくならないようにって犬たちを置いていったのかもですね」

「そうだったんだ…」

 

「まぁ、あの子たちも私がいてもいなくても。餌とトイレをちゃんとしていれば

何とも思わないでしょうし、気楽といえば気楽…」

「そんなことないよ」

 

「猫山さん?」

「私とあの子たち、きっと気持ちは似てると思うんだ…犬神さんが大好きだってところが」

 

「て、照れちゃいますね」

「だからそんな寂しいこと言わないで…」

 

 私は笑顔でもどこか暗い部分が見える犬神さんの目の前まで寄って服を掴んだ。

手の空いた犬神さんは驚いた様子で私の顔を見ていた。

 

 私の心音か犬神さんの心音なのか。ドキドキという音がどこからか伝わってくる。

体が熱くて苦しくて、でもどこか幸せで。

 

「そんな自虐的に言うなら…」

「いえ、そんな言うほど自虐では…」

 

「この後、一日私の飼い犬になってよ!」

「え!?…あっ」

 

 少し間を空けてから犬神さんは興奮したような顔をして大きく頷いた。

 

「喜んで!」

 

 その間で私が何を言いたいか理解したらしい。そう、今日は私の誕生日だった。

このことを言うために隠してたわけではなくここまでの流れの最中で思い出した

だけだった。

 

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「そういえば今日、猫山さんの誕生日でしたね」

「うん…」

 

 犬神さんの作った晩御飯を美味しく食べ終わった後、私の部屋に連れていって

二人でベッドに座って犬神さんは尻尾を振るわんこのように嬉しそうに私をゆっくりと

ベッドに押し倒すような形に持っていく。

 

「どうしましょうか、ご主人様」

 

 私の注文にすっかり浸っている犬神さんは人懐っこい笑顔を浮かべつつ奥の方で

何か狙っているような妖しささえ匂わせていた。

 

「す、好きなようにして…!」

 

 不慣れで初めてのことに頭の中が真っ白になりがちの私は犬神さんの問いかけに

そんな返事しか言えず。

 

「いきなりアバウトな命令ですね!ご主人様!」

「うぅ…」

 

 自分で言っておいて縮こまるように体を強張らせる私にそれでもどこか嬉しそうに

犬神さんは私の体に犬神さんの体を寄せてきた。

 

 徐々に近づき密着する体。お互い服は着ていても温もりが直接伝わるように感じる。

そしていつしか事故にしていたキスを、先延ばしにしていたキスを。

今度はしっかりと私の逃げ場所を塞いだ犬神さんは私の唇に…触れた。

 

 チュッ…

 

 暖かくてぬめった感触。

 

 ほんのりと食べたものの匂いと犬神さんの汗の匂いが感じられる。

それ以外は雑音すら聞こえない二人の世界。

 

 他に聞こえるのは啄ばむようにする軽いキスの音と自ら発する心臓の音。

煩いくらいにドキドキが止まらない。

 

 ぬるっ、ちゅぱっ、ちゅっ…。

 

 時間を忘れるくらいの感情が私を埋め尽くしていく。

気持ちいいとかそういう感情が入る余地はなくて目の前のことで精一杯だった。

キスだけでも初めてのことで余裕がないのに途中から舌まで入ってくるものだから。

時折体を跳ねさせるようにビクンッと反応させてしまう。

 

 興奮しすぎてくらくらする。少し涙目になって目の前がちょっと霞んでいても

感じ取れる。犬神さんも同じくらい余裕がなさそうってことは…感じられた。

 

「ふはっ…」

「んふぅ…」

 

 どちらがどんな声をあげたかなんてわからなかった。

ただただ、夢中に貪るように好きな相手の唇を吸い付いていたから。

唇を離す瞬間。間に糸が引いていてとてもエロいなと頭の中で浮かんでいた。

 

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 ぼーっとした意識の中。汗ばんだ二人は力が抜けたようにベッドに横たわっていた。

息が荒れているのが少しずつ収まっていき、最初に言葉を発したのは犬神さんだった。

 

「あはは、結局飼い犬プレイはあんま関係なくなりましたね」

「うん…そうだね」

 

 笑いながら言う犬神さんに私も釣られて少しだけ笑って言った。

私にはこれ以上はまだ無理だってこともわかってしまった。

 

「猫山さん」

 

 天井を見ていた私は呼ばれて犬神さんの方へと視線を向けると

汗ばみながら優しい笑みを浮かべていた犬神さんは。

 

「これが最後じゃないですよね。私とずっと一緒にいてくれますか?」

「…もちろん」

 

 犬神さんと一緒にいると落ち着く、当然彼女から離れることなんて一寸も無くて。

彼女の言葉を代用するなら。まさにディスティニったのだ。

 

 嬉しそうにする犬神さんの目から少し涙が浮かんだのを見て私は犬神さんの

目元に軽く口をつけた。

 

 寂しくない、なんてことはなかったはずだ。私だってずっと一人でやってきたけど

居ない方が楽なことも多かったけど、それでも寂しい時はあったから。

 

「お互いに支えあっていこうね…」

 

 私の言葉に返事はなく、代わりに頭を私の胸元に擦りつけるように甘えてきた。

まるでわんこのように。そして小さく彼女は呟いた。

 

「誕生日おめでとうございます。そして…ありがとう」

 

 健気な犬神さんの言葉に胸がきゅんっと締め付けられるような思いをした。

 

「大好きだよ、犬神さん」

 

そんな彼女が愛おしくて私はそのままの体勢で犬神さんを

優しく強くそして長く…抱き締めたのだった。

 

説明
にゃんちゃんの誕生日なので犬神さんとイチャイチャ
してもらいました。3巻のキスシーンとか最高でしたよね。
ああいうのがまた見たいです(*´?`*)
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タグ
犬神さんと猫山さん 猫山鈴 誕生日 百合 キス 犬神八千代 

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