海の底へと流れて行く、あなたとの思い出。

苦しい事も辛い事も沢山あったけれど、今にして思えば、それも一瞬の出来事。

長い月日を得て混ざり合い、もはや混沌としたものしか思い描けない。

でも、あなたの事が嫌いになった訳じゃないの。

私は誰に言うとなく首を横に振る。

そして涙を拭った右手で、最後に残った、左の手の薬指にある指輪を、外す。

さよなら、私の愛しき人……

投げ放った指輪は弧を描き、太陽の光を受けながらキラキラと海底へと沈んで行く……

輝きながら、落ちて行く……

まるで私たちみたいね……

そう思いながら、彼女はその場から離れる事はなく、懐かしむように静かな海を眺めていた。