快傑ネコシエーター13
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61、指導教官村松健太郎

 

エクスタミネーター養成所の生き字引とも呼ばれる、養成所の所長で四方野井雅を

一週間で卒業させたのは指導教官村松健太郎の計らいであった。

さらに養成所の武器庫から四方野井雅に好きな得物を持っていくよう取り計らった

のもそうであった。

代々の所長の引き継ぎ事項で、武器庫の中に隠してあった日輪の十字架を雅が見つけて

持ち出したのには仰天したが雅を信頼して委ねることにした。

「健ちゃん、いるかい。」

大和警部補が養成所の村松健太郎を訪ねたのは、雅が初めて日輪の十字架で

デミバンパイアを仕留めた翌日のことであった。

初老の指導教官が出てきて大和警部補を出迎えた。

「大和さん、どうしましたこんな所へ顔を出すなんて珍しい。」

「雅君に日輪の十字架を持っていきやすい所へ出しておいたのは健ちゃんかい。」

「さあ、何のことでしょうか。」

「とぼけなさんな、ここの所長じゃなけりゃ、そんな粋な計らいはできないからなあ。」

「あくまで、四方野井雅君が見つけて持って行ったんで、日輪の十字架が四方野井雅君を

選んだんじゃないですか、50年も武器庫の中で埃をかぶっているのが嫌になったとか。」

「下手すりゃ髑髏検校の逆鱗に触れることになるっていうのに。」

「相変わらず大検校がお嫌いのようですね。」

「あいつが好きな奴なんかいるわけないだろう。」

「奇遇ですね、私も大和さんと同じ意見ですよ。」

「じゃ、健ちゃんも自分の首を掛けて雅君の手に委ねたのか。」

「四方野井雅君はそれだけの価値を持つ人間です。」

「ただ正直に言うとあれだけ直ぐに見つけるとは思いもよらなかったですが。」

「ちょっと残念なことだが、雅君本人はあれが何だか知らずに持ち出したようだ。」

「昨日初めて実戦に使って50年ぶりにあれの凄さを目撃したんだ。」

「今、実際に日輪の十字架の発動するところを見たことあるのは大和さんぐらいじゃ

ないでしょうか。」

「老齢の師匠はあれを無理に発動させたのが故で全身ボロボロになったが、雅君は若い

こともあるがバンパイアハーフで普通の人間より頑丈だから全く問題なく使いこなして

いたよ。」

「後は俺が出来る限り師匠の教えを雅君に伝えていくのが俺の使命だ。」

「大和さんは古宮慧快の最期の弟子で唯一の生き残りですから、古宮慧快の教えを

四方野井雅君に引き継いで貰えれば、慧快様も草葉の陰で喜ばれますよ。」

 

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62、島田課長の小長閑

 

島田課長はここの所自分の体重が増えズボンのベルトの穴をずらさなければならない

ことぐらいしか問題が無く呑気に過ごしていた。

頭の円形脱毛症も完治してズラの世話になることも無くなり全くストレスが無かった。

黒魔術使いのデミバンパイアの問題は大和警部補と雅、美猫の活躍でほとんど解決した

ようなもので全く順風満帆であった。

政府の高官からいきなり無茶な要請が来ることもないのが一番気持ち的に楽だった。

外務省からの要請も大和警部補が対応して2週間位で片付き、島田課長は暇だった。

丸投げするような事件は起きていないし、大和警部補も機嫌が良いようで現場に出てい

て問題はなかった。

 

島田課長はうつらうつらと居眠りをはじめ舟を漕ぎ始めていた。

「こらっ。」

鋭い叱声に驚いて目を覚ました。

「すいません、すいません、今、寝ていました。」

くすくすと少女の笑い声が聞こえ、目の前に美猫が立っていた。

「美猫ちゃん酷いよ、ほんとに驚いたんだから。」

島田課長は美猫の悪戯に困ったような反応をした。

美猫はきりっと姿勢を正して、

「課長、大和警部補からの定時報告です。」

「特に異常ありません、以上、報告終わり。」

「課長さんから大和さんに何か伝えることはありますか。」

「いや、別に伝えることはないなあ。」

「では、現場に戻ります。」

美猫は島田課長への悪戯に満足したのか直ぐに部屋を出て行った。

 

「あれで、現場じゃ手負いとはいえ黒魔術師クラスの黒衣のデミバンパイアを葬った

こともあるんだから凄いよなぁ。」

「結構危険なブラウンジェンキンを器用に取り溢さずに殲滅するっていうし。」

滅殺機関から美猫への応援要請があったことなど、美猫の実戦での活躍を

高く評価していた。

実際、雅への報酬とは別に美猫に対しても報酬をきちんと支払っていた。

島田課長は美猫の悪戯は困りものだと思っていたが特に嫌な気はしなかった。

島田課長も実は美猫が次はどんな悪戯を仕掛けてくるか楽しみであった。

 

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63,狒々狩り

 

デミバンパイアの犯罪者と比べるとライカンスロープの犯罪者は子悪党でチンピラで

デミバンパイアの下働きとかセコイ犯罪者が大多数でいちいち取り締まるのが面倒で

あった。

ライカンスロープの犯罪者のほぼ9割9分が狒々だった。

当然、犯罪者ではない一般市民の只の亜人の狒々もいたが全体の1割が犯罪者と犯罪に

手を染めるものが多かったのも事実で一般市民に偏見を持たれ犯罪者にならざる負えない

者もいて亜人種別狒々全体にとって不幸なことであった。

 

特に殺人(亜人も含む)を犯した者は鼻削ぎ耳削ぎ斬首であった。

自らデミバンパイアの支配下にはいったライカンスロープは斬首であった。

かつて古宮慧快が一度デミバンパイアの支配下に入った外道は生かしておくと別の

デミバンパイアの支配下に入るだけだからと皆殺しを推奨したのも仕方がないのである。

 

しかも獣化せずに犯罪行為を行ったりされると厄介で普通のデミヒューマンに紛れて

逃走されると捕縛がかなり困難であった。

彼らの能力は主に獣化でそれによる怪力を使っての粗暴犯がほとんどであった。

年を経て高位のライカンスロープになると変化、幻術などが使えるようになり

デミバンパイアの支配下で能力を使用されるとかなり面倒な相手になる。

 

大和警部補と美猫は塗仏の鉄の情報から亜人街の西南部の寂れた廃工場の点在する工業

地帯に黒魔術師の高位デミバンパイアより支給された護符を身に着けた厄介な狒々の

犯罪集団のアジトを見つけたとの連絡を受け、魔剣を装備して襲撃することになった。

出入り口を一か所以外全て封鎖して、大口径の無音ロケット砲で徹甲弾、炸裂弾、焼夷弾

の順に打ち込み出てきたところを魔剣で撫で斬りにする作戦だった。

早速ロケット砲で打ち込み、アジトから出てくる狒々を2人は切って切って切りまくり

殲滅した。50体以上の狒々の頭を並べ警視庁保安局亜人対策課員総出で指名手配書との

つきあわせを行い、狒々の犯罪集団を壊滅させた。

護符を身に着け通常の武器に対して防御している場合、魔術武装が必要になる。

通常の狒々の犯罪者なら普通に警官隊が取り囲んで射殺するのが一般的で通常弾で始末が

可能である。

 

以前何も知らない狒々の犯罪者が雅に襲い掛かり返り討ちに会い殴殺された。

一番滑稽なのはよりによってエリカに襲い掛かり素手で挽肉にされたのであった。

それでも一般デミヒューマンにとっては厄介で困りものであることはたしかであった。

 

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64、美猫VS銀

 

銀の悪戯好きもかなりのものだが美猫の悪戯も相当ひどいものであった。

銀と美猫の直接対決となった時が一番厄介で周りにかなりの迷惑が及ぶのである。

二人の悪戯好きは血筋がなせる技としか言いようがなく、それも悪気があるわけではない。

お互い余裕のない切羽詰った中央公園でのホームレス生活時代の時などは悪戯をしたり

悪戯を考えている場合ではないのでこの悪癖は影を潜めているがお互い生活及び精神的に

余裕ができると頭をもたげてくるようであった。

「み〜ね〜こ」

銀はいきなり後ろから美猫の胸を揉んだ。

「きゃっ、いきなり何すんの、銀ねぇ。」

「少しは、胸が大きくなって色気が出る様にと思って。」

「大きなお世話だよ。」

「でも今のままじゃ雅さんに全く異性として意識してくれないわよ。」

「みやちゃんはあたしのスレンダーな体形を綺麗だって誉めてくれるから大丈夫だもん。」

「物はいいようで他に褒めようがないから仕方なく言っているだけじゃないの。」

「黙れ、妖怪。」

「誰が妖怪よ、失礼ねぇ。」

「年齢不詳の大妖怪に言われたくないよ。」

「誰が年齢不詳よ、25歳のお姉さんを捉まえて。」

「ほぅ、〇25歳のお姉さんですか。」

「だ〜れ〜が〜〇25歳よ、み〜ね〜こ覚悟はできているわね。」

「本当のことを言われて怒る方が悪い。」

美猫はダッシュして逃げ出した。

銀は般若の形相で全速力で追いかける。

提灯屋の源さんが2人の追いかけっこを見て、

「まるで親子喧嘩じゃのう、いや年齢差を考えると曾お祖母ちゃんと曾孫か。」

銀は突然標的を変更してどこから持ってきたのかわからない墓石で思い切り源さんを

何回も減らず口が利けなくなるまで殴り続けた。

この隙に美猫は追跡を逃れ、安全な雅の部屋に身を隠した。

「こら、ネコ今度は何をやったんだ、銀さんかなり荒れていたみたいで八つ当たりされた

源さんがぼろぼろになって転がっていたぞ。」

帰宅した雅は美猫を問い質した。

「みやちゃん聞いてよ、銀ねぇがあたしの体形を馬鹿にしていじめるんだよ。」

美猫は雅に抱き着いて泣きながら訴えた。

雅はいつものように悪いのはお互い様であると納得した。

 

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65、子猫の一日

 

キジコの朝一番の仕事は雅と美猫を起こすことだが美猫を起こすと雅は美猫が起こして

くれるので一つ仕事が減って楽なのだがキジコは雅との朝の猫族の挨拶を好んでいるため

出来るだけ雅から起こすようにしている。

朝御飯は美猫が用意してくれるので、それまでに簡単に毛づくろいをして綺麗に整えて

から朝御飯を頂く。

朝は、ネコ缶で美猫の気まぐれで決定されるがどのネコ缶もおいしいので全く問題はない。

食休みの後、雅と美猫の出勤までの時間の間、美猫と遊んでいるか、雅に撫でてもらう。

雅と美猫が事務所に出かけるときにマンションの隣の居酒屋銀猫に預けられる。

居酒屋銀猫では猫又ハーフの娘たちと遊んだり、銀に撫でて貰ったり、自由に過している。

外に出てマンションの1階のコンビニエンスストアのさつきと遊んだりもしている。

近所で猫会議があるときは出来るだけ参加して情報収集に努めている。

飽きたり、疲れたら寒い時は暖かい所で暑い時は涼しい所でお昼寝をする。

お腹が空いたら、大体お昼時のことが多いが調理場に行って妖子に何か食べ物をもらう。

お店に出さない魚や肉の細切れを貰い舌鼓を打つ。

満腹になったら座敷の座布団(キジコ専用の)の上でお昼寝をする。

お昼寝に飽きたら近所を散歩して何か面白いものはないか探してみる。

疲れたらまた戻ってきてお昼寝である。

猫の仕事は寝ることなので基本はお昼寝だが、キジコは子猫で好奇心が強く遊びたい

盛なので、居酒屋銀猫、パークサイドパレスマンションの周りをパトロールしている。

たまにとても波長の合う人間に出会うこともある、例えば四方野井瓦ことスレート大侯爵

みたいな人物、とてつもない猫好きな人物にじゃれ付きたくなる衝動が起きるが美猫に

知らない人物にじゃれ付いてはいけないと躾けられているので我慢してやり過ごすように

している。

雅、美猫、銀などの知り合い友人などには遠慮なくじゃれ付いている。

最近、親しくなった大和撫子、大和一葉は撫で上手で心地よさは一級品であった。

やがて夕方になると雅と美猫が戻ってきて、居酒屋銀猫に迎えにくる。

自宅に戻るとすぐに美猫が晩御飯を用意してくれる。

晩御飯はカリカリと美猫の気まぐれネコ缶で一日中動き回ってお腹が空いているので

美味しく頂く。

食休みの後美猫が体を人肌位の暖かさの蒸しタオルで綺麗に拭いてから柔らかいブラシ

で全身の毛並みを整えてくれる。

寝るまでの間、美猫と遊んだり、雅にじゃれ付いたりして過ごし、猫会議で何か情報

があれば美猫に報告する。

就寝時間になると雅か美猫と一緒に寝て、キジコの一日は終わりである。

 

説明
61、指導教官村松健太郎
62、島田課長の小長閑
63、狒々狩り
64、美猫VS銀
65、子猫の一日
あらすじ世界観は快傑ネコシエーター参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定は快傑ネコシエーター2参照
魔力の強弱は快傑ネコシエーター3参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定2は快傑ネコシエーター4参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定3は快傑ネコシエーター5参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定4は快傑ネコシエーター6参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定5は快傑ネコシエーター8参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定6は快傑ネコシエーター9参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定7は快傑ネコシエーター10参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定8は快傑ネコシエーター11参照


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