チェーンソーでも切れないの
[全1ページ]

 

 

「ねぇ、見て!」

 

急に彼女が僕を引っ張って、手を差し出してきた。

その手は握り拳で、小指だけがぴんと立っている。

その小指に注目しても、何も気になるところなんてない。

 

 

「……怪我なんてないけど?」

「ちっがーう!もっとよく見てよ」

 

言われたとおり突き出した指を見る。

小指、といえば約束か?

指切りげんまんなのか?

 

 

僕が眉をひそめて考えていると、彼女は軽くため息を吐いた。

 

「なんで分かんないのかなぁ」

「分かるわけねぇじゃん」

 

わざとらしくがっかりした仕草をする彼女にそう言うと、にんまり笑って僕の小指を引っ張った。

痛い。顔を歪めると、彼女は自分の小指と僕の小指を交互に見て、口を開いた。

 

 

「赤い糸、ついてるでしょ」

 

 

なんとも乙女チックな考え。頭がくらくらしながらも僕は彼女の小指を握った。

そんな僕の行動に彼女は、何?といった表情で僕を見上げている。

 

 

「切れちゃうよ、糸なんて」

 

相手が乙女チックな思想なら、僕もそれに返すだけ。

しかし彼女はまだにんまり笑顔を崩さず、僕の小指に自分のそれを絡めた。

 

「そうね、普通の赤い糸なら切れちゃうね」

「じゃあ僕らも切れちゃうよ」

「私とあんたのは、普通じゃないの」

 

彼女は僕の小指にキスをした。

 

 

 

「絶対切れないの、それがチェーンソーでもねっ!」

 

 

 

次は僕の唇にキスしてそう言った。

自分で言ったくせに、自分で真っ赤になっている彼女が愛しくて、小指を絡めたまま抱きしめた。

苦しいよ。なんて言って、彼女は小指をきつく絡めてきた。

 

 

 

 

チェーンソーでも切れないの

 

 

 

 

僕は小指どころか、全部の指を彼女の指に絡めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

end

説明
そんなもの、信じちゃいないけど、

君が言うから信じちゃうんだ。
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
925 892 3
タグ
少女 少年  赤い糸  創作 オリジナル 

xx凛さんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。


携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com