義輝記 星霜の章 その二十四
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【 華琳の快進撃 の件 】

 

? ?州 陳留 華琳居城 にて ?

 

華琳「────雪蓮達が? 直ぐに会うわ、謁見の間に通して頂戴!」

 

曹兵「はっ!」ダッ!

 

本拠地陳留を取り戻したのは、颯馬と久秀が激突してから三日目。 何進達が危機に陥った日より二日が経過していた。

 

華琳達の怒涛の攻めは、?州内の城を悉く(ことごとく)落城させた。 

 

豫州小沛は勿論、豫州相県、陳県付近も、予定以上に早く制圧して治め、桃香達も陳留攻めに参加。 内応の手配もしてあったため、瞬く間に華琳の手に戻る結果になったのだ。 

 

その桃香達の軍勢には、途中で合流した雪蓮達の軍勢も合流している。

 

冥琳『この軍勢で、敵地を動くのは危険過ぎる。 辺りの小規模の城を落とし実力を示し、華琳達の軍勢が動きだせば、それを土産に合流。 功ある者は正当に評価する華琳の事だ! 我らを快く迎えてくれるだろう!』

 

冥琳の思惑は当たり、汝南周辺の城を落とし、献上した事が好印象をもたらし、現在陳留で曹操軍と共に行動していた。

 

★☆☆

 

華琳「ようこそ、我が居城へ───! って迎えた方がいいのかしら? 雪蓮、冥琳、蓮華、祭、小蓮!」

 

雪蓮「久しぶりね! 華琳!!」

 

蓮華「お邪魔するわ! 流石、曹孟徳ね! 『風林火山』の用兵術で、瞬く間に領土を広げてしまうなんて!」

 

祭「失礼させて貰う! 冥琳の予測通り、軍事行動を別にして正解だったわい! 晋軍の領土を、こうも容易く打ち破るとは…………!」

 

小蓮「へぇ! 凄いじゃない!!」

 

冥琳「流石は曹孟徳だけある。 晋軍が颯馬達に掛かりきりになったのを見定めるや、民の一斉蜂起、旧臣下の内応で、一気に豫州一帯を支配下に置くとは……。 私でも、ここまで鮮やかな裏工作など出来はしないぞ?」

 

華琳「アレは桂花や朱里、雛里のお陰よ。 あの子達独自の組織と連絡手段で、各城へ私達が立ち上がる事を知らせたのよ。 元々、晋軍の圧制で不満が高まっていたから、蜂起や内応させるのは簡単だったわ!」

 

冥琳「ほぅ〜? 晋軍の監視網を破るには、並大抵では行かないのだが。 余程の組織力と強固な団結力があるようだな?」

 

華琳「私も詳しくは知らないわ。 桂花が会長で、朱里と雛里が副で付いてる事しか。 そういえば……何故か名誉会長に、小蓮の名前が入っているみたいね? 蓮華達は知っているの?」

 

蓮華「な、何をやっているのよー! シャオは!? 王族の立場でありながら、危ない組織の片棒担いでいるなんてぇ!!! 」

 

小蓮「いぃーだぁ! お姉ちゃんにシャオの辛さなんて、分かんないもん!」

 

華琳「……あとね。 連絡手段は、朱里と雛里が握っている。 八○一本の内容を暗号化して、各地で販売しているみたいなの……。 妙手なのか奇策なのか判断は悩むわね………」 

 

冥琳「手段としての有効性は認めれる。 幾ら検問の厳しい晋兵も、八○一を声に出して朗読する訳にもいかんしな。 そんな恥ずかしい物なら、少し中身を見て、すぐに返したんだろう。 恐るべし臥竜鳳雛の策だ……」

 

祭「しかし、それが通じると言う事はじゃな? 需要もかなりあると云う事だが、どれくらい欲しがる輩がおる? まさか、万単位………とか?」

 

華琳「………軽く万を越えるそうよ。 愛読者も他の地域の重臣辺りに居るそうだから。 貴女達にも居るんじゃないかしらね?」

 

蓮華「………そういえば……穏が華佗と颯馬を見て『受け』か『攻め』と呟いていたけど……まさかぁ! てっきり兵法の勉強をしていたかとばかり!」

 

祭「まぁ……穏の事じゃ! 書物を読めば、すぐに発情するしの。 分かりにくいから仕方はないが………」

 

華琳「今は、ゆっくり休んで頂戴。 颯馬達の軍勢は士気旺盛、数十万に囲まれているとは思えない程、有利な展開を広げているわ! 明朝に出発して、背後より晋軍を叩く! そうすれば……私達の勝利!! 安心なさい!!」

 

そう……華琳はニッコリと笑い、雪蓮達を侍女に任せ、それぞれの部屋へ案内させたのだった。 

 

 

◆◇◆

 

 

【 その裏にある想い の件 】

 

? ?州 陳留 華琳居城 にて ?

 

──────トスッ!

 

全員が立ち去った後、玉座に腰を下ろす華琳。

 

華琳「…………一刀。 私は……どうすればいいの?」

 

華琳は、先程の自信に満ちた態度と違い、急にしおらしくなり……両手で顔を覆う。 覆った手の指の間から……涙が流れ落ちる………。

 

 

 

雪蓮「───やっぱり、何かあったのね?」

 

 

華琳「────ハッ!」バッ!

 

不意に声が聞こえ……泣き顔を上げると、目の前に雪蓮が立っていた。

 

華琳「な……なんで……わかったの? 演技に関しては完璧だった筈!? 十常待、他の敵対勢力を欺いてきた私が!?」

 

雪蓮「理由は簡単? 本拠地を奪還して喜んでる割には、目の隈が濃いわよ……華琳?」

 

華琳「─────!」

 

雪蓮「綺麗に化粧をしたつもりのようだけど……お互い慣れない事するモノじゃないわね! 顔全体の血色が悪くて……浮かんできたみたいよ? それにあの態度! いつの間に、覇王から太鼓持ちになり果てたの!?」

 

華琳「ふぅ………。 貴女達が急に登城すると聞いて、侍女に頼む事も出来なかったから。 それに、雪蓮から見たら……私は、そんなに気が滅入っているように見えるのね。 これじゃ、覇王なんて……もう名乗りも出来ない……」

 

雪蓮「華琳……。 どうしたの? そんな覇気の無い姿……華琳らしく無いわよ! 颯馬達を中心とした、最後の戦いが始まるのに……いったい何があったの!? こんな事じゃ晋軍に……『松永』に勝てる事など出来はしないわ!」

 

華琳「………………」

 

雪蓮「華琳……。 一人で抱えてないで……相談してみない? 私は、貴女の配下でもなんでもない。 ただ、同じように国を背負った立場の身だから、解決できる『答え』を持っている……かもしれないわよ?」

 

華琳「……私の悩みを? もしかしたら……雪蓮が気に掛ける颯馬の身が危ないかもしれないのよ? それでもいいの!?」

 

雪蓮「なら、尚更じゃない! 颯馬が関わるなら、私も混ぜなさい! 私の知らないところで、颯馬の生死が決まるなんて……絶対嫌よ!!」

 

華琳「……………わかったわ」

 

★☆☆

 

華琳は……一刀が晋軍に人質で攫われてしまった事。 于吉の言葉から推測する『最悪な策』を雪蓮に話す!

 

華琳「────私達の軍勢は、将兵共に一刀を慕っている者が多い。 一部、事情を知る天の御遣い達が、颯馬寄りだけど……私達には協力的よ。 だけど……颯馬が殺されれば、どう動くなんて予想は出来ない!」

 

雪蓮「…………それは私達も同じ! 孫呉は、心情的に颯馬寄りよ! 冥琳の命を救い、孫呉の独立を助け、尚且つ晋軍の攻撃を命懸けで跳ね返してくれた! 私と蓮華、冥琳は……特に……その気持ちが大きいわ!!」 

 

雪蓮は、そういうと言葉を一旦切り、再度ゆっくりと紡ぎ出す。

 

雪蓮「………もし、愛紗が颯馬を殺し、洛陽側が報復に動けば、私達は洛陽側に味方をして───華琳達を攻めるかもしれない!!」

 

華琳「────!」ビクッ!

 

雪蓮「でもねぇ……一刀は言っていなかった? 虎牢関の時に?」

 

 

『 華琳!! まだ、俺達は死んではいない!! 戦えるんだ!! ………なら、諦める訳には、いかないだろう!? 』

 

 

華琳「………………あっ!」

 

 

一刀が虎牢関で、偽火牛の攻撃により、半ば放心した華琳を励ました言葉。 

 

 

諦めて死んでしまえば、そこで何も出来ず終わるだろう。 

 

だけど、死んでいなければ、劣勢を一気に覆す事が出来るかもしれない!

 

一刀や颯馬を救い、久秀達を倒せる策が浮かぶかもしれない!! 

 

 

雪蓮「分かったようね。 華琳は結論を早く出し過ぎるわ! まだ、二人が死ぬなんて決まっていないでしょう? だいたい……そんな事! この私達が許すと思ってるのかしら!? その道士は!!!」

 

華琳「雪蓮……ありがとう。 ………気付かせてくれて」

 

雪蓮「いいのよ! 私達だって華琳達と戦いたくないんだもん。 それに、外で心配している曹操陣営の皆にも、よく言っておきなさい。 華琳が思っている以上に、顔や態度に出ているのよ。 一刀を心配する乙女心がね!」

 

華琳「──────えっ? えっ! ////////////」

 

雪蓮「何か出来る事があれば……手伝うわよ! 遠慮なく言いなさい!!」

 

雪蓮は、片目を瞑り笑顔でそう言うと、謁見の間を退出して行った。

 

 

◆◇◆

 

【 『ふぢの病』の件 】

 

? 洛陽 宮殿内 詠私室 にて ?

 

わ、私は……侍女より報告を受けて、詠ちゃんの部屋と向かっていた! 

 

────バンッ!  ハァ〜! ハァ〜! 

 

机で、竹簡を読んでいた詠ちゃんを見付けて、急いで呼び掛けた!

 

月「え、詠ちゃん───!! 天城様達が戦闘を開始したって!?」

 

詠「えぇ! 晋軍が此方の罠に食いついたわ! 天城達は総勢八万! 晋軍は約三十万で戦闘開始! 晋軍は、弱小と侮り戦を仕掛けたようだけど……お生憎様! 相手は……あの『天城』なのにね……ふふふっ!」

 

あの詠ちゃんが……楽しそうに笑顔で私に応える。 

 

やっぱり、自分が認めた軍師が活躍するのは嬉しいんだよね? 私も嬉しくなったけど……それは一時置いて、詠ちゃんに相談したの!

 

月「詠ちゃん! そろそろ天城様が望んだ頃合いじゃないかな?」

 

詠「月もそう思う? それなら……間違い無いわね! 私達も準備して出陣するから、皇帝陛下に奏上して出陣を促して頂戴! 稟と風も付いてきて貰いたえば、非常に助かるのだけど……」

 

ーーー

 

風「ごめんなさいー! 貴女とは、お友達からでぇお願いしますー!」

 

詠「ア、アンタねぇ! これじゃ、ボクが交際を申し込んだように見えるでしょう!? ちょっ! 月〜ぇ! お願いだから、ボクから下がらないで!」

 

ーーー

 

詠ちゃんは風の部屋に入り、お二人が洛陽軍の軍師と任命された事を話す。 

 

そうしたら、風さんから丁寧にお辞儀をされて、断られた。 べ、別に……詠ちゃんとは、良き友人としていたいだけで、一線を越える気は無いからね?

 

そんな、私の思惑を行動で悟った詠ちゃんは、素晴らしい軍師だと思います!

 

詠「───だから、違うのぉ!! そんな悲しそうな目で視ないでぇぇ!!」

 

★☆☆

 

稟「申し訳ないですね! 私達は、洛陽で待機しなければならないのです!」

 

月「……どうしても行けないのですか? 稟さんや風さんが居てくれれば、もっと早く戦が終わると思うのですが……」

 

稟さん、風さんは……固持して受けてくれなかった。 

 

あっ、詠ちゃん? 

 

詠ちゃんは……ちょっと……私がね? からかい過ぎてぇ部屋の隅っこでいじけちゃたの。 御免ね……詠ちゃん。 クスッ!

 

 

 

あ、あぁ──! すいませんっ! この話の続きですね? 

 

ーーー

 

そんな事を考えていましたら、風さんが…!

 

風「…実はぁ……稟ちゃん……『ふぢの病』なんです〜!!」

 

『えええぇぇぇ──────!!』

 

私、詠ちゃん、稟さんが……揃って声を挙げたんですっ!!

 

だっ、だって『不治の病』ですよ! 稟さん……こんなに元気そうなのにぃぃ! 私は驚いて、詠ちゃんに聞いたんです!

 

月「そ、そうだったの!? 詠ちゃん!?」クルッ!

 

詠「そうなの!? 稟!?」クルッ!

 

稟「そうだったんですか!? 風!『バコーン!!』 キュ〜!!」バタッ!

 

風「……と、本人もー! このように錯乱しておりますぅー!!」

 

稟さんが何か……言ってましたけど、『宝ャ』と言う可愛い人形で、風さんが張り倒していました。 

 

ーーー

 

まさか、そんな理由だったなんて! 

 

……急に病名を宣告されれば、誰だって錯乱していまいますよ! 『不治の病』なら尚更です! なんて……可哀想な稟さん。 

 

私達は、風さんに猛抗議しました! 

 

そんな大事な事を、なんで直前になって教えるんですか! 

 

せめて、私達だけでも教えてくれれば、対処のしようがあったかも知れないのに!! しかも、目の前の本人が居るのに、名指しで喋るなんて!

 

風「風も辛いのですよー! 華陀さんにも診て貰いましたが、手の施しようがないのですー! そんな重大な事、本人にも話せられないのに、月様に話せられないじゃないですか〜!? だから、この場で報告したんです〜!!」

 

詠「仕方がないわね…。 稟には無理しないよう伝えておいて。 勝利したら月と二人で見舞いに必ず───行くからっ!」

 

月「はぁいー! ありがとうございますー!! 稟ちゃんにも、伝えておきますねー!?」

 

ーーー

 

いつも……冷静に物事の先読みをする稟さんが……不治の病。

 

だけど……地面に寝そべて、気持ち良さそうに寝ている姿を見ていると、とても病気とは思えない……。 きっと……無理して、そう見えないように努力したから、気絶してもボロが出ないようになっちゃたんだろうな………。   

 

私は、尊敬の眼差しを稟さんに送りながら……( 亡くなった華水母様も、よくおば様に『 精神安定剤 』と宣って『 お盆 』を振り上げてたなぁ ) ……と懐かしく思い出していた………。

 

 

◆◇◆

 

【 最終戦に向けて! の件 】

 

? ?州 陳留 華琳居城 にて ?

 

華琳率いる曹操陣営、雪蓮率いる孫呉陣営、伊達、大友、島津勢が率いる洛陽軍が合流し、約二十万の大軍が陳留に集結! 

 

明朝での出陣もかなり手間取り、結局……明後日の出陣と変更になった。

 

大陸の命運を………決する為に…………! 

 

ーーー

 

? 城内の一室 にて ?

 

政宗「おぉ! 久しいな! 九国の雄達に会えるとは……先行きがいい!」

 

道雪「政宗殿や伊達勢の皆様も、息災の御様子で何よりかと!」

 

ーーー

 

義久「成美ちゃんは……相変わらず可愛いはねぇ〜!」

 

成美「可愛いと言われるのは好きじゃない! 義弘みたいに勇猛=『鬼』と言われた方が嬉しいよ!!」

 

義弘「えぇー!? 鬼より可愛いの方が良いじゃない! 私なら可愛いの方が絶対いい! っていうか、可愛いと呼んで欲しいのよぉ!!」

 

ーーー

 

景綱「私は、こんなひねくれた性格だ。 政宗に『 もう少し素直になれ! 』と言われても……今更、可愛げの無い性格を直す事なぞ、出来ない話なのだがな。 これも、軍師の性というものか………」

 

歳久「軍師と云う者は、皆……自ずとひねくれるようになるんですよ。 相手の思惑の裏をかくのが我らの役目。 自分の心を欺いてまで考えて、始めて成り立つ役目ですから。 ですが、心労が激しい損な役目でもあります……」

 

紹運「されど……居てくれなければ、真に困る者達だ。 私みたいな猪突猛進の猪には欠かせない! 標識みたいな者達だからな!」

 

元綱「心が荒れそうな時は、仲間や家族に言えば良いんじゃないかな。 溜めとくばかりだと……気が滅入って、早死にしてしまうかも知れないよ? そうなったら、家族や仲間達が悲しむ結果を齎すんだからね?」

 

家久「そうだよ! せっかく日ノ本を統一して皆が仲良く出来たのに、最後の最後で死んだら……思いっきり悔いが残るよ!! あたしだったら、大泣きしちゃうよ!!!」

 

宗茂「でも、何で急に……そんな話になったのですか?」

 

政宗「景綱がな……颯馬の事『ばっ! 馬鹿っ! 黙っていろ!!』──黙っていても伝わらないと言ったのは、景綱じゃないか!!」

 

道雪「はぁ〜! なんとなく察しが付いてしまっ───誰ですっ!」

 

皆で、雑談をして親睦を図っていたところ、立花道雪の鋭い誰何(すいか)が飛ぶ! 周りの者達は、手持ちの得物で対抗しようと構える。

 

伯約「私ですよ……御遣いの方々! 姜伯約です! 天城様の指示をお伝えに参上致しました!」

 

『──────────!』

 

★☆☆

 

? 桂花 私室 にて ?

 

桂花「また……アンタと話をする事になるとはね? 冥琳!」

 

冥琳「ふふふっ……虎牢関の時を思い出すよ。 あの時は、双方味方の振りをした敵だったからな。 互いの腹を読み合い、『どう動くか?』『どう攻めて相手を出し抜くか?』と策謀を巡らせたものだ!」

 

朱里「あの時は疑心暗鬼のままで、天城様を攻める事になりましたが、今は違います! 明確なる敵! 明確なる相手の思惑! 明確たる頼もしき味方!! こんな総毛立つ程の戦に加えるなんて──感動ですぅ!!」

 

雛里「でもでもぉ! 一刀さんが人質に捕らわれているんだよ? 生半可な策謀じゃ……松永久秀と于吉なる道士に見破らちゃうよ!! それに、この事……天城様だって情報を持っていないはずだよ!?」

 

桂花「あの道士は……危険よ! 斗詩を一時とは言え、一刀を殺すように命じた者よ? あの真面目な斗詩さえ、簡単に従わせる妖術! それに、数万の白い兵士を自在に出現させる術も使われたら、私達は何も対応できない!!」

 

冥琳「だが……一刀は言っていたそうじゃないか? 『死んでいなければ、戦える!』と! 絶望に身を焦がすのは、我々の力を尽くした後にした方が、後悔がないのではないか?」

 

『─────────!』

 

朱里「そうだね! 相手は確かに私達より知謀は上かも知れない! だけど、今の戦の相手は……あの天城様だよ! 手を抜いて攻める事なんて無い!」

 

雛里「うん! だから……必ず隙が出来る! その隙に皆の力を合わせれば、必ず!! 桂花しゃん! 力を貸して下さい! 一刀さんを! ご主人様を助ける為に────!!」

 

桂花「ふ、ふん! 私が華琳様に言上するつもりの言葉を、二人で全部喋ちゃてどうするのよ! 隙を突くのは、アンタ達に任せるわ! 私は道士達の術を止めるのに全力で考えるわ!!」

 

『はい! 頑張りましょう!! 桂花しゃん!!!』

 

ーーー

 

冥琳「北郷一刀……! お前の残した言葉で、曹操軍が立ち直って行くのが、手に取るように分かる。 雪蓮とも華琳とも違う王の器か……。 天城達に出会うのが後だったら、お前に興味を抱いていたかも……しれないな!」

 

★★☆

 

? 城内 練兵場 にて ?

 

祭「なんじゃ! そのへっぴり腰はぁ!!」ブン!

 

桃香「きゃああああ!」ドン!

 

蓮華「祭! 少し厳し過ぎない!? これじゃ……桃香が戦の前に潰れてしまうわ!!」

 

桃香「あ、ありがとうございます……蓮華さん! だけど、これは私のけじめ!! 私が弱かったばかりに……一刀さん! うぅん! ご主人様や愛紗ちゃん、鈴々ちゃん、星ちゃんが前に出て戦ってくれた!!」

 

蓮華「桃香…………」

 

桃香「もう、守られたままは嫌ぁ! 嫌なの!! 私は……気付いていなかった! 自分の手で勝利を掴み、生死与奪の権利を得て……そこから話し合いが始まる! それが、この世の理だと……やっと……気付いたの………!!」

 

祭「休んでばかりでは──訓練にならん! もう一度、掛かってこんかぁ! この腰抜けがぁぁ!!!」

 

桃香「こ、腰抜けなんかじゃ──無いぃぃぃ!!」 ブゥーン! ガキィーン! 

 

ーーー

 

小蓮「二人共、磨きが掛かっているわね! シャオも頑張らなくちゃ!」

 

流琉「私だって………兄様を助けるんです!」

 

ーーー

 

? 城内 練兵場 にて ?

 

鈴々「当たり前なのだぁ! 悪い奴を全員ぶっ飛ばして、お兄ちゃんを助けるのだ!!」

 

季衣「なんだとぉぉ! 兄ちゃんを助けて感謝されるのは……ボクなんだ! ちびっ子は、他の悪者でも倒していろぉ!!」

 

鈴々「にゃにぉぉ! ツルペタ春巻きこそ、別の悪い奴を倒せばいいんだ!! 鈴々が、お兄ちゃん助けて、頭撫でて貰うんだ!!!」

 

流琉「あぁ───! 喧嘩は駄目! 喧嘩して怪我でもしたら、兄様が悲しむよ! 『二人の怪我は、俺のせいなんだぁ!!』っと云って……」

 

『うぅ〜〜! あり得る(のだぁ)〜!!』

 

小蓮「えぇぇ! もう終わっちゃうの? シャオ……つまんない!!!」

 

ーーー

 

? 城内 練兵場 にて ?

 

星「…………………」シュッ! シュッ!

 

雪蓮「あらっ? 珍しいわね……星がお酒を呑まずに、鍛錬に励むなんて?」

 

星「私は……なっ! 主を目の前に……してぇ! むざむざ……ぁっ! 敵に奪われた……ぁっ! 不忠者だ─────ぁぁぁ!!」シュシュシュシュ!!

 

雪蓮「………………」

 

星「ふぅ────! ……だから、主を救う為『酒断ち』を行い、更なる力を付けなければならないのだ! 今の私では『筒井順慶』に勝てぬ! 二度の勝利は、全て薄氷の勝利! どちらが勝っていたかは……運次第だった!!」

 

雪蓮「何時もの星とは思えない……鬼気迫るものね……?」

 

星「愛しい男と敬愛する主を取られたのだ……冷静になる方がおかしい! さて、私は……もう少し鍛錬を続けるからな!」スッ! シュシュシュシュ!

 

ーーー

 

? 城内 練兵場 にて ?

 

斗詩「えぇぇい────!」

 

猪々子「どおぉぉりゃ!!!」

 

二人が得意の得物で、麗羽に襲いかかる! 

 

だが、それは麗羽に当たる事もなく、簡単に排除される!

 

麗羽「─────ふっ!」ガッ! ドンッ!

 

斗詩「えぇっ!」トスッ

 

猪々子「うわぁぁっ!」ドンッ!

 

二人の攻撃は、優雅に流され地面に当たり、その隙を見逃さない麗羽が、二人を掴み綺麗に投げ飛ばされた!

 

麗羽「猪々子さん、斗詩さん! 本気でやってくれません? これでは、練習どころか遊戯に近いですわよ?」

 

斗詩「そ、そんなぁ〜! 全力で立ち向かって、これで十回戦目ですよ!?」

 

猪々子「麗羽様が……それだけ強ければ、敵だって楽勝ですよ〜!」

 

麗羽「馬鹿を仰い! かの敵……筒井は私や秋蘭、華琳さんを物数にもせず、我が君を害しようとした、とんでもない化け物ですわ! 鍛錬を重ねて、勝てると思っていましたのに……星と戦い、あれだけの苦戦を負わせるなんて!」

 

秋蘭「それなら、私達と訓練しないか?」

 

ザッザッザッザッ!

 

麗羽「あらっ! 秋蘭、春蘭!」

 

春蘭「私の武では、悔しいが──あいつらに遠く及ばない! 華琳様を嘆き哀しませ、左校や大洪達の仇を取れないのは、武人の信義に背く行為だ! だから、付き合え麗羽!! 今度こそ、あいつらに目に物を見せてやる!」

 

麗羽「まぁ〜! 熱烈な誘いだ事。 本来なら我が君以外に寄り添うのは嫌ですけど……いいですわ! お付き合いしましょう! ほらっ! 斗詩さんに猪々子さん。 そして、後ろで物欲しそうな気配を漂わせる……雪蓮もね!」

 

練兵場の傍に生えている木の後ろから、雪蓮が詫びれる事なく現れた!

 

雪蓮「へぇ〜気配を消していたのに、気付くなんて流石ねぇ! 虎牢関の時より、かなり変わったわね……袁本初様!?」

 

麗羽「その名は、今は不要ですわ! 我が君に仕える『麗羽』が……今のわたくしですもの! 我が君の光あってこそ、わたくしも存在感が示されるのですわ!!」

 

ーーーーー

 

僅か一日に伸びた出陣だが……将兵達には更なる成長をも与えてくれた。

 

さて……この大陸全土を巻き込んだ戦の決着は……どうなるのか?

 

全貌を知る者は………誰も居ない。

 

 

ーーーーーーーーーー

ーーーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

やっと次回に最終戦となります。

 

于吉の策、颯馬の謀、敵味方どうでるか? 

 

色々と考えてみたいと思いますので、よろしくお願いします!

 

説明
義輝記の続編です。 宜しければ読んで下さい。 10/4前半部分の蓮華の台詞変更と新たに小蓮の台詞を付け加えました。ご迷惑お掛けします。
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コメント
朱里「でもでも! 私達の創作活動で国庫が少しは潤ってるんでしゅよ?」 雛里「八○一の販売流通は、政務の参考になるんでしゅ!」とドヤ顔で横にいます。 確かに弱肉強食です……それを覆して見せるのが、また面白いとこも。 例えば、兵法であり、人の知恵であり、自分の作品ですwww(いた)
naku様 コメントありがとうございます! まぁ……この外史の孫呉なら貧乳党の結成が早期に出来ますよ。 蜀、魏、呉の将が殆どいますし。 月は……それどころではなかった? (いた)
道教か何かで『陰極めれば陽となり、陽極めれば陰となる』と聞いた事が。 対局の物でも突き詰めると同じになるとの事らしいです。 一刀が死すか別れるか? どうなるか分かりませんが、桃園の近いを思い出して歩いて貰いたいものです。(いた)
Jack Tlam様 コメントありがとうございます! ふと、コメントを読んでいたら昔の曲が思い出され……。 と、哀愁に浸っている場合では。 広い野原を踏み固め、しばらく進んで振り向けば、そこに残っているのは何か? それを無駄にするか生かすか……自分次第ですね。 (いた)
『礼記』に『愛して而もその悪を知り、憎んで而もその善を知る』という言葉があります。桃香の理想のために命を奪われた者は数多く、また救われた者も少なからずいる。それを無意味にしないために、今を生きる彼女は努力しなければならない。一刀の存在は確かに大きいが……彼一人のために、今までのことを無意味にしないようにね。(Jack Tlam)
剣とは、収められた状態でこそ最大の威力を発揮するものである……悪いけど、今までの君達は単なる抜き身の刃だったんだぜ?皆が笑顔の優しい世界とか言いながら、触れるものすべてを傷つけて……理想に意味は不要。しかしそのために為した行為とその結果には意味がある。それを無意味にしてしまうのは理想を抱いた自分自身。外的要因じゃ理想は無意味にならないよ?(Jack Tlam)
禁玉⇒金球様 コメントありがとうございます! えーと、不真面目な回答のつもりで書いたんですよー。 勿論、こういうのもありかなーって事でして。 次作も明日に投稿しますので、宜しくお願いします。(いた)
↓いや真面目な話ですみませんそういうのがあるのは分かってますけどね。ここで言いたいのは貧乳党は『駄目だこいつ等』という事でして、だってマイノリティ−を商売にするなんて…ありですけどもw。熟女党とかないかな筆頭株主になりますよわたしゃ。(禁玉⇒金球)
害悪になる……非生産的な行為って事ですね。 なる程……ただ、ここの外史は、それのお陰で曹操軍に勝利を齎してしまいました。 華琳の建国した所では、取締りは緩くなりそうです。(いた)
禁玉⇒金球様 コメントありがとうございます! 勢力のトップの間での密約はよくある事です。 曹操軍では、華琳が一言伝えれば従いますし、孫呉では雪蓮が駄々捏ねると皆が呆れて従います。 まずは『意識改革は頭から』で始めています。(いた)
善し、ここの貧乳党は勝手に小蓮を組み込んだことで詐欺ないし公文書偽造で市中引き回しの上で打乳首獄門ですね何考えているのかw。LGBTに寛容な世界になりそうですが私は認めんよ!!、腐女子とハーレム嗜好は真剣に世の中の害悪にしかならんからな!!(禁玉⇒金球)
これまでも思ってきましたが一人を取るか国を取るか損得勘定は大事で勢力のトップは冷徹な勘定が求められる、まして俺sugeee!からは程遠い等身大の一刀なら自分が取られたら発狂します。それじゃ両方取るために如何すればいいか…「さあ皆で考えよう」、現状考えているのは孫策と曹操だけな件。(禁玉⇒金球)
mokiti1976-2010様 コメントありがとうございます! 例の『お胸の慎ましい方々が集う会』の皆様と『薔薇を愛する愛好家』の皆様の御協力で行われた結果です。(いた)
桂花が会長ではわあわとシャオが加わって…ああ、あれか。そこに八百一が加わるとは何と恐ろしきネットワークか。(mokiti1976-2010)
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