魔法少女リリカルなのは Extreme
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= 機動六課 司令官執務室 =

 

 

 

 

 

 

 

はやて「・・・随分と・・・派手なご帰還やなぁ・・・」

 

「ゴメンね。ちょっと色々と理由ありだったから・・・」

 

はやて「・・・かまへんよ。それで?」

 

「うん。結果はリョウから貰ってこのメモリに」

 

はやて「・・・まさか、十年前にこんな事あったとはなぁ・・・流石なのはちゃんやで」

 

「・・・うん。私もそう思う。だから・・・」

 

 

はやて「・・・もう一度・・・なのはちゃん助ける為に、彼女の敵になる・・・か。

 

 

 

 

 

 

 

フェイトちゃん」

 

フェイト「・・・そう。それが・・・彼女の中に居るアインスト破壊する唯一の方法」

 

 

はやて「・・・美しき砂の白は・・・音と共に崩れ去る・・・」

 

フェイト「偽りで固めきられた城は、永久に存在する事は無い」

 

はやて「・・・無理せんといてや」

 

フェイト「そっちこそ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少女の夢を見た時は、一時の間にして終わりを告げた。

ココからは、飽くなき現実の残酷さが待ち構えている。

それを彼女は長い間持って居たお守りを握り、痛感していたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

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Strikers編 第八十話 「崩れる夢」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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= 特務七課・本部隊舎 医務室 =

 

 

ラン「ひやっ・・・!」

 

ライフ「我慢ですよ、ラン」

 

ラン「うう・・・はぁい・・・」

 

しょげるランにライフは術式で骨を回復させ、止血を行っていた。

足には優しい緑の光が当てられ、傷ついた骨や肉を癒していっている。ライフが最も得意とする回復魔法の一つだ。

止血が完了すると、そのまま包帯を巻き、剣の刺さった痕を覆い隠させたのだ。

途中痛みに何度か身体をビクつかせるも、最後まで耐え切り、ランは足の怪我を治療させたのだった。

 

ライフ「はい。これでおしまいですよ。」

 

ラン「ありがとう御座います、ライフさん」

 

ライフ「ええ。にしても、あんまり無茶しちゃ駄目ですよ。怪我でよかったですけど、もし一歩間違えたら・・・」

 

ラン「・・・分かってます。けど・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

少し場所が離れ、医務室のベッドの上には前の一件で保護した少女が呼吸器を付けて静にか眠っていた。

それを部屋の外側から見る二人。マサキとレイは外から監視をしていたのだ。

 

レイ「バイタルは安定。唯、栄養失調の可能性なども捨て切れませんね」

 

マサキ「そうか。だが、あそこで倒れたのは・・・」

 

カグラ『栄養っつーよりも疲れだな。筋肉の疲労が半端じゃなかった』

 

マサキ「・・・しばらくはあのままか」

 

レイ「でしょうね」

 

 

 

レイはそう言い、今も眠る少女に目を向けた。

まるでそのまま永遠に目覚めぬ姫の様に、少女は安らかな顔で眠っていたのだ。

彼女が一体何者なのか。何故狙われたのか。

全てはまだ分からないままだ。

 

マサキ「・・・・・・」

 

カグラ『マサキ?』

 

マサキ(何だ・・・この記憶の混濁は・・・)

 

彼女を見ていたマサキは、少しずつではあるが頭に頭痛が伝わってくるのが分かった。

それは記憶と言う記憶を根こそぎ奪い取った様な感覚で、ゆっくりとしかし確実に何かを奪っていったのだ。

 

 

マサキ「っ・・・」

 

カグラ『マサキ・・・オイ!』

 

レイ「副隊長!?」

 

マサキ「・・・・・・・・・」

 

カグラ『・・・大丈夫か?』

 

マサキ「ああ・・・少し頭痛が走っただけだ』

 

頭痛が治まると、マサキは再び眠る少女の方に目を向けた。

すると、さっきまでと違った感じ、違和感があった事に気づいたのだ。

 

 

 

 

 

マサキ(・・・俺は・・・あの子を『知っていた』?)

 

 

 

 

 

 

 

 

変化は始まる。

それが善であれ、悪であれ。過去であれ、未来であれ。

 

何かが、動くのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのは「さて。どうしてか・・・教えてくれないかな。ティアナ」

 

 

ティアナ「・・・・・・」

 

 

 

六課のラウンジ。

其処にはなのはと、現在残っているフォワードメンバーとはやて、そして彼女の監視をなのはから密命で受けていたグリフィスが居た。

恐らく、ラウンジの外にはなのはの息が掛かった者達が警備をしているのだろう。

 

最早ココはなのは、いや、なのはを装ったアインストの城。

その証拠に、その城主たる人物の目は虚ろな色をしていたのだ。

 

 

どうする事もできないはやて。

それを心配そうに見守るスバルとキャロ。

エリオは何かを警戒している。

 

そして、事の議題の原因であるティアナは、現在なのはの前に立ち、左頬が赤くなって口から切れた肉の血を流していたのだ。

 

 

なのは「・・・どうして、七課に行ったのかな」

 

ティアナ「・・・・・・」

 

 

頑なに口を開かないティアナと虚ろな目でありながら異質としか言えない威圧感を出すなのは。

異質な威圧感の正体は恐らくアインストだからだろう。

 

だが、それでもティアナは屈しなかった。

唯々、チャンスが来るのを待っていたのだ。

 

 

なのは「・・・正直に教えてくれないかな。でないと、このままじゃティアナは反逆罪だよ」

 

ティアナ「・・・・・・」

 

 

スバル(ティア・・・・・・何で念話が使えないの・・・)

 

はやて(AMF・・・撒いてるのはグリフィス君か)

 

 

 

 

 

 

 

なのは「ティアナ。状況、分かってる?今貴方が反逆罪で囚われたら・・・確実にこの六課は終わる。そうなれば・・・皆の夢は無くなっちゃうんだよ」

 

ティアナ「・・・・・・そうですね」

 

なのは「・・・・・・」

 

 

スバル「っ・・・!」

 

 

 

はやて(ウチは何も出来ひん。やるのは・・・自分次第やで、ティアナ)

 

 

 

 

 

なのは「私達や・・・スバル達・・・それに・・・貴方の夢だって・・・」

 

 

ティアナ「・・・・・・」

 

 

なのは「貴方はそれを分かっているの?このまま対立が続けば、貴方は一生夢を叶えられないのかもしれないんだよ?だから・・・」

 

 

ティアナ「だから七課を・・・地上を潰すと?」

 

スバル「ッ・・・!」

 

 

 

 

なのは「・・・そう・・・けど違う。地上本部の機能を一時的に止めるだけ。そして・・・」

 

 

ティアナ「そして、その隙を狙って証拠を取り揃え、七課を徹底的に潰す・・・見えやすい魂胆ですね」

 

 

キャロ「ティアナさん・・・?」

 

 

冷静な物言いのティアナにスバルとキャロは動揺する。

その物言いが、まるで自分が反逆者だと、自分は全て知っていると言った感じだったのだ。

 

それにはなのはも虚ろだった目を細め、ティアナに睨みを利かせたのだ。

 

なのは「・・・・・・どう言う事かな」

 

ティアナ「そうですね。ぶっちゃけて言えば・・・・・・どう転がろうと、現状で私の夢は100%叶わない・・・ですかね」

 

スバル「えっ・・・・・・」

 

なのは「・・・どうしてそう言いきれるの?」

 

ティアナ「・・・考えても見てください。唯でさえ立場の危うい私等地上の者達が、同属を潰せばどうなります?先ずは同属殺しの汚名を着せられて、目の仇になるのは決定的でしょ。加えて、そのまま政権が全て本局となれば、本局は空を優遇させてそっちを優先的に出世させて自分達の周りとポジションを固める。権威を強固な物とするためにね」

 

スバル「嘘ッ!?」

 

 

ティアナ「本当よ。その証拠に昨日、グラナガンの軍港に新型のアルカンシェルを搭載した武装戦艦が次々と来航した。無論、補給や修理の為じゃないわ」

 

はやて「・・・・・・」

 

 

 

 

ティアナ「目的は地上本部の粛清。その為にアルカンシェルを使用した大規模な一斉侵攻作戦がある・・・と私は予想しています」

 

なのは「・・・・・・」

 

ティアナ「けどその前になのはさんにとっては絶対に潰しておかなければいけない者達が居る。それが・・・」

 

スバル「七課・・・って事・・・なんですか?」

 

なのは「・・・・・・」

 

ティアナ「ご明察よ、スバル。七課は今の地上では虎の子の組織といっても過言じゃないわ。MSWATとかじゃ比べ物にならないくらいにね。だから、なのはさん」

 

なのは「っ・・・」

 

ティアナ「貴方は全てを駆使して七課を潰しに掛かろうと計画していた。あらゆる点から彼らを動けないようにする為に」

 

なのは「・・・・・・」

 

 

 

ティアナ「なのはさん・・・正直に教えてください。貴方が其処まで彼らに固執する理由は何ですか?何故彼らを消したがるんですか?」

 

 

 

淡々と語られた現実と問いに、なのはは動揺し始めていた。

だが、その焦りは顔には見られない。

だから、まだ冷静な判断を行えるのだった。

 

 

 

なのは「・・・どうしてか、ね・・・いいよ。それでティアナが納得してくれるって言うならね。」

 

ティアナ「・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのは(E)「十年前。私達はある次元世界の調査に出ていた。メンバーは私とフェイトちゃん。そしてはやてちゃんとヴィータちゃんの四人。後から・・・七課の副隊長二人も来るって聞いていたけどね。

 

 

 

 

 

何時もどおりの簡単な調査任務だったの。

そう。あの人が現れるまでは・・・」

 

 

はやて「・・・・・・」

 

 

ティアナ「・・・・・・」

 

 

 

なのは「そこに私達は凶悪な次元犯罪者が居るなんて知らなかったの。私達はそこでその次元犯罪者に遭遇してしまい・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

負けてしまった。」

 

はやて「・・・・・・」

 

 

思わず腕を強く握ったはやて。

忘れる事も無い事件だったからだ。

 

たった一人の男に、魔導師が二人係でも勝てなかった相手。

 

それにたった一人で挑んでしまい、彼女は危うく死に掛けたのだから。

そして、あの時。もし彼らが来てくれなかったらと思うと今でもぞっとするらしいのだ。

だが・・・

 

 

 

 

 

 

 

なのは「けど。偶然私達は調査に出ていた本局の人達に助けられたの。」

 

 

はやて「・・・!」

 

 

なのは「本当に偶然だった。今思うとぞっとするよ。もし本局の人達が来なかったらってね」

 

ティアナ「・・・・・・」

 

なのは「結局、あの男二人は来なかったの。私達があんな目に合っていたのに、彼らは何一つ『知らなかったの』」

 

ティアナ「・・・それが、なのはさんが七課の人を恨んでる理由?」

 

なのは「それだけって理由じゃないよ。ちゃんと・・・理由はあるよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別に殺しても可笑しくない理由がね」

 

 

スバル「っ・・・!?」

 

キャロ「こっ・・・!?」

 

 

ティアナ「それがなのはさんが、七課の隊長を恨む理由?」

 

なのは「そう。正直、彼の教えは全部嘘っぱちだった。だからそのせいで私も、はやてちゃんも。みんなの人生が狂わされた。でなきゃ私は・・・」

 

 

ティアナ「・・・」

 

 

なのは「けど・・・その私を助けてくれたのが本局の人達だった。

 

私を助けてくれた・・・私を再び飛べるようにしてくれた・・・だから・・・!!」

 

 

 

 

 

 

涙交じりの顔で訴えるなのは。

しかし、其れを見てもはやては表情一つ変えなかった。

それはその涙の真実を知っていたからだ。

そして。それは同時に逆転への合図でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ティアナ「・・・それで?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさかそんなヘタなお涙頂戴の話で皆を分からせようって・・・つもりじゃないよね。なのは?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《 バシッ!! 》

 

 

 

なのは(E)「っ!?」

 

刹那の事だ。一瞬にしてなのはの体には金色のバインドが張られ、彼女の動きは完全に止められてしまった。

その事に驚くスバルとキャロ。

その中ではやては一人安堵の息を吐いてたのだ。

 

 

はやて「ふいぃ・・・やーっとご到着かいな」

 

なのは「っ・・・何で・・・どうして・・・!?」

 

 

スバル「えっ・・・どうしてって・・・って言うか、今まで何処に行ってたんですか・・・!?」

 

 

「さぁ・・・それは今から話すから・・・」

 

 

 

 

 

 

《 スッ 》

 

 

「武器は閉まってくれないかな、グリフィス。」

 

グリフィス「っ・・・!」

 

なのは「エリオ・・・!」

 

 

 

エリオ「正直・・・僕も最初はこんがらがりましたよ。けど・・・もう止めました。そう言う事考えたら、一生終わる気がしないので」

 

エリオはそう言ってグリフィスの後ろに立っており、デバイスであるストラーダを展開していた。

突然の出来事に驚く三人。だが、残る三人は平然としており、まるでこの事を予期していたかのような台詞を言っていたのだ。

 

 

 

そして、なのはの前には一人の、金色の刃を持つ、黒き鎌を持った魔導師が立っていた。

 

 

 

彼女は、なのはにとって最も親しい理解者の筈だった。

なのにどうしてなのか。

 

簡単な話だ。最も彼女を理解しているからこそ、彼女の異変に早くから気づいていた。

そして。このチャンスを待っていたのだ。

 

 

 

エリオ「約束。守ってくださいよ。」

 

「うん。三人でご飯、食べに行こうね」

 

はやて「こんな時まで呑気やなぁ・・・ウチ、一応人質って『設定』やで?」

 

 

「そうね。ま、途中からの設定だけど。」

 

なのは「っ!?」

 

キャロ「あ・・・貴方は!」

 

 

ソルナ「どうも。お邪魔するわよ。はやて」

 

はやて「お茶は出さへんで」

 

ソルナ「いいわよ。紅茶とコーヒー派だから」

 

 

なのは「・・・何が・・・何がどういうことかな・・・答えて・・・・・・

 

 

 

 

 

 

フェイトちゃん・・・」

 

 

フェイト「簡単な話よ。もう貴方の正体は分かっている」

 

 

グリフィス「っ・・・ハラオウン執務官!まさか・・・!」

 

はやて「おっと。グリフィス君は黙っとき。」

 

 

 

 

形勢逆転。正にこの言葉がこの状況そのものである。

 

なのはがフェイトの足の向こうを見ると、自分の元生徒達が気絶して倒れており、しかも丁寧に蒼いバインドが張られていた。

そして、この中で一番冷静なグリフィスは現在エリオとはやてに動きを止められている。

はやては何処に隠していたのか、デリンジャーを持っており、それを彼に突きつけていたのだ。

 

 

キャロ「え・・・えっと・・・エリオ君、これってどう言う事!?」

 

エリオ「あー・・・」

 

はやて「そういえば二人にはまだ放しておらんかったなぁ・・・」

 

フェイト「今はとても話せる状況じゃないから、コレ終わったら話すよ。だから・・・」

 

 

なのは「っ・・・二人共、フェイトちゃんたちは・・・!!」

 

フェイト「黙れ、この偽者。」

 

なのは「っ・・・!」

 

スバル「偽・・・者?」

 

フェイトの冷たい台詞に、スバルとキャロは驚く。

彼女が偽者?一体どういう意味だ?

訳の分からない状況の最中、その二人を他所にティアナもフェイトに言ったのだ。

 

 

ティアナ「・・・その辺の話・・・ちゃんと教えてくださいよ、フェイトさん」

 

フェイト「うん。包み隠さずって理由には・・・まぁいかないけど」

 

ティアナ「・・・。」

 

クロス『ここは我慢かと』

 

ティアナ「喧しい」

 

 

 

 

なのは「くっ・・・・・・っ!」

 

その中、なのはは僅かに顔をにやけさせた。

それに気づいたソルナは直ぐに周りに目を見回す。

すると、隠れていたのか、六課の隊員ではない魔導師が四人。デバイスを持って現れたのだ。

 

スバル「この人達・・・!」

 

はやて「なのはちゃん・・・の皮かぶった奴の私兵って所かいね」

 

キャロ「けど、あの制服って確かMSWATの!」

 

はやて「別にそこは問題ないねん」

 

スバル「え!?」

 

 

はやて「せやろ?」

 

フェイト「うん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クロノ「ノノ!カム!!」

 

 

 

 

「っ!?ぐわっ!!」

 

しかし、登場もつかの間。転移で現れたノノとカムが魔導師二人を前足で拘束し、デバイスを無理矢理離させたのだ。

その余りの巨体さにフォワードメンバーも驚いてはいたが、実際はやても距離が近かったので少し引いていた。

 

ノノ「いっちょあがり!」

 

カム「おー!」

 

 

はやて「あらまぁ・・・ノノ、カム、久しぶりやなぁ」

 

ノノ「お、はやても元気にしてたかい?」

 

カム「・・・かわんねーな」

 

はやて「性格がって事で受け取っといたろ。カム。」

 

 

 

なのは「クロノ君・・・!?」

 

 

クロノ「さて・・・夢物語もここまでだ。悪いが、ココで潰えて貰うぞ。お前の野望を」

 

なのは「・・・・・・!?」

 

ソルナ「まだ分からない?貴方の正体をココに居る半数以上が知っている。だから・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零人「とっとと人の皮被るのをやめてもらいてぇって事だよ」

 

零人と霊太が姿を現し、彼女達の前、そしてフェイトの隣に立ち止まる。

彼を見てまた過剰反応をするかと思われたが、その前に零人が独り話し始めたのだ。

 

零人「確かによ、アイツは俺を恨んでるかもしれねぇ。それだけの事を俺はしたからな。けどな、だからって他人を駒の様に扱うって事は・・・コイツは死んでもしねぇ・・・!」

 

なのは「あ・・・・・・」

 

霊太「はじめっから人が他人に化ける事なんて不可能だったんだ。お前らの知識不足って奴だ」

 

なのは「アア・・・・・・チ、チガ・・・」

 

零人「リョウ。もうコイツに聞くことはねぇ。聞く意味もねぇ。だから・・・」

 

霊太「あいよ」

 

 

零人の合図に霊太が術式を展開する。

其処から現れたのは、彼が持つ事象兵器『蛇双・ウロボロス』。

その力は、貫きし相手の精神をも侵す、精神攻撃系の事象兵器だ。

これを使って彼は何をするのか。

答えは簡単だ。

 

 

 

霊太「フェイト!クロノ!その馬鹿しっかりと持っとけよ!!」

 

フェイト「うん!」

 

クロノ「分かってる!」

 

 

スバル「なっ・・・何を!?」

 

はやて「大丈夫。なのはちゃんを・・・正気に戻したいだけやから」

 

 

チェーンバインドでなのはを立ち上がらせ、両サイドにクロノとフェイトが立ってバインドをしっかりと握る。

無理矢理立ち上がらせられたなのはの目の色は片目が赤く変色しており、禍々しさを放っていた。

 

なのは(E)「アア・・・ヤメロ・・・コロスキカ・・・!?」

 

零人「死にはしないさ。ただ・・・

 

 

 

 

 

テメェが消えるだけだ・・・!!」

 

 

 

 

霊太「ウロボロスッ!!」

 

刹那。霊太はウロボロスをなのはに向って一気に放ち、その蛇の頭のオブジェをなのはの心臓目掛けて打ち込んだのだ。

そのままいけばなのはの心臓は貫かれてしまう。

だが、そんな事をする気はハナからない。

 

 

 

 

なのは「がっ!?」

 

ウロボロスの先端はまるで水にでも入るかのような波紋を放ち、その中に入っていった。

それが一分近く続き、彼等はまだかまだかと待っていた。

一分がこれほど長いのか、と改めて感じつつ。

 

 

《くんっ》

 

 

霊太「ッ!来たッ!!」

 

ソルナ「掴んだ!リョウッ!!」

 

霊太「本日は大当たりッ!!」

 

何かが喰いかかった感覚がウロボロスの鎖から感じ、それをソルナも感じ取る。

そして、霊太は鎖を引き戻し、まるで釣りをしているかのような顔で鎖を引き抜いたのだ。

 

 

《ずるっ!》

 

 

鈍い水の音と共にウロボロスの先端が姿を現す。

其処には、最初突っ込ませた時には無かった赤い宝玉の様な物を先端の蛇の頭がしっかりと掴んでいたのだ。

それが一体何なのかとフォワードメンバー達が思う中、霊太は最後の仕上げを零人に頼んだのだ。

 

 

霊太「零人ッ!!!」

 

 

零人「うおっしゃぁ!! Blood Cain・ideaッ!!!」

 

蒼の魔道書の限定解除を行い、彼の手からは赤くも蒼い光が放たれる。

その禍々しさは赤い宝玉が放つ光よりも強く、そしてハッキリとしていた。

それに惹かれる者、高揚する者とそれぞれの目で彼の手からの光を見ていた。

 

零人「じゃあな!アインスト!!」

 

 

アインスト「マ・・・マテワタシハ・・・!?」

 

零人「言い訳はいらねぇんだよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

闇に喰われろぉぉぉ!!!!」

 

ブラッドカイン・イデアの力で魔獣の様な形になった左手で零人はアインストのコアを粉々に砕いた。獣の手がその純粋な赤を放つ宝玉を飲み込み、その闇で全てを砕いたのだ。

 

 

 

ソルナ「・・・・・・」

 

 

はやて「・・・・・・」

 

 

フェイト「・・・・・・」

 

 

クロノ「・・・どうなった・・・?」

 

 

 

 

零人「・・・・・・」

 

 

零人は、アインストのコアがある左手を静かに開いた。

其処には、あの赤い宝玉は残っておらず、代わりに灰色の灰だけが彼の獣の手から滑り落ちるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「はぁ・・・・・・」」」」」

 

 

 

その灰を見た大人達は安堵の息を吐き、取り合えずの事態の収拾を喜ぶのだった。

だが、当然事態について来られなかった面々も居る。

その一人が、フェイトに尋ねたのだ。

 

ティアナ「・・・終わったんです・・・よね?」

 

フェイト「うん・・・これで大丈夫だよ」

 

スバル「えっと・・・何がどういう・・・?」

 

はやて「あー・・・こりゃ長い説明が要るかぁ・・・」

 

ノノ「そりゃそうだね。けど、大変なのはこれからさ」

 

クロノ「彼女達の説明ははやて達が頼む。俺は彼女に化けていたアイツの後始末があるからな」

 

ソルナ「後、念のために灰には触らないで頂戴。何があるか分からないから」

 

 

 

取り合えずの事態の収拾。

なのはに化けていたアインストの最後。

色々と残る物が残ったが、取り合えず。零人達はなのはの救出成功に喜びを感じていた。

 

やっと今までの彼女が戻ってきたと。

 

 

 

そして。其処から、新たな事が始まるのだと。

 

この時は誰も知らなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのはの救出劇から数時間後。

フェイトは七課に訪れ、今後の事を零人達と話し合っていた。

なのはに化けていたアインストの影響、それをどうするのかと言う事だ。

しかし、ココで実は彼女も知らないある事が収拾していたのだ。

 

 

フェイト「ほ・・・本当なのそれ!?」

 

零人「ああ。」

 

霊太「今し方連絡が入ったぜ」

 

フェイト「・・・・・・つまり、私達って・・・」

 

ソルナ「一杯食わされていたって事ね。これをクロノが知っているかどうかで判断分かれるけど」

 

 

彼等がなのはを救出している間、実は本局に対し、地上本部が強制捜査を行ったのだ。

全面戦争になるかと思われたこの事件だが、実際は電光石火の早業で事態は収拾したのだ。

 

クロノがレジアスに頼んだ事。全ての罪を白日の下に晒す。

正に、それが実行させたのだ。

電撃的なレジアスの本局登場と部隊の展開。

それにより、一瞬にして身動きが取れなくなった本局側は彼等に全ての汚職行為を曝け出されたのだ。

その数、約一万。

被害額にしても馬鹿にならない額が上がったと、作戦に参加していたゲンヤから伝えられた。

溜まったホコリを出してみれば、出るわ出るわと大量の煙たいホコリ。

それも予想以上のであった為、操作した方も驚いていたとかではあったが。

 

 

フェイト「・・・・・・けど・・・これで、本局の暴走は止まったんだよね?」

 

霊太「ところがどっこい」

 

マサキ「そうもいかんかったらしい」

 

そう言ってマグカップに注がれたブラックコーヒーを口に流し込むマサキ。

その傍で両手でしっかりとカップを持っていたフェイトは、彼等の台詞に『まさか』と思った。

 

カグラ『・・・実はな。どうやら全員はとっ捕まらなかったらしい』

 

ゼクス『その数約半数。どうやら、本局に戻る前に事態を聞きつけて逃げたらしい』

 

フェイト「うえっ!?」

 

イクス『そのせいで未だに検問などもそのまま。現在地上が総力を挙げて捜索していますが・・・』

 

ソルナ「連中が何処に潜伏しているかっていうのが分からないから、四苦八苦しているらしいわ」

 

フェイト「・・・・・・」

 

 

分かっていた事だ。そう一度に全てが片付くとは、フェイトも最初から思って居なかった。

それが今までの経験で知っていたからだ。

直ぐに事態が収拾するものもあれば、永く続く物もある。

それに、これが直ぐに終わるなんて考え事態が甘かった。

 

零人「・・・けど、兎も角本局のエースカードであるなのは達は倒れた。これで連中の切り札は無くなったって事だ」

 

霊太「それだけでも十分な進展だぜ?」

 

フェイト「・・・・・・うん・・・」

 

 

今は確実な一歩を喜ぶべきか。それとももう少し欲を出しておけばよかったのか。

今の彼女はその二つの間に立たされていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方。六課では、なのははあの後に気絶し、現在はシャマルとザフィーラの監視の下、治療に当たっている。

そして、はやてからのなのはの事情を聞いたフォワードメンバー達はそれぞれの解釈でその事情に納得し、取り合えず事なきを得たのだった。

しかし、もう組織としては長くもたない。

はやてはそれを感じていた。

六課のメンバーの大半はアインストがなのはに化けて行った事。

つまり、偽りの彼女の信教者達だ。

 

はやて「・・・そろそろ、部隊も幕引き・・・かなぁ・・・」

 

 

名残惜しそうな表情ではやては椅子に深くもたれかかり、六課の解散を考えていた。

このままの組織運営は無理が多すぎる。

だからもう組織としては成り立たない。

そう自分が今までどうにも出来なかった事を悔やみ、はやてはそれでも今後どうするかを考えていた。

近々、この事件の収集後初の総会議が行われるのだ。

そこで本局の上層部の総入れ替えが行われ、新体制が築き上げられる。

 

 

これで一件落着の筈・・・なのだが・・・

 

 

 

はやて「・・・なーんか納得がいかんと言うか・・・これで終わる気がせんって言うか・・・」

 

 

 

はやての予想。それが奇しくも当たる事になる。

まるでそれを知っていたかのような雨と共に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

= 自分の信じる道を、進みなさい =

 

 

 

 

 

 

 

 

ティアナ「・・・・・・ゴメン・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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次回予告ッ!!

 

 

イクス『崩れた虚構。しかしその影は大きく、全てを祓えなかった』

 

ソルナ「闇はうごめき、光の灯火は危ぶむ・・・果たして、私達の運命は」

 

 

ラン「次回『ターン・ザ・ワールド』。次回から新OPとEDですよ!」

 

 

 

説明
偽りは崩れ去り、真実の明日が始まる。
その時。新たな物語に移行(シフト)する。

Strikers編 イメージソング

OP「Break Out」 スーパーロボット大戦OG ディバインウォーズより
ED「Reincarnation Blue」 BLAZBLUE Alter Memory より
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コメント
なのは救出。しかし、物語は終わらず新たな局面へ展開していくのですね(ohatiyo)
自分も歳なのか・・・長く感じたよ・・・(Blaz)
ほんと長かったですね?(biohaza-d)
なのは(アインスト)の暴走、ようやく停止。これまで長かった…(竜神丸)
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