超次元ゲイムネプテューヌmk2 希望と絶望のウロボロス
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白い雲が蒼い空の中を泳いでいく。どこまでも続く蒼穹の下、大地を踏みしめながら彼女達は漸く目的地に到着した。早朝出発したこともあり、白く輝く太陽は空の天辺へ登っていた。鬱陶しい陽光に腕で隠しながら、進むと目的地である街が漸く姿を現し、視界いっぱいに広がる。

 重厚なる黒の大地『ラステイション』。この国の特徴としてはまずサブカルチャーであることだろう。様々な技術や文化を取り込み独自に発展を遂げていく多様性。ライバルであるプラネテューヌを打倒という女神自身の目的もあり、様々な物を吸収して重厚に重ねていく。未だに発展中であり、黒煙を吐きだす工場が幾つも並んでいるのが遠くからでもよく見えている。

 

「−−−ようやく、帰ってこれたわ」

 

 三年ぶりの故郷の風景に嬉しそうに口元を緩ませた。

さっぱりと言うほどでもないが、あの黒鋼の街は最後にここから旅立った時と比べて明らかな変化があった。三年と言う短い時間ではあったが、 マジェコンヌによる混乱も含めて更に発展は進んでいるように見える。

 

「ラステイションに来たのは久しぶりです」

「貴方達、三年間ずっと眠っていたから軽い浦島太郎状態ね」

「早速、ラステイションのゲイムキャラさんを探すです。えと、教祖様に話を聞けばいいんですよね?」

 

三人は頷いた。あれ?とユニとネプギアは異常に気付いて周囲を見渡すが、空の姿はない。ここまで来るのにずっと一緒に居たはずだっただと思いだしながら頭に疑問を浮かべると、語ったようにアイエフとコンパはため息を吐いた。

 

「あいつ極度の人間嫌いなのよ……」

 

 空自身から語られていないが、紅夜から想像も混じった過去とその悲劇を知っている二人は複雑な顔をした。よっぽどのことがない限り、空は人の集まる場所なんて絶対に行かないだろう。知っている身からすれば、憎む相手が間違っていると言うべきか、どうしてそう広すぎる定義で考えるのか理解し難いが、それを本人に言ってもアイエフやコンパは人間であるが故に空は絶対に耳を貸さないだろう。女神も人間に信仰される立場からすれば理解は難しい。

 

「人間嫌い…って、お姉ちゃんから軽く聞いているけど……」

「本当の話なんですか?」

 

 人間達が女神を殺し、世界が滅んだ話。そんなこと、ありえないと信じているネプギア達だがアイエフ達もどう答えたら良いのか頭を抱えた。紅夜曰くの話で、ありえない!と唱えた女神が詳しい事を聞こうとしたが、その日行方不明となり、次の日に何故か自分の部屋で眠らされていたことから、この話題は彼女たちの間では地雷と認定されている。もし本当の話と考えるのなら初恋の人を無様に殺されてしまった空の憎悪と懺悔は想像もつかない果てない物であることは想像がつく。だからと言って、たった一人の女神を生み出す為に全てを殺そうとしたやり方を認めてはいけないものである。

 

「私達もそれが本当にあったことか調べようがないのよ。イストワール様の記録されるもっと昔、原初と言われる最初のゲイムギョウ界の歴史は空しか覚えていないし、見ていない。人が女神を殺す……そんな時代なんて想像も出来ないけれども、一つだけはっきりと言えることがあるわ」

「……あいちゃん」

 

 アイエフは分かっている。空の興味を引いたのは結局の所レイス・グレイブハードと名乗っている彼しかない。

 そして女神達、自分たちの相手は犯罪神であり空は特性は恐らく全て把握している。何故なら、一度空が奴を倒しているからだ。それでも蘇っているという事は滅びても幾らでも戻ることが出来る厄介な特性を持っている。

 根本は違っているが空もゲイムギョウ界の守護者と言ってもいい経歴がある故に犯罪神をわざと逃がす様な事は絶対にしない。

 しかし、空自身はどんなに樺ってもその先に滅びがあると語っている。かと言ってそれを全部受け入れることは絶対にしてはいけない事で、今は女神とマジェコンヌはシェア率での争い、旧き支配者と新たに生まれようとしている支配者が変わろうとしているだけの戦いに集中すべきだろう。

ゲイムギョウ界という形を守護しようとしている空からすれば、この二つの戦力争い等気にする要因には入らない。

 

 

ーーーそう、空化すれば最悪ゲイムギョウ界の形さえ残っていれば、住んでいる生物はどうなってもいいのだ。

 

 

同じものを見ている様で全く別の物を見ている女神と空にアイエフは語り始める。

 

「貴方達、((守護女神|ハード))と((破壊神|空))は相容れぬ存在と思っていた方がいいわ。言葉は通じる、こっちの思いにも理解もある。だけど、それだけなのよ。仲間じゃなく、ただ協力するだけの関係。有象無象の人間より、変えの効きづらい女神だからこそ多少気にかけてくれている。−−−そういう奴なのよ。あの傲慢なのか謙虚なのか分かりづらい夜天 空って人物像は」

「……仲良くは出来ないのですか?」

「結局、ねぷねぷ……女神達に色々教えてくれたんですが、あれは教師と生徒みたいな壁のある付き合いでした」

 

 アイエフやコンパが最初に空に会った時は感情を押し殺した無表情だった。助けてくれた事も合ったが、あれは紅夜の精神状態を気にしての救助であって、自分たちは都合のいい道具程度の認識なのだろう。今もそうかもしれない。ネプギアやユニのモチベーションを保ち続ける為に必要であり、もし危なくなったら命ぐらいは助けよう−−−そんな思いなのかもしれない。勿論、もしもの場合は女神優先だろうだが。

 

「(空が人間を忌み嫌いのは、レインボハートの事件だけじゃない。もっと、別の事もあるでしょうけど……)」

 

 それを聞いてしまえば、明日自分の肉体と魂魄が無事である確信がない。

 仕事仲間と考えた方がいい。お互いにプライバシーに関与するほどの仲ではない近づく必要性は無い。頬を舐める様な重たい風を感じながらそう説明するアイエフは、今度コンパに胃薬を作ってもらおうと突き刺さる様な痛みがする胃痛に冷や汗を掻いた。

ラステイションの街並みを一面できる丘から降りて、四人はラステイションの教会を目指して移動し始める。発展して変わった街の景色に目を輝かせる二人の女神候補生をコンパに任せて、遠目で周囲を確認すればビルの屋上で座っている白い影が見せる。十中八九空だろうと考え、一同はラステイション教会に訪ねた。

 

「ようこそいらっしゃいました。こちらラステイション………え?ユニ、様?」

 

 業務スマイルを浮かべ、頭を下げながら、お決まりのセリフを並べて教会の来訪した五人の姿を瞳に映して、若い受付嬢は目を丸くした。

 

「久しぶりね。早速だけどケイはいるかしら?」

「−−−は、はひぃ!今すぐお呼び出します!!」

 

 思考より先に腕が動いた。

幾度もなく押したコール番号を押すその手が震えた。

 いつの間にか後ろで何食わぬ顔で立っていた空にネプギア達は驚きながら数分後、教祖は実務中とのことで事務室に教会関係者が案内してくれることになった。

 明らかに緊張している先導者の背中を見ながら、世間から隠されているが女神行方不明という事は教会側は理解しているからこそ、いきなり帰ってこられれば動揺の一つや二つは当然だろうと考えながら同時に予想以上に騒がれなかったのは、イストワールが予めラステイションに連絡していたからであろう。

 

「ねぇ、ちょっと聞きたいことがあるのだれどいいかしら?」

「は、はい!どうしたのでしょうか?」

 

 人物像を未だに把握できていない上司が突然声を掛けられたようにビクッと肩を震えさせ、案内役の男性は振り返る。いい歳をした大人が中学生くらいの女性に腰を低くするのは聊か不気味だが、相手が女神となればそれは例外である。目の前の少女はそこらの業界を締める様な代表取締役の娘の様なご令嬢でもない、この国を治める人の形をした守護の神、その妹なのだから。

 

「私…私達がいなくなってラステイションのマジェコンヌによる支配ってどうなの?」

「そ、それは……」

 

 言葉を汚した男性の反応からしてかなり不味い所にあるというのは察しつく。

 最もそれを理解しているのはアイエフと空だけであり、無礼がないようにどう穏便な言葉を使って伝えるのか冷や汗を流しながら内心頭を抱えている男性が憐れに思えた。

 

「空。ちょっとお願い」

「……りょーかい」

 

 お互いだけに聞こえる程の口調で怪訝な顔つきに変わっていくコンパ、ネプギア、ユニを見て空はため息交じりに頭を掻いた。トンッ、とユニの肩に手を置くと当然のようにユニは空の方へ振り向くその隙にアイエフは一歩前に足を進ませ男性に話を伺う。先ほどの会話とは全く別の話だ。

 

「ねぇ、ここの教祖ってあんまりいい評判を聞かないんだけど実際の所、どうなの?」

「えぇっと…神宮寺教祖の事ですか?」

「そう、聞く所にいるとかなりの合理主義者じゃない」

 

 聞けば裏でマジェコンヌと取引しているとか。その小さな言葉に男性は大きく目を空けて黙り込んだ。

 話しの途中に意識を逸らされ、刃の様に鋭い目つきでユニは睨むが、空からすれば可愛い獣が必死で警戒しているような姿に鼻で笑いそうになる。

 

「…何よ、空」

「下っ端に状況を行くな、そんな簡単な事は|神宮寺教祖《トップ》に聞け、聞く相手が間違っている」

「…………」

「分からない顔をしているなら説明するよ。組織というのは強固な上下関係で成り立っているからこそ安泰している。しかし、君はイレギュラーなんだよ。この国の女神の妹、ブラックハートの後継者であるブラックシスターその肩書きだけで、君自身何もしなくても周囲に大きな影響を及ぼす。もう少し、自分の立場と発言の意味を考えて」

 

 肩書きという言葉にぎりっと歯を鳴らすが、そんなことは自分が一番分かっている。

胸から沸き立った怒りを深呼吸と共に静めさせた。その反応に空は背伸びした子供の成長を喜ぶようにユニの頭を何回か優しく叩き、それに頬を膨らませて睨まれる姿に可愛い可愛いと声に出さないように笑った。

 しかし、ユニの問いは最悪としか言いようがない。何故なら女神は行方不明とされているこの時に候補生だけ帰って、しかも国の現状も理解できていないとなれば、少し頭が回る者であるのなら、直ぐに女神がどういう状況は推測することが可能だろう。アイエフと話をしている男の様に。

 

「貴方がたはこの国をどうしようとしているのですか。今更女神が来た所で……」

「大丈夫---なんてお決まりの事を言うつもりはないけど、見てなさい。あの娘たちはきっとやってくれるわ」

 

 女神の栄光しか見た事しかない男性は、唇を歪ませてアイエフから目を逸らした。まるで信じる者を信じれないないようにその足先は速くなり、元から近かったこともあり直ぐに目的地に到着した。何も変哲もない扉を前に男性は感謝の言葉を言う前に颯爽とこの場から立ち去った。

 

「(どう見る?)」

「(どうして救いがない---女神に裏切られた思いとそれでもマジェコンヌが邪教と知っているから認めらず、自分の信じる柱がなくて拗ねている残念な大人、よくいる悔しいけど静観に回るタイプ、危機はほぼゼロだね)」

 

 仕方がないとアイエフは内心愚痴った。彼だって、信じたいだろうが、その結果は出るはずがない。何か女神様にしたいと思ってもその手じゃ何も出来ない事に、そしてなにより一歩踏み出す勇気すら彼にはないだろう。

 その様子を察している空の視線の先には二人の女神候補生。

 

「(崇める暇があれば、自分の力で解決しよう、なんてことは考えられないんだね)」

「(…みんな、貴方みたいに強くないのよ)」

 

 それはそうだねと空は遠くなっていく男の背中を見ながら返した。

 緊張しているネプギア達はその場で立ちつくし、久しぶりの再会に胸を膨らませているユニは代表して扉を開いた。

 

 

説明
限界なんてな〜い←ガンダムトライファイターズ(二次会)を見ながらテンションを上げている作者
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