真・恋姫†無双 裏√SG 第11話
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華佗と華雄

 

 

 

 

 

華佗「やぁ、蓮鏡!久しぶりだな!」

 

蓮鏡「華佗さん?お久しぶりですね。あ、華雄さんもお久しぶりです」

 

華雄「久しいな、蓮鏡。息災のようで何よりだぞ」

 

とある【晋】での一日。お昼の忙しい時間を越えた頃に二人のお客様がやって来た。

華佗さんと華雄さんだ

 

華佗さんは五斗米道出身の、この大陸が誇る最優の医者だ。

年齢は父様と同じくらい。燃えるような赤毛が特徴的な、熱い男性だ

 

華雄さんはそんな華佗さんと共に大陸中を渡り歩いている武人だ。

キリッとした目付きに引き締まった肉体。大陸でも五指に入る程の武術の達人だ

 

零士「おや、華佗じゃないか。久しぶりだね。確か洛陽に行ってたんだよね?」

 

奥の厨房から父様がやって来た。父様は華佗さんを見つけるなり話しかけ始める。

この二人、父様がこの世界に来て以来の親友らしい

 

華佗「あ、あぁ、零士が呉で巻き込まれた事件の報告も聞いて来たが…

一体どうしたんだ、零士?かなり疲れているように見えるが」

 

華佗は疲弊しきっている父様の様子を心配していた。

父様は一ヶ月以上、無断で呉に居た罰則により、咲夜さんや月姉さんなど、他の従業員の代わりにフルタイムで働いてもらっている。

なので父様は、定休日以外休みなし休憩無しなのだ。

かく言う私もその被害にあっていたりするが、私は休憩がある分父様に比べたらまだマシだろう。

一通でも手紙を送っていれば、こんな事にはならなかっただろうに

 

零士「あはは、ちょっとうっかりしててね。僕は大丈夫だよ」

 

華佗「そうなのか?まぁ、しっかり休んでくれよ」

 

そういうと華佗さんと父様は何やら話し込み始めた。親友同士、積もる話があるのだろう

 

蓮鏡「何か用意しましょうか、華雄さん?」

 

華雄「ん?そうだな。では、烏龍茶を貰おうかな。秋だと言うのに、まだまだ暑くて敵わん」

 

蓮鏡「かしこまりました」

 

私は華雄さんの注文を聞き、よく冷えた烏龍茶に氷を入れて提供する事にした。

華雄さんはお茶を受け取ると、一思いに飲み干した

 

華雄「んく、んく…はぁ、生き返るな」

 

蓮鏡「お代わりはどうしますか?」

 

華雄「お、気が利くな。いただこう」

 

私は氷だけになったグラスに再びお茶を淹れてあげる。

今度は一気には飲まずに、ゆっくりと飲み始めた

 

華雄「それにしても、お前は仕事と私生活とでは、ずいぶん印象が違うな」

 

蓮鏡「えー、そうですか?」

 

華雄「あぁ。普段のお前は、雪蓮に似て砕けているところがあるからな」

 

蓮鏡「そりゃ、仕事と私生活は分けますよ。私だって、真面目に働けるんですー」

 

確かに私は、プライベートはもっとはっちゃけているし、テンションが高ければ仕事中でも好きにやるけど

 

華雄「お前が真面目に?なんの冗談だ?」

 

蓮鏡「ちょっと!それは酷いですよ!」

 

華雄さんはクスクスと笑っていた。

こんな親しみやすい人でも、大陸最強の5人の一人なんだよねー。

人は見掛けによらないわね

 

 

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雪蓮「休憩終わりまーす。あら?華雄じゃない。帰って来てたんだ」

 

華雄「やぁ雪蓮。呉ではずいぶん面倒事に巻き込まれたようだな」

 

店の裏口から母様がやって来た。ちなみに母様も休憩を貰えるくらいには許されている。

父様、というよりこの家の男のラック値が異常に低いのは何故なのかしらね

 

雪蓮「ほんと、疲れたわぁ。もうしばらく呉には行く気になれないわ」

 

母様はウンザリしていた。戦うことが嫌いなわけではないが、面倒事が嫌いな母様はああいう事件に巻き込まれる事を極端に嫌っていた。

かく言う私もまたそうだ。平和な地で平和に過ごしたい

 

華雄「ふふ、お前の牙も、すっかり抜け落ちてしまったな。

少し平和な時を過ごしすぎたのでないか?」

 

雪蓮「うー…否定はできないけど、抜け落ちたつもりはないわ!磨いてないだけよ!」

 

蓮鏡「そうね。私だって、まだまだ母様には勝てる気しないし」

 

雪蓮「当たり前よ。まだまだ子どもに抜かれる気はないからね!」

 

華雄「はっはっは!では雪蓮、私と組手でもしてみるか?」

 

雪蓮「華雄と?大陸最強の一人と組手だなんて、怪我したくないから遠慮しとくわ」

 

華雄「なんだ、つまらんな」

 

華雄さんは少し残念と言った様子で、小さくため息を吐いていた。

そんな様子を見かねてか、母様がニヤリと笑い始めた

 

雪蓮「そういう華雄こそ、最近ちょっと平和ボケになって来たんじゃない?

さっきからチラチラ見ちゃってさ」

 

華雄「っ!?な、何のことだ?」

 

華雄さんが珍しく少し慌てていた。ん?華雄さん、何をチラチラと…

 

華佗「そう言えば零士、ちょっと白髪が目立ってきたんじゃないか?」

 

零士「うそ!?」

 

華雄さんの視線の先には華佗さんがいた。………まさか!

 

蓮鏡「へー!へー!もしかしてそういう事ですか!」

 

華雄「な、なんの話だ?」

 

華雄さんは耳まで真っ赤にして目を逸らしていた。これは確定ね

 

蓮鏡「いやぁ、まさか華雄さんがうちの父様の事を…」

 

華雄「そっちじゃない!………あ」

 

私と母様はニヤニヤしてしまう顔が直りそうになかった。

わかってるわよ、華雄さん。あなたの好きな人は…

 

蓮鏡「華雄さんが華佗さんの事をねぇ。

今までずっと一緒に居て、色気のない二人ではあったのに。どうしたんですか急に?」

 

二人の付き合いは、あの大戦時の頃からと聞いている。

昔は漢女も一緒に居たらしいが、最近はそれもなくなり、二人で大陸を渡り歩いている。

だけど、そんな二人でも、色恋にまで発展する事はなく今に至っていた。

華佗さんは医療、華雄さんは武術一辺倒だったからだ

 

華雄「い、言わないといけないのか?」

 

雪蓮「あったり前よ!私達とあなた達の仲じゃない!今さら隠し事だなんて、ねぇ?」

 

そういう母様だが、「面白いもの見つけたぁ!」と言わんばかりの笑顔だった

 

華雄「む…いや、きっかけは何てことはなかったのだ…

華佗が許昌までの道程であんな事を言わなければ…」

 

しかし華雄さんは、そんな母様の満面の笑みにも気付かず話し始めた

 

 

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数日前 華雄視点

 

 

 

私達は洛陽から許昌までの道すがら、病に侵された人々を救いながら歩いていたのだ。

そんなある日、二人の夫婦と出会ってな

 

夫「本当に、妻を救って頂き、ありがとうございます!」

 

華佗「いや、気にすることはない。当然の事をしたまでだ。病魔もそれ程大きくはなかったし、このまま安静にして、しっかり栄養も取っていけば自然と治るだろう」

 

妻「食料まで分けてくれて、ありがとうございます!本当に、なんとお礼を言って良いのやら…」

 

華雄「気にするな。どちらにしろ、私達二人でも食い切れなかったさ。ちょうど良かったのだよ」

 

夫「何から何まで、ありがとうございます!ところで、お二人は夫婦で?」

 

華雄「いや、そう言った関係ではないさ。付き合いは長いが、どちらかと言うと相棒だろうな」

 

妻「そうなんですか!?お似合いだったからてっきり…」

 

そう言って、私と華佗は夫婦と別れたのだ。そしてその日の晩…

 

華佗「………」

 

華佗は穏やかな顔で何かを考えていた。ただジッと火を見つめて…

 

華雄「どうかしたのか?」

 

華佗「ん?あぁいや、少し考え事をな」

 

華雄「ほう?何か悩みか?」

 

私と華佗の仲なのだ。悩みくらいは聞いてやろうと思っていたのだ。

すると華佗は、私が思いもしなかった事を話し始めた

 

華佗「悩みって程の事ではないが、俺もそろそろいい歳だし、身を固めるべきなのかなって」

 

華雄「み、身を固める!?結婚するのか!?」

 

私は動揺を隠せなかった。

今までお互い、そう言う話題にはならず、またそう言った良き人なんてものもいなかったのだから

 

華佗「ははっ、まだそんな予定はないがな。いつかは、とは考えているさ。

零士達を見ていると、結婚も悪くないとずっと思っていてな」

 

確かに咲夜達を見ていると、結婚生活も幸せそうだとは思っていたが…

まさか華佗までそんな事を考えるとは…

 

華雄「あ、相手はいるのか?」

 

何故か私の心は落ち着かなかった。華佗が、私以外の人と一緒に居る想像ができ…

 

華佗「いや、残念ながらいないな。だがまぁ、俺は何処かに定住出来るような人間でもないし、結婚するならきっと華雄みたいな、俺に付いてきてくれる女性なんだろうな」

 

その発言で、私の思考は停止した

 

 

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現在 蓮鏡視点

 

 

 

悠香「なるほどなるほど。そんな事があったのですね」

 

蓮鏡「悠香いつからいたの?」

 

華雄さんの話聞き終えた頃、何故か悠香が合流していた

 

悠香「鏡姉、細かい事はいいんだよ!それより華雄さんだよ!

せっかく華雄さんにも春が来たんだよ!こりゃ【晋】の皆で応援しなきゃ!」

 

雪蓮「そうね。きっとおもし…成功させてあげるわ!

蓮鏡、悠香、【晋】の女性従業員を全員呼びなさい!プロポーズ大作戦よ!」

 

蓮鏡・悠香「いえっさー!」

 

母様の頼みなら仕方ないわね!

確かにこれは、母様の言う通りおもし…素敵な事になりそうな気がするわ

 

華雄「お、おい!ちょっと待て!私はまだ…」

 

蓮鏡「まぁまぁ♪【晋】が協力すれば、プロポーズなんて楽勝だから!」

 

そして私と悠香はそれぞれ女性従業員を呼びに奔走した。その結果…

 

月「華雄さんにもとうとう…応援します!」

 

詠「ま、僕らに掛かれば、あの華佗だろうと落とせるわよ」

 

恋「結婚、素敵だね」

 

悠里「うっはー!なんかテンション上がって来ますねー!」

 

流琉「こ、これ、大丈夫なんですか?」

 

咲夜「さぁ、まぁ過去にも何度かやって来たし、上手く行くんじゃねぇか?」

 

猪々子「あたいと斗詩の時も、【晋】が協力してくれて出来たもんな!」

 

咲希「だといいけど、華雄さんのラック値、そんなに高くないんだよなぁ」

 

全員が集結した。秋蘭さん、凪さん、秋菜、凪紗の四人は城の仕事で来れそうになかったが、とても悔しそうにしていた。みんなノリノリね

 

零士「い、いったいみんなどうしたんだい?こんな急に集まって…」

 

咲夜「零士、罰則期間を終えてやる。今から休憩に入れ。そして華佗と何処か行け」

 

零士「えぇ!?いったい…」

 

咲夜「いいから、な?夜まで帰って来るなよ」

 

咲夜さんは父様に近付き耳打ちした。手にはナイフが握られている

 

零士「先っちょ!先っちょ刺さりそう!わかったわかった!

行くから!行くからナイフしまって!」

 

華佗「お、おい零士!大丈夫か?」

 

父様は涙目で咲夜さんから逃げるように華佗さんを連れて外に出て行った

 

蓮鏡「て言うか、父様なら話してあげたら理解してくれたんじゃ」

 

咲夜「まぁ、たまにはいいじゃねぇか。あいつに知らせないでやるのも、面白そうだろ?」

 

咲夜さんもたいがいSだよね

 

 

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咲夜「さて、作戦会議なんだが…まずは華雄の着てる服から変えるべきだよな?」

 

詠「そうね。華雄、あんたなんて格好なのよ。女なんだからもっと着飾りなさいよ」

 

今の華雄さんの服装は、黒いシャツ一枚に黒い革のパンツというスタイルだった。

引き締まった華雄さんには似合ってはいたが、何というか可愛らしさがない

 

恋「男らしい」

 

華雄「こ、これくらいが動きやすいんだ!

それに、私がそんな、女物の服を着ていても変だろう!」

 

月「別に変ではありませんよ。華雄さん、とても綺麗なんですから」

 

華雄「お戯れを月様。私がそんな、綺麗だなんて…」

 

でも、月さんに綺麗と言われて、結構嬉しそうね華雄さん

 

流琉「うーん…確かに今の服装でも、華雄さんらしくて悪くないですけど、もう少し可愛さが欲しいですね」

 

蓮鏡「流琉さんに同意ですね。せっかくだし、ちょっと秋っぽさも演出してみるとか」

 

咲希「ふむ、なら私らで、華雄さんの服見立ててやるか?」

 

悠香「おー!それ賛成!行きましょうよ華雄さん!」

 

悠里「なら、あたし達で店のセッティングとかどうです?雰囲気バッチリにしましょうよ!」

 

猪々子「だな!せっかくの休みだったけど、華雄の為なら仕方ねぇ!今日は働くかぁ!」

 

雪蓮「決まりね。私達大人組で店のセッティング、子ども組は華雄の服を見立てる。

時間は7時頃。それまでに準備するわよ!」

 

『おー!』

 

お食事処【晋】プレゼンツ、華雄さんのプロポーズ大作戦の始まりね!

 

華雄「ど、どうしてこうなった…」

 

 

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私、咲希姉、悠香の三人は、華雄さんを連れて服屋へとやって来た。

この店は洋服を専門とした店で、大陸の各地で展開されている。

意匠はほぼ全て一刀おじさんか沙和さんによるもの。

時代の最先端を常に走っている、女性に人気の服屋だ

 

沙和「おー!【晋】の子ども達に華雄さんだー!ひっさしぶりー!」

 

服屋に入ると、沙和さんが従業員に向けて指示を出していた。

沙和さんは私たちに気付くとこちらにやって来た

 

蓮鏡「お久しぶりです、沙和さん。こちらにいたんですね」

 

付き合いは長いが、一応目上の人なので、敬語を意識して話す。

いつもならこの役も、兄貴か秋菜にやらせるのだが、メンツがメンツなので仕方ない

 

沙和「まぁねー!ちょっと前までは外交で五胡に居て、最近帰って来たんだ!」

 

沙和さんは女性向けの服や装飾品を中心に扱い、この三国のみならず五胡や羅馬まで足を伸ばして事業を展開させている。大陸の経済を潤し、外交問題も任されている凄腕の女性だ

 

沙和「それで、今日は何をお求めですか?見た所、華雄さんっぽいけどー」

 

咲希「さすが沙和さんだ。実は今日、華雄さんがプロポーズをするので服を見に来たんだ」

 

沙和「おープロポーズ!お相手は華佗さんかなー?」

 

華雄「なぜわかったのだ!?というか、まだプロポーズをすると決めた訳では…」

 

悠香「もう、華雄さん、恋愛は速い方が絶対いいですよ。

華佗さん、あれで結構モテると思うし」

 

華雄「なに!?そうなのか!?」

 

華雄さんはとても動揺していた。やっぱり、他の人に盗られるのは嫌なのだろう

 

蓮鏡「きっと華佗さんの事だから、父様や一刀おじさんみたいに一夫多妻にはならないだろうなぁ」

 

華雄「………」

 

あ、顔が青くなった。多分、華佗さんの事を一番理解している華雄さんだからこそ、私の言葉に異常な現実味を覚えたのだろう

 

沙和「悠香ちゃんの言う通りだよー。速い方が色々いいもんねー。

よし!そのプロポーズ、上手くいくように沙和がきっちり決めてあげるの!」

 

咲希「おー、心強い味方が付いてくれた。一応私の方でも、ティアとかに聞いてみるか」

 

こうして、華雄さんの服選びが始まった。のだが…

 

咲希「いやいや、こっちのチェックの方が絶対いいって!」

 

悠香「えー!それよりこっちのふりふりした方が!」

 

沙和「素材は良いんだけど、スカートが似合う歳でもないしなぁ」

 

蓮鏡「うーん、パッとしないなぁ。次はこれ着てください」

 

華雄「お前ら!私は着せ替え人形じゃないぞ!」

 

いやいや、私たちはいたって真剣ですよ

 

 

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19時半を過ぎる頃、お食事処【晋】の内装はがらりと変わっていた。

いつもは賑やかで明るい装飾にしているのだが、今回は少し薄暗くして落ち着いた雰囲気を演出していた。そして今日に限り、従業員は皆バーテンダー服になっていた

 

華雄「お、落ち着かん…」

 

華雄さんの服装は黒いジャケットに白のシャツ、ジーパンにネックレスなどの装飾品も付けて、女性らしく、かといって華雄さんらしさも残したスタイルとなっている。

さらには薄く化粧もほどこし、綺麗に仕立て上げた

 

月「ふふ、華雄さん、とても綺麗ですよ」

 

詠「見違えたわね。これからも少しは気にしなさいよ」

 

華雄「クッ…」

 

華雄さんはそわそわしていた。ここまで女性らしい華雄さんを見るのも初めてだ

 

咲希「ん、もうすぐ帰ってくるぞ、行動開始だ」

 

20時前、咲希姉が二人の接近を知らせ、従業員全員がそれぞれの持ち場へとついた。

そしてカランカランと扉に付いた鈴が鳴り、開かれる

 

零士「た、ただいまー。って、あれ?なにこれ?どうなってるの?」

 

華佗「ん?今日はずいぶん落ち着いた雰囲気になっているな」

 

恐る恐る入って来た二人は店の内装を見て戸惑っていた。だけど父様は華雄さんを見て…

 

零士「……そうか、そういうことか」

 

察したようだった。さすが父様である

 

月「お待ちしておりました、華佗様。どうぞこちらへ」

 

華佗「華佗様?いったいどうしたんだ、月?」

 

月姉さんが華佗さんを誘導し、華雄さんが待つ席へと案内する。

その席には既に果実酒が用意されていた

 

華雄「や、やぁ華佗。まぁ座れ」

 

華佗「華雄?これは一体、何の催しなんだ?」

 

華佗さんは訳がわからないまま、席へと着いた

 

月「では華佗様、華雄様、最後まで我ら【晋】のおもてなしをご堪能ください」

 

月姉さんは指をパチンと鳴らす。

それと同時に、華佗さんと華雄さんのいる席以外の明かりが消えた。

月姉さんの魔法すげー。

ちなみに今日はこの演出をするために店を貸切りました

 

華雄「と、とりあえず華佗、乾杯しよう」

 

華佗「ん?何にだ?」

 

華佗さん…わかってたけど、ここまでされて気づかないのね…

 

華雄「う…そ、そうだな、今日という日を健康に過ごせた事でどうだ?」

 

華佗「そうだな、健康一番だからな!じゃあ華雄、乾杯!」

 

華雄「か、乾杯」

 

チリンとグラスが鳴り、二人は酒を飲み始めた。

それを確認した私たちは、料理を運び始める。

接客担当は悠里さん、悠香、猪々子さんの三人。

調理の担当は咲夜さん、咲希姉、流琉さん、そして…

 

零士「うん、だいたいわかった。肉料理だね」

 

全てを察した父様にも協力してもらった。

母様と月姉さんは演出を担当し、二人の側にいる。

恋姉さんは入り口付近で警備にあたり、私と詠姉さんは…

 

母様「………」

 

母様が頷くのを確認し、私と詠姉さんは目を合わせる。

詠姉さんも頷き、手にしたギターを弾き始めた。

さて、本気で歌おうかしら

 

蓮鏡「〜〜〜〜〜♪」

 

詠さんのギターに合わせ、私は落ち着いた雰囲気の歌を歌い始める。

店内は一気にムーディーになり、雰囲気が良くなった

 

私の特技は歌…というより、この声だ。

私の声には言霊という変わった力があり、私が意識し、念じて発した声には力がやどる。

例えば、誰かに『お前は強い』と意識して言ってやれば、その人は強いと信じ、いつもより動きがよくなったりする。素直じゃない人に『素直になれ』と言えば、少し素直になったりする。個人差はもちろんあるが、ある程度の意識の改革ができるのだ

 

そして今回は、もともと歌も得意ということもあり、歌う事にしたのだ

 

華佗「落ち着いた、良い歌だな」

 

華雄「あぁ」

 

今は意識して『心穏やかに』と言ったので、華雄さんの緊張も少しほぐれたようだ

 

悠里「こちら、特性コーンスープになります」

 

悠香「お熱いので、気をつけてお召し上がりください」

 

二人の机にはどんどん料理が並べられていく。

そのどれもが美味しそうで、二人も満足そうに食べていた

 

 

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そして…

 

 

 

華佗「それにしても、今日は一体何の日だ?

別にお互い、誕生日でもなかったと思うが…」

 

華佗さんが華雄さんに聞いたことにより、華雄さんの手は止まった。

華雄さんは顔を赤くして華佗さんを見た

 

華雄「それは、その…」

 

華雄さんは言葉に詰まっていた。仕方ない…

 

蓮鏡『大丈夫♪きっと想いを伝えられるはず♪』

 

歌に合わせ、言霊を乗せて華雄さんを励ましてあげた。

しかし…

 

華雄「っ!」

 

ちょっと思った以上に華雄さんは上がっていたようだった。

言霊を使っても、上手く緊張を解けなかったようだ

 

咲希「!?士希?と、なんだこの気配…すみません、父様。

ちょっと席を外します」

 

咲希姉が突然裏口から店を出て行った。

もう、せっかくいいところなのに、咲希姉どこに…

 

華雄「華佗!その、聞いてくれないか?」

 

華佗「ん?どうしたんだ、改まって」

 

お、とうとう言うの、華雄さん!

 

華雄「華佗、私は…お、お前のことが…その…」

 

華雄さんは顔を真っ赤にして何とか告白しようとしていた。

頑張れ華雄さん!

 

華雄「お前の事が!」

 

咲希「す、すまん…その、本当に空気を読めず悪いと思っている。

だけどその、華佗さん…急患だ…」

 

華雄さんが告白しようとした瞬間、咲希姉が裏口から本当に申し訳なさそうな顔で言った。

よ、よりによって今、ここで!?

 

華雄「………」

 

あーあ、華雄さんも、もうどうしていいのかわからないって感じで立ちすくんでる

 

咲希「やっぱりなんでもない!続けてくれ!だから頼むからそんな責めた目で見ないで!」

 

皆の視線が突き刺さり、咲希姉は顔を青くして言った。

いやもう手遅れだよ。もう空気ぶち壊しだよ咲希姉…

 

華佗「いや、急患なのだろう?いったいどうしたんだ?」

 

しかし華佗さんはそんな空気にも気づかず、真剣な様子で咲希姉に聞いた

 

咲希「いやその、士希が肩に穴開けて帰ってきて…な!?大したことないだろ!?」

 

は?

 

蓮鏡「あ、兄貴が!?」

 

悠香「にぃに大丈夫なの!?」

 

大したことじゃないの!?

 

華佗「咲希!士希はどこにいる!?」

 

咲希「うちの庭に…」

 

華佗「わかった!すまん、華雄。話は後だ!」

 

華佗さんは凄い勢いで立ち上がり、数個の医療道具を持って店の裏口に向かった

 

華雄「華佗!」

 

華佗さんが裏口の扉を開けたところで、華雄さんは声を上げた。

その声に華佗さんは振り向き、華雄さんを見た

 

華雄「華佗!私はこれからも、お前と共に居ていいか!」

 

それはきっと、華雄さんが振り絞って出た華雄さんの気持ち。

こんな事態だけど、華雄さんは華佗さんに伝えたのだ

 

華佗「もちろんだ!というより、俺からもお願いしたい!

華雄!これかもよろしく頼む!」

 

そう言って華雄さんは小走りで行ってしまった。

残された私たちは、皆展開の速さに付いていけずにいた

 

咲希「その、本当にすまん!告白の雰囲気をぶち壊して…」

 

咲希姉だけは華雄さんに謝っていた。

しかし華雄さんは、そんなこと気にしてないと言ったようで笑っていた

 

華雄「いや、いいさ。華佗のあの姿こそが、私が奴を気に入っているあり方なのだから。

あそこで走らなければ華佗ではない。それに…」

 

華雄さんは華佗さんの残りの医療道具を持って裏口に向かった

 

華雄「私はこれからも華佗と共に生きるのだ。告白の機会くらい、自分で作ってみせるさ」

 

そう言って、華雄さんは華佗さんの後を追うように出て行った

 

雪蓮「なーんか、思ってた展開とは違う結末を迎えたけど、これでよかったのかしらね」

 

咲夜「だな、きっとあの二人は、これからもあんな感じだろ。

誰よりも通じていて、誰よりも理解していて、誰よりも必要としている。

理想的な関係じゃないか」

 

咲夜さんの言う通り、きっと邪魔が入らなくても、あの二人はああなっていただろう。

いつまでも共に歩き続け、誰かの為に生き、誰かを救っていく。それが二人の良さなのだ

 

蓮鏡「さぁ、私たちは後片付けね。

なんか兄貴が肩に穴開けたみたいだけど、華佗さんと華雄さんが居ればきっと平気ね!」

 

『あの二人が、これからも末永く一緒にいられますように』私は静かに呟いておいた

 

 

 

説明
こんにちは!
Second Generations日常編、蓮鏡視点。
今回は華佗と華雄のお話。
今後は週一更新を目標にやっていくと思います。
今後ともよろしくお願いします!
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コメント
親世代も子ども世代も楽しい食事がそこにある、イベント盛りだくさんでいきいきしてるのが読んでて楽しいです、それにしても能力か・・・晋生まれってすごい(vavava)
相変わらず、晋のサービス精神は半端ないですね〜(ohatiyo)
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真・恋姫†無双 オリキャラ 雪蓮 華佗 華雄 

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