恋姫英雄譚 鎮魂の修羅13
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天和「ひぃ〜〜〜〜〜ん!!怖かったよぉ〜〜〜〜!!」

 

地和「ちぃもよ!!あんな化け物がいるなんて聞いてないわよ!!」

 

人和「計算外だわ・・・・・」

 

洛陽まであと一歩というところまで迫っていたというのに、呂布というあまりに大きなイレギュラーに遭遇し、三人は絶望に打ちひしがれていた

 

人和「まさか、私達の本隊の大多数をまるまる持って行かれるなんて・・・・・ざっと3万人は死んでしまったわね・・・・・」

 

天和「どうしてどうして!!?どうしてこうなるのよ!!?私達は洛陽で舞台を開きたかっただけなのに、どうして!!?」

 

地和「そうよそうよ!!なんで皆ちぃ達の邪魔をするの!!?」

 

人和「それはしょうがないわよ、私達はすでに多くの人達に迷惑を掛けてしまっているんですもの・・・・・だいたい地和姉さんが天下を取りたいだなんて皆に言った事がそもそもの始まりでしょ!」

 

地和「それは歌で天下を取りたいという意味に決まってるでしょうが!!」

 

天和「そんな事もういいよ〜〜!!それよりこれからどうするの〜〜〜!!?」

 

人和「・・・・・ひとまず、この司州から撤退するしかないわね、そこからなんとか再起を計るしかないわ」

 

地和「でも、あいつらがそれを見逃してくれるかな?」

 

人和「・・・・・見逃してくれるはずがないわね、きっと怒涛の勢いで迫ってくるわ」

 

天和「あ〜〜〜〜ん!!なんでこうなっちゃうの〜〜〜!!?」

 

地和「そうよそうよ!!途中までは上手く行っていたのに!!」

 

人和「・・・・・あの時からね、天の御遣いの噂が流れ始めた時から」

 

天和「そういえば、その噂が流れだした時からだよね、皆の数が凄く減ったの・・・・・」

 

地和「皆薄情よ!!私達の歌に希望を見出したんじゃないの!!?」

 

天和「でも・・・・・皆天の御遣い様が何とかしてくれるって聞いて、凄く嬉しそうだったね・・・・・」

 

地和「・・・・・うん、それはちぃも感じた」

 

人和「皆、元々朝廷の重税に苦しんでいた人が殆どだもの・・・・・縋れるものには縋りたいのよ・・・・・」

 

天和「・・・・・それじゃあ、これからどうするの?」

 

地和「そうね、本隊のほとんどを失っちゃったし、ここから挽回できるのかしら?」

 

人和「・・・・・確信は無いけど、天の御遣いを頼ってみたらどうかしら?」

 

地和「え?それってどういう意味?」

 

人和「私達も勢い余ってこんな暴動を起こしてしまったけど、ここでもう潮時にした方がいいと思うの、なんとか天の御遣いと交渉して匿ってもらうのよ」

 

天和「いいねそれ♪それに、天の御遣いは人を殺さないって聞いてるし、その人に頼み込めば何とかしてくれるんじゃないかな♪」

 

地和「それはどうかしら、私達は噂の上での天の御遣いの話しか知らないし・・・・・」

 

人和「・・・・・それじゃあ、こちらから使いを出しましょう、それでなんとか裏で交渉出来れば何とか解決の糸口が見つかるかも」

 

天和「それいいかも♪さっそく使いを送ろうよ♪」

 

地和「誰を送るの?」

 

人和「そうね・・・・・波才さんなんてどうかしら?」

 

天和「賛成♪あの子なら上手くやってくれると思うよ♪」

 

地和「でも、交渉する理由はどうするの?天の御遣いに匿って貰う為なんて言えないし・・・・・」

 

天和「そうだよね、皆を裏切る事になっちゃうよね・・・・・」

 

人和「大丈夫、彼女なら、影和さんなら何も言わないで協力してくれるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「・・・・・これで終わりか」

 

白蓮「ああ、なんとか黄巾党を埋め終わったぞ・・・・・」

 

綾香「流石に三万の死体を埋めるとなると、全軍でやっても手間が掛かりましたね・・・・・」

 

粋怜「でも、埋める為の穴は北郷君が氣で掘り返したから、運ぶだけで済んだわね」

 

黄巾党を埋める穴は一刀が氣弾をぶっ放し地面を掘り返したため対して時間はかからなかった

 

炎蓮「まぁ、このままここに放置していたんじゃ邪魔でしょうがないしな、疫病の原因にもなっちまうし」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

その通りなのだが、一刀の心境は複雑だった

 

その時

 

菖蒲「あ、白蓮様、一刀様、北から砂塵が上がっています!」

 

白蓮「なに!?黄巾党か!?」

 

星「あれは・・・・・どうやら違うようですな」

 

目に見えてきたのは黄巾党の旗印ではなく、劉と袁の旗だった

 

白蓮「桃香か♪・・・・・あと、麗羽か・・・・・」

 

凄く嫌そうな顔だった

 

梨晏「大殿!南から袁の旗が来ていますよ!」

 

炎蓮「おっせ〜〜な〜〜〜、うちの総大将のくせに愚図なこった」

 

冥琳「ん?他にも旗が混じっていますね・・・・・」

 

蓮華「蘆ですって?どうやら官軍みたいですけど、粋怜さんは知っていますか?」

 

粋怜「いいえ、漢にそのような旗は無かったはずです」

 

その他にも多くの旗印が集っていく

 

そして

 

桃香「あ〜〜〜、一刀さん♪久しぶり〜〜♪」

 

美花「お久しぶりです、一刀様♪」

 

一刀「よう、久しぶりだな、皆・・・・・」

 

鈴々「お兄ちゃんどうしたのだ?」

 

愛紗「ええ、御加減が優れないのですか?」

 

一刀「いや、なんでもない・・・・・」

 

猪々子「なんだなんだ、アニキ〜、やけに元気ないじゃんか〜」

 

斗詩「ええ、何かあったんですか?一刀様」

 

真直「北郷殿の活躍は聞いているのに、なぜそんなに暗いのですか?」

 

悠「ああ、なんだったらあたしが気合い入れてやろうか♪」

 

麗羽「お〜〜〜〜っほっほっほっほ♪お久しぶりですわね、華琳さん♪」

 

華琳「・・・・・ええ、久しぶりね、そのうるさいだけの高笑いは」

 

真直「こっちも久しぶりね、ドМ桂花」

 

桂花「ええ、無駄に苦労人」

 

真直「尻尾を巻いて逃げだした負け犬に言われたくないわ」

 

桂花「あんたこそ、真に仕えるべき主に仕えないなんて自己欺瞞もいいところね、せっかくの才能が泣いているわよ」

 

真直「一度仕えると決めた主にはどこまでも付いていく、ちょっと気に入らないくらいでいちいち鞍替えする付和雷同がこの先信用を得られるかどうか見てみたいものね」

 

桂花「近々滅びるのが目に見えている奴のいう事を聞いたところで、負け犬の遠吠えにしか聞こえないわね」

 

真直「・・・・・・・・・・」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

桂花「・・・・・・・・・・」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

元同僚だった二人は、お互いの不徳を指摘し合う

 

しかし、それと同時に両者はお互いの能力を認め合っていた、それ故にお互いの言動が気に入らないのだ

 

こういった観点の、価値観の違いというのは人が違えばどうしたって拭い切れないものである

 

麗羽「あ〜〜〜ら、どこかで見た顔だと思っていたら、馬休さんに馬鉄さんではありませんか」

 

鶸「え!?覚えていてくれたんですか!?袁紹さん!?」

 

蒼「絶対覚えていないと思っていたのに!」

 

麗羽「忘れたくても忘れられませんわ、あのような豪快な葵さんの娘さんですもの・・・・・」

 

鶸「それを言われたら、否定できません・・・・・」

 

蒼「あはは〜〜・・・・・」

 

麗羽「それで、葵さんは息災ですの?」

 

鶸「・・・・・最近は、体力が無くなってきて前より動けなくなっています」

 

蒼「はい・・・・・もう昔の様な活躍は出来ないと言っていました・・・・・」

 

麗羽「あ〜〜〜ら、それは残念ですわね、元気な時にもう一度お会いしたかったのですけど」

 

そうこう話しているうちに、南から袁の旗と蘆の旗が到着した

 

炎蓮「よう、随分と遅い到着だなおい」

 

美羽「ぴいっ!!?」

 

いきなりビビる美羽

 

麗羽「あ〜〜〜〜ら、今度は美羽さんではありませんか、相変わらず情けないこと、背も対して変わっていませんし」

 

美羽「なな、何を言うのじゃ麗羽!!妾はこれからなのじゃ!!」

 

一刀「(袁紹と似ている、それと孫堅の対応・・・・・ということは、あれが袁術か)」

 

はっきりいって子猫だ

 

今にも食い殺されそうで物凄く危なっかしい

 

一刀「(これは早い内に対処しとかないと、無駄な流血を見るな)」

 

近い内に美羽とコンタクトを取る事を念頭に置く

 

猪々子「よう、久しぶりだな、七乃、巴♪」

 

斗詩「お久しぶりです」

 

真直「七乃、巴、息災かしら?」

 

悠「元気にしてたか〜♪」

 

七乃「ええ、まぁ、なんとか・・・・・」

 

巴「大き過ぎる虎を抱え込んでしまいましたが、何とかやっています・・・・・」

 

真直「孫堅・・・・・確かに、あれはあなた達の手には余るわね・・・・・」

 

袁家に仕えている者同士幾らか交流があったので、両者はお互いに顔を知っていた

 

その時

 

???「あれ、桃香ちゃん?白蓮ちゃん?」

 

白蓮「え、風鈴先生!!?」

 

桃香「あ!!?本当だ、風鈴先生だ!!」

 

風鈴「あらまあ、桃香ちゃんと、白蓮ちゃんじゃな〜〜い♪」

 

愛紗「?・・・・・桃香様、お知り合いですか?」

 

鈴々「にゃにゃ〜〜〜、おっぱい大きいのだ〜〜〜///////」

 

目の前に現れたのは、銀色の長髪に豊満な胸を持った眼鏡をかけた女性だった

 

桃香「この人はね、私と白蓮ちゃんの私塾時代の恩師、盧植先生だよ♪」

 

愛紗「このお方が・・・・・」

 

桃香「にゃにゃ!?お姉ちゃんの先生なのか!?」

 

愛紗「お初にお目にかかります、盧植先生、私は関羽雲長、桃香様と義姉妹の契りを交わした者です」

 

鈴々「鈴々は、張飛翼徳なのだ♪」

 

桃香「でも、なんで風鈴先生がここにいるの!?」

 

白蓮「はい、幽州の私塾はどうしたんですか!?」

 

風鈴「それはね、話すと長〜〜〜くなっちゃうから簡潔に説明すると、かくかくしかじかというわけなの♪」

 

桃香「ええええ!!?風鈴先生が朝廷の将軍に!!?」

 

白蓮「それは、凄い大出世じゃないですか!!」

 

風鈴「私としては、静かにやっていきたかったんだけどね、お上のお達しじゃ断れないし」

 

桃香「おめでとうございます♪・・・・・あそうだ、風鈴先生♪先生に紹介したい人がいるんです♪」

 

白蓮「そうだな、風鈴先生には是非とも紹介しないとな♪・・・・・一刀、自己紹介を・・・・・って、どこにいったんだ、一刀の奴・・・・・」

 

さっきまでここにいた一刀が忽然と姿を消していた

 

一刀「そうか、黄巾党は東に撤退しているのか」

 

真直「はい、あの勢いでは青州にまで行ってしまいそうです」

 

一刀「このままじゃ、また近隣の村や町に被害が出てしまうな」

 

斗詩「はい、その前に何とかしないといけません」

 

暫く探していると袁紹陣営との情報交換をする一刀の姿があった

 

一刀「よし、後で会議をして作戦を練ろう」

 

真直「分かりました、北郷殿」

 

斗詩「また後で、一刀様」

 

そして、袁紹軍二人組は去っていく

 

一刀「・・・・・?」

 

二人を見送っている時、後ろから視線を感じ、一刀は振り返った

 

風鈴「・・・・・・・・・・」

 

そこには、桃香と白蓮の恩師、盧植子幹こと風鈴が自分を見つめていた

 

一刀「どうかしましたか?」

 

風鈴「・・・・・・・・・・」(じ〜〜〜〜)

 

一刀「あの・・・・・」

 

風鈴「・・・・・・・・・・」(じ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜)

 

一刀「え〜〜〜〜と・・・・・」

 

風鈴「・・・・・・・・・・」(じ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜)

 

一刀「(人に見られるのは慣れているけど、ここまで見つめられると流石に恥ずかしいぞ)」

 

そして、一刀を上から下まで徹底的に観察した風鈴は深い息を吐いた

 

風鈴「・・・・・底が知れないわねぇ〜〜〜」

 

一刀「あの、何の話でしょうか?」

 

風鈴「ん〜〜?気付いてないのかな〜〜?」

 

桃香「そうそう、そうなんだよ風鈴先生♪なにせ一刀さんは、私達のご主人「違います!」私達を導いてくれる天の御遣「勝手に言ってるだけです!」私達の恋人「ただの妄想です!」・・・・・しょぼ〜〜〜ん・・・・・」

 

ここまで拒絶されると清々しいものである

 

風鈴「う〜〜〜〜ん、桃香ちゃんのどこが気に入らないの?」

 

一刀「気に入る気に入らないの問題じゃないんですよ、俺はすでに白蓮に仕えている身です・・・・・盧植さんこそ自分の教え子に礼儀作法をしっかり教えたんですか?」

 

風鈴「・・・・・それを言われると頭が痛いところね、風鈴は教え子達には人に交渉する時には強気で行けと教えているから」

 

一刀「なら、その気が無いと分かっている人間にいくら交渉しても無駄だという事を教えてあげてください」

 

風鈴「そうね・・・・・桃香ちゃん、強気で行くようにと教えた私が言うのもなんだけど、人と交渉する時は、その人の立場も考えてあげないといけないのよ」

 

白蓮「うん、私も桃香を見てきたけど、桃香は一方的に自分の気持ちを押し付け過ぎているぞ、相手の立場や状況も考慮に入れないといけないぞ」

 

桃香「あうう〜〜〜、そうだよね〜〜〜・・・・・」

 

風鈴「でも、二人とも成長したわね♪桃香ちゃんは義勇軍を組織出来るくらいの信用を集めているみたいだし、白蓮ちゃんは幽州の太守様になっているし、私も鼻が高いわ♪」

 

桃香「えへへ〜〜♪褒められちゃった〜〜♪」

 

風鈴「でも調子に乗っちゃいけないわよ、私から見たらまだまだね♪」

 

桃香「うう〜〜、やっぱりそうですよね〜〜・・・・・」

 

白蓮「そう簡単に認めてもらえるとは思っていませんよ・・・・・」

 

風鈴「うふふ♪でも、二人とも私が教えた事を忘れちゃ駄目よ・・・・・理想を語るなかれ、己が身を持って理想となれ・・・・・よ♪」

 

桃香「はい!より一層努力します!」

 

白蓮「・・・・・・・・・・」

 

風鈴「あら〜?どうしたの?白蓮ちゃん」

 

白蓮「・・・・・先生、私は先生の教え子である事を誇りに思っています、先生の教えがあったからこそ、幽州の太守にまで成り上がる事が出来たんですし・・・・・しかし、情けない話ですが、私にはその言葉は重過ぎました、私は桃香や一刀のようにはなれそうにありません」

 

桃香「そんな、白蓮ちゃん・・・・・一刀さんはともかく、私なんて・・・・・」

 

風鈴「・・・・・そんなに重く受け止めなくてもいいのよ、白蓮ちゃん」

 

白蓮「先生・・・・・」

 

風鈴「私は、私の教え子全てが大空へ羽ばたく事が出来るだなんて思ってないから、人には向き不向き、適材適所というものがあるんだし・・・・・だから白蓮ちゃん、無理して私の顔を立てようだなんて思わなくていいのよ」

 

白蓮「・・・・・すみません、先生・・・・・私は私の出来る事を全力で成していこうと思います」

 

風鈴「うんうん・・・・・それに、私には最初から分かっていたわ、白蓮ちゃんは普通だものね、それほど大きいことが出来る子だなんて思ってなかったよ、太守になれたのだって奇跡みたいなものなんだし♪」

 

桃香「うんうん♪白蓮ちゃん普通だもんね〜♪」

 

白蓮「うううう〜〜〜〜、自分の器が普通なのは知っていますけど、人から言われると凹むんですよ〜〜〜〜・・・・・」

 

風鈴「別に目立たなくてもいいのよ、白蓮ちゃんの持っている器は普通だもの♪」

 

星「そうであるな、普通に見合ったことをすればいいだけですぞ、白蓮殿♪」

 

風鈴「君もどうして普通の白蓮ちゃんに仕えているの?白蓮ちゃんにそこまでの器があるとは思えないんだけど」

 

一刀「普通だからこそですね、白蓮だったら極力戦争なんて野蛮な行いはしないでしょうし、その間に俺は王朝を変える事に専念出来ますから」

 

白蓮「うぐううううっ!!・・・・・皆よってたかって、いくら私でも怒るぞ〜〜〜〜!!」

 

風鈴「ふ〜〜〜ん、君って面白いわね・・・・・私は盧植子幹、真名は風鈴よ♪桃香ちゃんと白蓮ちゃんがこんなに慕っているなら、私が預けないわけにはいかないわね♪」

 

一刀「っ!!?・・・・・俺は、北郷一刀です、周りからは天の御遣いなんて呼ばれています、真名が無いので北郷か一刀と呼んで下さい、風鈴さん」

 

風鈴「分かったわ、一刀君・・・・・そろそろ私も行かなくちゃ、他の将軍の人達に報告しないといけない事もあるもの」

 

桃香「うん、また後でね、先生♪」

 

白蓮「一緒に黄巾党を成敗しましょうね♪」

 

そして、風鈴は洛陽の都に入って行った

 

一刀「(彼女が、盧植子幹か・・・・・)」

 

桃香と白蓮が先生と呼んでいたので、もしやと思っていたが当たり的中だったようだ

 

その後ろ姿を見送りながら、一刀は物思いに耽っていた

 

一刀「(理想を語るなかれ、己が身を持って理想となれ・・・・・か)」

 

どこかで聞いた事のあるような台詞だが、一刀からすれば、あまりに滑稽な言葉である

 

行き過ぎた理想が、この世に地獄しか齎してこなかった事を知っている一刀からすれば

 

しかし、それでもあえて自分を見つめ直してみる

 

今までの自分は、立場の弱い人達の事を第一に考え、なるべく多くの人が幸せになるように、人を生かす為に、平和な世の中を構築する為に、全力を尽くしてきたつもりだ

 

賊を叩きのめした後、彼らに説教してきたのも、ただ単に彼らに対して怒りをぶつけていたのではなく、その後しっかりと社会復帰させる為だ

 

ただ怒鳴っただけで終わってしまっていては、何の意味もないのだから

 

もちろん取りこぼしはあった、全てを救えて来たわけではない

 

これまで説教をしてきた賊達が全て己のしてきたことを省みて更生したのかと言われれば、決してそうではない、未だに悪事に手を染めている者も必ずいるはずである、実際あの三連星がそうであったのだから

 

己が身を持って理想となる、客観的に見れば自分もこれを実行して来た者の一人である事は確かだ

 

それを考えれば、自分も結局はただの夢想家でしかないのかもしれない

 

そうだとしたら、これまで自分が賊達にしてきた説教も自分の意見を相手に一方的に押し付けるだけの手前勝手な理屈でしかないという事になる

 

ならば、今まで自分がしてきた事は、何の意味もない事だったのか?

 

だったらどうして自分はここにいる?どうして自分はこの世界に来たのだ?

 

かつて華佗に言った言葉、自分はこの先に来る乱世を止める為にこの世界に来た

 

本当にそうなのか?と言われれば疑わしいものだが、これは自分自身の正直な気持ちだ

 

なにせ戦争ほど無益で国を疲弊、衰退させるだけの経済活動なんてないからだ

 

仮に自分が何もせず、このまま歴史が進めば、三つ巴の泥沼三国志の構図が確実に出来上がってしまうのだ

 

勝っても負けても良い事なんてない、何せお互いが損耗しているのだ、仮に勝ったとしても得られるものは何一つ無い

 

それが戦争というものの絶対的な本質である、それだけは何としてでも防ぎたい

 

その為にもこの国に元々ある行政の土台、漢王朝を復興させる事は最低限しなければならない事だ

 

一刀「(何を迷っているんだ、悩んでいる暇があったら行動しろ!)」

 

一瞬道に迷いそうになった自分を奮い立たせ、目標に向けて突き進むように言い聞かせる

 

その時

 

一刀「(?・・・・・なんだ?)」

 

妙な視線を感じ、振り向いてみると、自分の軍の天幕の陰から覗き込んでいる外套をかぶった人物を見つけた

 

???「っ!」

 

その人物は、一刀がこちらに視線を向けた途端に天幕の陰に身を潜めた

 

???「(大丈夫かな、気付かれなかったかな?・・・・・でも、なんとか接触しないと、このままじゃ天和ちゃん達が)」

 

一刀「君は誰だ?」

 

???「うわわ!!?」

 

天幕の反対側からいきなり一刀が現れ、驚く謎の人物

 

外套をかぶっているため顔は見えないが、声で女性だと丸分かりだった

 

一刀「どう考えても公孫軍の人間じゃないな・・・・・それで、こそこそと何をしているんだ?」

 

???「・・・・・貴方様が天の御遣い、北郷一刀様ですよね」

 

一刀「周りがそう呼んでいるだけだけど、一応そうだ」

 

???「・・・・・私は、黄巾党の使いの者です、我が黄巾党頭領のお言葉を伝えに参りました」

 

一刀「・・・・・詳しい話を聞く必要がありそうだな・・・・・ここじゃ拙いから俺の天幕に来てくれ」

 

そして、一刀は外套をかぶった人物を天幕に連れ込んだ

 

一刀「さて、こっちも手荒な事はしたくないから、まずは顔を見せてくれないか?」

 

???「・・・・・分かりました」

 

そして、外套が下され素顔が露になる

 

一刀「(こりゃまた、一段とレベルの高い美少女が出て来たもんだ)」

 

そこには、ゆで卵のような染み一つない白い肌に綺麗な長髪を後ろに三つ編みで止めた少女がいた

 

???「私は波才、黄巾党幹部の一人です」

 

一刀「君が波才・・・・・という事は、張角、張宝、張梁は女性なのか?」

 

???「はい、その通りです」

 

一刀「(マジかよ、覚悟はしていたけど、どうしてこうも立て続けに・・・・・)」

 

どうにもバランスが崩壊しまくっているこの世界の理が理解できない一刀であった

 

一刀「という事は、君も王朝の重税に耐え切れずに決起した者の一人という事なんだな」

 

???「はい、そうです」

 

一刀「漢王朝を打倒して、その後一体どうするつもりなんだ?」

 

???「いいえ、私達は王朝を打倒する気はありません」

 

一刀「は?君は度重なる重税に嫌気がさして黄巾党に協力しているんだろ?」

 

???「確かに、決起した理由はそれなんですが、経緯やきっかけは実のところ違うんです」

 

一刀「と言うと?」

 

???「私は、彼女達の歌に希望を見出したんです」

 

一刀「は?歌だって?」

 

???「はい、彼女達の歌に励まされて私は立ち上がる事が「ちょ、ちょっと待ってくれ!」・・・・・どうしたんですか?」

 

一刀「君達の頭領である張三姉妹は、武力を持って王朝を打倒する為に黄巾党を旗揚げしたんだよな?」

 

???「いいえ、違います、あの人達は元々ただの旅芸人なんです」

 

一刀「は?旅芸人?」

 

???「誤解があるようですから説明します、つまり・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「・・・・・というわけなんです」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

呆れてものも言えないとはこの事である

 

要約すると、張三姉妹はごくごく平凡な旅の芸人で歌を歌っているうちに人気が急上昇し、人数が多くなり過ぎて、知らぬうちに暴徒になってしまっていた

 

黄巾党の殆どは、ただのおっかけの集団で漢王朝を本気で打倒したいと思っているのは僅かだという

 

こんな超絶下らない理由で何万もの死人が出たというのか

 

一刀「すぅ〜〜〜〜〜、はぁ〜〜〜〜〜」

 

しかし、それでも深呼吸をし、溢れくる怒りを押さえ込む

 

一刀「・・・・・話は分かった、それで張角達は俺にどうして欲しいと言っているんだ?」

 

???「はい、無茶な願いだと分かってはいますが、天の御遣い様に匿っていただきたいのです」

 

一刀「分かった」

 

???「えっ!!?」

 

いきなりOKを貰い波才は混乱してしまう

 

一刀「なんだ?匿ってほしいんじゃないのか?」

 

???「いえ、そうなんですが・・・・・こんな即断されるとは思ってもみなかったので」

 

一刀「このまま両軍が正面から戦い続ければ双方共に無駄な犠牲者が出る一方だ、ならば裏から事態を収束させる方が最も確実で素早く混乱を納められる方法だと判断したからだ」

 

???「・・・・・あ、ありがとうございます、お早いご決断痛み入ります」

 

一刀「ところで、君は張曼成を知っているか?」

 

???「はい、彼も幹部の一人ですし、しかし・・・・・」

 

一刀「ああ、俺があいつを郷里に帰るように説得した」

 

???「彼から話は聞きました、張梁様も快く許可しました」

 

一刀「(確かに、俺の知っている張三兄弟とは違っているみたいだな)」

 

自身の知っている三国志の歴史と照らし合わせるも、やはり違っている部分が目立つ

 

一刀「それじゃあ、君達を匿う為にも君に案内してもらわないといけない、俺はこれから軍の会議に出ないといけないから、君はここで隠れていてくれ」

 

???「分かりました」

 

一刀「時間は掛からないと思うけど、食糧と飲料水は置いてあるから、自由に飲み食いしていいぞ」

 

事前に自身で用意していた保存用の食糧を波才に渡した

 

???「何から何までありがとうございます、私の真名は影和と申します」

 

一刀「俺は、真名が無いから北郷か一刀って呼んでくれ」

 

影和「分かりました、一刀さん」

 

そして、一刀は天幕を出ていく

 

菖蒲「あ、ここにいたんですか一刀様」

 

一刀「菖蒲、どうしたんだ?」

 

菖蒲「ただいま朝廷の将軍の方々がお見えになりました」

 

一刀「っ!・・・・・分かった、直ぐに行く」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうも、Seigouです

 

何というか、恋姫化し過ぎですね

 

本当に今後の展開を考えると不安でしょうがありません

 

しかし、物語を進めていくうえでは必要な事なので仕方ないと言えばそれまでなんですがね

 

ちなみにこの影和さんはリンホウと読みます

 

なんとか鎮魂の修羅を仕上げていきたいと思います・・・・・待て!!次回!!

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迷走の修羅
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コメント
白蓮が普通連呼されててちょっとかわいそう…w 官の方が来たということは総攻撃かなぁ…止められるの北郷?(はこざき(仮))
一刀の説教が鞭なら三姉妹の歌は飴になりそうですね、バランスが取れて良いと思いますよ(本郷 刃)
白蓮!?wwww頑張れwww あ〜何か・・・あの三人に出会ったら、怒り爆発させそうで一刀怖いな〜今回の一刀は女だからってそうそう許すような玉じゃ無いからな;(スターダスト)
う〜ん。かくまった後の一刀君の対応が気になりますネエ〜・・・ではでは、続き楽しみに待ってます。(一丸)
桃香はっきり拒絶されてもう諦めるかな?いや、諦めないなw(nao)
まだそんなこと言ってるんですか桃香は……いつになったら痛々しい白昼夢から醒めるのやら。しかしこれは張三姉妹がお説教される展開か?楽しみでしょうがない。(Jack Tlam)
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