超次元ゲイムネプテューヌmk2 希望と絶望のウロボロス
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ラステイション教会に赴いたネプギア達は教祖、神宮寺ケイとの((平等|・・))な取引を飲み、五人は教会を後にしていた。未だに時刻は昼ごろであり多くの人が川を造るように流れている。アイエフ達は邪魔にならないように近くの公園に移動して情報整理を行っていた。

 

「あいつ、情報通り評判が良くないのは納得だわ。結局、血晶と宝玉を取ってこないとゲイムキャラの情報を教えてくれそうにないわね」

「あいちゃん、その血晶と宝玉がどこにあるか分かりますか?」

「この二つは市場でも滅多に出回らない超レアアイテムよ。どこで取れるか、なんて分かった物じゃないわよ」

「私も聞いた事があるけれど見た事はないわ」

 

 プラネテューヌの諜報部としての情報網路を使い忙しく携帯電話を操作しているが表情から察するにあまりいい情報がない事に舌打ちをしながら空を見た。なにせ目の前の人物は、ゲイムギョウ界にモンスターという概念を作り出した張本人なのだから。視線の先には木の陰で呆然と青い空を見つめて佇んでいる浮世離れした姿に開いた口から声は出なかった。

 

「それじゃ、まずそこから調べないとダメなんですね。……空さん?」

「……ん…何?」

「宝玉と血晶の事、知りませんか?空さんなら知っていると思うんですけど」

「…知らない」

 

 嘘だなとアイエフは思い、同時に隠す必要がある事かと推測する。

 恐らく見てきた未来の中では”ネプギア達を成長させる”イベントか、それとも”新しい仲間の加入”イベントかそれとも予期せぬイベントがあるのか予測はいくらでも思いつくが、少なくても空自身の性格を考えた時に突然死地に送るほど冷徹でもあっても、残酷ではない。

 出来ると出来ないの境界線の上でギリギリ出来ない事を言って成長させるのが彼のやり方だ。

 

「……なんだか、会社をクビにされた怒りより無気力感が勝って黄昏ているサラリーマンの様よ」

「……ははは、そっちの方がまだ救いがあるかもね」

「そ、相談くらい聞くですよ?」

 

 空は何も言わなかった。

 この問題がもし正解だと仮定すれば、ただ謝ればいい簡単な話だ。

 どんな罵倒が飛んできてもそれは仕方がない。

 剣を振り下ろされるなら両手を広げて受け入れよう。

 殺されても仕方がない受け入れるしかない。

 それだけの事をしたのだから。

 

「……罪を犯し、罰が下される。当たり前の事だよね?」

 

 その金色の瞳に宿る闇は深かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きひひひひひ−−−見つけましたわぁ…破壊神」

 

 そして審判者は罪人を裁く為に来訪してくる。

 

「−−−なに、あれ…」

 

 耳に残る甘ったるい声に全員が振り向いた。闇を体現したような女性が薔薇が咲く様に笑っていた。

 その手には大きく湾曲された死神が持つ様な巨大な鎌を持って。

 

 空を除いてネプギア達は第一に抱いたのは恐怖だった。

 蛇に睨まれた蛙どころのレベルではなく、邪神が死地を彷徨う人間を玩具として見つけた様に体中を駆け巡る悪寒。決して逃げられない絶対的な死が微笑む。生まれたばかりの小鹿のように震える体は一切の行動を不可能にする。幾らシェア落ち、弱体化している女神候補生でも例外では無く、一目だけでその存在との差は次元が違うレベルだと本能が訴える。

 

「あら?あらあらあら、私を視て正気を保てていられるとは全く破壊神も腰が軽い事ですわね」

「……どうして、ここに…?」

「それは貴方が仰いますか?ご主人様を壊して逃げた貴方が」

 

 刃の様に尖った瞳が突き刺すように睨んだ。常人であるのならば発狂するほどの濃密な殺気。あまりの感情の放出に周囲の空気は一気に下がり周囲の生き物は一切に逃げ出し、公園に観賞用の植物などはその殺気に命がまるで吸い取られるように急激な速さで枯れ始めた。その場だけはまるでゴーストタウンのような過疎化して、残ったのは殺伐とした空間だけ。

 

「……僕を裁きに来たのか?」

「えぇ、その通りですわ」

 

 遂に来たんだと空は微かに微笑みネプギア達の前に出た。

 彼女が誰なのか、空とどういう関係なのか、理解できない。

 ただこれだけは誰もが分かった。彼女は空に明確な殺意を抱き、空はそれを受け入れる気であると。

 

「……ここじゃ要らぬ被害が出る。この娘達は関係ないから別の場所に移動しよう」

「何か勘違いをしているようですね」

「………?」

「”貴方を幾ら傷つけても意味はない”壊れた者をまた壊しても意味はないのですわ。だから……」

 

 その瞳に宿る光が自分に向けられた物でないと気づいたその時、咄嗟に空はネプギア達を庇うように手を広げた瞬間、鮮血の花が咲いた。

 金縛り状態の四人はそれを見てしまった。弾けた肉片と砕けた白骨、驟雨のように降り注いだ鮮血は服を汚し、宙に舞うように踊る長い金髪は噴水の如く噴き上がった生々しい温血と混じり倒れた”首から上がない”空を中心に広がり血池を作り出した。

 

 そしてニッコリと鮮血と狂気に彩られた蠱惑的な美貌が微笑んだ。

 体を停止と命令させていた金縛りが解かれネプギア達の体は漸く自分の意志で動かせる様になるが、全身が恐怖のあまり膝が地面に付く。ぴちゃと背筋が凍る感触が膝から感じる。広がっている血池。ゴミの様に転がっているのは首から上がなくビクビクと痙攣している物。

激流のように押し寄せてきた嘔吐感を抑えられたのか微かに残っていたプライドのお蔭か、どちらにしてもそれは彼女のように塵に等しく、反応を楽しむように足元にあった肉片を踏む潰した。

 

「一人一人丁寧に慎重に血肉へと削る絶叫が破壊神を苦しめる甘味となりますわ。さぁ、立ちなさい作り物の小雌共。−−−清く正しく殺して差し上げますわぁ」

 

 頬を紅潮させた恍惚とした表情、発情した女の貌だった。

 闇夜を思わせる大鎌が持ち上げられる。雲一つない青空の中心で輝く太陽が彼女の笑みをより深くした。

 純粋な恐怖が体を支配する。原初に刻まれた生存本能も彼女前では意味をなさない。

 逃がさないと彼女は言った。苦しめて殺して、そうして空を苦しめる材料にすると言ったのだ。ネプギア達という材料をどう調理しようと四人の素材の前に想像を胸膨らませ、最も近くにいた手と膝を地面についているネプギアの顔を持ち上げる。誰もその動きに気づかない最初から影と影が重なっている程の距離だったように。

 

「−−−ひっ、い、いやぁ…」

 

 脆くて可愛げのある涙で濡れた少女の貌。

これはいい、最も都合のいいのは活発な幼女なのだが、この純粋な顔を穢せば同じようなことが出来る−−−、そう考えてその瞳を覗き込み闇の彼女は女神という存在を理解して認識した瞬間、熱した熱が唐突に冷められた気分になった。怒りを超えて呆れたと言った方がいい。

 

「…なんて酷い|祈り《呪い》、生きている価値もない。解放させてあげますわ」

 

 首を掴み苦しみながら持ち上げられる脆い体。

 次の瞬間、ネプギアぁ!と誰かが叫んだと同時に大鎌の刃がネプギアの胸を貫通した。

 

「−−…………」

 

 口に出そうとしたしたのは果たして誰なのか、それとも命乞いの言葉だったのか、ただ彼女にとってはどんな言葉だろうと目の前のネプギアという存在は材料でしかないと決定した故に最後の言葉は、心の中から出ることは無かった。

 

「さて−−−ああ二人もいるのですか。安心しなさい−−−価値のない物は慈悲深く刹那に殺してさしあげますわ」

「ネプギアァァアアァァァァ!!!!」

 

 ゴミの様に彼女の手から捨てられるネプギア。

虚ろな目で胸に空いた斬痕から溢れる鮮血。

 その横には頭がない空が血の水溜りの中で大の字で沈黙している

 それらを全て余すことなく見る事しか出来なかったユニの中にある物がぷっつりとキレた。

 その怒りを目の前の恐怖と死すら凌駕した。瞬間的に女神化され、その手には戦車の主砲にも似た身の丈を超える黒銀の巨大な銃が形成され迷いなく引き金が引かれた。元々集まって話し合いをしていた故に距離は近く狙い定める必要はない。感情のままに込められたシェアエネジーの弾丸に彼女は何もしなかった。否、する必要は無かった。

 

「なんで、…なんでぇ!!」

 

 渾身の力を込めて放った魔弾は彼女に触れた瞬間、まるでガラスのように砕け散った。

 吠えるユニを道端に転がる小石を見下ろすような視線の彼女は血塗れた鎌を持ち上げて無造作に振るった。

不可視の斬撃、今のレベルでは到底見切る事も出来ないユニは己の無力と悔しさに頬に一滴の涙が流す時間の猶予だけはあった。また一輪、鮮血の華が咲いた。

 

「−−−え…」

 

 だが、それはユニではなく首から上を無くした空の手が斬撃を庇っていた。大きく裂傷が走った腕は今にでも千切れておいてしまいそうなまでに皮一つで繋がっている。

 

「あら、数億人は発狂して殺し合うほどの呪言を込めましたがこんなに早く解除−−−」

 

 次の瞬間には彼女の顔に拳が捩じり込まれた。

 黒い和服を着こなした強く力を込めてしまえば折れてしまいそうな体が高速で走る車に轢かれたように吹き飛び、木々と薙ぎ倒しコンクリートの壁に遠雷のような音が響き、沈黙する。

 地面を染めていた鮮血はまるでスライムのように跳ね、空の亡くなった部分に集まり何事も無かったように顔と頭が形成され、穢れない黄金色の髪が伸びる。

 

「逃げるよ!」

 

 髪がまるで触手のように動き、アイエフとコンパの腹部に巻き付き、両手でユニとネプギアを抱え込んでその場から跳躍する。同時に地面が陥没した。

 近くに建っていた八階建てのビルを足場にして更に別の建物へ跳ぶ。正に電光石火の速さでラステイションの街を駆け巡る。それは、風を切り裂くような白い閃光。しかし抱えた四人はまるで膜を纏っているように高速で変わる景色の中で叩きつける風は感じない真空状態に近い状態で安定されていた。

 

「っ、なんなのよあれ!!いつの間に昼ドラマの時間に突入したのよ!!」

「詳しい事情は後で話す!!アイエフ、僕の右ポケットに手を突っ込め!!」

 

 先ほどの一戦に対してアイエフは吠えるが、空の叫びにまるで頭を殴られたような衝撃と共に背後を視界を送る空にあの闇の様な女性が追ってきているのだろうかと恐怖に心と体を震わせ正気を取り戻し、空の髪で巻かれたアイエフは指示通りにポケットに手を突っ込んだ。掌で握るには少々大きめの物質を握りしめ取り出してみると、そこには嘗て自分たちがギョウカイ墓場で女神達を復活させるために用意した一回り大きいシェアクリスタルだった。

 

「!?これ……」

「ネプギアの蘇生に使え!まだ間に合う!!」

「生き返すことが出来るんですか…!?ギアちゃんを!!」

「女神としての義務や責任で死ぬのはいいさ。けど、これは……!」

 

 あまりに酷すぎる。

 自分の手で終わらせようとしたときに、あいつは他人を傷つけることで完結しようとした。

 

「僕の所為だ……!畜生ッ!」

 

−−−関わるべきではなかった。そう後悔するにはあまりに遅すぎた。

 なら出来ることは精一杯の被害を軽度にすること、彼女が力を使えばこんな世界あっという間に滅びるなんて赤子の手を捻る程度しかないかだ。ここは街中、大勢の人が生きている場所。ここで争えば間違いなく幾つもの屍が山になるのは”絶対”だ。ならば戦い場所は、ある程度目途が立つ。目的地のビルの屋上にふわりと降りて、四人を下ろした。ネプギア以外に怪我がないことを確認して覚悟を決めた空は、ゆっくりと立ち上がり彼女たち背中を向ける。

 

「う、うああ、あああぁぁ……」

「ユニちゃん……」

「泣いている暇なんてないわよ!早くネプギアを蘇生させないと−−−空!」

 

 その場で蹲り友を何も出来ず見殺しにするしか出来なかった己に泣き叫びユニに聖母の様に背中を摩るコンパであったが、アイエフは直ぐにネプギアを抱えた。

 

「私はあんたの事、何も知らないわ」

「……そうだね。話す気もないし、意味なんてない僕と君達は元々別世界で生きているから」

「仲良くは出来ないのですか……」

「出来るかもしれない……けど、お互いに肩を並べることは絶対に無理だよ」

 

 無造作に手を振るった。その後を追うように炎の軌跡が空間を切り裂き白銀の鱗を鞘にした長太刀が姿を現す。煉獄から生まれ、煉獄を造りだし、煉獄を裁くその名は『煉獄ヲ裁断スル切ッ先』。

生命の始まりと言われた業火が封じられた鞘から溢れ出し、周囲の空間温度が上がり始める。まるで活動を開始した火山のように。

 

「鬼が来ましたわぁ」

「こいつ等は殺させない」

 

 アイエフ達が認知出来ないほどの速さで既に傷一つない彼女が上空に見下ろしている。

 砂埃などで汚れているが、彼女の美しさは一片の変わっていない。ただその瞳に烈火のごとく燃える執念に体が震える。明日朝日が見えるのか、それとも夜が来るまで生きているのか。

 

「ティシフォネ。そんなに僕が憎いか、そんなに僕が苦しむ顔が見たいか、そんなに…そんなに−−−僕が許せないか?」

「私のしたいことはただ一つ、貴方にもう一度あの時を味わってほしいだけですわ」

 

 じりっと空が大きく足を広げ水平に構えた長太刀の柄を握りしめた。

 空気が更に熱く重くなる。空から溢れ出す威圧に耐え切れず足元の床に罅が入り始める。

 それを見て彼女の笑みは深くなる。全身に叩きつける殺意と闘気は、彼女自身の闘争心と復讐をさらに加速させる。

 よくもよくも、マスターを壊してくれたな。

 よくもよくも、あの日常を壊してくれたな。

 よくもよくも−−−変わらぬ顔でここにいるな。

 許せない。失ってしまった事を取り戻そうともせずに別の所で新たな絆を紡ぐなど許さない。裏切り者、逃亡者等を憎悪を膨らませて大鎌に込められる殺意がより鋭さを増す。

 

「そうあの時のように”血の繋がった娘を強姦した貴方の絶望をもう一度”味あわせるために」

 

 だからこそ、全力で全壊する為に彼女−−−ティシフォネは空の最大の地雷を踏んだ。アイエフ達が思わず声を零した。

 あれほど熱い空間が突然反転。まるで絶対零度の大地に迷い込んでしまった様に周囲が冷たくなる。

 鞘の落ちる音が妙に響いた。あれほど荒れて燃えだしていた炎の刃が消え冷たい白銀の刃が姿を見せる。

 

「…………」

 

決して触れていけない封じ込めた記憶が鮮明に浮かぶ。

−−−ママ!まるで太陽の様に元気な愛していた娘の声がまるで呪いの様に頭に響く。

そして白と黒が激しく点滅するノイズが走り、最後に垣間見たのは暗い部屋の中で汚れた娘に圧し掛かりこちらの存在に気づいたのか振り返り、道化の様な笑みをするのは間違いなく『((夜天 空|自分))』の姿。

 

 

 

−−−−ブチッ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーティフォネェェェェェェェェ!!!!」

「夜天、空ァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

憎しみを抱いた同士、誰が止められようか。

説明
言葉遊びについて勉強しようとおもった
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