英雄伝説〜運命が改変された少年の行く道〜
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〜ケルディック・領主の館〜

 

「お、お兄様。」

「ったく、心配なのはわかるけど、熱くなりすぎよ。」

「あ…………すまない、ツーヤさん。」

セレーネとセリーヌにたしなめられたリィンは我に返った後ソファーに座り直してツーヤに頭を下げた。

「フフ、気にしないで下さい。マキアス達の居場所についてですが………これが”手がかり”です。」

ツーヤは苦笑した後リィンに紙切れを渡した。

 

「何これ?」

「紙切れ、ですか?」

「こいつは……地図か?」

「……どうやら東ケルディック街道の地図みたいですね。いくつかの数字や記号が描かれていますが……」

「待った、裏面にも何か書いてるみたいだぞ。」

紙切れの裏面に書かれてある何かに気付いたトヴァルの指摘を聞いたリィン達は暗号らしき文字や図を確認した。

 

「なにかの暗号……みたいね?何なの、これ?」

確認し終えたセリーヌは不思議そうな表情でツーヤを見つめて尋ねた。

「―――マキアスさんがあたし達に渡したマキアスさん達の居場所を示す暗号だそうです。もしリィンさん達が自分達を探してあたし達を尋ねた時に渡してくれとマキアスさんに頼まれました。」

「え?マ、マキアスさんがですか?」

「しかし何でまたわざわざこんな回りくどい真似を……」

ツーヤの説明を聞いたセレーネは戸惑い、トヴァルは目を丸くした。

 

「幾らメンフィル帝国領とはいえ、貴族連合の手の者が入り込んでいないとは限りませんからね。例えば”怪盗紳士”が誰かに変装して、このケルディックや館内に潜入していた場合、ケルディック地方に潜伏しているマキアスさん達が見つかる危険性も考えられます。それに対する対策との事です。」

「なるほど…………」

「―――”怪盗紳士”か。確かにヤツがこの内戦に関わっているという情報もあったな。」

「あの人の変装術は信じれない程、凄いですものね……」

ツーヤの説明を聞いて納得したリィンは真剣な表情で暗号を見つめ、トヴァルは静かな表情で頷き、セレーネは不安そうな表情をした。

 

「それとマキアスさんが関係する件でもう一つ。―――先日、レーグニッツ知事が貴族連合の手配によって逮捕されました。」

「ええっ!?マ、マキアスさんのお父様が!?」

「何だって!?」

「まあ、貴族連合が帝都を占領した時点でそうなる事もある程度は予想していたが……一体どういう経緯があったんだ?」

「―――詳細な内容についてはこの新聞を読んでください。」

そしてリィン達はツーヤに手渡された新聞―――エレボニア帝国の通信会社が発行している”帝国時報”の内容――――レーグニッツ知事が逮捕され、更に正規軍と共に”逆賊”扱いされている内容を読んだ。

 

「レーグニッツ知事まで逮捕されるなんて…………」

「マキアスさんのお父様、大丈夫でしょうか……?」

「革新派の重要人物の逮捕に正規軍の”反逆”ときたか……やれやれ、大した偏向ぶりだねぇ。どうやら”帝国時報”も貴族連合の手に落ちているようだな。」

「ええ……そうみたいですね。すでに貴族連合は内戦の終結後まで視野に入れて動き出しているのかもしれません。」

「フン、抜け目ない連中ね。それならユミル襲撃の件をどう収めるつもりなのかしら?」

リィンの推測を聞いたセリーヌは鼻を鳴らした後厳しい表情をした。

 

「昨夜の通信でユミルの件を報告した際、リウイ陛下からはリベールにあるエレボニア帝国の大使館を通じて厳重に抗議して、貴族連合が誘拐したエリスの返還を要求する話は聞いているけど……」

「エリスさんが誘拐された際の経緯を聞く限り、難しいでしょうね。ですが安心してください、リィンさん。既にメンフィル帝国はエリスさんの救出の為に本格的に動きだしていますよ。」

「へっ!?」

「ど、どういうことですか、お姉様?」

自分達を安心させるかのように口元に笑みを浮かべるツーヤの話を聞いたリィンは驚き、セレーネは戸惑いの表情で尋ねた。

 

「リウイ陛下達は貴族連合はエリスさんの返還の要求を応じない可能性が非常に高い事を予測していまして……―――既にメンフィル帝国軍のすぐに動ける諜報部隊がエレボニア帝国領に隣接しているメンフィル帝国領に到着し、そこを拠点にエレボニア帝国全土に散って、エリスさんが監禁されている居場所を探っている最中なんです。ちなみにエリスさんの居場所を探る件で動員されている人数は現時点でおよそ2000人で、今後も動員する人数を増やす方針だとの事です。更に遊撃士協会にもエリスさんが監禁されている居場所の情報提供の”依頼”をする事も考えているそうですよ?」

「まあ………!よかったですね、お兄様……!大勢の方達がエリスさんを探しているのですから、案外早くわかるのではないでしょうか……!?」

「あ、ああ……夏至祭でエリスの救出の為に動いてくれた件といい……メンフィル帝国の皇族の方達には感謝してもしきれないよ………」

ツーヤの説明を聞いたセレーネは明るい表情で安堵の表情をしているリィンに視線を向け

「そいつは朗報だが……そういう事をしているって事はメンフィル帝国は貴族連合―――エレボニア帝国がエリスお嬢さんの返還をしないと最初から確信して動いている証拠だよな……」

「あの娘の居場所がわかり次第、そこに奇襲してあの娘を貴族連合から奪い取――いえ、”救出”するんじゃないかしら。で、肝心のエリスを取り返した後は心置きなく開戦に踏み切るって寸法じゃないかしら?まあその判断は間違っていないわよ。あのヴィータが自分にとっては関係のない出来事―――国同士の争いを止める為に素直にあの娘を返すとはとても思えないし。」

トヴァルは真剣な表情で考え込み、セリーヌは目を細めて推測した。

 

「あ………」

「それは…………―――ツーヤさん、トヴァルさん達の推測は本当なのか?」

二人の推測を聞いたセレーネは不安そうな表情をし、リィンは複雑そうな表情をした後ツーヤに尋ねた。

 

「……まだ、そういう話は出ていませんが、夏至祭の件を考えると可能性は十分に考えられるかと。しかも話によるとリフィア殿下は貴族連合―――いえ、エレボニア帝国に対して、相当な怒りを抱いているとの事ですし。」

目を伏せて考え込んでいたツーヤは真剣な表情になってリィン達を見回して答え

「実際、夏至祭の時も皇族の方達自らがエリスお姉様の救出の為に動きましたものね。それにリフィア殿下の怒りも民を守る立場である皇族として当然だと思いますわ。」

「ああ………メンフィル帝国とエレボニア帝国の戦争の勃発を止める方法を探る為にも、一刻も早く俺達の手でエリス達を助けないとな……!」

「ハハッ、その意気だぜ!」

「全く、一昨日憔悴していたのが嘘のようね。」

セレーネの意見に頷いた後決意の表情になったリィンを見たトヴァルは口元に笑みを浮かべ、セリーヌは呆れた表情でリィンを見つめた。

 

「――――あ。そう言えばレン姫の名前が先程出て来た時から気になっていたけど……アンゼリカ先輩は今、どうしているんだ?」

「確かアンゼリカ先輩はレン姫の秘書を務めているのでしたわね。」

アンゼリカの存在を思い出した二人はそれぞれ不思議そうな表情でツーヤを見つめ

「その事なんですが……アンゼリカ先輩は内戦が始まって少ししてから、レンさんに”休暇”の許可を取った後内戦を終結させる方法を探る為にケルディックから姿を消しました。恐らく今はエレボニア帝国領のどこかにいると思います。」

「何だって!?それじゃあアンゼリカ先輩は今、どこで何をしているんだ!?」

表情を曇らせたツーヤの口から出た予想外の答えを聞いたリィンは驚いた後真剣な表情で尋ねた。

 

「申し訳ありませんが、アンゼリカ先輩の行方についてはあたし達も把握していなくて。現在は消息不明です。」

「そんな……」

「今の状況を考えると、心配ですわね……」

「まあ、”四大名門”の”ログナー侯爵家”の長女なんだから、少なくとも貴族連合に危害は加えられていないだろ。」

「そうね。アンタ達はまず自分達が決めた事――――仲間達の合流を目指す事じゃないかしら?」

トヴァルの意見に頷いたセリーヌはリィンに視線を向けた。

「……そうだな。―――色々と教えてくれありがとう、ツーヤさん。お蔭で色々と欲しい情報が手に入ったよ。」

「いえ、あたし達がリィンさん達に協力できるのはこのくらいの事しかありませんし。プリネさん達にはリィンさん達が来た事を後で伝えておきますね。―――はぐれた仲間達の合流、頑張ってください。」

その後領主の館を後にしたリィン達は街の中で情報収集をして、準備を整えた後マキアス達と合流する為にケルディックを後にした。

 

 

 

説明
第318話
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コメント
本郷 刃様 第一部の最後からリウイ達の蹂躙があるので楽しみにお待ちください(ニヤリ)(sorano)
不謹慎かもしれませんがメンフィルによるエレボニアへの一方的な蹂躙を見たいと思う自分がいます・・・というかリウイ達にも活躍してほしいという願望ですがw(本郷 刃)
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