紫閃の軌跡
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アスベルが元締めと話している間に大まかな方針を決め、まずは被害の出た二人の商人のところに行き、事情を聴くこととなった。遊撃士のようにしっかりとした知名度がない以上、怪しむ部分はあったが……元締めからもお願いされていることを聞くと、扱う商品の内容や昨夜のアリバイを述べた。マルコのところから盗まれたのは加工食品で、ハインツのところから盗まれたのは高価そうな腕輪。

 

「聞くには聞けたが、双方共にしっかりとしたアリバイがあるみたいだな。」

「ええ。他の人がいた以上、信頼におけるかと。」

「それに、昨日のトラブルで懲りているはずなのに、すぐさま蒸し返すというのは腑に落ちない。」

「そうよね。週ごとに使うということで一度納得はしているんだし。」

「う〜ん………」

 

共通点と言えば、昨日の許可証の一件。少なくとも双方が双方の屋台を壊した犯人ではなさそうである。とはいえ、第三者ともなればいろいろ可能性が出てくる。そうやって考え込んでいるところに、アスベルが姿を見せた。

 

「お待たせ、と言いたいところだが……ちょっと場所を移すぞ。」

「え?」

「お前らなぁ……事件を解決したい気持ちは解るが、それで余計な情報まで洩れて身の危険を晒す真似は御免だろう?」

 

とりわけ、ここはクロイツェン州…いくら自分たちの身元がはっきりしていても、クロイツェン領邦軍の連中が難癖をつけてまで逮捕する可能性がある…見張っていないとも限らないので、六人は風見亭の自分たちが寝泊りをした部屋に移動し、話を始めた。

 

「で、先に行かせて聞き込みをしてもらってる間に……こっちは元締めにお願いしていた“ある事”を確認してた。」

「ある事?」

「他の屋台への被害さ。屋台が壊されていなくとも盗難の可能性がある以上は確認する必要があると思ってな。」

「あっ……!!」

「二人の商人の屋台を派手に壊しつつ、それをカモフラージュに盗みを働く可能性は無きにしも非ずですね。」

 

結論から言うと、他の屋台の被害はゼロ。これにはリィン達も安堵したが、一方でまたも手詰まりになったとこに悩み始める。これを見てアスベルはため息を吐いた。

 

「アスベル?」

「おかしいと思わないのか?」

「ふむ……どういうことだ?」

「本来ならば『おかしい』んだよ。同じ場所と期日の許可証を渡された二人の商人の屋台だけピンポイントで破壊されるというのは……間違いなくそうなるよう仕向けた犯人がいて、それに関わっているのがあの領邦軍に他ならない。」

 

これまで得られた状況から推測されるアスベルの理論……だが、そこにエリオットが尋ねる。

 

「えと、でも偶々だって可能性もあるんじゃあ……」

「それだけならな……アリサ、あの大市で最も高価なものって覚えてるか?」

「確か、宝石よね……え?」

「アリサ?」

「何か解ったんですか?」

 

アスベルの問いかけに答えつつ、アリサはあることに気づき……一方、その二人を除く面々は首をかしげていた。すると、リィンがあることに気付いた。それは、

 

「確か、あそこの商人はバリアハート絡みだったよな。」

「そうそこ。当事者の屋台を破壊しつつも盗品を盗んだとなれば、これは明らかに“営業妨害”を目的とした事件。」

「単純に窃盗だけなら、価値の高い七耀石や宝石の製品を盗んで換金したほうがより大金を得やすい……ということね。」

 

そこの被害がなかったというのは、裏を返せば『バリアハートからのものは盗まない』という見方もできる。他の屋台での被害がなかったというのは幸いだが、そう指示をしたとなれば話が通じる。

 

「そうなると、屋台を破壊したのは何故だ?」

「証拠隠滅、というところでしょうか?」

「その可能性が高い。加えて、領邦軍の今朝の態度だ。これで疑念を持たない方がどうかしてる。」

 

本来ならば領邦軍の人間に直接聞いてみるのも手段の一つなのだが、時間を掛ければ盗品が戻ってくる可能性が低くなるほか、領邦軍にも勘付かれる可能性がある。とはいえ、あの領邦軍が自ら手を汚すとは考えにくい。何らかの形で雇った人間……実は、リィンらと合流する前に道端で酔っていた飲んだくれの人物―――ジョンソンに話を聞いたところ、昨晩見慣れない一行を見たというのだ。ここまで状況証拠が揃えば、今回の事件には第三者が関わっている。

 

「となると、依頼を片付けてから行く方がいいのかしら?」

「そうだな……手配魔獣は俺の方で片づける。リィンらはもう一つの任務を片付けてくれ。」

「って、アスベル一人で!?いくらなんでも……」

「……それでしたら、私が同行します。リンクでの経験がある分、問題は無いかと。」

「まぁ、アスベルならば手違いは起こらないであろう。」

 

信用されているというのにはありがたいのだが、ある意味その発言はリィンのことを貶してないか?……という風に思いつつ、リィンとステラは魔獣退治のために西ケルディック街道に出た。二人が街道に出てからしばらく進んだところで、ステラが尋ねてきた。

 

「そういえば、アスベルさん。」

「ん?というか、別に呼び捨てでもいいんだけれど……何かな?」

「……貴方は、ひょっとして『遊撃士』なのですか?以前、兄があなたの事をそのように言っていたはずでしたので。」

「……まぁ、正解。オリビエが言っていたと思うけど、一昨年の出来事には何かと関わってるから。」

 

オリビエもといオリヴァルト皇子が言っていたというのであれば、それなりに信のおける人物。その意味も込めて、口を開いた。

 

「それと、A班の他の面々とは面識があって、俺の事情をある程度知っている……ま、そっちの方は学生である以上“休職”扱いのようなものだけれど。一応言っとくけれど、彼等を責めないでくれ。知られると色々厄介なもので。」

 

これでランクも下がってくれればありがたいのであるが、本部としては広告塔にもなりうるS級の一角を失うのは巨大な損失になりうるとしてそういったことは一切話にあがらない。これに関しては半ば諦めているが。

 

「あ……成程、お兄様が頼み込んだ方の一人がアスベルさんということだったんですか。すみません。」

「いや、其処で謝られても困るんだが。それに、事情を隠しているのは“お互い様”だろう?」

「ふふっ、そうですね。」

 

ともあれ、手配魔獣を難なく退けた。どうやら、武術教練後での様子は演技だったそうで、ステラの兄の親友伝手で武術を嗜んでいたらしい。それって、ヴァンダール流……そこまで警戒していなかったのもあるが、一発で見抜いたサラは流石というか……ちなみに

 

「リィンのこと好きなのか?」

「ふえっ!?そ、そそ、そんなわけないじゃないですか!!」

「あ、うん。解った。」

 

このやり取りからして脈ありだったのは言うまでもない。ラウラやエリゼが苦労しそうだな……と思いつつ、集合場所に戻ることとなった。

 

説明
第18話 解決のための道筋
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コメント
THIS様&アラル様 え?まだ増えやがりますが?……全容を知ったら、激おこレベル待ったなしです。(kelvin)
リィンの奴まだ増やしそうで怖い…(アラル)
ああ・・・リィン。修羅場確定ww(THIS)
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閃の軌跡 神様転生要素あり ご都合主義あり オリキャラ多数 

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