快傑ネコシエーター20
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96、美猫と撫子のフリマ

 

美猫は撫子に誘われて中央公園で開催されているフリーマーケットを探検していた。

美猫にとって今まで見た事の無い光景で値段の付いてない商品をその場の雰囲気で値段を

付けて売ったりと、とても新鮮だった。

一応雅からお小遣いを貰ってきており、何か気に入ったものがあったら買ってもいいと

承認が降りていたので、好奇心の赴くままに商品を見ていた。

案内役の撫子も美猫がこんなに喜んでいるので誘って大正解だと思った。

品揃えのカオスさがとても痛快でなんでこんなものがあるのと

つっこみを入れたくなるような品物がたくさんあった。

美猫は提灯屋の源さんそっくりの紫香楽焼の狸の置物を見つけじっと見つめていた。

暫く見つめていると狸の置物が目を逸らした、本人が変化していた。

「源さんこんなとこで何をしているんですか。」

「やぁ、まさかばれるとは思わなかった。」

「置物が目を逸らす時点で怪しさ大爆発でしょ。」

「一般のお客さんだったら驚いてパニックになるよ。」

「ところで源さんは何を売っているんですか。」

撫子が興味深そうに源さんの売り物を覗いてみた。

張り子の可愛いサイズの招き猫、達磨、狸であった。

「キャッ、可愛いこれ幾らですか、一種類ずつ揃えてみたいです。」

「撫子ちゃんだったら、おまけでまとめて500円でいいよ。」

「源さん、ありがとうございます。」

美猫には撫子の美的感覚がいまいちよく分からなかった。

さすがに源さんが趣味で作ったものとはいえ人間国宝だけあってもの凄く迫力のある

張り子であった。

素朴なものも気まぐれに作っているようだがかなりリアル嗜好で子供が泣き出しそうな

怖い顔をしたものが多かった。

美猫は源さんの趣味の張子を撫子以外喜んで買う女の子はまずいないと思った。

「美猫ちゃん、撫子ちゃん」

美猫と撫子を遠くから呼ぶものが居たさつきであった。

「美猫ちゃん、撫子ちゃんフリマに来ていたんだ。」

「さつきはなにをしてんの。」

「コンビニから出張してきてお弁当を売っているんだよ。」

「せっかくだからお昼ご飯買っていかない。」

2人はおにぎり4つとお茶のペットボトルを2つ買っていった。

公園のベンチでお昼ご飯を取ることにした。

美猫は紅鮭のおにぎりをぱくつきあっという間に平らげ、次のたらこのおにぎりもアッと

言う間に平らげペットボトルのお茶をごくごくと飲み干した。

撫子は明太子のおにぎりを2つに割って小さくして一口大にしてゆっくり食べていた。

撫子はおにぎり一個でお腹が膨れたので美猫に昆布のおにぎりをすすめた。

美猫は喜んで撫子の好意に甘えて3個目のおにぎりをほおばった。

少し食休みをした後、再度フリーマーケットの午後の部の探検を開始した。

撫子は可愛い猫の置物を見つけ、自分のコレクションを充実させていた

猫柄、猫模様のキルトやハンカチ、タオルと買うものはみんな猫尽くしであった。

撫子は着物を着た可愛い猫又のブロンズの小さな置物を見つけてきた。

撫子は美猫に見せて小さい頃の美猫さんみたいといった。

美猫はなんとなく幼い時の亡母珠代の姿に似ている様に見えた。

撫子は美猫が欲しいなら譲るというので素直に譲り受けた。

「実はお母さんの小さい時の姿に似ているんだこの置物。」

「帰ったら銀ねぇにも見せてみるよ。」

撫子は妖子から美猫の母は病死したということを聞いていたので詳しいことは聞かない

方がいいと思い、そのままにした。

撫子は美猫、妖子、さつきがみんな孤児であることを知っていた。

しかし、皆過去のことを積極的に話さないので自分の方から話題を振るの避けていた。

「美猫さんその置物まだ同じ物が有るかもしれませんのでもう一度買ったところへ

行ってみませんか。」

「そうだね、もう一つあれば銀ねぇにお土産にできるな。」

撫子が猫又の小さな置物を買ったところに行くと他にも着物を着た可愛い猫又の置物が

3体あったので美猫は全部買って、他の猫又の置物を銀にお土産にすることにした。

「この猫又の置物のモデルの猫又は姉妹っぽいな、離れ離れにしたら可哀想だよ。」

「それぞれポーズを少し変えてあるけど手作りみたいですね。」

置物を売っていたところではその置物の由来等はわからないそうだが旧家を取り壊したら

纏めて出てきたということだった。

フリーマーケットから引き揚げ、収穫物の整理と確認を行う為、美猫と撫子は一旦

居酒屋銀猫へ行った。

美猫は銀に着物を着た可愛い猫又のブロンズの小さな置物をあるだけ買ってきたものと

撫子が最初に見つけたものを見せた。

銀は驚いて美猫に聞いた、

「これ、どこで見つけたのこれは竜造寺家の姫をかたどったもので私の妹全員の像が

そろっているわ。」

「銀ねぇ、じゃこの子は私のお母さんの姿なの。」

美猫は銀に撫子が最初に見つけた猫又のブロンズの小さな置物を見せた。

「た、珠代ちゃん。」

銀はその小さな猫又をぎゅうと抱きしめた。

「銀ねぇこれ全部上げるよ、大事な妹たちの姿を映したものだろ。」

「美猫、あなたのお母さんの珠代ちゃんはあなたがもっていたほうがいいんじゃ。」

「お母さんだけ一人ぼっちじゃ可哀想だから皆銀ねぇが纏めて持っていた方がいいよ。」

銀は人目を憚らず落涙して自分の妹たちの思い出に浸っていた。

撫子がもう1つ猫又のブロンズ像を出して、

「これは、もしかして銀さんをモデルにしたものではないでしょうか。」

少しほかの猫又よりお姉さんっぽい感じのブロンズ像だった。

「これは前回のフリマで同じ出品者が出していたのでほかにもあるようならって

頼んでおいたら今回全員そろったみたいで。」

銀は撫子を抱きしめて、

「これ私よ、よくこんなものが全部そろったわね、お屋敷が無くなった時に全部

どこかに行ってしまったと思っていたのに、本当にありがとう。」

撫子ももらい泣きしてしまうほど銀は感動して泣いていた。

美猫も撫子に重ねて礼を言った。

「撫子ちゃんのおかげでお母さんたち姉妹が全員そろったみたいだよ、ありがとう。」

銀は美猫と撫子を連れて仏壇の前へ行った。

仏壇には新しい位牌が4塔ならんでいた。

「これが私の妹たちの位牌、いちばん右が美猫のお母さんの珠代ちゃん。」

「一番上の私が生き残っちゃったんだ。」

「でも銀さんはずっと長生きして私がお婆ちゃんになっても若いままでいてくださいね。」

撫子は天然だから許されるようなことを真面目に銀にお願いしていた。

「美猫ちゃんもお願いね。」

美猫は自分が普通の人間の撫子より長生きであることが少し悲しかった。

「大丈夫よ撫子ちゃん私たちはしぶといのが自慢だから。」

銀は爽やかに撫子の不安を打ち消した。

 

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97、美猫と雅のフリマ

 

結局フリーマーケットでの買い物は銀へのお土産になった竜造寺家姫様ブロンズ像3体、

おにぎり2つ、ペットボトルのお茶1つしか美猫はお金を使わなかったのでおこずかい

が余ってしまった。

雅に何かお土産を買って帰る程の気が回らないのであった。

そんなことを気にする雅ではなかったが美猫の方が後になって気にし始めた。

しかし、銀から美猫と撫子がフリーマーケットで散逸しそうになった竜造寺家の姫様像

を全部そろえるというお手柄を聞いてむしろご褒美を何かあげなきゃなぁと思っていた。

とりあえず雅は美猫を誉めてみた。

「ネコ、お手柄だったって銀さんから聞いたぞ。」

「肝心のみやちゃんへのお土産忘れちゃったんだけど。」

「いいよ、僕のことより竜造寺家の家宝の散逸を防いだことのが大事だよ。」

「でも、もとはと言えば撫子ちゃんが前回のフリマで発見したことがきっかけだし。」

「今回渡したおこずかい、お昼ご飯と竜造寺家の家宝だけで自分のものは何も買って

無いじゃないか、せっかくだから、次回のフリマ一緒に付き合うよ。」

「今度は、ネコの欲しいものを買ったらいいよ。」

2週間後の休日次のフリーマーケットに雅と美猫はやって来た。

何処からともなく雅と美猫を呼ぶ声があった。

「みやちゃん、美猫ちゃん、こっち、こっち。」

提灯屋の源さんであった。

張り子の可愛いサイズの招き猫、達磨、狸を売っていた。

美猫は張り子を見てぎょっとした、パワーアップしてもっと怖い顔になっていたのである。

「げ、源さんこれ。」

「あぁ、美猫ちゃん実は前回の張り子、撫子ちゃんの喜んでいたあれ、お蔭様で完売した

のでパワーアップした第2弾を今日から大売り出しだ。」

何か勘違いした方向へ無駄にパワーアップしていてもの凄く怖い夜遅く見たくない

ようなご面相の招き猫、達磨、狸が所狭しと並んでいた。

雅はう〜んと悩んで買いそうになっていたので美猫が必死になって止めていた。

「みやちゃん、どーするのあんなもの、キジコちゃんが見たら引き付け起こすか、目を

回すよ。」

なんとなく未練がありそうな雅を見て前回のまだましな張子を買っておくべきだったと

後悔する美猫だった。

この間竜造寺家の姫様のブロンズ像を売っていたところで今度は猫又の木彫が置いてあった。

勇ましい太刀を振るう女猫又の像であった。

美猫は嫌な予感がした、横を見ると雅が言い値で買おうとしていたので即座に止め、

この像の来歴を聞いてみた。

少なくとも80年位前に密教の僧侶が彫ったもので氷刃猫姫という題だった。

作者は古宮慧快となっていた。

美猫は悩んだ、本物だったら銀本人がどういう反応を示すか怖かった。

美猫が悩んでいるのを見て売主が4割引きにするというので

美猫は雅に買ってもいいと言った。

雅が喜んでいるのが少々複雑な気分だったが正直銀の昔の稼業を隠すために源さんを

いつも半殺しにしているのを見ているので余計だった。

「ねえ、みやちゃんどうしてそれを買ったの。」

「いや、なんか着物着て戦う猫又ってなんか魅力的だし、なんとなくネコに似ているかな

って思ったからなんだけど。」

「みやちゃんは誰だかわかって買った訳じゃないんだ。」

「80年前から生きている猫又に思い当たる人物はいないし。」

「えっ、みやちゃん。」

「それ、銀ねぇそっくりだと思わない。」

「あ、そういえばそうだね、でも銀さん25歳だし年齢があわないよ。」

「銀さんとネコなら多少年が離れていても似ているからな。」

美猫は銀の年齢へのツッコミは下手すると撲殺されかねないので黙っていた。

「ところで、ネコお前何か欲しいものはないのか、僕はネコのおかげで4割引きで買えた

から、肝心のネコの欲しいものを買わないといけないよ。」

「雅さん、美猫ちゃん。」

弁当の出張販売のさつきだった。

「牛タン弁当最後の1個半額ですよ、お茶もつけちゃいます。」

「いいの、さつきちゃん。」

「雅さん特別サービスですよ。」

「さつき、あたしには。」

「おにぎり、鮭、たらこ、たくあん付にお茶ぐらいはサービスしちゃおうかな。」

「何、その差は。」

「予算は同じだから文句は無しね。」

「さつき、いつか泣かせてやる。」

「ネコ、牛タン半分あげるから勘弁してあげなよ。」

美猫は渋々我慢した。

雅は牛タンの汁を吸いこんだご飯も半分こにして美猫の不満を和らげた。

少し食休みをした後、再度フリーマーケットの午後の部の探検を開始した。

雅が意外と変なものに興味を示し美猫が止めるという意外な展開で肝心の美猫が

目当てのものが意外とないような感じだった。

雅が鼈甲の櫛を見つけて美猫に勧めてみた。

柘の櫛、漆仕上げの櫛など美猫の黒髪を梳くのに好い感じであった

美猫は結局シンプルな柘の櫛を選んだ。

雅は更に仕立て直しの綺麗な着物や帯など一式そろえようと企んでいたようだが

美猫に堅く止められた。

美猫は着物ならカオスな古着屋でもう少し粗末なものを選んで少し着物を着こなせる

ようになってから少しずつ上等なものに進んでいった方がいいと思っていた。

貧乏性の雅がフリマで気が大きくなっているのに美猫の方に貧乏性が移ってしまった

ようだった。

美猫は自分の着物姿を見せれば雅の着物に対する情熱も治まるだろうと

フリーマーケットから引き揚げてから居酒屋銀猫に行って戦利品の確認をした。

当然のことながら銀の顔に戦慄が走ったが雅が80年前の木彫で古宮慧快の作で氷刃猫姫

と言う作品でモデルは不明だが美猫に似ているから着物を着せてみるとそっくりじゃ

ないかと言うので美猫に着物を着せてみた。

これで太刀を持たせればそのものずばりじゃないかと。

銀は昔の自分にこれ程美猫が似ていることに驚いていた。

「あのエロ糞坊主煩悩全開でこんなものを作りやがって。」

心の中で悪態をついていた。

2人の大きな違いは髪の色なので黒髪か銀髪の違いは木彫だと全く区別がつかないの

である。

もう一つの違い胸のサイズの違いは木彫はさらしを巻いているため区別がつかなかった。

姉妹正確には伯母と姪だから似ているのは当然なのである。

「こうやってあらためてみると本当によく似ているなあ。」

「80年前のこの木彫の作者は銀さんやネコの御先祖様をモデルにしたんだろうけど、

本人が見たら、なんというかどんなに上手に作っても怒りそうだよね。」

雅は実のモデルの銀の前で言った。

「そうですよね、本人の許しも無しにこんなものを作ったら

私だったら絶対に許さないなあ。」

銀は怒りを抑えて微笑みながら言った。

美猫は気付いて居ないのは雅だけで銀の内心を思うとさすがに気の毒に思った。

「これも竜造寺家の姫様の姿を映した貴重な木彫だから銀さんが持っていた方がいいと

思いますよ、ただ密教の坊さんが悪を成敗する猫又姫の像をなぜ彫ったのか疑問ですが。」

美猫はここで余計なことを言うと銀に撲殺される恐れがあったので黙っていた。

「そういえば古宮慧快っていう密教僧どこかで聞いたことがあるけど仏師として同名異人

がいたのかな。」

「でもかなりのの破戒僧ですね、女人のそれも竜造寺家の姫様の勇ましい木彫を

彫り上げるなんて、でも顔や全体の肉付きを見ると西洋美術のルネッサンスの影響を

受けているようで着物の流れるようなラインは並の仏師じゃできない腕前ですよ。」

雅は美術品として誉めているのだが銀本人にはとてもくすぐったかった。

「ネコ、さっきの柘の櫛を出してごらん、こうやって櫛を髪にさすととっても似合うよ。」

着物姿の美猫が可愛くてしょうがない雅は美猫の髪を優しく櫛で梳いて愛でていた。

当の美猫本人は恥ずかしくて耳まで真っ赤にして照れていた。

銀は2人に気を使っていつの間にか奥へ引っ込んでしまった。

改めて木彫をよく調べてあの古宮慧快の作に間違いなかった。

「あいつ、私に懸想してこんなものを作っていたなんて馬鹿な人。」

銀は怒るより当時の慧快のことを思うと微笑ましく思えた。

 

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98、美猫と雅の趣味

 

美猫が玄関を開けると、

「ギャー、なんでこれがここにあるの。」

下駄箱の上に招き猫、達磨、狸の張子が並んでいた。

例の源さん作の何か勘違いした方向へ無駄にパワーアップしていて

もの凄く怖い夜遅く見たくないようなご面相の面々であった。

「ネコ、さっき源さんが来てお蔭様でバージョン2が完売したので次に出品する更に

パワーアップしたバージョン3を作ったって持ってきてくれたんだ。」

「キジコちゃんもほら怖がらないし、」

みゃー

キジコは何事も無いように源さんの張子を受け入れていた。

「えっ。」

「キジコちゃん怖くないの。」

みゃー

キジコは下駄箱の上に飛び乗ると招き猫の張子にスリスリしていた。

続いて、達磨、狸にもスリスリして気に入っている様子だった。

どうやらキジコの美的感覚は撫子と近いようであった。

不思議に思った美猫は中でも一番破壊力のあるご面相の狸の張子を持って

一階のコンビニに行って店番のさつきの美的感覚を試すことにした。

「さつき、これどう思う。」

「ひぃ〜。」

さつきはいきなり目の前に最恐の狸の張子をドアップで見せられ、腰を抜かした。

「み、美猫ちゃんなんてものを見せるのよ、今晩夢に出てきそうだよ。」

「やっぱり、怖いと思うよね、その反応が普通だよね。」

美猫は納得したように言った。

「みやちゃん、キジコちゃんは平気なんだよね、撫子ちゃんに至っては可愛いって

言っているし、あたしだけがおかしいのかと思ったんだよ、さつき協力ありがとう。」

美猫は満足して帰っていった。

後に残されたさつきはそのまま放置され、涙目で呪いの言葉を呟いていた。

「貧乳駄猫、この怨みはらさでおくべきか。」

美猫は改めて雅の趣味を確認し始めた。

よく整理されている本棚にある小物や装飾品を調べてみたが、特に悪趣味なものは無かった。

書籍も猫の写真集が多いぐらいで内田百閨A赤瀬川原平、澁澤龍彦の単行本も多かった。

ガラスケースの中はクラシックカメラ、鉄道模型、ミニカー、飛行機と戦車の

ミニチュアのコレクションが並んでいた。

男の子らしい趣味で別に問題は無かった。

そんな中に黒髪の猫又の可愛い女の子の人形があった。

どうやら手作りのようで赤い着物を着ておすまし顔で座っていた。

なんとなく自分に似ている様だった。

美猫は雅にこの人形のことを聞いてみた。

雅はかなり照れながら、

「ネコをモデルに作ってみたんだけどなかなか本物みたいに美人に作れなくて。」

美猫は自分をモデルにしたと聞いて真っ赤になって照れまくった。

「みやちゃん、こういう趣味があったんだ。」

「実はキジコちゃんのミニチュアサイズのぬいぐるみも作っていて一緒に並べようと

思っているんだ。」

指先サイズのぬいぐるみが最後の仕上げ待ちの状態だった。

「わぁ、可愛い。」

「後はひげを付けるだけで完成なんだ。猫又の隣に寂しくないように並べるつもりさ。」

「やっぱりみやちゃんの美的センスは正常だね。」

美猫は心の中で呟いた。

 

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99、美猫とさつきの報復返り討ち

 

「ひぎゃ〜っ。」

「またあの怖い狸の夢を見ちゃったよ。」

深夜2時さつきは悪夢から目覚めた。

美猫に見せられた例の源さん作の何か勘違いした方向へ無駄にパワーアップしていて

もの凄く怖い夜遅く見たくないようなご面相の狸の張子の夢である。

普通の夢の中に突然いきなり目の前に最恐の狸の張子がドアップで出てくるのである。

それで目が覚めるのである、その繰り返しを2回続けて見た時もあった。

全身汗だくで朝からシャワーを浴びて気分転換して何とか仕事についていた。

このあいだ、美猫に狸の張子を見せられた後腰が抜けてしばらく動けないぐらいの衝撃で

トラウマが出来ていた。

「美猫ちゃん、この責任どうとってくれるの。」

涙目で必死にさつきは美猫に恨み言を言った。

「さつき、まだあれが怖いんだ、あたしなんが3日で慣れちゃったよ。」

「しばらく、源さんの工房へ行ってあれに取り囲まれる生活をすれば直ぐになれるよ。」

美猫は簡単にさつきの怖がりを半分バカにしたように軽くあしらった。

「う〜。」

悔しがって唸るさつきに、

「さつきまだ文句あるの、あたしはこの間の牛タン弁当の恨みを忘れてないから。」

美猫は執念深かった、食い物の恨みは特に怖い。

さつきはこの場は一旦引き下がったが密かに報復を心に誓っていた。

「あの貧乳駄猫、この私の恨みどうやって晴らそうか。」

元はと言えば何も考えずに美猫に恨みを買うようなことしたが原因で酷い目に遭っても

反論できなかったのだが自覚が無かった。

さつきは、腹黒いがそれほど賢くは無かった、美猫と同レベルだった。

さらに忘れっぽいという致命的欠点もあるため報復しようと考え自滅への道を歩んで

いったのであった。

同じ友人でもこれが妖子ほど聡ければ何もトラブルは起きないのである。

さつきは美猫への報復計画を考えていた。

美猫を恐怖のどん底に落とす計画だったが美猫が怖がるものが想像できなかった。

「美猫ちゃんが怖がるものってなんだろう。」

いきなりプランは躓いてしまった。

ここで目には目を歯には歯をと考えるところがさつきの限界だった。

源さんにバージョン4の狸それもお面を作ってもらうことを思いついた。

オチはむじなであった。

暗がりで見れば絶対忘れないほど怖いお面を突然被って脅かす作戦であった。

ただこの作戦は読まれたらお終いの一発勝負で美猫が気絶することが前提であった。

外したらば恐怖の返り討ちが待っているのであった。

さつきはまず源さんの工房へ行ってみた。

「源さんいらっしゃいますか。」

扉を開けると恐怖の世界だった。

「ひぎ〜。」

「さつきちゃん、いらっしゃい。」

「げ、源さんなんですかこの張子の軍団は。」

「前回のフリマで女の子に大人気でさらにプリティーにしてほしいとの要望があって

パワーアップしたバージョン3の招き猫、達磨、狸の張子だよ。」

「撫子ちゃんの学校で物凄い人気でご利益があるとみんなで買いに来るんだよ。」

「実はこの張子の顔そう狸がいいですね、これをお面にしてフリマで被って宣伝すれば

お弁当も張子と一緒に売れるんじゃないかと思ったんですよ。」

「で、源さんお手数ですが私が被るお面を作って頂けませんか。」

「それもさらにパワーアップしたバージョン4と言った感じの迫力のあるのをお願い

しますよ。」

源さんは大いに乗り気になって、

「さつきちゃん、それはいいアイデアだ、早速物凄い人目を引くようなお面を作って

あげよう。」

さつきは源さんの工房からウキウキしながら帰っていった。

約束の日さつきは源さんの工房で完成した狸のお面、もはや狸の妖怪と言った方がいい

位の物凄いものを目にした。

さつきは一目見て失神しそうになる程の迫力だった。

今迄の悪夢が消え去る程の恐怖のお面だった。

このお面を見て失神する美猫を思い浮かべるだけで口元に笑みが浮かぶほどだった。

「さつきちゃん、どうだい気に入ってくれたかいこれならフリマで注目度抜群で売り上げ

倍増間違いなしだ。」

「ありがとう源さん、今度のフリマ楽しみですね。」

さて悪巧みの準備の出来たさつきは宵闇時になるのが楽しみだった。

今日は居酒屋銀猫の定休日で辺りは静かだった。

飲食店は軒並み定休日でカオスな古着屋が閉まれば辺りは真っ暗だった。

マンションの2階と3階の階段室の明りに細工をして燈らないようにして

2階のさつきの部屋の前の非常灯が薄暗く燈っている状態にしておいた。

美猫が深夜隣の居酒屋銀猫の妖子の所から自宅に戻って来た。

さつきは事前に妖子に因果を含めて夜遅くなるまで足止めするように頼んだのだった。

聡い妖子はさつきが美猫に何かを仕掛けようとしているのに気付いたが知らぬ振りを

して被害を最小限にとどめようとした。

さて、美猫は何も知らずマンションの階段を上っていった。

階段がやけに暗いのが気になったがそのまま上っていた。

2階のさつきの部屋の扉が開いていてさつきが泣いている様だった。

美猫は気になって薄暗い部屋の中に入るとさつきが何か恨み言をいっていた。

「美猫ちゃんのせいだ、美猫ちゃんのせいでこんな顔になっちゃったんだ。」

さつきは源さんの恐怖のお面を付けて美猫をおどかした。

「ひぎー、あっちいけ化け物。」

美猫の飛び膝蹴りがさつきのこめかみに決まり一発でKОした。

美猫はさつきが動かなくなったのを確認して、部屋の電気をつけた。

美猫はさつきのお面を外し、お面を付けてさつきの意識の戻るのを待った。

やがてさつきが意識を取り戻すと目の前一杯に恐怖のお面が睨んでいた。

「きゅ〜、」

再びさつきが失神した。

「甘いわ、さつきおまえの企みは全部お見通しだ。」

「しばらく悪夢に苦しむがいい。」

ごちっ

「いたっ。」

「何するんだ、銀ねぇ。」

聡い妖子は銀にさつきと美猫の間で何か諍いがあるようだからと仲裁をお願いしていた。

「やり過ぎよ、美猫。」

「たかが牛タン弁当の恨み位でここまでさつきちゃんを追いつめるあなたも悪いわよ。」

「食いもんの恨みは怖いって思い知らせてやらないとさつきはわからないから。」

「あなたの食い意地の悪さは極め付けね、大体雅さんからちゃんと半分牛タンから

汁の沁みたご飯まで貰っといて、何が牛タン弁当の恨みよ。」

「今度意識が戻ったらちゃんと謝って仲直りしなさい。」

銀に厳しく説教されて少しは反省した美猫は意識が戻ったさつきにやり過ぎだったと

謝った。

しかし、さつきのトラウマは増幅され小刻みに震えていた。

翌日フリマで源さんの恐怖のお面を付けたさつきが涙目で弁当の出張販売をしていた。

おかげで、源さんの張子も弁当もすぐに完売し、源さんも次の恐怖の張子の構想を

練っていた。

 

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100、美猫と妖子のフリマ

 

すっかり、フリーマーケットが気に入った美猫は妖子を誘っていくことにした。

「あたし、すごく気になることがあるだけど妖子ちゃんは源さんの張子の招き猫、

達磨、狸を見てどう思うかなんだけど。」

素朴な疑問だった。

撫子は可愛いといい、雅とキジコは気に入っているようだが美猫はやっと慣れた処で

さつきに関しては自分のせいでもあるがトラウマをこじらせたように怖がっている。

銀は平然としてなれているようだ。

妖子がどういう反応を示すかどうか気になっていた。

早速源さんの張子を売っているところへ行った。

なんか見たことのある様なお面を付けて弁当の出張販売をしているさつきがいた。

足が小刻みに震えている、美猫は顔を会わせ辛かった。

「さ、さつきさんどうしてそんな罰ゲームみたいなことをしているんですか。」

妖子は恐怖のお面を被って弁当を売っているさつきを見て驚いた。

「妖子ちゃん、これも身から出た錆で正に罰ゲームみたいなものさ。」

かなりやけになっているさつきだった。

さつきの良い所は諦めの良い所かもしれないと美猫は思った。

「さつき、本当昨日はごめんね、やりすぎだったよね。」

「いいよ、美猫ちゃん喧嘩両成敗だから。」

妖子はやはり銀に仲裁を頼んで正解だったと思い、微笑んだ。

「妖子ちゃん、あれ、どう、怖くない。」

「なんかユニークでおもしろいですよ。」

「自分の部屋に飾りたいとか思う思わない、どっち。」

「微妙なところですね。」

「よかった、妖子ちゃんはあたしと同じ感覚なんだ。」

美猫は撫子のような反応をされたらどうしようと悩んでいた。

「魔除けとして玄関に置くのはありだと思いますよ。」

「雅さんの部屋の玄関に鎮座しているのと同じものですね、銀さんから三体セットで

買ってきてと頼まれましたので。」

妖子は源さんの恐怖の張子バージョン3の招き猫、達磨、狸の張子を買っていった。

更に隣のさつきからおにぎりを5個とペットボトルのお茶を2つ買って、

「後でお昼にどこかベンチで食べましょうね。」

「うん。」

実は妖子は撫子が美猫と二人きりでフリマを楽しんだことを後から知って嫉妬していた。

自分も美猫と楽しもうと、さらに1回目の竜造寺家姫様ブロンズ像の発見、2回目の

80年前の木彫で古宮慧快の作で氷刃猫姫の発見と今回何か大きな発見をしたいと

思っていた。

「美猫さん例の竜造寺家縁の品物を出している出品者さん今回も来ていますか。」

「多分、居ると思うよ、撫子ちゃんが頼んだら例のブロンズ像が全部そろったから。」

「行ってみましょうまた何か発見できるかも知れないですよ。」

妖子は丹念に品物を調べ何か竜造寺家縁のものを探していた。

実は事前に銀に竜造寺家の家紋を教えてもらいその家門の付いた100年位前の着物、

簪、帯留めなどを探し当て美猫と相談して真贋を確認していた。

「中々これと言う物が無いですね、美猫さんのお母さんに縁の物が有ればと

思ったのですが。」

「妖子ちゃんそうそう見つかるものじゃないよ、少し肩の力を抜こうよ。」

あまり親身に自分に関わるものを探している妖子に申し訳なく思った美猫が労った。

「妖子ちゃん、そろそろお昼ご飯にしようよ。」

「そうですね、実は私もお腹が空いて来ていたんですよ。」

公園のベンチでお昼ご飯を取ることにした。

美猫はイクラのおにぎりをぱくつきあっという間に平らげ、次の明太子のおにぎりもアッと

言う間に平らげペットボトルのお茶をごくごくと飲み干した。

妖子は紅鮭のおにぎりを2つに割ってそのままゆっくり食べていた。

次に焼きたらこのおにぎりを同じようにゆっくり食べていた。

美猫が物足りなさそうなのを見て、妖子は手品のように3個目の

子持ち昆布のおにぎりをとりだしで美猫にすすめた。

美猫は喜んで妖子の好意に甘えて3個目のおにぎりをほおばった。

少し食休みをした後、再度フリーマーケットの午後の部の探検を開始した。

「妖子ちゃん、何か欲しいもの無いの、探している物が有ったら一緒に探そうよ。」

美猫は妖子のために何かしたい気持ちでいっぱいだった。

美猫は綺麗な七宝の髪留めを見つけ妖子に勧めてみた。

飾り気のない妖子にはとても似合っていた。

「妖子ちゃんいつもいろいろお世話になっているからお礼の気持ちを込めて

プレゼントします。」

「そんな、美猫さんに買ってもらうなんて、申し訳なくて。」

「気にしないでよ、銀ねぇと相談してお小遣いをもらっているんだ妖子ちゃんに

いろいろと買う予定だから覚悟して受け取ってね。」

「もう少し妖子ちゃんは人生を楽しまなきゃ、今日は妖子ちゃん感謝デーだから。」

「あと仕事の道具は銀ねぇがちゃんとそろえるからあくまで趣味のものと言う条件でね。」

妖子は美猫を喜ばせるつもりだったが実は美猫が妖子を喜ばせようという

銀と美猫の計らいだった。

 

 

説明
96、美猫と撫子のフリマ
97、美猫と雅のフリマ
98、美猫と雅の趣味
99、美猫とさつきの報復返り討ち
100、美猫と妖子のフリマ
あらすじ世界観は快傑ネコシエーター参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定は快傑ネコシエーター2参照
魔力の強弱は快傑ネコシエーター3参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定2は快傑ネコシエーター4参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定3は快傑ネコシエーター5参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定4は快傑ネコシエーター6参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定5は快傑ネコシエーター8参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定6は快傑ネコシエーター9参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定7は快傑ネコシエーター10参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定8は快傑ネコシエーター11参照


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