紫閃の軌跡
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時間は少し遡ってHRが終わった後の放課後。リィンはガイウスやエリオットらと話して別れた後、マキアスに話しかけたのだが……明らかに敵対するような口調であった。

 

「―――君に関係あるのか?」

 

先日の事件によって“公爵”の位を得ることとなったシュバルツァー家。養子ではあるが、曲がりなりにも<五大名門>の一角……奇しくもユーシスと似た立場に置かれたリィンに対し、必要以上に嫌悪感を露わにしていたのだ。言葉少なめに教室を出ていくマキアス……彼の貴族嫌いに拍車がかかってしまったようだ。これにはリィンもため息が出るほどだった。

 

「……あれ?リィンさん?」

 

すると、その前に教室を出たはずのエマが戻ってきていた。どうやら、フィーに勉強を教えるために参考書を取りに戻ってきたようだ。そして、先程出て行ったマキアスの姿から凡そを察し、『大丈夫ですよ』と背中を押すように諭した。

 

「ちゃんと向き合って話せば、解ってくれると思います。」

「そっか……ありがとう、委員長。」

 

 

「よっ、後輩君。」

 

とりあえず一通り学院を回った後、正門の前で呼び止められた。リィンが振り向くと、そこにいたのは先月出会った人物。平民クラスの制服であるが、見たところ印象が“遊び人”に見えなくもない人物……そして、先月の時に50ミラを彼に(成り行き上)貸したままになっていた。

 

「そういえば、こないだのトリック……解ったか?」

「ええ……落ちてきたコインを両手で受け取らず、その下に置いた袋に落とした、というところですね。」

「お、迷う間もなく答えるとは……ま、正解だぜ。じゃあ、正解もしたことだし……悪い、今10ミラしかねーわ。」

 

先月、彼は50ミラを使ったトリック―――その種明かしをリィンはそのことを思い出しつつ答えると、バンダナをした先輩はバツが悪そうにリィンの方を見た。

 

「別に50ミラぐらいいいですけれど。」

「お、そうかい?それじゃあ―――」

「こらこら、いたいけな後輩から厚かましく集ろうとするんじゃない。」

「っと、現れやがったな。」

 

すると、ライダースーツを身にまとった人物が乗り物―――導力バイクを主動で押してきた。その人物の登場にバンダナの先輩が怪訝そうな表情を浮かべた。

 

「っと、これは師匠じゃないか。トワとジョルジュからいろいろ聞いているし、噂はかねがねってところかな。それと、先月の特別実習では活躍したそうじゃないか。」

「はぁ?」

「え?えっと……リィン・シュバルツァーです。」

「アンゼリカ。アンゼリカ・ログナーだ。よろしく頼むよ、リィン君。いや、お師匠様。」

 

ライダースーツを身にまとった女子生徒―――アンゼリカはそう自己紹介をした一方、リィンとバンダナの先輩は揃って首を傾げた。

 

「あの、いきなり師匠と言われましても訳が解らないのですが……といいますか、ログナー侯爵家の……」

「フフ……そんな天然な所も魅力の一つなのだろうね。それと、侯爵家の娘とは言っても結構好き勝手やらせてもらっている身でね。親からはとっくに勘当されていそうなものだけれど。ああ、そこにいるのはクロウ・アームブラストと言って、反面教師の様なものだ。」

「おまっ、人の自己紹介を奪うんじゃねえよ!というか、お前が言うんじゃねえ。ったく…2年X組、クロウ・アームブラストだ。よろしくな、リィン後輩。で、質問なんだが……何をやったんだ?」

「俺に聞かないでください……俺だってよく解らないんですから。」

 

アンゼリカとクロウ……身分の違いがあるとはいえ、ある意味濃い面々が知り合いだということには驚きつつ、アンゼリカが言ったことについて疑問符を浮かべた。

 

「フフッ……令嬢がたの間では“漆黒の貴公子”だなんて呼ばれてるそうじゃないか。君とお近づきになりたい人は数多と聞くけれど?」

「何ですか、その異名は。おそらくは家の地位目当てだと思いますよ……俺自身にそれほどの価値は無いかと。」

「そんな謙虚な所……噂ではセドリック皇太子と二分する話題の当事者……これはますます、お師匠様と認めたくなったよ。」

「……リィン後輩。俺にモテる術を教えろ。いや、教えてください。」

「こんな場所で何言ってるんですか!?言っておきますけれど、モテませんからね。」

 

別に好きでこうなったわけではないのだが、父親が男爵から爵位が上がって以来、自分も社交界に顔を出すことが多くなった。昨年から社交界にデビューということで数回ほどパーティーに出席する機会があったのだが……その度にダンスパートナーを申し込まれることが多かった。リィンは渋々その申し出を受け入れていたのだが……その時にアンゼリカも彼のことを知ったそうだ。

 

「つーか、ゼリカ。こんな時間からツーリングかよ。」

「フフ、ようやく仕上がってくれたんでね。ジョルジュも有望な後輩が出来たことに喜んでいたし、彼も相当のセンスと技術をもってるそうだ。確か、君と同じZ組だよ。」

「ああ、ルドガーですね。」

「さて、私は失礼するよ―――私も依頼を出す予定だから、その時は受けてくれるとうれしいな。」

 

そう言ってバイクにまたがり、その場を後にする。色々なことがあり過ぎて導力バイクの事に驚く暇もなかったが……すると、バンダナの先輩―――クロウのほうもリィンに挨拶をしてトリスタの街の方に帰っていった。

 

「……いろいろ濃い先輩たちだったな。」

 

でも、そう言った面々と比較してもリィンも十二分に濃い面々の一人であるということは、気付かぬは本人ばかりなりであった。

 

 

自由行動日―――リィンはいつものように郵便受けを見ると、生徒会からの依頼が入っており、それを一通り確認してから寮を出た。公園あたりまで来ると、ラジオ局に向かっていく一人の女性が目に入った。外見はカジュアルな格好なのだが……その雰囲気に妙な感じを覚えた。

 

「う〜ん……今日はどんなネタにしようかしら……」

(ラジオ局の人かな……)

 

彼女はそのままラジオ局に入っていくのを見たが……現時点では特に気になるようなことでもなかったので、そのまま依頼元の一つであるケインズ書房に行くこととなった。

 

 

その頃、技術棟の奥……ルドガーが交渉した末に建てられた工房で、熱心に機械を組むことに取り組んでいた。そして、一通り完成したところで休憩のために技術棟へと戻ってくると、ジョルジュが飲み物を持ってきていた。

 

「お疲れさん。少し休憩したらどうだい?」

「はは、すみません。御馳走になります。」

「大したことじゃないよ。それにしても、アンのバイクを大方見ただけであそこまで再現できるとはね。」

「まだ走行試験もしていないので現時点ではハリボテ同然ですよ。」

 

ルドガーが組み立てているのは二台目の導力バイク。アンゼリカが使っている導力バイクを参考にして部品から作り、くみ上げている。あと、ルドガーが転生前の世界で個人的な趣味の一つであった機械いじりの経験がそれに生きていた。

 

「いやいや、そこまで謙遜することもない。僕ですら試行錯誤してやっと形になった程度だからね。それを苦も無くやってのけるだなんて……一体、どんな人から教わったんだい?」

「何といいますか……自分の知的欲求に忠実な人です。良くも悪くも。」

「そ、それはまた……僕の知っている人にそっくりだよ。とりあえず、レポート作成の方を手伝ってくれるかな?アンのモニタリングデータが結構揃ったからね。」

「ええ。というか、手伝ってもらってる身ですし、断る理由もないですが。」

「……一応、君の方が年上なんだけれどね。」

「それを言わないでください……」

 

互いに知る“知的欲求に忠実な人”……それによって自分らが導力技術に詳しくなったことには互いにため息をつきたくなった。一通りレポート作成の手伝いをした後、気分転換ということでギムナジウムに顔を出した。その一室であるフェンシング部に顔を出したのだが……そこでは、片膝をつく平民生徒―――アランと、悠然と立っている貴族生徒―――パトリック。そして、その手合いの審判をしていたロギンスの姿であった。とりあえず事情を聴くためにロギンスのところに近づく。

 

「お、ルドガーか。先日は済まねえな……突然武器を持ち込んだりして。流石に使い慣れてる武器でねえと調子が出ないからな。」

「いえ、それが仕事みたいなものですから。で、この事態は?」

「解りやすく言えば手合わせだな。」

 

何でも、パトリックが『基礎など十分』と言って我侭を言い、とりあえずアランと手合わせをさせたとのことだ。これにはルドガーも怪訝そうな表情を浮かべた。気持ち自体は解らなくもないが、基礎を疎かにすれば痛い目を見るのは他でもない自分自身だということに気が付いてないのだろうか……

 

「本来なら、お前かアスベルあたりを勧誘したかったのだが……フリーデルもお前らと戦いたがっていたからな。」

「……説得できないんですか?」

「やったら俺が無事じゃ済まない。」

「ですよねー……」

 

フェンシング部の部長である貴族クラスのフリーデル……2学年では“最強”との呼び声も高い人物だ。その人に目を付けられていることには自分もそうだが、アスベルもため息ものであろう。すると、ロギンスの近くにいたルドガーにパトリックが気付いたようで、何やら笑みを浮かべている。

 

「フン、誰かと思えばローゼスレイヴか……丁度いい、僕の稽古台になりたまえ。」

「おい、パトリック……」

「先輩、言っても無駄だと思いますよ。どうせ、こちらが受け入れるまで引き下がるとも思えませんし……練習用の得物を借ります。」

 

そう言ってルドガーはアランに近付き、アーツで彼の体力を回復させた。そして、棚にある得物を手に取ると、パトリックに近づいた。

 

「お前……Z組のルドガーだったか。」

「ああ……敵討ちってわけじゃないが、離れていてくれ。」

「………解った。」

 

悔しそうな表情を浮かべるアラン……それを見つつも、ルドガーは剣を構えた。一方、それを見たパトリックは鼻を鳴らした。

 

「フン……この僕を甘く見ないで貰おうか。帝国貴族たる僕に勝てると思っているのかい?」

「って、おいパトリック………!!」

 

そう言って繰りだしてくる突きの応酬。ロギンスが合図もなしに手合いを始めたパトリックを諌めようとしたのだが、それよりも早く動いたのはルドガー……

 

「ふっ!!」

「なっ!?」

 

何と、パトリックの懐に飛び込むと、彼の剣を握った腕を掴み……一本背負いの要領でそのまま投げ飛ばしたのだ。これにはルドガー以外の面々が唖然としたほどだ。ルドガー本人は身なりを整えて練習用の武器を元に戻すと、

 

「フェンシングの本来の技じゃないので、俺の負けということで問題ないですね?」

「あ、ああ……」

「さて、そろそろ部活に戻ります。」

 

そう言って、部室を後にしたルドガー……その後ろ姿に対して睨み付けるようにしていたパトリックの姿には一応気づきながらも、気にしないふりをしていたのはここだけの話だ。それを見たアランはパトリックが負けたことよりもルドガーの強さを見て、改めて自分を鍛えようと決意したらしい。その後、部長であるフリーデルがロギンスからその一部始終を聞いて目を輝かせていたそうだ。

 

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というわけで……無自覚にフラグを構築していくリィンとルドガー。

最終的な人数?………私には予想できません(何

 

そして、その裏側では旧校舎探索……べ、別に戦闘シーンが思いつかなかったわけじゃないですからね。原作通りは拙いと思っただけですから。アスベルたち突っ込んだら、『コイツ一人で(ry』になりかねないと思っただけです。

説明
第22話 二人は朴念仁
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
4032 3705 4
コメント
(続き)Tの隠しクエスト(リンデ、ヴィヴィ、ロジーヌ)はこのためのフラグだったのかよ!……と内心ツッコミました。(kelvin)
ジン様 こちらのエリゼも“剣聖”に習っていますので、怒らせてはいけません。強さの加減は正直決めていませんが……皆伝クラス位あれば十分ですよね?あと、女学院生は何気に気になったので…フラグ立ってますからね、アレ。(kelvin)
あと閃Uだと何気にリンデとヴィヴィにもフラグを立ててるんだよね^^;(ジン)
(続き)ロリじゃないんですよ。先行投資という奴です。例えて言うと“光源氏方式”……青田買いとも言いますが(コラ!!(kelvin)
あの閃Uで出てきた女学院生たちのことか!あとは何気にロジーヌってリースの上司なんだよね^^;(ジン)
sorano様 えと……現時点での推定で10人以上(ぇ……数が確定していないのは、名無しなのに存在感があり、ちゃっかりフラグ立っていた“二人”の扱いです。それに、Uをやっていて気に入ったキャラが多いので……HAHAHAHA(半ばヤケクソ) リィン、爆発しろ(kelvin)
↓こっちのエリゼも八葉一刀流だからSクラフトは八葉の奥義(ただしオリジナル)だと思うよ^^;そしてSクラフト討ち終わった後にアルフィンの双子の姉?のSクラフトでCP回復してもう一度食らうんですね、わかりたくありません(ジン)
↓というかそのメンバーだと半分近くが年下かつ貧乳だからリィンがロリ(秘剣・鳳仙花×2!サウザンドノヴァ!シャドウブリゲイド!レインボーショット!)ギャ――ッ!?……私達はまだ成長期なんです(だよ)!わかりましたか(わかった)?ウフフフフフ……!ガタガタブルブル←顔を青褪めさせて身体を震わせるリィン(sorano)
↓多分自分の予想ではエリゼ、エリゼの双子の妹、アルフィンの双子の姉?、ステラ、ラウラ、フィー、ロジーヌ、エマ、トワかなって思ってます。(ジン)
ちなみに今の所、リィンって何人のヒロインを落として、喰いまくる予定なんですか?(激怒)まあ、どうせその中にエリゼ達は入っているでしょうけど……って、いかん。自分の小説のリィンの状況と一緒にしてしまいました。さすがにそこまで節操なしじゃないですよね?(多分、いや、きっとそうだと信じたい……(遠い目))(sorano)
アラル様&THIS様 その辺の話は少しずつ明かしていきます。まぁ、二人とも『自分はモテない』と思っている優良物件ですからねw(kelvin)
そうか・・・アンゼリカが師匠と仰ぐレベル。ここまできたらあっぱれだよ。しかし鈍ガンが二人なのは罪すぎる。(THIS)
リィンがゼリカに師匠言われるか…ある意味波乱な予感が(アラル)
ジン様 成程です。アランとの関係があるのは彼の幼馴染のブリジットの方ですね。私としてはそっちを応援してあげたいのでw(kelvin)
違くてアラン×フリーデルじゃなかった?ってこと(ジン)
ジン様 アランはその場で一部始終を見ていますので間違いではないかと…… 旧校舎関係はノーコメントでお願いしますw(kelvin)
あれフリーデルはアランじゃなかった?(ジン)
まぁ第五層位までならリィン一人でも余裕だと思うしね。(ジン)
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閃の軌跡 神様転生要素あり ご都合主義あり オリキャラ多数 

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