新・戦極†夢想 三国√・鬼善者を支える者達 第035話
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新・戦極†夢想 三国√・鬼善者を支える者達 第035話「関羽の覚悟」

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長安、漢中、江陵の三国同盟が組まれてから、影村、張魯、劉表の各当主は当主としての立場でそれぞれ仕事に追われていた。

同盟国への新たな市場経路の確立、他国への備え、技術交換の交渉などといったそれぞれの土地の強みを交えて、睡眠時間を削っての交渉が日々行われていた。

一方その頃、劉備軍陣営では……

 

諸葛亮は執務室にてとある案件の処理を、自らの主である劉備、自らの最大の友であり劉備軍副軍師の?統を交えて行っていた。

そんな中、廊下より革靴独特の乾いた音がコツコツと聞こえてくると、その場にいる全員が背筋に寒気が走り、その音が近づくに連れてより寒さが増してくる。

やがてその足音が自室の前に止まり、扉が勢い良く開かれると、頭が埋もれるほどの木簡と書物を持った関羽が入ってきて、諸葛亮の机の上にそのブツの半分を置き、その音で彼女もビクリと跳ね上がる。

「孔明殿、一先ずこれが終えた案件ですので、また目を通しておいていただきたい」

そう笑顔で答える関羽に対し、諸葛亮は苦い笑いを零しながら「確認します」と言って受け取った。

「それで、次の案件などはございますかな?」

「ちょ、ちょっと待って下さいあいsh「あい?」……いえ、関羽将軍――」

諸葛亮が関羽の真名を呼ぼうとした瞬間、彼女の視線を感じた諸葛亮は慌てて言い直した。

「もう私達が行える内政は将軍が殆ど終わらせてしまいました。今私達が行っている作業も、先日将軍が持ってきてくれた案件の見直しが殆どですので……」

諸葛亮と?統の背中には、大量に積まれた書物・木簡があり、その殆どを関羽が行い、余りにも作業が早いので二人の確認が追いついていない状況である。

関羽は笑顔ながらもホンの一瞬冷めた視線を諸葛亮に向け、直ぐに元に戻ると、次は?統の机に残りの手に持つ書物と木簡を置いた。

「?統殿、お借りした兵法書お返しいたす。次の仕事が入ってくる間、また勉学に励みたい。また何かお貸し願えるか?」

関羽の何処か謎めいた笑顔の威圧に?統もタジタジながらも、ゆっくりと答える。

「……あ、あのぅ……将軍に貸した兵法書も私が持つ物はそれで最後です」

?統は元々荊州出身であり、その実家には彼女が幼女期に学んだ大量があるのだが、それに興味を持った関羽は彼女に取り寄せを頼んでその殆どを読破してしまい、今?統に返した兵法書が最後だという。

その答えにまたもや関羽は諸葛亮に向けたような冷めた目を一瞬見せて笑顔に戻り、彼女に訪ねた。

「そうか、それは残念だ。では内政学はどうだ?水鏡塾で学んだ物などの書き写しは無いか?」

「……それなら実家に取り置いてますけれども、少し時間がかかりますよ」

「構わない。その間はまた劉表様に書物庫を借りて、またそこで書物を嗜むさ」

ここ最近、関羽は一日の4分の1をその書物庫にて過ごしている。

休憩中、昼食後、夕餉後、時間が空けばその分の殆どを書物庫に滞在し、既に読み終えた書物を漁り、時を過ごしている。

しかしだからと言って武人である彼女が武芸を怠っているわけでもない。

彼女は誰よりも早くに起床して、自らの仕事が始まるその時まで訓練を開始し、夕餉後は書物の字が見えにくくなるまで書物庫に篭った後に訓練を開始。

月明かりが怪しくなってきた頃に終わり、最後に匂いが残らないように誰もいないところで寒風摩擦を行って、自室にて睡眠をとる生活を送っている。

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「劉備様」

その言葉に劉備も軽く体がビクっと震えた。

ただいま彼女は自らに課せられた内政を行っている。

その量は関羽の4、いや5分の1にも満たない程であるが、それでも彼女は必死にその半分を終わらせたところであるのだ。

【遅い・サボっていたのか?・主としての自覚が足りない】頭に浮かんだそんな言葉でも言われるかと思いきや、関羽はとある物を取り出した。

「………これは?」

「劉備様が欲しがっていた、漢中産の『五斗米道』茶葉です。少しこれでも飲んで頭をスッキリさせた後作業を行えばよろしいのでは?」

「……え……えぇ!!あの何処の店にも置いていないっている最高級茶葉!?」

漢中で作られた『五斗米道』の茶葉は、健康に良く・美味く、何より美肌効果があると言われているので、そのあまりの人気ぶりに、今では金持ちすら買うのも難しいと言われているのだ。

「で、でも……休んでいいの?」

「……何故そんな不安そうな顔で見つめるのです?別に私も鬼ではありませんよ。仕事するときは仕事、休む時は休む。ことの分別をハッキリすればいいだけです。それに最近劉備様は近頃一段と仕事効率が上がりましたからね。私からのご褒美です」

「やったーー。ありがとうあいsh「あい?」……う、礼を言います。雲長」

先程より関羽が真名を呼ばれようとした際に、指摘を入れるのは、劉備軍でも仕事の時は真名で呼び合うのは止めて、名で呼び合うことを決めたのだ。

『決めたことを上が守らなければ下は付いて来ない』その考えのもと関羽はひたすら無言の圧力で注意をしているのだ。

「そ、それじゃあ、雲長も一緒に飲もうよ。きっと美味しいよ」

「申し訳ございません。私はこのあともまた別の用事があるのです。また次回誘って下されば幸いですが……」

「わ、わかったよ。こ、この次の機会ね…うん――」

劉備がそう言うと、関羽は彼女に一礼して扉を閉じてそのまま部屋を出て行った。

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「は、はぅ。愛紗ちゃん強かったよぉ」

劉備の言葉に彼女の傍付き軍師達もうんうんと同時に頷き同意する。

関羽は華雄に敗れてからさらに人が変わった様に変わった。

自分に厳しく、人には最上級の飴と鞭を与える様になった。

彼女は決して怒らないのだが、しかしその笑顔の下が強くて、何かを行ってしまえば皆まず自らが行える最大級の謝罪から入るのだ。

それ故劉備も以前の様に容易に仕事をサボることも全く無くなった。

その原因として一つ例が挙げられるのが、『居眠り事件』。

その日は珍しく諸葛亮と?統は外に出ており、劉備は一人で案件を片付けている時である。気候は暖かく、居眠りをするのは最適な温度であったので、彼女は部屋に差し込む陽の光で仕事中にも関わらずスヤスヤと眠りに入った。

しばらくして目が覚めると、いつもは諸葛亮が使っている机にて関羽が黙々と案件を行っており、その仕事を行っている姿だけで目覚ましにはバッチリであり、劉備の眠気は一気に吹っ飛び、椅子を倒す勢いで立ち上がってしまった。

しかし関羽は怒らなかった。

怒らなかったがただ一言こう言った。

「良くお眠りになられましたか?それはよかった。民は畑を耕し、商人は商売に勤しんで銭をまわしている。それに対し、彼らから税を貰い管理する貴女様はそこにある仕事を放り出して居眠りをしている。さぞ良い夢を見れたことでしょう」

その一言により劉備は関羽より行う量が少ないとはいえ、その日は彼女より僅かに早く仕事を終えることが出来た。

これが『居眠り事件』であり、それ以降劉備が仕事をサボっている姿を見たものはいないと言う。

またそんな関羽がいることで劉備軍は皆鼻が高くなってもいたが、とうの本人である関羽だけはまだ満足していなかった。

【……まだだ、こんなことではあの者には】

彼女の思う『あの者』というのは、三国同盟の取りまとめも行い、それを完遂させた者、影村のことである。

関羽は書物庫にて調べごとを終えると、武芸の修練の為に荊州の山に登った。その帰りの際、たまたま聞こえてきた剣戟の音に連れられて林の中を進んでいき開けた広場に着くと、そこにいたのは影村軍の軍師である北郷颯馬、一刀と自らと同じ真名を持ち、容姿も双子と間違うほど似ている関椿であった。

二人共肩で息をするほどボロボロになり、一刀は何とか膝を落とさぬ様に踏みとどまり、椿も偃月刀を支えにして立っている状態であった。

自らが立ち向かい、一瞬のうちに勝負を決められた一刀と、その一刀以上の武を持つと言われる椿。

その二人をあのような状態にまで追い詰めている者の姿は一体何者であろうかと、視線を向けたその先にいた者は、影村の正妻である、長尾晴景の姿である。

ちなみに彼女の真名は恋歌というらしい。

彼女の手に持たれている武器は鉄扇。

あの鉄扇は普段影村が扱っている獲物であり、普通の扇と比べても何十倍の重みがあるにもかかわらず、その様な重い鉄扇を彼女は普通の扇を扇ぐように涼しい顔で軽く扱っている。

晴景は明後日の方向を向くように鉄扇を扇ぎ、その間再び椿は動き出し、彼女の背後に回る。

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一刀は椿とアイコンタクトをとり自らは晴景に突っ込み腰の刀を抜刀して切りかかる。

その際の抜刀術は遠目の関羽の目にはハッキリ見切れるものではなく、間近でも見切れるかどうか……。それほどの速さを持った攻撃であったが、その攻撃も晴景に止められてしまっている。

しかしただ止めているだけではないのだ。

晴景の右わき腹に向けて抜刀された刀の筋先を左の”指だけで”止めている離れ業を実行している。

一刀と一度戦ったことのある関羽は、彼の剣筋の鋭さ、剣戟の重さはよく知っているつもりだ。

そんな一刀の刀を止めている晴景が、ふとこちらに視線を零し、そっと自分に対して僅かに微笑んだ感じがした。

その時、関羽の背中に悪寒が走った。

少なくとも自分は物音を点てず彼らを観察しており、なにより向こう側からはかなり距離があり、こちらは茂みの中よりそっと覗いているだけである。

そんな自分に気付くということは、彼女は鳥以上の視力を持つか、これほどまで離れた自分の気を感じ取ったかのどちらかだ。

だがそんな考えも、晴景の後ろより襲い掛かる椿にかき消される。

椿は気合の篭った突きを晴景の背中に放つが、彼女の突きは閉じられた鉄扇の親骨に阻まれる。

しかしこの隙に一刀は力一杯刀を抜き取ろうとしたが、晴景が思ったよりもあっさり離し過ぎたせいで踏ん張りが利かず後ろに後ずさってしまう。

その瞬間残された晴景と椿の体制は椿の突きを押しとどめている晴景……っという形になるが、晴景はその体制のまま一気に回れ左を行う。

晴景の背に向けて力を込めていた椿の体は右に流れてしまい、バランスを崩した椿の体を瞬時に彼女の両腕だけを左腕でホールドし、キツイ拳骨を顔面へと叩き込み、椿は地面へ叩きつけられるように転がっていった。

その椿の手から離れ、地面に落とされた偃月刀の石突の部分を踏みつけて獲物を立たせる様に打ち上げ、左手に偃月刀を握る。

その偃月刀を一刀に向けて、閃光の様な速さで投擲し、一刀はその速さに何とか対応し、流し防ぐが、投擲された偃月刀のあまりの重さに流したにもかかわらず少しバランスを崩し、彼がバランスを崩している間に、一刀は晴景に対し自分の間合いを入る事を許してしまう。

彼は瞬時に体制を立て直して晴景に一閃放つが、体制の整え切れていない者の一閃を見切ることは容易く、彼女は一刀の下部に逃げ込みローキックの回し蹴りで彼は宙に浮いてしまう。

そして最後に宙にて待(舞)ってしまった彼の左わき腹に、回し蹴りの回転を利用した((踵|かかと))落としを喰らわせて、椿と同じ地面の味を舐めさせた。

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「はい。今日はこのくらいでいいでしょう」

暫しの静寂の後、晴景はそう答えると、椿と一刀は体を引きずる様に立ち上がり、椿は口の中の血を吐き、一刀は先ほどわき腹に喰い込んだ踵落としが効いたのか、その場で嘔吐している。

「……なんと凄まじい――」

近頃の関羽は自分の実力は過信し過ぎない様に心がけている。

だから自分と比べての一刀と椿の差は判っており、また今の自分でも彼らには適わないことも知っており、そんな彼らは目標でもあった。

だがそんな彼らですら、影村の奥方には手も足も出ていない状態である。

「………関羽将軍もこちらに来ませんか?」

突然の自らへの呼びかけに関羽は戸惑った。

あの時自分に向かって微笑んだのは偶然では無かったのである。

この様な場を覗き見していた彼女は、一体どんな目にあうのかと恐怖したが、晴景は「別に取って食べようとするわけではない」っと答えた。

もし自分に対し何かをするだろうとしても、現在この状況で逃げても、どちらにせよ滞在している城にて会うことになるのだ。

そんなことを考えながら、関羽は彼らの前に出て行った。

 

「そう。こんな山の中で自主練に。偉いわね」

「え、あ、その、いえ……武人の嗜みですから――」

先程の触れる物全てを灰にする感じのオーラは恋歌に無く、彼女は地面に((轢|ひ))かれたシートの上で、自らが作ってきた弁当箱を広げて関羽に振舞っており、先程まで吐血と嘔吐をしていた椿と一刀は、これでもかと言う程に飯をがっついていた。

「……あの、それより一刀殿と椿殿は大丈夫なのですか?先程あれほどの動きをしたにも関わらずあれ程食料を食べても」

一刀は劉備に自分の名を呼ばれることを拒絶したが、別に関羽には言っていないので、特に反応することは無かったが、関羽が恋歌に対し言った言葉を自分が言いたそうに話しだす。

「今日恋歌様が行ってくれる訓練はこれで終わりだからね。この後城に戻っても政務が待つだけ。それに恋歌様の訓練は食べないことにはやってられないよ」

動いた分は吸収する。そう言わんばかりに一刀はそう言うが、関羽が疑問に思ったのはそうではない。

ただいま一刀も椿もボロボロである。

巷で噂となっている天の羽衣と言われている聖フランチェスカのポリエステルの制服は、破れていけないので近くの木に掛けられており、二人の格好は動きやすい黒のアンダーシャツの様なものである。

そのシャツも所々何処かで擦れた様に穴が空き、その下から擦り傷が見える。

凄まじい訓練を行っていたのは火を見るより明らか。

自分がそんな状態であれば、疲労のせいでまず飯を駆け込むことなど出来ない。

仮に無理にでも飯を駆け込む様なことになれば、胃より食した飯が逆流し嘔吐することなどありうるのだ。

無論彼らも馬鹿では無いので、今こうして飯を駆け込んでいるということは、嘔吐する心配など無いということだ。

「大丈夫よ。この子達は慣れっこだから」

関羽が嘔吐の可能性も考えていると、恋歌が彼女の心を読み取るように”大丈夫”と施した。

「……慣れっこだということは、いつもあんな訓練を、夫人様が施しているのですか?」

「うーん、そうね。あの人の重臣ぐらいの力がある人なら、希望者限定で見ているわね。……っと言っても、最近は産休で休んでいたけどね」

彼女がそう言うことで、関羽はいくつかの人物が思い浮かんだ。

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まず一刀の妹の武田信廉(三葉)なる人物。

幼い容姿に見えながらも、調べた情報によれば彼女は『影村の影の軍師』っと言われているようであり、以前の西涼による情報操作事件も彼女が主体と行ったらしい。

策士である影村も彼の武将達以上の武を持っている。

いくら”軍師”と呼ばれていようが、一刀の妹も見てもいないのに武がないと決め付けるのは早計だ。

次に伊達政宗(瞳)。

彼女も一刀と共に旅をしていた者であり、その実力も以前水鏡塾にて確認は出来ている。

他にも影村の義妹であり、影村夫人の実妹である上杉謙信(虎)。影村の側室である正木((通綱|みちつな))(柑奈)。

彼女らは対董卓連合で見かけた。

それと忘れてならないのは連合後にて、影村の側室となった元漢王朝近衛部隊隊長、皇補嵩。

翠……馬超の母親であり、現役を復帰した馬騰である。

関羽が思い浮かんだ影村の重臣はこれぐらいであるが、逆に言えば、これほどまでもの人数が影村夫人の訓練を少なくとも受けていると考える。

自らの武を超える一刀や椿の様な人物がこれほどいるのだ。

それほどの人材に恵まれ、さらにそれらを余すところなく使いこなす影村に、自分の主である劉備は勝てるであろうか。

答えは否だ。

例え天地が返ろうとも、今の劉備軍が影村と同じ軍勢を持っても勝つことは不可能である。

なればどうすれば良いのか。

漢王朝の血筋を引こうとも、”ただの劉備”は、元は農村の娘。

それに対し影村は数多の戦場をくぐり抜けてきた((戦人|いくさびと))。

いくら劉備が努力しようとも、普通に努力しただけではこれ程の差を持つ影村に勝てるはずもない。

そう、”普通の方法”では。

関羽の中にとある案が浮かんだ。

彼女は一つ深々と頭を下げて影村夫人に頼み込んだ。

「夫人様、どうか私を貴女様の弟子の一人としてくれませんか?」

その行動に飯を食べる一刀と椿(愛紗)の手が止まった。

特に愛紗に関しては、かつて自らが恋歌に求めて弟子入りした時の事を思い出す。

そこにいるのはまごうことなく次元は違えど”かつての”自分。

しかしあの時、恋歌に弟子入りした自分は『自らの武を高める』目的で弟子入りを懇願した。

しかし目の前の自分からは”それだけではない”ただならぬ雰囲気が見えており、隣にいる一刀も同じ考えであった。

それもその筈、関羽の考えはこうであった。

普通の方法ではいくら努力しようと影村に率いられた彼らを超えることなど出来ない。

まずは同じ土俵の上に立つ必要がある。

なればどうすればいいのか。

……”盗む”のだ。

彼らの行(や)って来た知識、経験。

影村と最も生を共にし、最も親しい存在であり、彼の一番の獲物(武器)である影村夫人に学ぶことが、その一番の近道である。

たとえ誰かに卑怯と謗られようとも。最も倒さなければならない敵に媚びを売るような結果になろうとも。関羽は頭を下げた。

自らの主の天下の為、そして………”己の為に”。

恋歌は着物を抑えスッと立ち上がり、関羽の前で屈む様に座りそっと耳打ちする。

「あんた、死ぬよ」っと。

その一言で関羽はゾッとなる。

先程まで優しい微笑を浮かべていた女性から、声は綺麗なのだが何かドス黒い物を感じた。

関羽は恋歌の顔を見れずに、自らの頬に脂汗が流れる。

恐怖する。一刀達が行われた特訓以上のことが、関羽にも行われるのだ。

しばらくして関羽は腹をくくり、一段と恋歌に頭を深く下げて言った。「お願いします」っと。

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それから恋歌は立ち上がり、関羽に背中を向けて言った。

「………恋歌。あたしの真名さ。あんたに預けてやるよ」

「あ、ありがとうございます。私の真名h――」

彼女の真名を預かることが出来、関羽は喜び自らの真名を言おうとするが、顔を上げた関羽の顔面を恋歌は蹴り飛ばした。

「勘違いするんじゃないよ。あたしの弟子になるということは、アンタは私の”道具”になるんだ。”道具”に真名など不要さ。これからのあんたの名は『((箱女|しょうめ))』さ」

「しょう……め……」

蹴られた顔を押さえる関羽は恋歌の言葉を呟き、恋歌は先程の清廉な感じを思わせない程大股でしゃがんだ。

「あたしにとってはアンタの駆け抜けた戦場。戦ってきた経験。自尊心なんか屁でも無いんだよ。まだまだあたしにとってアンタはただの『箱入り娘のお嬢さん』さ」

「私はそんなヤワn「道具が口答えするんじゃないよ!!」」

興奮した関羽は恋歌に突っかかろうとしたが、恋歌は先程蹴った関羽の頬とは反対の頬を叩き、関羽を沈黙させる。

「どうしても名で呼ばれたいのなら、このあたしを認めさせることだね。それともお高くとまった自尊心が邪魔して無理かい?」

関羽は憤慨しそうになった。

今すぐにでも武器を手に取り目の前の女に斬りかかりたい。

そんな気持ちが頭の中を駆け巡った。

しかし自重する。

それではなんの為に目の前の女に頭を下げたのか判ったものではい。

関羽は怒りで震えるのもグッと堪え、改めて目の前の女に頭を下げた。

「宜しくお願いします……師よ……」

上手く怒りの声を抑えることが出来たであろうか。気に障ることは言っていなかったであろうか。

そんな考えが頭を駆け巡りながらも、彼女は地面の上ながらも、土下座をしながら深々と頭を下げる。

恋歌は関羽に背を向けて言った。「明日、また今と同じ時間にこの場所に来い」っと。

関羽は恋歌たちが立ち去りながらもずっと頭を下げ続けていたが、恐怖したのか、怒りのせいなのか、その体はどこか震えていた様でもあったそうだ。

 

 

「母上。どうですか?かつての私は」

現在、恋歌と椿(愛紗)は二人で風呂の湯船に浸かっていた。

「そうね。まだ何とも言えないけれども、少なくとも貴女だけあって素質はあるわね」

「……やはり、脅威となりえますか」

「ふふふ、それは育ててみないことには判らないわ。……でも、一つ言えることがあるわね」

「それは?」

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「あの子には王の素質がある」

 

説明
私「どうも、久しぶりの投稿です。今回の主役は関羽でやってみました」
恋歌「それはそうとうp主さん」
私「どうしましたか恋歌さん」
恋歌「久しぶりに私込みのストーリーが書かれているにも関わらず、なんで終盤には私が悪役みたいな立ち位置なわけですか?」
私「そりゃ、関羽にとって重昌はラスボス的な感じになるわけですから、恋歌さんは重昌のところに向かうまでの最終砦。つまりラスボス部屋の前の門番です。問題はないかと?」
恋歌「酷い、酷いわ!!こんなにも可憐で清楚な私に、そんな役を押し付けるなんて」
私「昔は色々やっていたくせに。チラッ(過去に色々やってきたこと」
恋歌「……うp主、ちょっと来なさい」
私「あれ?恋歌さん?顔が怖いですよ。顔は笑っているのに、目は笑っていない。不思議!!」

それからショッキングな映像が入り、うp主はスッタフが片付けました。

恋歌「それではご覧下さい。どうぞ(ニッコリ」


まじかるー
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