英雄伝説〜運命が改変された少年の行く道〜
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リィン達がレグラムに向かい始めると深かった霧が僅かに晴れ始めた。

 

〜エペル湖〜

 

「なんだか霧が少し晴れてきているな。さっきの”幻獣”を倒したからか?」

「ええ、たぶんアレがこの周辺の”異変”を加速させていたんでしょう。しばらくは収まるだろうけどまた濃くなる可能性は高そうね。」

「ええ……多分もっと大きな原因があるんだと思う。その……エイドスさんはその”原因”について何か心当たりはありませんか?」

セリーヌの推測にエマは不安そうな表情で頷いた後エイドスに視線を向けたが

「”ただの新妻”である私にそんな事を聞かれてもわかりませんよ?」

「え、えっと……」

「…………フン。そう言えば”リベールの異変”で現れたアンタの”眷属”も”至宝”の出来事に関して直接介入をしなかったわよね?”眷属”がそうなんだから、アンタ自身も”人”の事情に首を突っ込むつもりはないから、そんなふざけた態度を取っている訳ね。……アンタによる”救い”を信じて遥か昔からアンタを信仰し続ける信者達が哀れとしかいいようがないわね。」

不思議そうな表情で首を傾げるエイドスの答えを聞いて戸惑い、セリーヌは鼻を鳴らしてエイドスを睨んだ。

 

「………………………」

「セ、セリーヌ。」

「さすがに言いすぎよ……」

セリーヌの指摘を聞いたエイドスは反論する事もなく静かな表情で黙ってセリーヌを見つめ、エマは冷や汗をかき、アリサは不安そうな表情をしてエイドスに視線を向け

(むしろエイドス自身が自分が”女神”である事を否定しているから、信者の人達の事なんて最初から考えていないんじゃないのかしら?)

(ハハ……さすがにそこまで非情じゃないと思うけど……)

ジト目のエステルの小声を聞いたヨシュアは苦笑した。

 

「ふむ、何にしてもこれからも引き続き注意を呼び掛ける必要があるな。それはそうと……一通り話は聞かせてもらったが。」

「帝国の内戦についてはこれからどうなっていくかわからない状況ですね……」

「ああ……そうみたいだ。各地では貴族連合と正規軍がいまだに戦いを繰り広げているし……メンフィル帝国もエレボニア帝国との開戦に備えて本格的に動き始めている。占領された学院や、カレイジャス……アルゼイド子爵の行方も気になる。」

エマの言葉に頷いたリィンは考え込んだ。

 

「学院に私達を助けに来てくださってからすでに1ヵ月あまり……さすがに心配ですね。」

「いや……エマにはすでに言ったが心配はいらないだろう。父上は絶対に無事でいる。………私はそう信じている。」

「ラウラ……」

「ふふ、ラウラ様のお父上でしたらきっと大丈夫ですわ。むしろ最優先に気にすべきはメンフィル帝国がエレボニア帝国との開戦をする時期ですわね。」

「はい…………話に聞く所、開戦に備えて本格的な準備をしているとの事ですし……」

「……エステル殿。貴女はリウイ陛下達と親しい間柄。エレボニア帝国に戦争を仕掛ける日を一日でも遅く思いとどまって頂くように進言する事は不可能だろうか?」

シャロンの話にエマは辛そうな表情で頷き、ラウラは真剣な表情でエステルを見つめた。

 

「うーん、メンフィル帝国に関してはあたしも何とかしてあげたい所だけど、リウイ達を説得しようにも肝心のエレボニア帝国がユミル襲撃の事件が起こってから1週間以上も経っているのに未だメンフィル帝国への謝罪や誘拐したエリスちゃんの返還をしていないんでしょう?肝心のエレボニア帝国がそんな態度を取り続けていたら、説得のしようがないわ。それに説得をするにしても第三者の立場であるあたし達だけじゃなく、例えばオリビエとかエレボニア皇族の人がその場にいて、メンフィルに直接謝罪をする必要があると思うわ。」

「……この際ハッキリ言わせてもらうけど、現時点では”遊撃士協会”も力になれないと思う。現時点のエレボニア帝国は”メンフィル帝国に対する謝罪の意を全く示していない上メンフィル帝国との戦争を回避したい意思も示していない”から、第三者の立場である遊撃士協会は仲介のしようがないよ。」

「そうですか………………」

エステルとヨシュアの話を聞いたリィンは辛そうな表情で肩を落とし

「…………貴女は……エイドスさんはメンフィル帝国とエレボニア帝国の外交問題についてどう思っているのだ?」

ガイウスはエイドスに視線を向けて尋ね

「あ…………」

「さすがのメンフィルと言えど、ゼムリア大陸の人々が遥か昔から崇め続けて来た”空の女神”直々の御言葉なら無視はしないと思われますし、七耀教会も全面的に仲介に協力すると思いますわ。」

ガイウスの質問にアリサは呆けた表情で静かな表情のシャロンと共にエイドスを見つめた。

 

「………―――何故、そこで”ただの新妻”の私に質問をするのかわかりませんが……先程セリーヌさんが仰ったように”空の女神”の”眷属”が”人”の事情に介入しないのですから、”空の女神”も同じだと思います。それに”私自身”はエレボニア帝国がメンフィル帝国の逆鱗に触れ、滅亡の危機に陥ってしまったのもエレボニア帝国の”自業自得”だと思っています。内戦を引き起こした貴族達や貴族達が内戦を起こす原因となった宰相……宰相の強引な政策によって得た利益等を手に入れる為に多くの人々の怨嗟の声を無視して来たエレボニア帝国自身…………―――そして貴族達を含めた”民”達を纏めきれず、むざむざと内戦を引き起こしてしまったこの国の”皇”の責任でもあると思っています。」

「それは………………」

「…………………………」

「ま、確かに”貴族派”と”革新派”を纏めきれなかったユーゲント皇帝の責任は完全にないとは言い切れないわね。」

「セ、セリーヌ。」

エイドスの答えを聞いたラウラは複雑そうな表情で目を伏せているガイウスと共に黙り込み、セリーヌの言葉を聞いたエマは不安そうな表情をしてセリーヌに視線を向けた。

 

「……気になると言えば、Z組の最後の方もそうですわね。残る一人はユーシス様のみですか。」

その時シャロンが重くなった空気を変える為に話題を逸らした。

「……そういえばレグラム方面にしばらくいたみたいだが……ラウラ達は行方を知らないのか?」

「ええ、リザイラさんの魔術で学院を離脱した時は一緒だったんですが……」

「ユーシスも故郷の方が気になっていたようだな。つい先日、鉄道を使ってバリアハート方面に向かったのだ。」

「そうか、それで……」

「だったら少しは安心だけど……」

「”翡翠の公都”バリアハート―――貴族連合の本拠地の一つか。今も鉄道を使えるのか?」

最後のメンバーの居場所がわかった事に安堵したリィンは真剣な表情で尋ねた。

 

「いや、彼が発った後、貴族連合に大幅に規制されてな。どうしたものかと我らも考えあぐねてな……エステル殿達が近日中にセントアークのギルドに向かう為にケルディックに向かうとの事だから、それに便乗しようと思っていた所だ。」

「え……エステルさん達はセントアークに向かう予定があるのですか?」

ラウラの話を聞いたリィンは目を丸くしてエステル達を見つめ

「うん。既にケルディックに訪れた事があるリィン君なら状況も知っていると思うけど、エレボニア帝国領に隣接しているメンフィル帝国領は内戦の影響で様々な問題が起こり続けていて、ギルドも応援のあたし達が来ても手が回らない状況なの。それで3日前あたりにセントアークのギルドから本部が手配した人達が到着するまで手伝ってくれって応援要請が来ちゃってね……先にミントとフェミリンスをケルディックを経由してセントアークに向かわせて、あたし達はラウラさんとエマさんが何とかはぐれたZ組の人達と合流するのを見届けてから行こうかなって思っていたのよ。」

「ちなみにケルディックに向かう理由はケルディックにある転移魔法陣を使う為だよ。ケルディックにもメンフィル帝国が設置した他の地方と繋がっている転移魔法陣があるからね。」

「そうだったんですか…………ラウラと委員長の為に無理をして残ってくれてありがとうございました。」

エステルとヨシュアの話を聞いたリィンは二人に頭を下げ

「アハハ、お礼なんて別にいいって。あたし達は大した事はしていないし。」

エステルは苦笑しながら答えた。

「ま、どうするかは街に戻ってからでいいでしょ。」

「ええ、いざとなったら街道を使う事もできますし。………………」

セリーヌの意見に頷いたエマだったが顔を項垂れて黙り込み、その様子に気付いたリィン達は不思議そうな表情でエマに注目した。

 

 

説明
第362話
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コメント
本郷 刃様 ディル・リフィーナの宗教はちょっと違う気が(汗)(sorano)
結局のところ宗教なんてそんなものですよね・・・周囲が勝手に祀り上げるか、自身で教祖にでもなるか、どちらも性質が悪いですけどね(本郷 刃)
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