真・恋姫†無双 外史 〜天の御遣い伝説(side呂布軍)〜 第五十二回 拠点フェイズ:張遼A・混乱、それは時に人を大胆にするステータス
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張遼「アカン・・・アカンでぇ・・・」

 

 

 

季節は肌寒さを感じ始める初冬の頃。

 

そんな時節のとある朝。

 

朝食を済ませた張遼は自室で一人ブツブツ呟いていた。

 

 

 

張遼「恋は散歩を口実にでえと、そのまま河原で告白。ねねも自室で告白、そのまま本屋へでえと・・・」

 

 

 

このような朝方の働き時にいったい何をと思うかもしれないが、張遼は本日非番である。

 

しかし、せっかくの貴重な休みであるにもかかわらず、張遼の表情は非常に険しい。

 

 

 

張遼「ななは時間の問題やろーし、焔耶は城下案内やっちゅーてでえとをやりよった。桔梗はんも意外と侮れん。しかも、この前は一番

 

新入りのはずの雛里までもが一刀と本屋でえとをやり遂げよった・・・!」

 

 

 

そして、一人しかいない自室でやや大きめの独り言をひたすらぶつぶつ呟いていた張遼は、やがてカッと目を見開いた。

 

 

 

張遼「いつまでも師匠気取りでおる場合やない・・・!なんやかんやで古株のウチが一番なんもできてへん気がする・・・!」

 

 

 

ボッという擬音が聞こえてきそうなほど張遼の瞳が燃え上がる。

 

 

 

張遼「たぶん今の時期は一刀も仕事はそんなにせっぱ詰っとらんはずや・・・今日や・・・今日からウチと一刀は主従の関係から、子弟の

 

関係から抜け出して、男女の関係になるんや・・・!」

 

 

 

もはや独り言のトーンをはるかにオーバーして決意表明した張遼は、こぶしをミシリと握り締め、明後日の方向を睨みつけた。

 

 

 

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【益州、成都・中庭】

 

 

北郷「はぁあああッ!!」

 

張遼「まだまだ甘いッ!!」

 

 

 

北郷の直刀と張遼の偃月刀が、キンッという音高い金属音を発しながら交差する。

 

 

 

張遼「ほらまたや!腰が引けとんで!もっと踏ん張りや!」

 

北郷「てやぁぁッ!!」

 

 

 

張遼の助言を受け、北郷は重心を落とし、しっかりと地を蹴って腕だけで刀を振るうのではなく、

 

しっかりと刀に自身の体重が伝わるように刀を振るった。

 

それを張遼が偃月刀で受け、カキンッという、先ほどよりもやや鈍い金属音が中庭に響く。

 

 

 

張遼「ほら見てみぃ!えー重さになったやんか!この感覚をさっさと体に染み込ませや!!」

 

北郷「せいッ!!」

 

 

 

北郷は張遼の偃月刀を弾くと、返す刀で先ほどと同様に自身の体重を乗せた一撃を袈裟懸けに打ち込んだ。

 

張遼も弾かれた勢いを殺すことなく返す刀で北郷の一撃を受ける。

 

ガキンッという先ほど同様やや鈍い金属音が響き渡った。

 

 

 

張遼「せやッ!えー感じやッ!!」

 

 

 

張遼は北郷が着々と成長するさまを目の当たりにして、満足そうな表情を浮かべた。

 

 

 

のだが・・・

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

張遼(ちょー!!ちょい待ちィ!!ちゃうやろ!!何やこれ!これやったらいつもと何も変わらんやんけ!!何がえー感じや!!えー所

 

なんて一つもあらへんがな!!)

 

 

 

北郷の腰の入った猛攻を軽くいなしつつも、自身の思い描いていた理想と現実のギャップに対して激しく思考が脳内を巡る。

 

 

 

張遼(何でこないなった!?ウチは一刀をでえとに誘うつもりやったはずやろ!?馬乗って遠乗りでも行こかーみたいな計画やったはず

 

やんか!?せやのに・・・せやのにッ!)

 

 

 

頭の中は他のことを考えていても、張遼は確実に北郷に対して反撃を加えており、北郷はそれらの攻撃をかろうじて受けていく。

 

 

 

張遼(何が「部屋に閉じ籠ってばっかやったら腐ってまうで!ウチが稽古つけたるから表でぇ!」やねん!!何でいつの間にかいつもの

 

感覚で稽古に誘っとるんやウチはァーーー!!!)

 

 

 

しかし、いつものように稽古をしてはいるものの、

 

やはり張遼の様子が少しおかしかったのは北郷の目から見ても明らかだったようで、そこをすかさず北郷は突こうとした。

 

 

 

北郷「どうした霞!今日はなんだか甘いぜ!!」

 

張遼「甘くなんかあらへんわ!!これのどこが甘い展開やねん!!殺伐としすぎや!!」

 

 

 

と、張遼が訳の分からないことを叫びながら偃月刀の柄の部分を下段から一気に振り上げた。

 

思わぬ変化球を受けた北郷はなんとか刀で受け止めようとするが、あえなく力負けしてしまい、刀を弾き飛ばされてしまった。

 

そして、抵抗のなくなった張遼の飛龍偃月刀は、そのままの軌道と勢いを保ったまま一気に振り上げられた。

 

つまるところ、張遼の下段からの攻撃は、見事に北郷の股間をクリーンヒットしたのであった。

 

 

 

北郷「ふォわァああァァッ・・・――――――!?」

 

張遼「ぁ・・・ヤバ・・・」

 

 

 

息子を叩き潰された北郷は、苦悶の表情と鳥がくびり殺されたような断末魔を残して、その場に崩れ落ち悶絶してしまった。

 

 

 

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【益州、成都・城下町】

 

 

張遼「ホンマに堪忍なぁ・・・」

 

北郷「はは・・・いや・・・オレが油断したのが・・・悪いからさ・・・」

 

 

 

北郷は額に脂汗をにじませ、苦笑いをしながら力なく答えた。

 

 

 

張遼「(アカン・・・完全に機を逸っしとる・・・いや、ここでお詫びとか言ってなんとか口実を無理やり作らんと――――――)」

 

 

 

しかしその時、考え事をしていたせいか、張遼が道に落ちていた石に蹴躓いて盛大に顔面から地面にダイブしてしまった。

 

 

 

張遼「うわぁ!?」

 

 

 

このように張遼がこける姿など北郷は初めて見た。

 

 

 

北郷「だ、大丈夫か!?」

 

張遼「はは、めっちゃ恥ずかしわ」

 

 

 

北郷の慌て様に、張遼は恥ずかしそうに少し赤くなっている鼻頭を擦りながら乾いた笑い声をあげた。

 

 

 

北郷「本当に大丈夫か?何か今日は考え事が多いみたいだけど」

 

 

 

一方、北郷は本当に心配そうな表情を向けながら、そっと手を差し伸べた。

 

ホンマ、ウチは何がしたいんや・・・と思いながら、張遼は素直にその手をつかむ。

 

 

 

張遼「ああ、大丈夫や。ちょっと考え事をな・・・」

 

北郷「そっか、何か悩みがあるんならオレ、いつでも相談に乗るからな!」

 

 

 

そう言いながら北郷はニッと穏やかな微笑を張遼に向けた。

 

その瞬間、張遼の頬が若干朱に染まる。

 

ホンマ、何でこういう時だけ平気でそういうことをそんな顔でホイホイ言えるんや、と張遼は心底そう思った。

 

しかし、悩みの種はアンタなんやで?とは決して言えなかった。

 

張遼にはまだもう一歩踏み込むきっかけが必要であった。

 

恋愛については良くわからない。

 

それは北郷と出会って幾年かたった今でも変わらない。

 

北郷のことは間違いなく好きである。

 

しかし、これが恋愛感情なのか何なのかわかっているようでよくわからない。

 

そのきっかけをでえとでつかめれば、そう張遼は思っていたのだ。

 

しかし、どうやら今回もこのままなんとなく流れて何事もなく一日の終わりを迎えそうである。

 

そのようなことが一瞬のうちに頭をよぎり、張遼は不安げな表情を作った。

 

すると、そのような張遼のらしくない様子を見て取った北郷は、張遼の頭を優しく撫でた。

 

そう、かつて張遼たちと北郷が出会って間もないころ、荊州付近の宿屋で二人きりで酒盛りをしている際、

 

己の過ちを悔いる張遼を優しく撫でてくれたあの時のように。

 

初めて男性に対して理解できない、言い表せない感情を抱いてしまったあの時のように。

 

 

 

北郷「今なら恋たちも見てない。遠慮なんていらないよ?」

 

 

 

しかし、きっかけなど意外と思いもよらない単純なものであり、これら一連の北郷の行動は、張遼の心を突き動かすのには十分であった。

 

 

 

張遼「か、一刀!」

 

北郷「ん?」

 

 

 

そして、若干声が裏返り気味になりながら、張遼は意を決して北郷に告げた。

 

 

 

 

 

 

張遼「あんな!ウチ、温泉に入りたいねん!」

 

 

 

 

 

 

北郷「温泉?あぁ、この前、恋の飼ってる犬が掘り当てたっていうあの温泉か?びっくりするよなぁ、確かに益州って天然温泉とかよく

 

見つかるって聞いたことがあるけど、まさか犬が掘り当てるなんて、ホント冗談みたいな話だよなぁ。でも、温泉くらい別にオレに相談

 

なんかしなくても行ったらいいんじゃ・・・・・・・・・あれ?ま、まさか、お、オレと?」

 

 

 

呂布の犬が温泉を見事に掘り当てた光景を思い出しながらの北郷の言葉であったが、ふと張遼の様子を見たところ、

 

その視線がじっと北郷の法に向けられていたため、まさかと思い聞いてみたのであったが、

 

なんと張遼は恥ずかしそうにゆっくりと肯定の意を示したではないか。

 

当然北郷に動揺が走るのは無理ない話である。

 

 

 

北郷「な、何でオレと!?」

 

 

張遼「そ、それはほらあれやあれ!!さっきから体ぎょーさん動かして汗かいたやろしそろそろ肌寒くなって温泉入りたくなる時期やし

 

やっぱ親睦を深めるには裸の付き合いが一番っちゅーかいやいや別に裸やゆーても全然変な意味やないんよホンマあくまで主従の関係を

 

深めよっちゅーかとにかく親睦を深めよっちゅーことやもし変なこと考えてたんやったら残念やったなッ!!」

 

 

 

張遼は首と両手を全力でブンブン左右に振りながら否定のジェスチャーをし、

 

声を若干裏返らせながら言い訳のようなことを息継ぎもせず一気にまくし立てた。

 

 

 

北郷「いや!べ、別に変な事とか考えてないし!か、考えてないしッ!!うん!温泉か!実はあそこまだ一回も入ってないんだよなオレ!」

 

 

 

北郷もまた、張遼の妙な雰囲気にあてられ、おかしなテンションになってしまい、張遼同様声を若干裏返し気味に答えた。

 

 

 

張遼「さ、さよか!ほ、ほならさっそく行こッ!今から行こッ!すぐ行こッ!」

 

北郷「お、応ッ!」

 

 

 

結局、半ば強引に張遼に引っ張られるような形で、二人は温泉へと向かった。

 

 

 

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【益州、成都城下・温泉】

 

 

かぽ〜ん、という擬音は残念ながら聞こえてきそうもない、完璧な露天風呂である。

 

湯船はそこそこの広さがあり、犬が掘り当てたという事実を考えれば想像以上にちゃんとした温泉に整備されていた。

 

そして何よりポイントなのは、殿方とご婦人とで敷居があるわけではなかった。

 

つまり、混浴仕様であった。

 

中途半端な時間のためか、どうやら先客はいないようである。

 

北郷はかかり湯を浴びて軽く汗を流すと、ゆっくりと湯につかった。

 

 

 

北郷「ふぅ〜、生き返るなぁ〜〜〜」

 

 

 

けど、まさか霞と温泉に入ることになるとは・・・いや、変に意識している自分が変なのだろうか・・・

 

でも年頃の男女だし意識するのは当たり前だろ?などと北郷が悶々としていると、少し遅れて張遼がやって来た。

 

張遼はすでに温泉の熱気にあてられたのか、頬が紅潮しており、体にはタオルを巻きつけていた。

 

とはいえ、張遼の女性的な体のラインを強調させており

 

(普段もかなり強調されているが、今回の場合は温泉という状況がハードルを一層上げていた)

 

北郷は本能的に目をそらさざるを得なかった。

 

そして、張遼もかかり湯で軽く汗を流してから、湯船につかった。

 

北郷の隣に。

 

コラコラタオルを巻いたまま湯船につかるのはマナー違反だとか、そもそも普段の方が露出高くないですか?だとかツッコむ余裕は、

 

目のやり場に困り明後日の方向で目を泳がせている北郷にはなかった。

 

そもそも、北郷自身も腰にしっかりタオルを巻いていはいるので人のことを言えた義理ではないのだが。

 

 

 

張遼「ふぅ〜えー湯やなぁ〜〜〜」

 

北郷「あ、あぁ、疲れが吹き飛ぶよな」

 

 

 

しかし、北郷の落ち着きのなさをよそに、張遼に変わった様子はない。

 

やっぱり、オレが変に意識しすぎっぽいな・・・と北郷はお湯を顔にバシャバシャとかけ、平常心を取り戻そうとした。

 

しかし・・・

 

 

 

張遼(ちょーーちょぉおおおおッ!やってもーーたぁあああああッ!遠乗りに行きたいとか言うつもりのはずやったやろぉおおおおッ!

 

何で温泉やねんんんんんんッッ!!なんか色々ぶっ飛ばしてもーーたぁああああああッッ!!!まだ誰もが到達してへん未知なる領域に

 

踏み込んでもーーたぁあああああッッッ!!!!)

 

 

 

張遼は内心激しくテンパっていた。

 

 

 

張遼(アカンッ!どないしよッ!?何話したらええんやッ!?いつもやったらぺらぺら喋れんのにッ!)

 

 

 

そのように脳内の住人が激しく絶叫している中、

 

口から出るのは「温ったまるわー」だとか「疲れが吹っ飛ぶわー」だとか当たり障りのないことばかりであり、

 

ただただ無為に時間だけが過ぎていくのであった。

 

 

 

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そして、数十分後・・・

 

 

 

張遼(・・・アカン、のぼせた・・・・・・)

 

 

 

張遼はこの想定外の状態も影響してか、お湯の熱にやられ体中を真っ赤にしていた。

 

一方、北郷の方を見てみると・・・

 

 

 

北郷「フフフ〜ンフフフ〜ンフフフ〜ンフ〜ンフ〜ン♪♪」

 

 

 

まだまだいけるぜ、といった余裕の表情で、千鳥飛びて去りゆくかの如き軽快な鼻歌を披露していた。

 

 

 

張遼「(・・・ホンマ一刀は・・・変なとこで・・・強いやっちゃな・・・)」

 

 

 

そこで張遼の意識は途絶えてしまった。

 

 

 

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張遼「・・・ぅ・・・ぅぅ・・・?」

 

 

 

張慮が気が付いたとき、そこは温泉の中ではなかった。

 

 

 

張遼(・・・なんや・・・ここどこや・・・っちゅーか、おでこと足元がヒンヤリして気持ちええ・・・)

 

 

 

張遼はぼんやりする頭の中、重たい瞼をゆっくりと持ち上げると、まず真っ先に目に飛びこんできたのは北郷の心配そうな顔であった。

 

張遼は脱衣所の長椅子に横たえられていた。

 

 

 

北郷「大丈夫か?」

 

 

 

どうやら、北郷は張遼のそばについてずっと介抱してくれていたらしい。

 

張遼の額には濡れ手巾が、足は水を張った桶に入れられていた。

 

 

 

張遼「・・・一刀・・・」

 

北郷「のぼせたみたいだな。悪い、オレがもう少し早く気付いていたら・・・」

 

 

 

北郷はしゃがみこみ、そして申し訳なさそうな表情で張遼の顔をのぞきこんでいる。

 

 

 

張遼「・・・一刀が謝る事なんかあらへんよ・・・」

 

 

 

しかし張遼はそう告げると、無意識に、体を覆うタオルがずれ落ちないように手で押さえながら、ゆっくりと起き上がろうとした。

 

北郷はまだ安静にと止めようとするが、張遼はその北郷の行動を手で制すと、そのまま椅子に腰かけた。

 

 

 

張遼「・・・悪いんは、はっきりせーへんかったウチの方や・・・」

 

北郷「え?それっていったい・・・」

 

 

 

張遼は、一度気を失ったせいか、先ほどとは別人かのように、非常に落ち着いていた。

 

 

 

張遼「ウチな、ホンマは今日、一刀とでえとがしたかってん・・・」

 

北郷「で、デート!?」

 

 

 

張遼の思いがけない言葉に、北郷は驚きを隠せないでいた。

 

 

 

張遼「せや・・・けど、結局いつもみたいに稽古に誘ってもーた。その後も温泉とか意味わからんことを・・・ホンマ、臆病な奴やで」

 

北郷「霞・・・」

 

 

 

すると、張遼はトンと北郷の肩に額を押し当てるようにして、そのまま体を預けた。

 

 

 

張遼「・・・ウチな、一刀のことが好きやねん」

 

 

 

そして、目を閉じ、北郷の温もりを感じながらゆっくりと自身の胸の内を語り始めた。

 

 

 

張遼「最初に出会った時は、天の御遣いだか何だか訳の分からん奴ぐらいにしか思ってへんかったし、なんでねねがこないな訳わからん

 

奴に好意持っとったんか理解できひんかった」

 

 

 

北郷もまた、張遼の思いがけない不意打ちに動揺しかけるも、かわすことなくしっかりと受け止め、

 

張遼の体温を感じながら静かに話を聞いている。

 

 

 

張遼「それでも、まだ初めて会った頃、荊州らへんの宿で一刀に励まされて、初めて頭撫でてもらって、めっちゃ心の中が温かくなった。

 

心臓が破裂するんちゃうかって思うくらい鳴った。けど、ウチは恋とか好きとか、そーいうのはよー分からんかったし、なんやモヤモヤ

 

するってくらいにしか思わんかった」

 

 

 

そして、張遼はゆっくりと目を開けて北郷を見上げた。

 

 

 

張遼「けど、その後黄忠はんのところで一刀と恋がいい雰囲気なん見とったらメッチャムカついてん。っちゅーか、なんやよー分からん

 

けど胸がきゅーって締め付けられるみたいに痛くて苦しくて、それを紛らわすために一刀に八つ当たりしてしまった」

 

 

 

あー、そういえばあの時なぜか霞たちにボコられたっけ、と北郷はしみじみ思い出す。

 

 

 

張遼「それから益州に着いたらなんやかんやで牧と領主様に就任やろ?あん時はホンマに嬉しかったわ。けど、月が出世した時の嬉しさ

 

とはまた違う嬉しさやった。あん時は仲間の出世を喜ぶんは当然とか言ったけど、また違う嬉しさやったって今ならわかる」

 

 

 

張遼は記憶をなぞりながら頬を朱に染めつつ、ニコリと落ち着いた笑顔で言葉を紡いでいく。

 

 

 

張遼「ほんで、さっきまた一刀に心配されて、頭撫でてもろて確信したわ。ウチは一刀のことが好きなんやって。ほんでこれが人を好き

 

になるってことなんやって」

 

 

 

張遼の意志のこもった言葉を、北郷は張遼の瞳の中を覗き込みながらただ黙って聞いている。

 

 

 

張遼「い、いや、別にこれはウチが勝手に言ってるだけで一刀が気にすることなんか―――!」

 

 

 

そのような反応のない北郷の様子に不安を感じたのか、張遼は本調子ではないまでも、

 

北郷を温泉に誘った時よりも若干抑えた程度に両手と首を左右に振りながら自身の思い切った発言を誤魔化そうとしたが、

 

 

 

北郷「なんだよもー!オレだけが変な意識してるのかと思ったじゃないかよー!」

 

張遼「あらへ・・・んよ・・・・・・へ?」

 

 

 

北郷が脱力した様子で張遼が予想だにしなかったことを言ったものであったから、

 

張遼は両手を左右に振った振動でずれかけていたタオルを押さえつつ、目を丸々と見開きながら意味のない疑問の声を漏らした。

 

 

 

北郷「オレだって霞のこと大好きだよ。2年前、荊州の宿で二人きりになった時だって常にドキドキしてたし。その時のこと、今だって

 

すごく鮮明に覚えてるぞ。それに、成都に来てからだって、稽古の後で二人でご飯食べに行ったり、夜呑みに行った時だってドキドキさ。

 

さっき一緒に温泉入ろうって誘われたときなんて心臓止まるかと思ったし、隣に座られたりしたもんだから、霞よりもオレの方が意識を

 

持っていかれるかと思ったぞ?」

 

 

 

張遼の告白をきっかけに、北郷は胸の内に溜めておいた思いをまくし立てるように一気に放出した。

 

 

 

張遼「そんなんウチかて心臓爆発するんちゃうかって思うくらいドッキンドッキンしとったし!っちゅーかぶっ倒れたんも温泉にのぼせ

 

たっちゅーかいろんな意味でのぼせてた―――って何言わせんねんッ!」

 

 

 

と、北郷の告白に対して張遼もなぜか対抗して告白するが、

 

その発言内容があまりにも恥ずかしいものだと気づき、思わず北郷の胸元にきれいな手首の返しでツッコミを入れた。

 

その瞬間、二人ともに自然と笑いが込み上げ、同時に吹きだした。

 

 

 

北郷「結局、お互い臆病なだけだったのかもな」

 

張遼「せやな」

 

 

 

張遼のツッコミから一気に場の空気が穏やかになり、二人にとって非常に心地良い雰囲気がこの場を漂っていた。

 

 

 

北郷「今だってドキドキしてる。ほら」

 

 

 

すると、北郷に促される形で再び張遼が北郷の胸に体を預けた。

 

 

 

張遼「・・・ホンマや、ドッキンドッキンいっとる」

 

 

 

張遼は瞳を閉じて北郷の心音に聞き入る。

 

自分のことで好きな人が胸を高鳴らせている。

 

その事実だけで張遼は胸がいっぱいになり、何とも言い難い幸福な感覚に酔いしれていた。

 

そして、それは北郷にとっても同じ事であった。

 

北郷は自然と張遼の頭を優しく撫でていた。

 

 

 

張遼「一刀、大好きやで」

 

 

 

気づけば張遼は自然と北郷の瞳をうっとりとした表情でまっすぐ見据えて改めて宣言していた。

 

 

 

北郷「オレもだよ、霞」

 

 

 

北郷も同様に張遼の瞳をまっすぐ見据えて穏やかな表情で優しく告げた。

 

そのまま数瞬ばかりお互いに見つめ合った二人が、そのまま唇を重ねるたことは、ごくごく自然な流れであった。

 

 

 

【第五十二回 拠点フェイズ:張遼A・混乱、それは時に人を大胆にするステータス 終】

 

 

 

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あとがき

 

 

第五十二回終了しましたがいかがだったでしょうか?

 

私、かっこ可愛い娘が大好きでして、霞はまさにかっこかわいい!しかも強くて美人で面白い!

 

元々本家張遼という武将が好きというのを差し引いても霞はお気に入りの娘の一人なのです。

 

そんな霞と一刀君の距離を一気に縮めるには〜と考えた結果、やっぱ裸の付き合いしかない(変な意味はない、決して)

 

となった次第でした。(前回の雛里の拠点で恋の犬が温泉掘り当てた云々のくだりはこの話を書くための後付だったり)

 

とはいえ、この後二人(誰もいない脱衣所的な場所でタオル一枚の女と男(服不明)がちゅーしてからの〜)

 

がどうなったかはご想像にお任せするしかないんですけども。

 

なんせここは全年齢対象の健全な空間なので。

 

 

では、前回の音々音・恋の拠点に倣い、2週目の拠点はおまけ「恋姫夢想劇場」として独立して次回お届けいたします。

 

 

それではまた次回お会いしましょう!

 

 

 

始まりがちんきゅーの拠点とすごく似てる、、、汗

 

説明
みなさんどうもお久しぶりです!初めましてな方はどうも初めまして!

今回は霞の拠点です!

果たして訳も分からず自分を攻撃してしまうのか、それとも、、、

今回は例によって2週目のため一話完結です!


それでは我が拙稿の極み、とくと御覧あれ・・・

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コメント
>nao様  霞は可愛いです!(何回言うんだ・・・)ギャップ萌えこれ最強(sts)
>D8様  霞は可愛いのです! ちなみに素案ではこの後ねね乱入からの何仕事サボってるですかァーちんきゅーキックだったのですが、霞が可哀想すぎるので即削除ですw(sts)
>Jack Tlam様  霞は可愛いです!そして一刀君は腐っても主人公ですね(sts)
>naku様  一刀君は主人公補正でハイスペックになってますからね。 なるほど、単なる実力不足のワンパターンではなくちんきゅーへの愛情だったのですね!気づかなんだ(sts)
>?華様  そのように言っていただけて恐縮です。霞は可愛い!(sts)
いつもは男前な霞がかわいくなったなwギャップ萌えだw(nao)
霞さんがかわいすぎました。この後滅茶苦茶(ryですねわかります。↓↓↓二次元にはよくあるよくある。あと、異世界に飛ばされてあの冷静な対応は一般スペックではないよ?(D8)
霞が可愛い、これは素晴らしい。温泉好きな日ノ本の民をなめてはいけない。でもさ〜……明言はされてないけど、島津氏の分家だし、島津氏は秦氏の血をひいているらしいし、あんなガチのミッション系で女の園の聖フランチェスカで数少ない男子生徒だったんだから女性への対応も心得ているはずだし、意外にも食通だし……割と一刀ってスペック高いぜ?(Jack Tlam)
新作ありがとうございます!大好きな霞が可愛すぎて鼻から赤いものが...ちょっとティッシュ取ってきます。(?華)
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