真・恋姫†夢想〜世界樹の史〜第三章・枯れ木崩し編
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第X話『戦の火蓋』

 

 

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花蘭「左翼に伝令を!

   この機に乗じて本隊で敵中央に攻勢をかけます!左翼は回りこんで横撃をかけてください!」

 

司馬懿「少々危険ではありませんか?」

 

花蘭「大丈夫です。

   左翼の華雄さんがほとんど押し込んでしまっていますから。」

 

賈?「右翼の皇甫嵩将軍も流石ね。

   全体をよく見て戦線を押し上げてる。」

 

朱儁「あの人ったらあんなに張り切って…きっと劉弁様の初陣がよほど嬉しいのね。」

 

花蘭「鏡さん、私の事は花蘭と呼んで構いません。

   もちろん、皆さんもです。」

 

朱儁「…この国も、変わったのですね。」

 

花蘭「いいえ、これから変えるのです。

   さあ、そろそろ本隊も前に出ましょう!最後の仕上げです!」

 

「「「はっ!!」」」

 

 

反王朝が発足して数ヶ月が経ったこの日、ついに戦の火蓋が落とされた。

 

劉家率いる反王朝は、その豊富な資源や兵力を駆使し長安の南まで攻め入ったのである。

孔?、劉岱の放つ第一陣と漢の軍勢が長安の南で激突した。

 

初戦で押しこむつもりだった劉表の誤算は、涼州連合の介入であった。

これまで漢に対して黙していたのだが、ここに来て禁軍への援軍として参戦。

圧倒的な機動力を武器に、遊撃隊として戦線を切り裂いていった。

そこにこの将の質の高さである。

皆一騎当千の猛者であり、劉弁自らが戦線へ出ることによる兵達の士気の高さ。

勝負が始まってみれば、力の差は歴然であった。

 

 

鏡「花蘭様!危のうございますのでもっと後方へ!」

 

敵の剣を捌きながら、朱儁は叫んだ。

だが、花蘭は落ち着いた様子でにこりと笑う。

 

花蘭「私なら大丈夫です!」

 

??「そうそう、大丈夫よ!その武器の力を存分に奮いなさい!」

 

花蘭「うん!」

 

そこへ三人の敵兵が突如として現れ、花蘭に斬りかかる。

この時を待ってずっとその場所に伏していたのだろう。

 

朱儁「しまった…!」

 

兵「死ねええええええええええええい!!!」

 

刃が花蘭を襲おうと迫る。

花蘭は盾を構え、斬撃に備えると同時に剣を抜いた。

 

襲いかかった剣が盾に触れた刹那、

カツン、という軽い音を立て、斬りかかった三本の剣は根本からスパッと折れていた。

 

兵「なっ…なんだと!」

 

花蘭「はぁっ…!」

 

右手に持つ剣を思い切り振り払う花蘭。

その剣はいとも簡単に帷子を裂き、敵の体を真っ二つに斬りぬいていた。

一人を殺めたところで、残りの二人は恐れをなし逃げ出すも、朱儁が放った矢により絶命に至っていた。

 

朱儁「今のは流石に肝が冷えましたわ。

   伏兵に気が付かず申し訳ございません。」

 

花蘭「いえ、お気になさらないでください。」

 

伝令「ご報告します!

   敵が撤退を始めた模様!左翼の華雄様が追撃の許可を求めております!」

 

花蘭「わかりました。

   でも、追撃は無しと伝えてください。ここで出過ぎると第二陣があった時が怖いです。」

 

伝令「はっ!」

 

こうして、長安での戦は幕を閉じた。

出鼻をくじかれた第一陣の戦果は大きく響き、反王朝連合は武都までの撤退を余儀なくされた。

 

勝利の宴に沸くその日の夜…

広間から出た庭の端で、花蘭は蹲って嘔吐していた。

 

??「ちょ、ちょっと大丈夫〜?」

 

花蘭「はぁ…はぁ…だ、大丈夫、です。」

 

??「とてもそうは見えないんだけど…。

   まぁ、無理もないか。人を斬ったのなんて初めてだったんでしょ?」

 

花蘭「えぇ…。

   こんなんで私、強くなれるのかな。」

 

??「なれるよ、きっと。私が保証するわ!」

 

花蘭「ふふっ、ありがとうございます。

   胡蝶さん。」

 

視線の先には、ひらひらと舞う黒い蝶が羽ばたいていた。

蝶は嬉しそうにくるりと舞うと、

 

胡蝶「うん!

   それより、あの武器はどうだった?

   鍛錬ではだいぶうまく扱えるようになってきてたけど…。」

 

花蘭「問題はなさそうです。

   でも、凄いですね…斬られた時も全く衝撃がありませんでしたし、敵を斬った時も全然…うっ…」

 

胡蝶「あ…ごめん。」

 

花蘭「い、いえ、大丈夫です。

   あの武器は一体何なのでしょう。他の方が使うとあまり扱えないようですが…。」

 

胡蝶「あの武器はね、私と一緒なの。」

 

花蘭「胡蝶さんと?」

 

胡蝶「うん。

   この世界のものじゃないのよ。」

 

花蘭「前に仰っていた、外史…という所の物ですか?」

 

胡蝶「そうね。

   その外史の介入を受けて、しかも限られた人しか扱えないの。

   他の人には私の事が見えないのも同じ理由よ。」

 

花蘭「…私は何故扱えるんですか?」

 

胡蝶「一つは、私が居るからというのもあるわ。

   この武器はある人にあげたんだけど、その人が居なくなってしまったの。

   本当はその人しか扱えないんだけど、私がいれば別よ。元は私のものだもん。

 

   あとは…貴女、思い出してるでしょ?」

 

花蘭「…はい。」

 

胡蝶「それは前の外史の記憶よ。本来はそんなこと有り得ないんだけど…。

   最初にこの武器をあげた人も、何故か他の外史で記憶が戻っちゃう子が居たみたいで、

   きっとその人の元々の能力だったのね。

 

   (『圧縮』とはまた違う、その人との愛だけで外史を飛び越えちゃう力。)」

 

花蘭「一刀さん…会いたいな。」

 

胡蝶「きっとすぐに会えるわよ。

   だから、負けちゃダメよ?」

 

花蘭「はい!」

 

 

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---襄陽、軍議の間---

 

暗がりの中、各勢力の頭脳が集っていた。

連合の第一陣が敗戦に終わり、連合の瓦解も起こりうる。

そこで、盟主である劉表の声がけの元、一同に介することとなった。

 

劉表「さて、話というのは他でもない。

   連合の今後についてということだ。」

 

孔?「クソ、涼州連合め…いらぬ邪魔をしおって!」

 

劉岱「流石に禁軍、かなりの強さであった。」

 

陶謙「ここはまず、劉表様が荊州を統一なさってみては如何でしょうか?」

 

劉表「ふむ…荊州統一か。」

 

陶謙「えぇ。それにより、大陸の南部から中央の地は我々にとって安泰になりますね。

   そうすれば、物量で戦線を北に押し上げることが出来ましょう。」

 

劉表「なるほどのう。」

 

陶謙「目下、南陽を収める孫堅さえ潰せば、統一はほとんど果たしたも同然。

   他の勢力もすぐに劉表様へ傅く事でしょう。」

 

劉表「ほっほっほ、孫堅か。この間は殺し損ねたが、今回は確実に叩き潰してくれよう。」

 

陶謙「…ふふっ。」

 

 

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---汝南、城壁にて---

 

二人の少女が、城壁から草原を見渡していた。

毎朝、そこから彼の帰りを待つのが日課になっていたのだ。

 

美羽「のう七乃…兄様遅いのう。」

 

七乃「そうですね〜、こんな大変な状況だというのに何処へ行ったんでしょうか〜。」

 

美羽「ふおっ?!

   な、七乃!アレを見るのじゃ!!」

 

美羽は城壁から身を乗り出すと、はるか遠くを指さす。

 

七乃「お、お嬢様!危ないですから…ん?」

 

七乃も何かに気が付き、目をぱちくりとさせる。

 

草原の遥か先から、大軍がゆっくりと近づいてきているのだ。

急ぎ斥候を呼びつけ、先行して確認させる。

 

だが、出発してそう時も経たずに兵が戻ってきた。

 

斥候「報告します!」

 

七乃「ずいぶん早かったですね〜。」

 

斥候「謎の軍勢の数はおよそ一万ほどと見られます!」

 

七乃「い、一万ですって?

   部隊の展開を急がせなさい!」

 

斥候「それが…必要がないかと思われます。」

 

七乃「…はい?」

美羽「…はい?」

 

斥候「率いているのは袁術様の兄君さまでございますので…。」

 

七乃・美羽「えぇ〜〜〜〜〜?!」

 

ゆらりゆらりと呑気に揺れるベッドの上、蔡文姫にしがみつかれながら運ばれる男がそこに居た。

 

一刀「あの〜…もうそろそろ城門に着きますので降ろしていただければ…」

 

蔡文姫「い・や・で・す〜♪

    お子を孕むまではず〜っとこのままです!」

 

一刀「…オォウ…。」

 

間もなくして、一団は汝南へと到着したが、門には鬼が待ち伏せていた。

 

七乃「…一刀さん?」

 

一刀「ひぃっ?!」

 

焦点の合わない目でじっと見つめる七乃の背後には、怒りのオーラが燃え上がっている。

しどろもどろになりながら言い訳を探そうと必死に頭を巡らすも、

一刀自信訳がわかっていないので全く言葉が出てこない。

その時、嫌な沈黙が、最悪の形で崩される。

 

蔡文姫「あら、この方は女官さんかしら?」

 

七乃「女官…?」ビキ

 

蔡文姫「初めまして、この度は一刀様の妻となりました、蔡文姫と申します♪」

 

七乃「妻…?」ビキビキ

 

一刀「ひっ…!

   あの〜、これには深い訳が…」

 

蔡文姫「ダーリン、そんなに青くなってどうかなさったの?

    昨日のはあんなに熱かったのに…///」

 

一刀「気温の話ね?!炎天下の下ずっとこれに乗せられてたもんね?!

   ていうかダーリン使うんだ?!」

 

七乃「へぇ〜…」

 

蔡文姫「もう!ダーリンたら♪

    い・け・ず♪」

 

ブチッ

七乃「お嬢様〜?さ、もうお城に帰りましょうか〜。」

 

美羽「ふおっ?!じゃ、じゃが兄様が」

七乃「兄様〜?そんな人居ましたっけ〜?」

美羽「ぴぃっ?!」

七乃「あぁ〜!もしかして〜、昔からず〜っと私達をほったらかして〜、

   そのくせ女ったらしの大馬鹿野郎の事ですか〜?

   

   そんな人…もう帰ってこなくて結構です!!」

 

ぎぎぃ、と重い音をたて、門が無情に閉ざされた。

 

一刀「あぁ〜…orz」

 

羊?「ふむ、これは弱りましたな。」

 

蔡文姫「大丈夫です!

    婿に来てもらえば良いんですもの!」

 

羊?「おぉ!名案ですな!でわ早速…」

 

そんなほんわかした空気も、唐突に終わりを告げる。

潰れかけた馬に跨がり、ボロボロになった一人の兵が転がり込んできたのである。

 

馬はその場に倒れ、苦しそうに呼吸を繰り返す。可哀想だが、この馬は当分走ることが出来ないだろう。

倒れ込みそうになりながらも、男は一刀に駆け寄る。

一刀はベッドから降り、男に駆け寄った。

しかし、男はついに倒れるも、這いずり一刀の足元へすがりつく。

 

カラカラの喉で何かを喋ろうとする男に水を飲ませ、言葉を待つ。

 

兵士「で、伝令でございます…!

   孫家の軍師をされております周瑜様より言伝が!」

 

一刀「周瑜さんから?」

 

兵士「『我ら劉表の奇襲によりほぼ壊滅。退却の折、貴殿らの領土を通らせて頂きたい。』と!!

   今はここより数里離れたところまで来ておりますが、追っ手の追撃が激しく…!

   どうか!どうかお力添えを!!何卒…!何卒…!!」

 

足にしがみつき、地に頭をこすりつけながら叫ぶ男。

その兵の肩にポンと手を置く。

引き剥がされるかと思ったのか、体をこわばらせる兵士。

だが、すがるように見上げた一刀の顔は、まるで想像と違っていた。

 

一刀「…よく頑張って伝えてくれた。あとは俺に任せて、ゆっくり休むといい。」

 

兵士「え…?」

 

にこりと微笑むと一刀は立ち上がり、神輿へと登る。

すると後ろに控える一万の匈奴の群れを見渡した。

 

一刀「皆聞こえたか!

   今、俺の友人たちが危険な状況らしい!

   俺は…何としてでもあいつらを助けたい!」

 

匈奴「…。」

 

一刀「姫との結婚が必要なら、何回だってしてやる!」

 

蔡文姫「まぁ…///」

 

一刀「子孫が必要なら何人だって作ってやる!!」

 

羊?「ふむ…。」

 

一刀「でも、そんな未来は俺一人じゃ無理なんだ!

   だから…」

 

神輿を下りる一刀は叫ぶ。

 

一刀「俺に力を貸してくれ!!」

 

頭を下げる一刀。

その姿に、伝令の兵士は涙を流していた。

この男は一体何者なんだろうか…!どこの馬の骨かもわからぬ自分を信じ、臆面もなく人に頭を下げている。

感謝を言葉にしたい!しかし、私の口から出てくる音は、嗚咽にしかならなかった。

 

一刀はゆっくりと頭を上げた。

すると、目の前には信じられない光景が広がっていた。

 

匈奴の民が全員頭を垂れてひれ伏していたのである。

ゾクリ、と体が震える。

 

姫君が立ち上がる。

 

蔡文姫「我ら匈奴の民は、あなたの為に力を尽くしましょう。」

 

続けて兵士長が。

 

羊?「まぁ、一族全員で来ておりますので…兵士は五千ほど。残りは女子供になる。

   それでも宜しければ、如何様にもお使いくだされ。」

 

一刀「ありがとう…!

   それじゃあ五千の兵は羊?さんの支持に従い、部隊の編成を!

   女性や子供たちは」

 

ぎぎぃと重厚な音とともに開く城門。

 

七乃「女性や子供たちは城内で保護します。ご安心ください。」

 

一刀「七乃…。」

 

七乃「…今回だけです。もう許しませんから。」

 

一刀「ありがとう!」にこっ

 

七乃「…ふふっ///」

 

美羽「兄様〜!」

 

とてて、と駆けて来る少女。

手には竹簡が握られていた。

 

一刀「美羽?!」

 

美羽「雷薄に兵の手配と兵糧の準備をしてもらったのじゃ!

   詳しくはこれに書いてあるが、二万くらいならすぐに動かせるそうなのじゃ!もう準備してもらってるぞよ!」

 

黙ったまま少女を抱きしめる一刀。

 

美羽「あ、兄様?」

 

一刀「たくさん勉強したんだね。えらいえらい。」

 

美羽「え、えへへ〜♪」

 

半刻を待たずして部隊の編成を終え、城には七乃と美羽を残し出立した。

その姿を見た伝令の男は、軍の姿が見えなくなるまで地に頭をつけていたという。

 

 

 

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Another View 〜蓮華〜

 

蓮華「お姉様!」

 

私は血だらけになっているお姉様に駆け寄る。

 

雪蓮「平気よ。これは返り血。」

 

嘘だ。よく見ると矢傷や裂傷もある。

あのお姉さまがこうまで苦戦しているのに、私はこうして本陣の中で待っているだけ。

すごく、もどかしい。

 

蓮華「お姉さま、やはり私も!」

雪蓮「それはダメよ。」

 

と鋭い眼光で制される。

 

雪蓮「何度も言ってるでしょ?

   今、母さまも前で戦ってる。私もこれからまた討って出て時間を稼ぐ。

   私達に何かあったらアナタが孫家を導かなくちゃいけないの。」

 

蓮華「…。」

 

気持ちでは理解できるのに、

でも、と続いてしまう。

 

雪蓮「冥琳、連絡はあった?」

 

冥琳「いや、まだだ。

   領地を突っ切らせてくれなど、こんな無茶な願いを聞き届けてくれるかどうか…。」

 

雪蓮「一刀ならきっとわかってくれるわ。」

 

冥琳「だと良いが…。しかし、それ相応の対価は必要だぞ。」

 

雪蓮「…えぇ、それは仕方ないわね。

   でも、まずは逃げきれるかどうか、かしらね。今の状況じゃ正直厳しいわ。

   兵力が違いすぎるもの。」

 

お姉様と冥琳のやりとりが聞こえる。

そう、この国境付近で応戦している時点で絶望的な状況なのは私でもわかる。

 

蓮華「一刀…。」

 

あの人の名を呟くと、私は彼が居るであろう方角を見た。

そこには、何処を見渡せど変わらない地平線と、その一箇所から舞い上がる砂塵。

 

蓮華「…え?」

 

見間違いじゃない。あれは…

 

蓮華「お姉様!」

 

雪蓮「なに、蓮華言っておくけど」

蓮華「あれを!!」

 

私は地平線を指さす。

 

雪蓮「…何よ、あれ。」

 

その時、兵が息を切らして駆け込んできた。

 

兵士「ご報告します!」

 

私は聞かなくてもわかっていた。

希望的観測なのかもしれないけど、それでも何故か確信があった。

 

兵士「東より砂塵を確認!

   旗印は…」

 

きっとあの人の---

 

兵士「黒旗に十文字!袁家の北郷様です!!」

 

雪蓮「嘘…でしょ?」

冥琳「そんな馬鹿な!ここで兵を出す利など、あの方には無い筈だ!」

 

きっとそんな事を、あの人は考えていないんだと思う。

自分の国で謀反が起こって、隣国には反王朝連合の陶謙が睨みを効かせてて、異民族だって動いてる。

でもそれすらも意に介さずに助けようとする。

確固たる信念と自信、そしてずば抜けた度胸がないとこんなの無理よ。

 

冥琳「伝令を聞いてからここまで、いくらなんでも速すぎる!

   …なんて男だ。」

 

雪蓮「…ふふっ。」

 

とても嬉しそうにお姉様が笑う。

やがて一刀が率いる大軍が私達を通り過ぎた。

 

駆け抜ける軍勢の中、ほんの一瞬、彼と目が合う。

 

ほんの一瞬、時が止まる。

 

私は心のなかで叫ぶ。

 

蓮華「(一刀!助けて!)」

 

 

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---汝南、西---

 

一刀率いる袁、匈奴の連合軍は、急行軍で戦地へと向かっていた。

 

一刀「凄いな、君の軍は。

   こんなに急いでいるのに全く隊列が乱れない!これなら予想よりも早く着きそうだ!」

 

蔡文姫「お褒めに預かり光栄です。」

 

羊?「我ら匈奴の民は身体能力があまり高くありませぬ。

   だが、この組織力と弓術は他の民族は敵うまいよ。」

 

その組織力は凄まじく、

行軍で森を突っ切ろうとも、小休止後に再出発の時にも行軍が乱れることはなかった。

 

そのまま行軍を続けること数刻、一刀たちは遠目に砂塵が舞い上がっているのを確認する。

 

一刀「見えたぞ!

   俺は左翼から、羊?さんは右翼から手筈通りに強襲をかける!」

 

羊?「応!」

 

一刀「姫は千の兵で後詰を担当!うまく孫堅軍を引き入れてくれ!」

 

蔡文姫「はい!」

 

一刀「良し!一気に彼らの陣を突き抜ける!行くぞ!!」

 

匈奴「おおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

孫家の陣内をそのままの勢いで抜ける。

きっとこれは、匈奴族の行軍能力を持ってこそ出来る芸当だ。

 

そんな最中、一瞬だが確かに蓮華と目があった。

 

…なんとなく、言いたいことが分かった気がする。

 

一刀「…任せろ!」

 

劉表軍が蹂躙しかけていた戦況は一変した。

劉表軍はおろか、孫家側すら予想していなかった援軍の強襲。

それも二万五千という大軍である。

混乱した敵の戦陣を軽々と食い破り、敵本隊へなだれ込んだ。

 

美蓮「嘘…!一刀?!一体どうして?!」

 

敵将「な、なんだ…?何が起こっている…!一体何が…!!」

 

男は目の前の状況を整理できずに居た。

つい先程まで勝ちが見えていた戦。あとは自分たちの本陣で押しこめば終わりだったはず。

それが…消えた?何故?

 

敵将「あ…あ…あああ…ああああああああああああああああああああっ!!!!」

 

叫びを上げる。

それはこの信じられない光景に臆してか、

それとも、

自らの首に刃が迫ったためか。

 

 

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---汝南---

 

戦を孫家の勝利で終えると、第二波を警戒し撤収を急がせた。

だが、美蓮たちは既に南陽を奪われた為、帰る場所を無くしてしまったのだ。

ひとまず急ぎ皆を引き連れて汝南へと帰還し、玉座へと集っていた。

 

美蓮「この度は急な援軍、本当に助かったわ。ありがとう。」

 

美羽「御礼なら兄様に言って欲しいのじゃ。」

 

美蓮「ふふっ、そうね。

   でも今の当主はあなたでしょう?だから何なりと命じて頂戴。

   この借りはそう簡単には返せそうにないもの。」

 

美羽「う、うむ…じゃがのう…。」

 

美蓮「どうかしたの?」

 

美羽「あ、兄様!助けてたも!」

 

七乃「まったく、美羽様ったら一刀さんが帰ってきてから甘えてばかりなんですから〜。

   以前はこういったこともご自分で判断なさっていたでしょう?」

 

美羽「わ、妾は兄様に習いたいのじゃ!」

 

七乃「だそうですので、一刀さん、お願いします。」

 

一刀「やれやれ。

   美羽、次は自分でやるんだぞ?」

 

美羽「はい!なのじゃ!」

 

一刀「とりあえず、君たちには呉の統治を任せたいと思ってる。」

 

冥琳「何だと?!」

雪蓮「?!」

 

一刀「これからは隣国の建業を譲渡するからへそこへ移ってくれ。」

 

冥琳「ま、待ってくれ。

   確かに、建業の地に戻り呉を統べることは我ら孫家の宿願でもあった。」

 

一刀「うん。」

 

冥琳「だがそれでは袁家の領地である揚州を半分我らに譲ることになるんだぞ?

   礼をしたくとも満足に出来ていない我々に、むしろこのような取り計らいをするなど…。

   我らに一体何を望んでいるのだ。」

 

一刀「ん〜、そう難しい話じゃないんだ。

   まず、俺達が揚州の西側を統治することで、劉表は君らまで手が届かない。

   その代わり、徐州・青州を治める陶謙にはすぐ南に孫家も居ることでいい牽制にはなる。

   そして人材。情けない話、この広い揚州を統治出来るだけの人材が揃っていないんだ。

   なら、この地に明るい君たちに任せてしまえば、民も安心だろう?」

 

冥琳「理はわかるのだが…。」

 

雪蓮「こんなの、返しきれないわよ?

   一生かかっても無理よ。」

 

一刀「そんなの望んでないよ。

   領地なんてものは、天下が泰平になってから考えればいいさ。」

 

美蓮「…全く、君ときたら…ふふふっ。」

 

一刀「やってくれるかい?」

 

美蓮「…ありがたく頂戴します。ふふっ。

   あ、そうそう、さっき人材不足って言ったじゃない?」

 

一刀「うん、恥ずかしながら…。」

 

美蓮「なら、うちの蓮華を一刀のそばに置いてくれないかしら?」

 

一刀「蓮華を?」

蓮華「っ?!」

 

美蓮「孫家を継ぐものとして、あなたのそばに居れば必ず勉強になるわ。

   それに…婚約のこともあるし、一石二鳥じゃない?」

 

一刀「ま、まぁ、俺は構わないけど…。

   蓮華は良いの?」

 

蓮華「う…///わ、私は…。」

 

美蓮「…。」

 

蓮華「貴方のそばに居られるなら…///

   あ、う、も、勿論勉強のためよ?勉強の!!」

 

美蓮「ふふっ。(素直じゃないんだから。)」

 

こうして、揚州に新たな領主が加わった。

江東の虎こと孫堅文台。この名が呉の地の民に根付くのは、そう長くはかからなかった。

また、周瑜をはじめ黄蓋、甘寧、周泰、呂蒙、陸遜らの真名も授けられ、

袁家と孫家の絆はより強固なものとなった。

 

七乃「…婚約、ですか。」ビキビキ

 

一刀「ひぃぃっ?!」

 

蔡文姫「もう!ダーリンったらモテるんだから♪」

 

蓮華「か、一刀、こ、これからよろしく頼む…///」

 

七乃「も〜〜〜〜〜〜〜!!!

   一刀さんなんて知りません!!!」

ビターンッ

一刀「ぎゃおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 

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拠点part 『オォウ…人事』

 

 

 

ここ汝南において、人事は全て七乃に任されてある。

だが、そんな彼女に最近悩みが出来てしまった。

 

それが…。

 

七乃「もう!なんでこんなに女中の応募が多いんですか〜!」

 

そう。女中志望(一刀付き)の多さである。

一日に多ければ百件以上は来ており、目を通すだけで一苦労なのだ。

 

七乃「なんでみんな胸・腹回り・お尻の寸法を書いてくるのかしら…。

   それから、得意な体位なんて書くな!(処女)って嘘つけ!!」

 

下心があるものを全て外していたのだが、困ったことにそうすると一通も残らないのが逆に凄い。

だが、一向に決まらないのでは仕事が進まない。

 

七乃「これはもう、試験で決めるしか無さそうですね〜。」

 

そんなことがあってから数日後、候補者がある程度洗い出され、試験が開催された。

 

試験項目は3つ。

 

1つ、学力試験。

2つ、体力試験。

3つ、忍耐試験。

 

それら全てを突破した、三人の猛者を今回はご紹介しよう。

 

 

 

女中A

姓:孫 名:氷

字:花燕

真名:朱音(あかね)

 

商店の娘という未経験枠から、努力で勝ち残った娘。

実家が商店というだけあって計算が得意。

面接ではうまく隠し通したが、この世で一番欲しい物は一刀の下着。

根本的に変態である。

体:158cm 78 52 75

 

 

 

 

女中B

姓:満 名:寵

字:伯寧

真名:涼夏(すずか)

 

なんと元は県令代行まで勤め、若くから将来を渇望されたほどの能吏。

眉目秀麗で、メガネの似合う大人びた女性。

面接ではうまく隠し通したが、将来の夢は一刀の夜這い。口癖は「先っちょだけ」

根本的に変態である。

体:170cm 85 58 86

 

 

 

女中C

姓:蒋 名:済

字:子通

真名:彩夢(あやめ)

 

人物眼に優れており、この女中に仕えてもらい認められると必ず出世すると噂され、

各名家を転々と仕えてきた女中界屈指の美女でありスター(29)。

面接ではうまく隠し通したが、酒乱で淫乱(29)。特技は速逝キ。

この物語最強の変態である。だが、これまで仕事に従事しすぎてまだ処女(29)である。

体:158cm 80 60 80

 

 

※act様、殴って退場様、ご協力ありがとうございました!

 

 

 

 

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ついでに 人物紹介コーナー

 

 

 

姓:蔡 名:?

字:文姫

真名:琴里(ことり)

武器:ハープ

 

匈奴族のお姫様。

色白で匈奴特有の尖った耳に、青く色味がかった瞳、銀色に近い金髪。

かなりグラマーな体型で、掟のせいか性的興味にあふれた少女。

ハープのような弦楽器を扱い、音色で疲労回復などの妖術を使う。

 

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今回もお読み頂き、誠にありがとうございます。

果たして女中たちの今後の活躍は…?!

物語の核心にも少し近づいて来ましたね。

それでは、次回もお楽しみに!

皆さんのコメント待ってます!

説明
いつもありがとうございます!
思ったより早く出来上がりました!
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コメント
変態女中☆姉妹に設定誕生!?(心は永遠の中学二年生)
変態三人衆キター! 今度は一体どんな騒動を起こすのか、(act)
おぉ!ついに変態三女中がキター!待ってましたよ。(神木ヒカリ)
リクありがとうございますw。見事な変態っぷりで、これからどれだけの騒動を巻き起こすやら…。(殴って退場)
ヒャッハー!変態女中3人娘の再登場だぁ!?メイン変態キタ!コレで勝つる!(錯乱)(noel)
展開が独特で面白過ぎます(翔華)
結局みんな変態じゃないかぁぁ!!(チョコボ)
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