紫閃の軌跡
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〜トールズ士官学院 グラウンド〜

 

姿を見せた少年。リィンと同じぐらいの歳の人物が姿を見せると、リィン等は驚いていた。

 

「その声……それに、その姿。」

「よっ、リィン。それに見知った顔も多いが……久しぶりだな。」

「あら、殿下。珍しいですね。今日は“そういった用事”はないはずですが……」

「ま、今日はちょっとした野暮用でな。主に来月や再来月の話になるんだが。……ちゃんと、教官しているようで何よりだよ。」

「あはは……」

 

そして、少年は挨拶をするとサラと会話を交わす……その中で出てきた言葉に、周囲にいた人たちが驚く。だが、事情を知っているアスベルとルドガー、セリカとリーゼロッテは特に驚かないのだが。

 

「―――成程。シオン……いや、シュトレオン殿下。貴方が“常任理事”の一人、というところですか。」

「ま、正解だな。というか、アスベル……流石にお前に敬語を使われると気分が悪いから、普通に喋れよ。」

「礼儀だよ、礼儀。最低限の礼節ぐらいは、な。」

「だろうと思った。で、ルドガーのほうは……何かお前、またフラグを立てたような感じがするな。」

「何じゃそりゃ。」

「ふふ……まぁ、ルドガーですからね。」

「セリカまでひどくねぇか!?」

 

呑気に会話をするアスベル、ルドガー、セリカ、シオン……だが、その一方で慌てている周囲の人達。まぁ、無理もないことだ。この四人の“共通点”なんて普通は見いだせないだろう。その反応はある意味“普通”なのだと。

 

「さて、初対面もいるから自己紹介かな。リベール王国軍近衛騎士、シュトレオン・フォン・アウスレーゼ公爵。トールズ士官学院の常任理事を務めさせてもらっている。尤も、もう一つの顔はA級正遊撃士“紅氷の隼”シオン・シュバルツだけれどな。」

「ア、アウスレーゼって……しかも、公爵位!?」

「カイエン公爵家やアルバレア公爵家、それにシュバルツァー公爵家と同じ……!?」

「リベール王家の一員……でも、確か次期国家元首はクローディア王太女って……」

「ま、一応王族に連なる身だからな。だが、次期女王はクローゼ―――クローディア王太女であることに変わりはない。俺はあくまでも彼女を支える存在だからな。」

 

そうは言うが、昔から政に関わってきた人間として……現在は宰相職という形でアリシア女王陛下の執務補佐を執り行っている。これは、次の女王であるクローディア王太女が何らかの理由で執務できない時の代わりを務めるために必要な経験である。

 

「ということは、我が兄上とも……」

「ああ。ルーファス・アルバレア卿か。中々愉快な御仁だよ。『伝えてもいい』とは言ったんだが、恐らくはお前の驚く顔をみせたかったんだろうな。」

「兄上……」

 

ここでもルーファスのお茶目さにユーシスが疲れた表情を浮かべたのは言うまでもない。色々話した後、ガイウスの方を向いた。

 

「で、久しぶりだなガイウス。あの時はちょっとした事情で明かせなかったが……」

「いや……シオン自身の事だ。こればかりは俺が口を挟めることでもない。……この場合は、殿下と呼んだ方がよいか?」

「いや、今までどおりでいい。ノルド高原はリベール領じゃないからな……ここはエレボニアだし、互いに“外国人”ということだから、対等の喋り方で構わない。寧ろ、同年代の連中に畏まられると気疲れしてしょうがなくなる。」

「フフ……シオンがそう言うならば、そうしよう。」

 

シオンは遊撃士として何度かノルド高原を訪れていて、その折にガイウスと知り合ったのだ。彼の父親とも出会い、剣の腕前を見抜かれて手合わせしたほどだ。流石に勝負はつかなかったが。

 

「―――で、だ。伝統や家柄、気品や誇り高さ……それに関わる問いかけだが。ガイウス、俺が答えてもいいか?尤も、俺なりの考え方だが。」

「……ああ。折角身近にいる友人の言葉だ。聞かせてもらえるのならば、是非。」

 

「―――ハッキリ言えば、そう言ったものは先人たちが今までに築いてきた“実績”でしかない。シュバルツァー家がいい例だ。元々男爵家だったが、皇族への忠誠心を見せ、そして公爵位を賜った。その過程で“血縁”も重視されるが、結局のところは本人たちの頑張りがその結果に繋がった。アルゼイド侯爵家(旧子爵家)やアルトハイム侯爵家(旧伯爵家)だって、帝国の貴族たちの誹りも覚悟の上で帰属を決め、自ら率先して混乱を収めた。だからこそ、侯爵位を賜っているわけだし、他の元貴族たちもそれに対して文句は出てこなかった。当たり前の話だ。伝統や家柄は“実績”に対する“対価”……それが、今の帝国貴族のどれぐらいが理解しているのか……正直言って、著名な所で言えばヴァンダール家とシュバルツァー家位だろうな。」

「…………」

 

シオンの言葉に一同は押し黙る他なかった。国が異なるとはいえ同じ“公爵”でもはっきりとしたスタンスを持っているシオン。まぁ、彼にしてみればリベールにおける爵位自体は在ってないような感じだが、会って困ることはない代物だ。

 

「とまぁ、別に俺の考えだから押し付けるつもりは毛頭ないがな……だからと言って、さっきの発言は<五大名門>として許される発言じゃない。先程の侮辱……そういう言葉を言うことは、当然“責任”というものがある。」

「っ………な………」

(あ〜あ……一番怒らせたら拙い奴を怒らせたよ。)

 

歳不相応の覇気―――とても同年代とは思えぬほどの威圧にパトリックは立ち竦んだ。純粋な戦闘経験でいえばリベール王家の中でも唯一、とも言えるぐらいのレベル。何せ“鬼の大隊長”と呼ばれた人物から認められたほどの剣捌き。“剣聖”に叩き込まれた剣術。そして、“義姉”から教わった彼の剣術の根幹をなす物。それでいて、大陸に二十数人しかいないA級正遊撃士に名を連ねるほどの実力者。その気になれば一人で『執行者』を相手にできるほど。最近は『剣帝』とよく手合わせしているそうだ。

 

「シュバルツァー公爵家、それと我が国のアルゼイド侯爵家への侮辱は、ひいてはアルノール皇家への侮辱にあたる。要するに“不敬罪”が成立する。それと、“侵略者風情”と罵ったリベールに対するもの……ひいてはリベール王家に対する侮辱の罪。よもや、<五大名門>の御曹司がそこまで気付いていないわけではないだろうな?」

「う………うあ………」

 

完全に分が悪い……下手をすれば国際問題になりかねない。何せ、Z組の一人であるアスベルがその“代表格”なのであるのだが。しかも、シオンは常任理事の一人。この問題が露呈すればハイアームズ家はお家取潰しの誹りを免れない。

 

「だが、常任理事とはいえ他国の人間が裁けば“内政干渉”になるからな。……サラ教官、実技テスト自体は終わってますか?」

「ええ。それが何か?」

「―――実技テストの補習と行こうか。そちらは四人で構わない。そして……こちらで指定した二人相手に戦ってもらう。」

「四対二……数の利では向こうに分があるが。」

 

単純な計算だと四人であるパトリック達が有利なのだが……

 

「で、こちらは……丁度来たな。」

「へっ……エ、エリゼ!?」

 

シオンがそう言葉を零し、リィンが階段の向こうから来る人物―――それは、紛れもなくリベールに留学しているはずの、自分の義妹の一人であり、一昨年の時も共に戦った少女―――エリゼ・シュバルツァーの姿であった。

 

「お久しぶりです、兄様。」

「あ、ああ。手紙には何も書いてなかったんだが……」

「殿下の要請で、護衛役を買って出ただけです。何かとお世話になっておりますので。初めての方もいますので……エリゼ・シュバルツァーと申します。不肖の兄がいつもお世話になっております。」

「リ、リィンの妹さん!?」

「久しぶりね、エリゼ。」

「ふふ……その風格からして、また腕を上げたようだな。」

 

驚く者や久しぶりの再会を喜ぶ者……色々な反応であった。尤も、一番驚いているのはここでの再会を予期していなかったリィン自身なのであるのだが。

 

「殿下、こちらでしたか。」

「来てもらったところで済まないが、ちょっとした補習だ。エリゼにも参加してほしい……そこの御仁が、リィンを“浮浪児”だと言い放ったからな。」

「!!……―――成程。殿下、感謝いたします。」

「それと……アスベル。頼めるか?」

「……今回ばかりは流石に許せるレベルを超えたからな。流石に本気は出さないが。」

 

ある意味の“燃料投下”―――これにはエリゼも笑みを浮かべ、前に出た。だが、口元は笑っていない……そして、隣に並び立ったアスベル。その威圧を感じたリィンは引き攣った表情を浮かべていた。

 

「………やばい。」

「え?どういうこと?」

「あの二人、確実に怒っている。絶対に軽い怪我じゃ済まないぞ……」

 

怒った時の二人を知っているリィン……そして、それによって引き起こされた光景も目の当たりにしている……ハッキリと言おう。パトリック達にとっては“勝ち目なんて最初からない戦い”なのだと。

 

「フ、フン……フォストレイト、貴様も含めてたった二人とはいえ、容赦はしないぞ!エリゼさんには悪いけれど、僕らも本気を出させてもらうよ。」

 

「ええ。そうしていただかないと困ります。……―――“覚悟”してくださいね?」

 

「ああ、そうだな……―――“修羅場”を知らない輩にはちょうどいい機会だ。」

 

『っ―――!?』

 

アスベルとエリゼは“戦術リンク”を結び、互いに太刀を構えて闘気を高める。その密度の高い覇気に怖気づく貴族生徒たち。

 

「……正直、僕たちは運が良かった方ということだな。」

「フン……まぁ、今回は貴様の意見に同意してやろう。」

「………」

「これ、どうします?」

「知らん。アイツらの自業自得だろ。」

 

それを見たマキアス、ユーシス、リィンは先月のアレなんてまだ生易しかったレベルであり、セリカに尋ねられたルドガーは完全に匙を投げた。

 

「まぁ、好きな人を侮辱されたらそうなる……って、ラウラとステラは何しているの?」

「そうですね……隙あらば、パトリックを撃ち抜きます。」

「刀背打ちならば許されるだろう?」

「やめなさい。」

 

明らかに過剰防衛……ステラとラウラの気持ちは解らないでもないが、そこまでやったらパトリックの命が危ないということで、アリサが率直にツッコミを入れた。

 

「え、えと……」

「こ、これ、どうなるの……!?」

「“風”が二人に味方しているな……」

「ま、分が悪すぎると思うよ。向こうの勝率は1%未満……“無謀”のレベルだね。」

「今回ばかりはエリゼさんも怒ってるからね。仕方ないかな。」

 

戸惑うエマやエリオットに対し、ガイウスとフィーが冷静に状況を把握し……リーゼロッテも最早諦めたような表情を浮かべていた。そして、シオンから審判役を頼まれたサラが気を取り直し、試合開始の合図が放たれた。

 

「それでは、実技テスト補習―――T組対アスベル・フォストレイト、エリゼ・シュバルツァーの試合を開始するわ。―――始めっ!!」

 

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というわけで、次回アスベル・エリゼ組対パトリック率いる四人衆です。

 

ちなみにここのエリゼ、“烈破系”を習得させました。

その辺りは次回にて。

 

説明
第46話 言動と結果
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コメント
八神はやて様 0%と言ってあげないだけ、まだ優しいと思います(満面の笑み)(kelvin)
サイバスター様 処刑……まぁ、その通りですね(目を逸らす(kelvin)
これは・・・公開処刑だな(遠い目(サイバスター)
(続き)正直、リィンとエリゼのバランスは難しいんですよ。主にリィンの“アレ”のせいですがw(kelvin)
ジン様 リィンはUのあるタイミングで覚醒しますし、それに伴って……パワーアップフラグは用意してあります、としか今のところは言えませんが。それと、同じ太刀とはいえある程度棲み分けは出来ています。(kelvin)
感想ありがとうございます。 まとめてになりますが、碌でもない結果になるのは見え見えです(知ってた)。(kelvin)
だって友人兼兄弟子や婚約者、Z組の仲間たち、自分のことを育ててくれたシュバルツァー一家を侮辱したようなものだし。(ジン)
取り敢えずリィンがエリゼより弱いってことがない容姿にしてほしいわ^^;せっかくアスベルにも鍛えられてるしリィンはエリゼより強く会ってほしいっていうのは我儘なのかね?てかエリゼよりリィンのほうがキレるんじゃないかと冷や冷やしてた^^;(ジン)
ノーダメージクリアになる事はほぼ確実でしょうねww(sorano)
 これ・・・なんて無理ゲ―。本当に・・・(苦笑)(THIS)
まぁリィンも烈破系を覚えてそうだしいいんじゃないかな?一応最初の方で奥伝まで会得してるってリィンが言ってたし。(ジン)
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閃の軌跡 神様転生要素あり ご都合主義あり オリキャラ多数 

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