快傑ネコシエーター26
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126、キジコはお腹が空いてしょうがない。

 

キジコは雅の家族の一員になって1か月以上過ぎて目に見えて心身共に成長していた。

食欲旺盛だが絶えず運動を欠かさないので体は締っていたが体格が1回り大きくなって

子猫と若猫の中間ぐらいの大きさになった。

朝食もネコ缶2個をペロッと平らげるようになった。

昼食は骨の柔らかい小魚をモリモリと茶碗1杯ぐらいは平らげた。

夕食はカリカリをお皿に大盛り1杯とネコ缶2個を平らげていた。

非常に活発に運動して屋内を3次元に散歩したり、旺盛な好奇心に任せてパトロールして

縄張りのチェックを欠かさず行っていた。

最近は居酒屋銀猫の屋根の上に登ったりして、高い所でお昼寝をするようになった。

また夜は寝るまでの間、雅や美猫とよく遊んでいた。

みゃー、みゃー

キジコが珍しくおやつを欲しがった、笹かまぼこをおやつに齧っていた雅にねだったのだった、

たまにはお裾分けとキジコにおやつにあげると喜んでぱくついた。

「キジコちゃん美味しい、もう少し食べるかい。」

みゃー、みゃー

キジコは全身で喜びを表現してお代わりを欲しがった。

結局2袋の笹かまぼこ平らげ雅に喜びを表現してじゃれ付いた。

キジコはまだ小腹がすいているようなので蟹かまぼこ一袋と三角チーズを二個をあげて

みたら見事に平らげた。

お腹が満たされたキジコは雅の膝の上に乗って食休みを始めた。

翌朝の朝食は遂に3個目のネコ缶を平らげる様になり美猫はキジコの健啖振りに少々

驚いていた。

「キジコちゃんネコ缶2個じゃ足らなくなったの、凄い食欲だね。」

みゃー、みゃー

キジコは朝食を食べ終わると爪とぎ板で爪とぎの後、美猫の膝で食休みをしていた。

キジコの食後の運動はまずは部屋のパトロールだが箪笥、本棚、食器棚、飾り棚の天辺と

床の往復と立体的に部屋の中を移動した。

床から一気に雅の肩の上に飛び乗ったり、活発に運動した。

「キジコちゃんお散歩に行こうか。」

雅は中央公園の芝生の中でキジコを思う増分遊ばせた。

キジコは遊び疲れると雅の元に戻って、肩の上に飛び乗った。

キジコがお腹を空かせているようなので家に戻り美猫にキジコのご飯を頼んだ。

美猫はネコ缶3個を開けキジコのご飯皿に山盛りにした。

食慾旺盛なキジコはペロッと平らげ、さらにおやつに三角チーズを2つ平らげた。

キジコは水を飲んでから美猫に甘えるように膝の上で食休みをした。

食べるからには出るものも出るわけで、美猫はキジコのトイレを綺麗に保って猫砂を

頻繁に取り換えてキジコが気持ちよく用が足せるようにしていた。

キジコの健康状態も把握できるので一石二鳥であった。

キジコはとにかくよく食べよく運動した。

雅は妖子に頼んで魚のあらを圧力鍋で煮て柔らかくしてフードプロセッサーでペースト

状にしたものを作ってもらいカリカリの上にトッピングしてキジコに与えカルシウムを

多く取れる様にしてみた。

キジコにも好評でカリカリをお代わりするようになった。

雅はキジコを定期的に獣医に見せて健康診断をしてもらっていたがこの食欲は成長期

だから当然と健康な証拠のようなものであった。

「キジコちゃんなんか逞しくなったね。」

雅と中央公園の芝生で遊んでいるとトカゲ、カナヘビと言ったトカゲ類を捕えてたり

大きな青大将やシマヘビを引きずって雅に獲物を見せに来るので一応キジコを誉めてから

獲物をリリースしているのである。

セミ、蝗、バッタなどはその場でキジコのおやつにしてしまうが巣立ったばかりの子雀は

リリースしているのである。

キジコは狩猟の腕を上げており、鳩や烏などは単体なら捕えてくるようになった。

当然、雅がリリースしているが毒蛇や甲羅干ししている亀特に鼈などは危険なので

キジコが手を出さない様に美猫から注意してキジコも近づかないようにしていた。

キジコが狩りに興味を持ったのはカオスな古着屋の最長老猫の昔話を聞いてからで

最長老猫の若い頃の狩りの話に心躍らせ自分も出来る範囲から狩りの腕を上げてやろうと

研鑽し始めたからであった。

キジコにとって雉は大きすぎて追い払われたり、逆に追いかけられたりもしたが小綬鶏

を捕えることに成功し雅に獲物を見せに来た。

鶏特に手ごろな大きさのチャボは飼い主に怒られるので美猫から襲わない様に注意を

受けていた。

キジコもやがて大人になって母猫になり子育てをする様になれば乳離れをした子猫のため

に獲物を捕って養わなければならないと思っていた。

雅や美猫がいる子猫のうちは思いっきり甘えていられるが、大人の猫になれば親猫として

子猫を育てなければならないので自立できるだけの能力をきちんと持っていなければ

ならないと思っていた。

かつて自分の親猫が親子ともども飼い主から捨てられて一家離散の悲劇に襲われたことを

キジコは忘れていなかった。

今は雅と美猫が自分の保護者として大事に面倒を見てくれている。

とても幸せな境遇であることを改めてキジコは噛みしめているのだった。

 

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127、狼少女は蛇女と戦う

 

1人の狼少女が野生化して中央公園でひっそりとホームレス生活を続けて

いた、猫又達が集団生活をしていたのに対し、文字通り一匹狼だった。

その名を荒野吹雪といい、アバルーの収容所の叛乱から実に9か月も経っていた。

デミバンパイアに狙われることのない様注意深く姿を隠して目立たぬようにしていた。

中央公園の南の隅の方に住処を置き。官庁街から公務員の制服、公園の管理人の制服を

手に入れ公園の管理人に紛れてシャワーを浴びたり食事をくすねたりして生活していた。

 

中央公園の大きな池に亜人の水死体が上がった。

全身の血が抜かれていたが同時に全身の骨が砕けていた。

「みやちゃん、これはデミバンパイアの仕業じゃないな。」

「やっさん、でもメゾバンパイアの仕業でもないですね。」

「物理的に被害者の肉体を締めるように破壊して殺害、生血を啜ったのでしょう。」

「被害者が男である点からもバンパイアの仕業とは考えられないですね。」

「以前さつきちゃんからネコが聞いたところによるとバンパイアはどちらかと言うと

女性の血を好むそうで敢えて男性の血を飲むのはデミバンパイアぐらいだそうです。」

「では、吸血するライカンスロープと言うことになるが。」

「確認はされていませんが哺乳類以外のライカンスロープに怪しげなのが海外に存在

するそうです、それがもしアバルーから脱走して活動を始めたというのならあり得ますね。」

「寒い間は活動が鈍く殆ど休眠状態で気温が上がって活発になって来たとすれば。」

「しかも年齢が200年以上のかなり高位の自在変化の出来るライカンスロープで正体

が何者かはっきりしないのが厄介ですよ。」

「源さんの知恵を借りに行こうか、みやちゃん。」

「それがいいと思います。」

 

「・・・というわけなんですよ、源さん。」

「そいつは厄介な相手じゃな、年齢200年どころか700年位のもいたからのう。」

「朽ち縄とか大蛇が変化出来るようになったライカンスロープで文字通り冷血な奴じゃ。」

「人の生血を啜ることに特化した奴で、2,3年位食事をしなくても平気でいつ活動

するか予想が困難じゃ。」

「そんな物騒な奴がアバルーに潜んでいたなんて、デミバンパイアよりもある意味性質

が悪い。」

「魔剣のようなデミバンパイア用の武器では効果に疑問がある、霊剣のような武器を

使わないと退治できないだろうな。」

「そう奴らは呪いと言う武器も持っているから霊験あらたかな神剣で断ち切らないと。」

大和警部補は自前の堅国の銘の霊験あらたかな神剣の封印を切って用意した。

雅は銀の霊験あらたかな愛刀を借り受けた。

銀は雅に霊剣を扱う上のいろいろな注意をした。

「いつものようなデミバンパイアと違ってとても性質の悪い相手です。」

「この剣は相手の呪詛を断ち切る力を持っています、大蛇の変化が相手なら特に

仕留める時に注意が必要です。」

銀は少し考えてから、

「美猫1人ではとてもアシストは無理です、私も同行しましょう。」

銀は美猫にさらに注意を与えた。

「あなたの持っている聖別された銀のナイフが本来の力を発揮するから額の天頂眼に

ある急所に止めを刺す時に使いなさい、そして同時に光明真言を唱えなさい。」

いつもの明るい調子の銀ではなく昔の竜造寺銀、氷の刃に戻ったような様子であった。

大和警部補は銀に大蛇の変化を相手にする上の注意を真剣に聞いていた。

「大和さん、大蛇の変化は女に化け相手を誘惑します、それも魅了の呪法を使って強引に

迫ってきます、強い意志で払いのけないと不覚を取るので気を付けて下さい。」

 

雅、美猫、大和警部補に銀を加えた大蛇の変化退治のチームの作戦会議のための現状の

情報収集を塗仏の鉄が行ったがやはり相手はとても用心深く困難を極めていた。

そこで鉄自ら中央公園に情報収集に向かった。

ふと同族の匂いを嗅ぎつけ、中央公園の南の隅の方に足を延ばした。

公園の管理人の様子がおかしかった、狼男に変化して追いかけた。

管理人が狼女に変化して逃げ出したので鉄は必死になって呼び止めようと、

「お〜い、逃げなくてもいいんだ、アバルーの難民を保護して自由に暮らせるように

しているんだ。」

「本当なの。」

狼女は立ち止まり鉄の話に耳を傾けた。

「お前さんよくまだこんなところでホームレス生活をしていたなあ。」

「アバルー難民の猫又、猫又ハーフ、メゾバンパイア、化け狐以下9名は半年前に保護

されてデミヒューマンの成人として戸籍復活して亜人街で暮らしているよ。」

「俺は山崎鉄、通称塗仏の鉄で呼ばれている情報屋だ。」

「あたしは荒野吹雪、狼女で16歳だ、本当に収容所送りにならないだろうな。」

鉄は同族らしく疑い深い所が今までとホームレス生活を続けていた要因だろうと思った。

「狼の血に誓って保証するよ、それよりこの辺は大蛇の変化が亜人を襲うんで危険なんだ

頼むから一緒に来てくれ。」

吹雪は鉄を信じ一緒に雅のマンションへ行った。

 

「雅さんこんな時になんだけど、この子の戸籍の面倒見て欲しいんだ。」

「アバルー難民の狼女で荒野吹雪16歳だ。」

雅は吹雪に収容所に行かなくてもいい方法を説明した。

「ネコ、この子に着替えを用意してくれないか。」

美猫は吹雪に自分の服でサイズが合いそうなものを選んで用意してから、

お風呂を沸かして先に入る様に勧めた。

「わあ、ちゃんと風呂に入るなんて9か月ぶりだよ。」

美猫は下着を洗濯しておいたが痛みがひどいので1階のコンビニで同じサイズのもの

を買っておいた。

吹雪は風呂から上がると新しい下着が用意されていることに気が付き美猫に感謝した。

「美猫姉さん、ありがとうやっぱり下着は新品がいいよな。」

「おない年なんだから姉さんは止めて、呼び捨てでいいよ。」

「じゃ美猫さん、狼は恩義を忘れないんだ。」

美猫は吹雪を連れていき、向かいのカオスな古着屋で吹雪に好きな服を選ばせた。

雅は早速吹雪を連れて役所に行き手続きをしてデミヒューマン21歳として戸籍登録した。

吹雪は住むところが決まるまで、暫く居酒屋銀猫で厄介になることになった。

吹雪は雅や美猫、銀、鉄がこんなに自分に親切なことに感謝して恩返しを考えていた。

雅たちが中央公園の大蛇の変化を退治しようとしていることを知り、なんとか自分も

協力したいと考えた。

「鉄兄い、あたしも大蛇退治の手伝いがしたいんだ、頼むよ。」

「吹雪ちゃん、こいつはとっても危険な仕事なんだ情報収集だけでも注意が必要だ。」

「あたしは公園の隅々まで知っているから必ず役に立つよ。」

鉄は少し考えてから中央公園の地理に明るい吹雪の狼としての能力と用心深さを信じ

情報収集の手伝いを任せることにした。

吹雪は中央公園の地図を描き虱潰しに調べ公園の南西の小さな丘に洞穴があることを

突き止めた。

鉄に報告すると、

「流石に一人で独断専行しない所は俺の見込み通りだ。」

「早速、作戦会議に参加してみないか、吹雪ちゃんの実地検分の様子を報告してくれ。」

雅、美猫、大和警部補、銀、鉄の大蛇退治の作戦会議に吹雪が加わり公園の南西の

小さな丘の洞穴についての現状を報告した。

吹雪は蛇の習性を理解して偵察を行い相手に気付かれない様に洞穴の入り口の様子を見て

更に寝息を確認して大蛇の塒であることを突き止めた。

「出入りの時は人型に変化して、さらに足跡を消してから塒に戻り奥に入ってから変化を

解くという用心深さです、塒にいるのは寝息の音から1体のみですが塒の中に入って

襲うのは内部の様子がわからないだけにとても危険です。」

「さすがによく大蛇のことをよく調べたわね。」

銀は吹雪の見識を誉め、作戦に役立てることにした。

「やはり塒から出てきたとき、それも人型の時に倒さないと厄介よ。」

「生血を啜って丸呑みにしないのは大蛇の姿それも自由に動けなくなるのを恐れている

のね、かなりの知恵を持っているから大蛇体で空腹あるいは腹八分で自由に動ける状態

で、相手をするのはとても危険ね。」

「大和さん、雅さんで何とか人型の時に首を落として、胴体手足をばらばらにして動きを

封じて、美猫は隙を作らずに額の天頂眼、第三の目に聖別された銀のナイフを突き立てて

止めを刺す、光明真言は覚えたわね、私も一緒に手伝うわ。」

「一番厄介なのが半人半蛇の形態をとった時で下半身の蛇の体は切られても再生結合

自由自在だから巻きつかれたら命にに係わる上、牙には毒を持っているから噛まれたら

助からない、絶対に再変化の隙を与えないことが重要ね。」

「銀さんだけ丸腰なのは危険じゃないですか。」

「雅さんが丸腰だったらもっと危険よ、大蛇との戦闘経験が無い上

素手での戦いにも慣れてないでしょ。」

「私は錫杖を用意して美猫のサポートをします。」

雅は銀の指摘通りであったので素直に銀に従った。

「さて、どうやって塒から燻り出すか。」

銀は一番安全で確実な方法を考えていた。

蛇の嫌いな煙草の葉をたくさん積んで洞穴の入り口で焚きこめて燻り出す作戦を考えた。

池の中に逃げ込まない様に南側へ誘導するよう煙草の葉を焚いた煙を辺りに充満させる、

大蛇の姿で出てきたら人型に変化するのを待っていきなり首を落とす、落ちた首を

押さえつけて天頂眼に聖別された銀のナイフを突き立てる。

気温がまだ高くない朝方に作戦を開始すれば大蛇に隙を突かれないで作戦を成功させる

事が出来ると銀は考えみんなに提案した。

 

翌朝日の上らないうちからたくさんの煙草の葉を積上げ燃やして煙で大蛇の塒の洞穴を

燻して大蛇を追い出す作戦を開始した。

やがて途轍もない大きさの大蛇がのろのろと洞穴から這い出してきた。

池のある北の方は煙草の葉の煙で一杯であったので南に向かって這って行った。

やがて煙が途切れ息が出来るようになると頭からゆっくりと変化した。

やがて完全に人型に変化し終えると辺りの様子を窺がい、人の群れに紛れようと

静かに歩き出した。

突然、大和警部補と雅が抜刀して駆け込んできた。

大和警部補の一太刀で大蛇の変化の首が飛び雅は胴体を薙いで動きを止めた。

大和警部補と雅はひたすら大蛇の変化の体をばらばらに斬り裂いて再生結合できぬよう

出来たとしても時間がかかる様にした。

切られて落ちた首は飛び上がろうとしたところを銀の錫杖で叩き落とされ地面に落ちた。

美猫が聖別された銀のナイフを大蛇の額の天頂眼に突き刺した。

しかし、首になった大蛇は抵抗してナイフが充分深く刺さる前に逃げ出そうとした。

その時首に飛びついて押え込んだ者がいた。

吹雪であった。

吹雪は自分にも手伝えることがあるのではないかと思い、こっそりついてきたのであった。

美猫は吹雪の助けを借りて大蛇の急所に止めを刺し光明真言を唱えた。

大蛇の首はしぼんでミイラの様になってやがて塵になって崩れ去った。

大蛇の体の残りのばらばらになった部分も塵になって消え去っていった。

「吹雪ちゃん、ありがとう、危なく仕留めそこなうところだったよ。」

美猫は吹雪に礼を言い、無事大蛇を退治できてホッとしていた。

「美猫、初めての大蛇退治、吹雪ちゃんのおかげで無事に果たせたようね。」

銀も本当は美猫が心配であったようで今回の氷の刃の復活であった。

「大和さん見事な腕前ですね、相手に全くつけ入るすきを与えなかったわ。」

「雅さんも見事に再変化を封じる事が出来て、霊刀を委ねたかいがあったわ。」

大和警部補は銀は以前大蛇の変化を倒した経験があると思ったが本人が昔の

話を嫌がるので敢えて聞かなかった。

美猫は吹雪に初めての大蛇の変化退治が怖くなかったか聞いてみた。

「美猫さん怖くないって言ったら嘘になるけどあそこで勇気を出せばうまくいくと

思ったら不思議と体が先に行動していたんだ。」

吹雪は照れ臭そうに言った。

 

アバルー収容所の記録が全く残っていないので大蛇が他にもいる可能性があり、

大和警部補は署に戻り島田課長に報告した。

島田課長は全ての収容所の記録を洗い出し、以前大蛇の変化を収監していた例を

調べ、クニガディンザウムと言う自在変化する大蛇の変化は脱獄不可能な特殊な

箱牢に閉じ込めていたという記録を見つけた。

 

吹雪は引き続き居酒屋銀猫に居候することになり、塗仏の鉄の部下として情報屋

見習いとして働くことになった。

 

遠い昔、古宮慧快と組んで仕事をしていたころ竜造寺銀は大蛇の変化を十数体程

退治していた、大蛇の呪いを慧快に解いてもらったこともあり、エキスパート中の

エキスパートであった。

その時止めに使っていたのが聖別された銀のナイフであった。

 

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128、化け狐は狼少女の盗食癖に悩む。

 

妖子は新しく居酒屋銀猫の居候になった吹雪の盗み食いの癖にかなり困っていた。

特にお店でお客用に準備した料理をそれも下ごしらえの段階で食べてしまうのであった。

妖子の料理の手順が全て狂うので急遽予定の献立を変更しなければならなかった。

下ごしらえの段階で多めに準備しておいても、増えた分だけ余計に盗み食いをするので

処置なしだった。

吹雪はとてもプライドが高いので傷つけるようなことを言うと逆効果になるか、

もの凄く落ち込むかどっちにしても聡い妖子は直接本人に言うことは避けることにした。

妖子は吹雪の好物を調べてたくさん用意して置き、そちらに誘導して盗み食いを止めさせ

ようと考えてやってみたが吹雪の食欲は底無しで全て平らげてしまった。

吹雪は食材を特に肉は火を通す前に盗み食いをするのであった。

妖子は食材の鮮度の新しいものを選んでくるので生で食べても食中毒の心配はないが

そのまま食べられてしまうのは正直不本意であった。

キチンと調理して美味しくしたものを食べて貰いたかったのだった。

妖子は平和的に解決する方法を模索した。

妖子は吹雪が調理場に入る前に調理場にいて食材から目を離さない様に注意してみた。

さすがに堂々と盗み食いはしないものの物凄いプレッシャーを感じ吹雪も妖子のいなく

なるのをひたすら待っていた。

どうやら吹雪は食欲以上に盗み食いをすることを楽しみにしている様であった。

妖子も食欲だけの問題なら美猫の様に簡単に解決できるが盗癖ならぬ盗食癖だと大きな

問題で何とか吹雪に直してもらわないといけないのであった。

妖子は芥川龍之介の「芋粥」を思い浮かべそれで吹雪の盗み食いを止めさせようと

考えたが無駄になる食材を考えると断念せざる得なかった。

知恵比べなら圧倒的に妖子の勝ちだが吹雪を傷つけないように理解させることがこんな

にも難しいことであったとはさすがの妖子も策がなかなか浮かばなかった。

妖子は調理場から離れず、離れるときは調理場に厳重に鍵を掛けとりあえず対処することにした。

しばらくは食材の被害は無くなったが鍵にかなり破ろうとした跡が見えた。

また、吹雪の視線が冷たくなったように妖子は感じ次の策を考えなくてはならなくなった。

 

いつの間にかキジコの後ろに尻尾だけ黒いロシアンブルーの生後3か月くらいの子猫が

くっ付いて回る様になっていた。

キジコの方が2か月ほどお姉さんなので子猫の面倒を見る様になっていた。

美猫は早速子猫をお風呂に入れブラシをよく掛け毛皮をふかふかにした。

雅はキジコの突然現れた弟分の子猫を獣医院へ連れて行き、予防注射を打ってもらって

健康管理に気を付けキジコ同様に可愛がった。

「みやちゃん、この子猫どこから来たのかな。」

「気が付いたらキジコちゃんにくっついて回っていたからきちんと予防注射を打って

もらったりキジコちゃんと同じように面倒見ているけど誰かの飼い猫じゃないかな、

人馴れしているようだし。」

その時雅の部屋に吹雪がやって来た。

「雅さん、美猫さんMr.オクロ来てない、あたしの面倒見ている子猫なんだ。」

美猫はキジコに甘えている子猫を抱き上げ吹雪に見せた。

「美猫さん、この子がMr.オクロだよ、面倒を見ていてくれていたんですね、ありがとう。」

「吹雪ちゃんの飼い猫だったの、ずっと家にいてうちのキジコちゃんにくっついて

離れなかったから、予防注射やらお風呂にいれて綺麗にしたりして面倒を見ていたんだよ。」

「調理場からこの子の食糧を調達していたんだけど調理場に鍵を掛けられて調達でき

なくて困っていたら姿が見えなくなって捜していたんだ。」

「酷いよね、調理場に鍵をかけるなんて。」

吹雪はふくれていた。

「待て、調理場から調達ってきちんと責任者の妖子ちゃんに断ってから食糧を持ちだしたのか。」

美猫は吹雪の話を聞いて驚いて確認した。

「えっ、責任者って。」

「無断で食糧を持ちだしたら妖子ちゃん困っているんじゃないか。」

「きちんと理由を妖子ちゃんに言えばちゃんと子猫の分の食糧を出してくれるはずだよ。」

「いや〜自分の分も一緒に持ち出していたから言い出せなくて。」

美猫は吹雪が盗み食いをしていたことを厳しく叱った。

「妖子ちゃんに初めから食べたいものをリクエストしてきちんと作って貰えば良いものを

盗み食いなんかしたら調理場に鍵ぐらい掛けるよ、あたしも一緒について行くから

きちんとこれまでの盗み食いのことを妖子ちゃんの所へ行って謝りなよ。」

美猫は吹雪と子猫を連れて妖子の所にいって理由を説明して、さらに吹雪にこれまでの

盗み食いを洗いざらい白状させて妖子に穏便な処置をとって貰うように頼み込んだ。

妖子は美猫が間に入ってくれたことに感謝した。

吹雪との間にしこりが出来ない様に決着をつけてくれたので、妖子も吹雪に優しく提案した。

「吹雪さん、何か食べたい物があったら仕入に行く前でも下ごしらえをしている時でも

直接言ってくれれば直ぐに料理して食べられるようにするから、子猫ちゃんの分もちゃんと

用意するから必ず私にリクエストして下さいね、未完成の食材を食べられるのは料理人

にとってとても辛い事なの、本当の味を味わえないじゃない、だからお願いね。」

妖子は吹雪と握手をして無事仲直りした。

 

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129、Mr.オクロは血統書付不良品

 

Mr.オクロは吹雪の飼い猫である。

元々は血統書付のロシアンブルーの子猫なのだか遺伝子の悪戯で尻尾だけが真っ黒だった

のでブリーダーから不良品扱いを受け乳離れ直後ぐらいに棄てられた可哀想な子猫だった。

そんな可哀想な子猫をホームレス生活をしていた吹雪が手塩にかけて育てたのであった。

生後2か月ぐらいだった痩せこけた哀れな捨て猫を見つけた時の吹雪の母性はMAX

だった。

子猫の食糧の調達に全力を注ぎ、子猫の愛情を一手に引き受け育んでいた。

吹雪が鉄たちのおかげで9か月ぶりにホームレス生活を脱した時当然子猫も一緒であった。

吹雪は居酒屋銀猫の居候と言う立場から子猫の存在をひたすら隠していた。

子猫ことMr.オクロは昼間吹雪が不在の時とても心細くただ吹雪が帰ってきてご飯を

持ってきてくれるのが楽しみだった。

なかなか吹雪が帰ってこない時などとても不安で寂しかった。

そんなMr.オクロの前に現れたお姉さん猫がキジコだった。

不安そうに鳴いている子猫の声を聴き付けキジコは子猫の前に現れて慰めたのであった。

当然のことながらMr.オクロはキジコべったりになってくっ付いて回るようになった。

キジコも可愛い弟分の面倒をよく見て自分の知識や知恵をMrオクロに教え、周りの

人たちに可愛がられるようになった。

雅や美猫はこの謎の子猫を直ぐにキジコの弟分として可愛がった。

当然トイレや爪とぎの作法もキジコに従いきちんとこなした。

吹雪の盗み食い事件などを経てMr.オクロも猫社会の一員として過ごす様になった。

吹雪は美猫に教わった通りに食事、トイレ、爪とぎの用意をきちんとしてから仕事に

出る様になった。

Mr.オクロはキジコと合流して1日を過ごす様になり、寂しい思いをしなくなった。

キジコはMrオクロを連れて向かいのカオスな古着屋の最長老の元に挨拶に行った。

Mr.オクロもキジコと一緒に最長老の話を興味深く聞き入っていた。

キジコを雅や美猫が迎えに来るまで一緒にくっついて縄張りのパトロールをしたり

昼寝をしたり、じゃれ合ったりしていた。

キジコ専用座布団にキジコとMr.オクロも一緒に昼寝するようになった。

夜は妖子がご飯を用意していて空腹で寂しい思いをすることが無くなった。

妖子もMr.オクロを可愛がり愛情を注いだ。

吹雪が遅く帰って来てもMr.オクロはきちんと起きて出迎えた。

吹雪はやはり命の恩人で最愛の友人であった。

寝るときは吹雪の布団の中か、枕元であった。

しかし、吹雪のネーミングセンスを美猫はかなり疑問視した。

「この子猫,元は血統書付のロシアンブルーなのにまるでローカル芸人みたいな名前は

ないと思うけど、もっと可愛い名前を考えつかなかったの。」

「そうかな、狼の様に逞しくなって欲しいと思って特徴をそのままズバリと名づけて

みたんだけど、おかしいかな。」

「そういえば、うちのキジコちゃんもキジトラ猫だったからそのままキジコにしたんだっけ。」

美猫のネーミングセンスもかなりいい加減だったのでとりあえず可愛いからいいやと

決着がついたが名づけられた方はいい迷惑である。

そんないい加減な2人の膝の上でキジコとMr.オクロは大きなあくびをしていた。

2匹の猫は本当の姉弟の様に仲良くくっ付いていた。

キジコは好奇心旺盛な弟分が出来たことをとても喜んだ。

Mr.オクロも頼りになるお姉さん猫に甘えられることを嬉しく思った。

キジコはかなり器用に何でもこなす猫だがMr.オクロもキジコのやることをまねて

吹雪を驚かせた。

吹雪も美猫からキジコの出来ることが多岐にわたって並の猫以上であることを聞いて

いたが自分の愛猫Mr.オクロが吹雪の洗濯物を畳む手伝いをしてくれた時はとても感激

してご褒美のネコ缶をたくさん奮発した。

キジコとお揃いで色違いGPS付の首輪を購入してMr.オクロにつけてみた。

Mr.オクロもどうやら気に入ってくれたようなので吹雪も満足であった。

猫にコンプレックスを意識する感情があるとすればこの子猫は本来血統書付で高い値段で

売られていき何不自由のいない生活が出来たのにただ尻尾の色が体毛のグレーではなく

真黒であったがために不良品として商品価値の無いものとして捨てられる理不尽なことに

怒り苦悩し怨むことであったと思われる、しかしそんなことを吹き飛ばすような吹雪の

愛情によってこの子猫は救われたのであった。

キジコが雅や美猫に抱いている感情を肌で感じてMr.オクロは吹雪に何かしたい気持ちが

湧いたようだ。

Mr.オクロの黄緑色の瞳は吹雪を見つめているだけで心が安らいだ。

一番辛い時に手を差し伸べてくれた吹雪にそのまま放置されれば命が尽きるところを

吹雪は暖かく包み込んで冷えた体を温め、柔らかい肉を噛んで食べやすくしたものを

与えて命を繋いでくれたのだった。

Mr.オクロには母猫の記憶はほとんど無く、吹雪が母猫替わりだった。

同じ捨て猫のキジコは母猫兄弟ごと捨てられ一家離散の目に遭ったがまだ母猫の温もり

を知っていた。

それすらもほとんど覚えていないMr.オクロに同じ捨て猫として精一杯の温もりをキジコ

は提供しようと思っただろうと想像できよう。

そんなキジコを本当の姉猫の様に慕うMr.オクロは猫にコンプレックスがあるなら既に

克服し前向きに生きていくだろう。

 

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130、さつきは大蛇の変化を魔眼で破る。

 

「美猫ちゃん大蛇の変化に止めを刺したんだって。」

さつきは美猫の手柄を誉めていた。

「やぁ、銀ねぇと吹雪ちゃんが手伝ってくれたし、お膳立ては大和さんとみやちゃん

がやってくれたし、そんなに褒められると恥かしいよ。」

「デミバンパイアよりある意味性質が悪い相手だし退治に手慣れたエクスタミネーター

は殆どいないんじゃないかな。」

さつきは急に真剣な顔をして美猫に話しかけた。

「私、収容所で大蛇の変化の箱牢と言うか水槽を見たことがあるんだよ。」

「自在変化しても逃げ出せない様にした上、温度を下げて活動できない様にしてあったんだよ。」

「さつき、その箱牢ていうか水槽って1つだけだったの。」

「いや、全部で4つあって中が確認できたのは1つだけだったけどね。」

「じゃ、まだほかにも大蛇が脱走している可能性があるの。」

「冬の寒い時期には活動できないから、そのまま収容所で焼け死んだと思ってたんだよ。」

「美猫ちゃんが退治したのが最後の大蛇ならいいんだけど。」

美猫はさつきを連れて銀の元に行ってさつきに銀にも報告させた。

「そうね、確かに1体だけとは限らないわね。」

「大和さんの話じゃ他の収容所に自在変化可能な大蛇の無期懲役犯がいるっていう話だし、

デミバンパイアが社会問題になるほど暴れる前は大蛇の変化はかなり危険な存在だったっていうしね。」

「大蛇の変化の特徴としては体温が低かったり爬虫類と同じで変温動物ってことだから、

体温が異常に低いライカンスロープがいたら要注意かしらね。」

「さつきちゃんが本来の力を出すことが可能なら大蛇の魔力を

封じる事が出来るんじゃないかしら、メゾバンパイアの魔力は

ライカンスロープ、いやデミバンパイア以上だからね。」

「私の魔眼なんかが大蛇の変化に通用するんでしょうか、とても不安です。」

「さつきちゃんはもっと自分の力に自信を持つことが必要ね。」

「いざと言う時は本当にお願いするかもしれないから。」

銀の真剣な様子にさつきは圧倒されていた。

さつきと銀の不安は的中していた。

アバルーの収容所には4体の大蛇の変化が収容されていた。

そのうち1体は水槽の中で凍死、もう1体は水槽からは出たものの焼死していた。

残る2体が脱走しそのうち1体を退治したので、1体が行方不明だった。

気温が高くなり活動しやすくなった大蛇の変化はもう何年も食事をとっておらず

空腹であった。

中央公園の池は大蛇にとって休眠するのに丁度良かった。

大蛇は主に男性の生血を好んで啜っていた。

当然若い女性に変化して獲物を狙っていた。

銀からの連絡で大和警部補と雅は魔力殺しの眼鏡を掛け、

霊刀を携えてパトロールをしていた。

美猫と吹雪に加えてさつきも待機して銀の指示を待っていた。

気温が低くなり霧が出てきて中央公園の視界がかなり悪くなっていた。

爬虫類の動きを鈍くするほどの低温ではなく湿度がかなり高かった。

顔色の悪い若い女がふらふらしながら歩いていた。

雅が呼び止めようとしたとき銀の鋭い声が雅を制止した。

雅は抜刀して戦闘態勢を取った。

「今よ、さつきちゃん。」

銀の鋭い声と共にさつきが魔眼を発動した。

顔色の悪い女は半分大蛇の本性を出したものの魔眼で金縛りになり動けなくなった。

雅は霊刀で大蛇の変化の首を刎ね、転がった首の天頂眼に美猫が聖別された銀のナイフ

を深く突き立て、光明真言を唱えた。

大蛇の変化の醜い首はミイラの様に干からびてやがて塵になって崩れていった。

首から下の胴体もさらさらと塵になって消え去っていった。

さつきも美猫も放心状態で尻餅をついていたので銀と吹雪が助け起こした。

大蛇の変化が滅びると池の周りに立ちこめた深い霧が晴れて

何事も無かった様に静かな公園に戻った。

「この霧も大蛇の変化が齎したものだったんですね。」

雅は改めて大蛇の恐ろしさを実感した。

「さつきちゃん大手柄よ、見事に大蛇の自在変化を封じたわ。」

銀はさつきの魔眼の威力を高く評価した。

「でも、今までで一番手ごわかったです、動きを止めるのが精いっぱいでしたよ。」

「狒々なんかなら雑巾みたいに絞ることもできますけど、今回は全く余裕が無かったです。」

「止めは美猫ちゃんの一撃ですし。」

「いや、大蛇は首を刎ねられても飛び回ったり暴れたり抵抗するんだけど、さつきの

魔眼のおかげで簡単に止めを刺せたよ。」

美猫もさつきの魔眼の威力を誉め労った。

「もうこんな化け物退治は御免こうむりたいね。」

大和警部補はいつものデミバンパイアと勝手の違う手強い大蛇退治に溜息をついていた。

 

 

説明
126、キジコはお腹が空いてしょうがない。
127、狼少女は蛇女と戦う
128、化け狐は狼少女の盗食癖に悩む。
129、Mr.オクロは血統書付不良品
130、さつきは大蛇の変化を魔眼で破る。
あらすじ世界観は快傑ネコシエーター参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定は快傑ネコシエーター2参照
魔力の強弱は快傑ネコシエーター3参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定2は快傑ネコシエーター4参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定3は快傑ネコシエーター5参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定4は快傑ネコシエーター6参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定5は快傑ネコシエーター8参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定6は快傑ネコシエーター9参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定7は快傑ネコシエーター10参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定8は快傑ネコシエーター11参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定9
狼少女:荒野吹雪 スリーサイズ70・53・74
デミヒューマン(実はワーウルフ)女性戸籍上21歳(実は16歳)
アバルーの収容所の叛乱に巻き込まれ、中央公園で9か月間ホームレス生活をしていた強者、手癖が悪く盗み食い事件を起こす。 美猫を姉貴分として慕っている。

子猫:Mr.オクロ
本来血統書付のロシアンブルーなのに尻尾が真っ黒だったのでブリーダーから不良品として捨てられる。吹雪の強い愛情で健やかに成長している。
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