魔導師シャ・ノワール 闇の書偏 第四十話 ハッピーバースデー
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はやてと出会ってから数日。ほぼ毎日、店の手伝いがある為時間は昼からだが、図書館へ通う日が続いた。無論というか、はやて本人も待っていたようで

二日目は朝早くから俺を待っていたらしい。流石にそれは悪いと、予め次の日に来る時間を告げ。

 

二人が年頃の男女であれば逢引などになっているのだろうが。生憎とそんな年齢ではないのだが....

 

「ごめん。待った?」

「いや、今来たところだが・・・」

「そっか。待たせてごめんな。ノワールくん」

 

どうしてこういうやり取りになるんだ?

そういうやり取りを見ては図書館の職員が微笑ましくこちらを見つめてくるし

鬱陶しいことこの上ないが....

 

「えへへ!今日はどんな本読っかな〜?」

 

背の高い本棚の列を二人で進み、嬉しそうに微笑んでくるはやてを見ているとそんな事も気にならなくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、いつものように夕方なるとある事が告げられた。

 

 

 

「ノワールくん、明日って暇かな?」

「あっ?どうしたんだ急に?」

 

「いや、暇やったら遊びに来てくれへんかな〜って」

 

「別にいいが。なにかあったのか?いや、何も無くても全然構わないが」

 

改めて言われるまでも無く。図書館の帰りなどはやての家には何度か遊びに行っている。

俺が遅くなるとなのはやアリスが怒る為、あまり遅くまではいないが。

 

「えっと・・・実は...な?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誕生日!?」

 

「う、うんっ。実はそうなんや・・・」

 

「それならもっと早く言ってもいいんじゃないか?」

 

「それやと、なにか催促してるみたいで悪いやん。ノワールくんにそんな気使ってほしくないし・・・」

 

「はぁ、変なところで気を使うなお前は。にしても誕生日か。なにか欲しいものでもあるか?」

 

「え?そんなんええって!それやと本当に催促したみたいやし!」

 

この受け答えから考えると物を送ったら本当に気を使わせてしまいそうだ。なら....

 

「そうか。なら、して欲しいこととかあるか?」

 

「え?」

 

「何でも言っていいぞ。一緒に遊んだり散歩したり。どこかに行きたいなら連れてってやる」

 

「何でも・・・」

 

しばらくの間、はやては考え込んでから口を開いた。

 

「なら...一緒に寝てくれへん?」

 

「お前....」

 

呆れたように俺が口を開くと。はやては俺の呆れた意味を理解したのか顔を真っ赤にし始めて慌てふためいた。

 

 

「ちゃ!ちゃうちゃう!そんな意味やないー!」

 

 

「なに慌ててるんだか。つまりはお泊りして欲しいんだろ?いいよ別に」

 

 

後で、なのはとアリスが怖いが。そこは士郎達に抑えてもらおう。

 

 

「うう〜。ノワールくんは意地悪や〜」

 

 

やはり、はやてで遊ぶと面白い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、八神家にお泊りが決まったのだが

 

「お誕生日でお泊りするの?ならケーキぐらい作って行きなさい」

 

家に帰ってから事情を話した高町桃子にそう言われ。誕生日、当日の朝に翠屋にてケーキの作成に乗り出した。

 

作ったのはロールケーキ。シンプルなチョコ風味で。意外と簡単に出来た。

喫茶店では裏方も手伝ったりしているため。手順もある程度は理解していた。

幾つか試作も行ない味見もしてあるので、最悪の結果にはならない。

 

完成したそれを厨房に放置して。調理の為に着ていたメイド服から着替える為にロッカールームに行き

私服であるラフな黒を基本とした男物の服装へと着替えて戻ると

裸で置いてあったロールケーキが箱に包まれて煌びやかな赤いリボンまで結ばれて梱包されていた。

 

「これは?」

 

「フフンッやっぱりこういうところにも気を使わないとねぇ」

 

「絶対に相手に開けてもらうのよノワールちゃん」

 

「はぁ?」

 

よく分からないが桃子と美由希さんにそう言われたことにこの時疑問に思わず

梱包されたロールケーキを紙袋で手に提げて八神家へと向った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小奇麗な住宅街に聳え立つ一軒家に足を運び。チャイムを鳴らすと既に家の主は客が誰なのか知っているようで。「ノワールくんやろ?入ってきて〜」などと、玄関からそのまま声が聞えた。

 

そして、言われるまま扉を開けると、こちらが照れてしまうような満面の笑みを浮かべた車椅子の少女が待っていた。

 

「よう、はやて。ってもしかしてずっと待ってたのか?」

 

「え?」

 

「いや、車椅子にしては応対が早いし。玄関からそのまま聞えて来たしな」

 

「あ、えっと・・・その〜・・・な?」

 

図星だったのか恥ずかしそうに悶えるはやてを見て思わず笑ってしまう。

 

「プッ・・」

「あー!笑うなんて酷いやん!しかたないやろ!楽しみにしてたんやもん!」

 

「あ〜はいはい。悪かった悪かった。ほら、これ」

 

プンプンと怒り始める家主を静めるために手に持った紙袋をはやての目の前に差し出す。

 

「え?こ、これって?」

 

「あんまり気を使われても悪いからな。け、ケーキだ・・・。不味かったら捨ててもいいぞ」

 

はやては紙袋を受け取って中を覗き込んでから疑問を口にする。

 

「もしかして・・・ノワールくんの手作り?」

 

俺は静かに頷くと。はやては一瞬だけ驚いてから嬉しそうに微笑んだ。

 

「ありがとぉ!手作りのケーキ食べるなんてはじめてや!本当にありがとうなぁ!」

 

「あ、ああ・・・」

 

なんだろう?こんな事くらいでここまで喜ばれると少し恥ずかしい。

 

「じゃあ、こんなところじゃあれやし。お茶入れるから上がって上がって」

 

「ああ。それからだな」

 

まだ一つ大切なことを伝えていない。

 

「なんや?」

 

「誕生日、おめでとう。八神 はやて」

 

「えっと・・・うん。そういえばその件なんやけど・・・」

 

「どうした?」

 

「わたしの誕生日、明日やったわ」

 

《ズテッ!》

 

その言葉に思わず扱けてしまう。

 

「はぁ!?」

 

「い、いや!あれやって!もしかしたらノワールくんが来てくれると思って考えてたら

 日にちを一日間違えて伝えてしまってな?明日やなくて明後日って伝えようと思ってたんやけど・・・」

 

「まあ、いいけど。とりあえず、ボケボケはやてとでもしばらく呼ばせてもらうか」

 

「そ、それだけは堪忍してー!むっちゃ恥ずかしいやん!」

 

「冗談だ」と笑い飛ばしてそのままリビングに上がり。

 

そのまま俺が作ったケーキをお茶請けに、はやてが紅茶を入れてリビングに戻って来たのだが....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんや!むっちゃかわいいやん!」

 

「・・・」

 

梱包された箱から出てきたのは黒猫。

 

チョコレートで艶のある可愛らしい緩やかな丸いライン。つぶらな瞳が色の付いたアーモンドチョコレートのお菓子で二つ並んでおり。ご丁寧にも、赤の細いリボンと銀鈴で首輪までされていた。

 

生憎とここまで凝ったデコレーションをした記憶はない。恐らくあの二人(高町親子)にすり返られたのだろう。

 

趣旨として俺が作ったものを変えるとは考えにくいので、最初のほうに複数も作らされた試作品のロールケーキが、この黒猫の内臓として入っているに違いない。とんだ魔改造である。

 

 

「あの馬鹿共が・・・」

 

「どないしたん?」

 

「いや、なんでもない」

 

俺が作ったというより合作になっているとは。あまり話も面白い話ではないだろう。説明も面倒だ。

 

それより素直に横で「食べるの勿体無いな〜」などと言っている少女と素直にお茶にしたほうがいい。

 

ただ、それも問題が発生した。

 

「ど、どこから切ったらええんや?」

「好きにしろ・・・」

「の、ノワールくん切ってぇな・・・」

 

そう、猫の形を上手く再現しているので。切れ目を入れようにも戸惑われる形だ。

 

胴を真っ二つ?無難だがエグイ・・・。中身がチョコレートのロールケーキで良かった。

中身がイチゴなどの赤色のケーキだったなら子供が泣いてしまうだろう。

 

いっその事首を落とす?いや、流石に、はやてでも泣いてしまうかもしれない。

 

「ええいッ!!」

 

結局、足元の胴からから輪切りにして食べる事にした。

 

味は変わりなく。美味しいのだが。とりあえず、あの親子には帰ってから説教をするとしよう・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケーキを食べてからはゆったりとした時間が進み、二人で買い物に出かけ、夕飯の食材を買い、はやてが夕食を作り始めた。

 

最初は俺も手伝うと言っていたのだが

「あんな美味しいケーキ食べさせられて。夕ご飯まで一緒に作られたら女のプライドが持たへん」

だそうで、俺は一人リビングからはやての調理を流し目で観察しながらソファーに寝転がる。

 

そこへ電話が鳴り響いた。

 

《トルゥゥ!》

 

「ん?家の電話か?」

 

「ごめん。いまちょっと手が離せへんから。変わりにでてくれへん?」

 

「ああ、構わないぞ」

 

寝転んでいたソファーから起き上がり。リビングの電話を取る。

 

通常の受け答えに多い。家名を名乗る行為を俺は馴れておらず出来ない。

 

ジッと息を殺して相手の声やその周りの騒音に耳を傾けつつ。

家の周りの環境の変化にも注意を配る。

 

奇襲などの方法で電話などを使うのはよくある手の一つだ。

 

必ず電話で一人の手が塞がり意識もそちらに向く。

奇襲する側からすると便利な手段の一つだ。

 

だが、俺のそんな警戒は意味を成さない。

 

〔もしも〜し。海鳴大学病院の石田です。はやてちゃん?〕

 

「申し訳ありませんが石田女医。ただ今、八神はやては夕食の調理中ですので

 電話に出れません。用件を代わりに承りますが?」

 

〔え?〕

 

戸惑う石田という女医の声が聞えると

 

「ノワールくん?もしかして石田先生から?」と俺の受け答えを聞いてはやてが大きな声で、質問を投げかけて来た為。それに頷くと、はやてが調理の手を止めてこちらに来ようとしていた。

 

 

〔もしかして、はやてちゃんから聞いていたノワールくん?〕

 

「どういう風に聞いているかは知りませんが。自分の名前はノワールだ」

 

〔あらあら。お友達が来てたのね。そっかそっか、落ち着いた子みたいで安心したわ〕

 

「なに言ってるんや?」

 

「あ〜・・・はやてに代わりますね」

 

自分の噂話をされてると思い。袖を引っ張られたので

手早くはやてに受話器を渡した。

 

幾つか言葉を交わして。から再び受話器を返される。

 

「ん?」

 

「先生がちょっと話したいって。うわ!お鍋の火止めるの忘れてたー!」

 

慌ててはやてがキッチンに戻り。思わず受け取ってしまった受話器を耳に当てる。

 

「もしもし?」

 

〔フフッ、なんだか楽しそうね〜〕

 

「まあ、賑やかではありますね」

 

キッチンでは慌てて鍋をかき回して

さらに焦げていないかと味見をしているはやてが見えた

 

 

「それで?俺に話って?」

 

〔ううん、大した事じゃないんだけどね。君から見てはやてちゃんってどう?〕

 

「俺から見て?」

 

意味深い質問を問いかけてくる。はやてから俺の事を聞いているなら

年齢も大体知っているだろうに。子供に投げかける質問か?

 

「そうですね・・・。普段、俺と接する時は明るい女の子ですが。

 別れ際などに時折、寂しそうな目をしています。最近は、それも少し少なくなったと思いますが。

 先生が聞きたがっていた事はこういうことですか?」

 

〔そうね。はっきりとそういう言葉が聞けるとは夢にも思わなかったけど・・・。

 それにしても話に聞いていたよりもさらに大人みたいね君は。

 年は、はやてちゃんと同い年って聞いていたんだけど。まあ、それなら安心してはやてちゃんを任せられるわね〕

 

「なんだか年頃の男の子相手とかなら誤解しそうな意味の言葉ですね」

 

〔あら?それでもいいんじゃない?最近、診察で会った時は君の話ばかりしていたもの

 普通、友達が出来たからって。異性を感じ始める年齢でそこまで男の子の友達を

 嬉しそうに話すって、まるで好きな男の子の話をしているみたいよ?〕

 

なに子供に嗾けてるんだかこの女医は

 

「はいはい。ただ、本人はそんな気はないと思いますよ」

 

〔あらあら?その言葉からすると君はなにか思ってるってことかな?

 それもそうよね。まだ子供でも君ぐらいの年なら「ええい!!うるさいッ!」〕

 

《ガチャン!》

 

揚げ足を取られ。思わず受話器を乱暴に叩きつけた。

 

「フンッ!」

 

「の、ノワールくん?先生になんか言われたん?」

 

いつの間にか隣ですごく不安そうな表情のはやてがお皿を持って固まっていた。

 

「え?あ、いや・・・その、だな?」

 

上手く言葉に出来ずに言葉を詰まらせていると。

はやてが持っているお皿に水滴がこぼれ始め。慌ててはやての顔を覗き込むと涙が流れていた。

 

「お、おい!?」

 

「ご、ごめん・・やっぱりわたしのこと・・・先生から聞いて嫌になったん?」

 

「は?」

 

「わたしの病気のこととか・・・なんかいろいろ聞いて言われたんやろ?」

 

いえ、正直言ってそんな話は聞いてませんが。

はやての足にしても本人から正体不明の麻痺だと聞いてるだけなので聞きなおす必要も無い。

 

もしかして、病気の事でいろいろとはやてを気遣うように先生から言われて。

その事で俺が友達で居るのが嫌だとでも思われたのか?

 

「んっぐ・・・べつにええんや。わたしと付き合ってると迷惑ばかり掛ける。

 すぐ他人に戻ってもええんよ?・・・今度から会っても無視してくれてええし」

 

一人ではやてが泣きながら勝手に話を進めていく。

その時の瞳は俺が一番大嫌いな寂しげでビクビクと人と接する事に怯えている目だった。

 

俺は小さく溜息を付くと、はやては体をビクッと小さく小さくさせる。

そんなはやての前に屈んでゆっくりと両手を伸ばして抱きしめる

 

「えっ?」

「バーカ、やっぱりボケボケはやてだ。俺が何時迷惑だって言ったよ。

 一度もそんなこと思ったことはないし、今さら友達をやめたいとも思ってないよ。

 あの女医からは病気のこととか聞いてないし。俺からしたら病気なんて些細な事だ」

 

身体的な問題から今までどれだけ、はやてはその苦悩に悩まされていたのだろう。

俺には想像も付かないし。庇ってくれる人も居ないで一人で戦っていたのだろう。

ちょっとした事で不安に囚われるほどにはやては....

 

「じゃあ・・・なにを話してたんや?」

 

「あ、え〜と・・・その、お前が俺の話をよくしているってあの女医が・・・」

 

「わっ///」

 

はやてをいまは腕の中に入れているので顔は見えないが耳が赤くなっている。

 

「そういう話だったから。兎に角、お前が想像しているような話は無いし思っても居ない。

 例えされたとしても、はやてが考えているようなことは思わない。絶対にな」

 

「そっか・・・。わたしの早とちりか・・・ごめんな」

 

「べつにいいけど・・・。昔、似たような事を言ったことがあるんだけどさ」

 

「うん?」

 

「寂しかったら言葉にしてもいいんだぞ?俺はそれを我が侭だと思わないし。

 こんな俺でもいいなら受け止めてやる」

 

似たことをフェイトに伝えた日がもう随分と昔に思える。これもあいつ等、俺の家族の所為だな。

 

「ええの?」

 

「ああ、好きにしたらいい」

 

「そっか・・・なら、もうしばらくこのまま抱きしめてな。それで優しく頭も撫でてくれたらもっと嬉しい」

 

「あ、ああ、わかった」

 

ゆっくりと片手ではやてのやや茶色い髪をなでていると小さく肩が震えて。

俺の胸の中に顔を埋めてくる。数分の行為の後に、はやての目を見ると寂しげな目はしていなかったが。

瞳が熱っぽくなっており。今までとは少しだけ違った笑顔を向けてくる。

俺は、少しだけ選択肢を間違えたような気がするのは気のせいだろうか・・・

 

 

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流れではやてを撃墜してしまったノワール。彼の女難はこれからもつづくッ!?

 

え?彼らが出てない?騙して悪いが...などとは言いたくないのですが話の区切りなどでヴォルケンズ出ませんでした。思ったより長かったとです!

 

 

 

次回には必ず登場します。お楽しみに!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※読んでくれてありがとうございます!感想などなどはお気軽に!

 

 

 

 

 

 

 

※誤字脱字などの指摘もどんどんお願いします。

 

 

 

 

 

 

※また誤字脱字や妙な言い回しなど見つけ次第修正しますが特に物語りに大きな影響が無い限り報告等は致しませんのであしからず。

 

 

 

 

説明
神様などに一切会わずに特典もなくリリカルなのはの世界へ転生した主人公。原作知識を持っていた筈が生まれ育った厳しい環境の為にそのことを忘れてしまい。知らず知らずの内に原作に介入してしまう、そんな魔導師の物語です。 ※物語初頭などはシリアス成分が多めですが物語が進むにつれて皆無に近くなります。 ※またハーレム要素及び男の娘などの要素も含みます。さらにチートなどはありません。 初めて読む方はプロローグからお願いします。
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コメント
甘い…口から砂糖でそう。ノワールたんはまたフラグ建築シタンダネ(ゼロフィール)
そして、今日もフラグが立つ。包囲網作成中ですね。(Fols)
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