ソードアート・オンライン アクチュアル・ファンタジー 番外編 クリスマス 槍太&里香
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番外編 クリスマス 槍太&里香

 

 

 

 

 

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里香視点

カーテンの隙間から差し込む朝日の眩しさに、あたしは目を覚ました。

 

里香「ううん・・・んあ、もう朝か・・・」

 

寝ぼけた思考のまま眼をこすり、欠伸をして再び布団をかぶり直す。

このまどろみの時間を手放したがる人はそうそういないだろう。

ましてやそれが12月の休日ともなればなおさら。

二度寝しようと思って寝返りをうつが、途中でその動きが止まった。

 

里香「って・・・!?今日はアイツとのデー・・・違う!で、出掛ける日じゃない!」

 

布団を蹴り飛ばしながら、バッと起き上がる

 

里香「取り敢えずシャワー浴びて、それから着替え。それとお化粧も少しだけしたいし、あとは、しっ、下着も可愛いのをって、別にそこまでする必要はないか、あいつ鈍感だし・・・でももしかしたらってことも・・・」

 

変な妄想に浸ってから、枕元に置いてある目覚まし時計に目を向ける。

時計が指し示す今の時刻は8:36。

槍太との待ち合わせは10時。

待ち合わせ場所までの移動時間を考えると、あと1時間以内に準備を終わらせなければならない。

 

里香「ひとまず、シャワー浴びなきゃ!」

 

急いで洗面所に向かう。

素早く服を脱ぎ捨ててからタオルを手に取り、浴室へ入るとシャワーを浴びる。

全身を念入りに洗い、ドライヤーもいつも以上に丁寧にかけた。

下着―――悩んだ末に普段と同じようなもの―――を身につける。

 

里香「も〜、なんでこんなことになってんのよ・・・!」

 

愚痴りながら頭で考える。

昨晩ALOがメンテナンスを行うとのことで暇を持て余していたので、早めに寝ようと思い布団に潜ったのだが眠れず、なんとなく槍太にメールしてみた。

すると思いのほか話が弾み、結果今日(クリスマスイヴ)は一緒に出かけるということになってしまったのだ。

 

里香「え〜と、変な所無いよね?バッグはこれで、コートは新しく買ったやつで、手袋は・・・いらないか」

 

手早く昨日のうちの用意しておいた服―――ベージュのメルトンダッフルコートにハイネックのタンクトップに、ボトムスは光沢のあるボリュームスカート―――に身を包み、小さな鞄の中身を確認する。

 

里香「あとは少しお洒落しなくちゃ。香水香水」

 

普段は全く使うことのない化粧ポーチから香水を取り出す。

いくつかの香水を取り出して少し考えてから、一番香りの薄い香水を取り出す。

少し躊躇った後、首筋に吹きかける。

漂った柑橘系の香りが、気分をすっきりさせてくれる。

 

里香「うん、これならいい感じね」

 

香水の香りで少し落ち着つきを取り戻すと同時に顔が紅潮し熱くなるが、手だけは休まず動かし続ける。

 

里香「これはお洒落、お洒落でするのよ」

 

里香〈別にあいつのことを意識しているわけじゃない・・・〉

 

最後までは口に出さず自分にそう言い聞かせ、薄くメイクをして部屋を後にした。

駅に向かいながら確認すると、現在時刻は9:25。

どうにか間に合いそうだ。

電車に乗り、駅に着くと待ち合わせ場所である駅前の広場に向かった。

クリスマスイヴということもあってか、駅前は人がごった返している

あたしは苦笑を浮かべたまま、その中をかき分けるように進む。

すると、かき分けた人だかりの中から微かに声が聞こえた。

 

?「あ、お〜い里香」

 

聞き慣れた声に視線をそちらに向けると、人ごみに隠れていた1人の男子が呑気な顔で手を振っている。

あたしはそちらに足を向けると、人ごみを抜けて手を振る彼―――炎藤槍太のもとへ向かう

 

槍太「よっ、早かったな」

 

里香「時間ギリギリだけどね・・・」

 

そう言って確認すると、すでに約束の時間を5分オーバーしている。

槍太はそれに気づいていないのか、それともあたしに気を使ってくれたのか。

後者なら嬉しいが、おそらくは前者なのだろうと思うと少し残念だったりする。

そんなことを考えていると、不意に槍太が口を開いた。

 

槍太「なんだ里香、今日は随分と可愛いじゃないか?」

 

里香「かっ、可愛い・・・っ!?」

 

突然の言葉に思わず声が裏返る。

普段のこいつなら絶対にそんなことは言わない。

 

里香「またエルフィーの入れ知恵?」

 

槍太「違げぇよ。素直にそう思っただけさ。化粧してんだろ?あと香水も」

 

里香「っ!?」

 

信じられない。

乙女心に対してかなり鈍感であるはずの槍太が、あたしのお化粧や香水に気付くなんて。

そんなことを考えているあたしをよそに、槍太はあたしの手を掴む。

 

槍太「んじゃ、行こうぜ」

 

里香「う、うん・・・」

 

顔が熱くなるのを感じながら俯くといろいろ視線が突き刺さるが、槍太は勿論そんなことには気がついていない。

呑気な彼に優しく手を引かれ、あたしは12月24日の街へ繰り出した。

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それからしばらく買い物したり、2人で食事したりして楽しい時間を過ごし、気がつくと夜になっていた。

 

里香「今日はありがとう。結構楽しかったわ」

 

槍太「そりゃよかった」

 

里香「この後どうする?あたしはまだ大丈夫だけど」

 

槍太「その前に・・・」

 

半ば強引に話を切り上げた槍太が、肩掛け鞄から小さな袋を取り出した。

 

槍太「ほい、ちょっと早いけどプレゼント」

 

差し出されたそれを、あたしは怪訝そうに顔をしかめて見る。

 

里香「あんた、こういうのはムードとかあるでしょ?なんでこんな道端で渡すのよ」

 

槍太「そう言われたって、俺そういうのわかんねえし・・・」

 

槍太は取り出した袋を戻そうとするが、あたしはその腕を掴んで言う

 

里香「どうせ、出したんだったら、わざわざ戻す必要ないじゃない」

 

槍太は「ん、そうなのか?」となんてこと無いように言い返し、袋を手渡してきた。

ワクワクしながらもそれを隠して袋を開けると、それは綺麗なシルバーネックレスだった。

 

里香「・・・素敵」

 

槍太「気に入ったか?」

 

里香「そ、そうね・・・あ、あんたにしてはいいセンスしてるじゃない?」

 

槍太「俺にしてはってなんだよ!まあいいか。で、どうする?ここで付けるか?」

 

里香「じゃ、じゃあせっかくだし、お、おねがいするわ・・・」

 

槍太「おう!」

 

震え声ながらも何とか言い切り、若干俯く。

 

槍太「んじゃ、つけるぞ?」

 

前から抱き締めるような格好になりながら、槍太は若干慣れない手つきであたしにネックレスをつけた。

わりと長い時間その体勢でいたため、あたしの顔が火を吹きそうなほど熱い。

おそらくあたしの顔は今、リンゴの如く真っ赤に染まっていることだろう。

 

槍太「おし!」

 

里香「出来た?」

 

槍太「おう、可愛いぜ!」

 

里香「ふぇっ!? あっ、ネ、ネックレスがね?」

 

槍太「いや、お前込みで」

 

里香「ふぇっ・・・!?」

 

あたふたと両手を動かして悶えるあたしに、槍太は優しく笑いかけてくる。

 

槍太「で、お前からは何かないのか?」

 

里香「えっ・・・」

 

槍太「う〜ん、少し期待してみたけど、何もお礼が目的じゃねえからお前に何か要求すんのはおかしいよな」

 

ぽん、とあたしの肩に手を置き、先ほどと同じように笑う。

 

槍太「まあ、別にお礼は気持ちが篭ってりゃなんでもいいさ」

 

里香「っ!?」

 

里香〈気持ちの篭ったお礼!?それって・・・いやいや、でも、お礼はしないといけないわよね。うん、お礼!〉

 

驚きのあまりパニックに陥り、自分の用意したプレゼントの存在を忘れていたあたしはゆっくりと槍太の手を握った。

 

槍太「ん?」

 

里香「あ、あぅ・・・」

 

もじもじと視線を合わせたり逸らせたりを繰り返してから、やがて意を決して眼を瞑り、顎を僅かに上げた。

そして瞳を閉じたまま小さく、口を開く。

 

里香「そ、その・・・私、初めて、だし。上手く出来ないかもだから・・・その・・・」

 

街中だし、そもそも道のど真ん中で、暗いとはいえまだ人も多い。

ここまでが限界だった。

だから、僅かに眼を開け一瞬だけ見る。

 

里香「優しく、してね」

 

眼を閉じ、キスを受け入れる姿勢で待つ。

しかし、いつまで経っても何も起こらない。

気になって眼を開けると、少しだけ顔を赤くした槍太が困惑した表情をしていた。

 

槍太「え〜と、里香?俺はどうしたらいいんだ?」

 

静かに槍太を見つめ、小首をかしげる。

 

里香「・・・違うの?」

 

ぽかん、とした様子で尋ねると、槍太も首を傾げた。

 

槍太「違うって何が」

 

里香「だって、さっき気持ちの篭ったお礼って・・・」

 

槍太「いや俺はただ普通に“ありがとう”って言ってもらえればよかったんだが・・・」

 

里香「あ、そういう意味か」

 

とそこまでわかると急に恥ずかしくなり、アワアワと立ちすくむ。

そんなあたしに、槍太は問い掛けてきた。

 

槍太「で、結局プレゼントは用意したのか?別に無くたって俺は構わないけど」

 

里香「へ?あっ、うん!ある。ちょ、ちょっとまって!」

 

鞄の中からプレゼントの入った紙袋を取り出し、槍太に差し出した。

 

里香「気に入るかわかんないけど」

 

槍太「開けていいか?」

 

こくり、と小さく頷く。

槍太は紙袋を開き、中に入っていたものを取り出す。

 

槍太「おぉマフラーだ。これもしかしてお前が普段使ってるのと同じのか?」

 

里香「うっ・・・やっぱ嫌だった?」

 

後悔しかけた瞬間、槍太がプレゼントを受け取り自分の首に巻いた。

そして満足そうに笑うと、あたしの頭を優しく撫でる。

 

槍太「いや、ありがとうな。大事にするぜ」

 

里香「あ、当たり前でしょ!」

 

槍太の言葉にそう言って返した直後、彼があたしの手を握ってきた。

 

里香「ふぇっ・・・!?」

 

槍太「お前は何処か行きたいとことかあるか?」

 

里香「う〜ん・・・」

 

あたしは人差し指を唇に当てて少し考え、僅かに笑う。

その後手を後手に組んで数歩歩き、くるり、と半回転して槍太に向き直った。

 

里香「クリスマスっぽい所、出来れば外がいいかな?」

 

その目線は彼の首元―――あたしがあげたマフラーに向ける。

しかし、槍太がそれ気付く様子はない。

槍太はあたしの横に並ぶように数歩歩き、携帯を取り出した。

カチカチと携帯を操作する槍太を見て「えへへ」と悪戯っぽく笑う。

そしてポソリ、と誰にも聞き取られない声量の声が漏れた。

 

里香「本当は、あんたと一緒ならどこでもいいのよ」

 

槍太「ん?なんか言ったか?」

 

里香「なんでもな〜い」

 

槍太「変な奴だな。それより大地に聞いたら、この近くにイルミネーションやってるみたいだからそこ行ってみようぜ」

 

里香「あら?あんたからそんなところに誘うなんて意外ね」

 

槍太「お前がリクエストしたんだろうが・・・」

 

そう言って呆れた顔をする槍太。

こんな何気ないやり取りでも、心が温かくなる。

 

里香「ほら、行くなら案内しなさいよ」

 

槍太「わかったよ・・・はぐれるといけないから、手離すなよ?」

 

里香「離せって言われても離さないわよ」

 

あたしたちはお互いにしっかりと手を握ったまま、夜の街を歩き出した。

 

説明
クリスマスイベント 槍太&里香編
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コメント
本郷 刃さんへ 槍太は恋愛に対して鈍感なので、もう一歩進んだ関係になりたい里香はいつもどうすれば良いか悩んでいる、2人は今そんな関係ですね。(やぎすけ)
里香が可愛いですね〜(2828) 槍太はもう少し里香の気持ちに気付いてほしいなぁと思いますが、2人のペースが一番ですねw(本郷 刃)
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