快傑ネコシエーター29
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141、美猫といっしょ

 

「美猫姉様の可愛い猫又人形を見てみたいのです、お願いできませんか。」

四方音は美猫に平身低頭に頼み込んでいた。

何処で雅の秘密の道楽を突き止めてきたのか謎であったが四方音は謎の霊感少女なので

霊感で突き止めたのであろうと美猫は余り疑問に思わず雅の所へ連れて行った。

雅はこの間の夢のこともあってギョッとしたが平静を装って四方音を書斎に案内した。

雅の書斎で既に完成している吹雪の狼少女人形とMr.オクロのぬいぐるみ、そして四方音

の日本人形風の美少女人形が完成し机の上に並んでいた。

四方音は自分の人形を見て、とても感動して固まってしまった。

雅は硝子ケースの中から美猫猫又人形を取り出して四方音人形の隣に並べた。

四方音は800歳の変化であることを忘れ少女に戻って、人形に見入っていた。

更に雅は妖子の化け狐人形もとりだして一緒に並べた。

「すごい、とても可愛いぞ美猫姉様も妖子姉様もものすごくよくできておる。」

「さらにわらわの人形まで、とても嬉しいぞ雅兄様。」

「そんなに喜んでくれると嬉しいやら恥ずかしいやら、

あまり自慢できる趣味じゃないですよ。」

「そんなことないよ、ここまで行けば立派な趣味として自慢できるよ。」

美猫は雅の人形作りの趣味にとても肯定的でいつもモチベーションを維持させていた。

「わらわをここまで可愛くできるなんて、何かわらわにできることで

お礼をせねばならぬのう。」

四方音は嬉しくて嬉しくてたまらなかった。

さらに吹雪とMr.オクロの人形もとてもよくできており特徴をとらえていた。

「こちらは吹雪姉様とMr.オクロ殿か、本当に良くできておる。」

四方音は雅にだけ聞こえるように、

「わらわの半人半妖は少しグロいから人間体にしてくれたことを感謝するぞ。」

四方音の半人半妖は女郎蜘蛛なので結構グロテスクになってしまうので人間体以外の姿を

他人に見せなかったのであったが。

「おっ、キジコ殿の猫又verがあるのう、これは想像の産物かそれとも夢枕に立ったのか。」

「どっちにしても、可愛いではないか。」

みゃー、みゃー

キジコは四方音に猫又姿を誉められたのが嬉しくて四方音の顔をペロペロと舐めた。

「これ、これ、くすぐったいぞキジコ殿。」

四方音はキジコを優しく撫でていた。

四方音は他の人形をすべて出してもらい、鑑賞していった。

「銀姉様は2verあるのか、17歳と25歳か、とても凝りに凝った出来栄えよのう。」

「雅兄様、美猫姉様の21歳verというのもありではないか。」

「たしかに、成長したネコの姿を想像して作るのもありですね。」

「わぁっ、それってちょっと恥かしいよぉ。」

美猫は顔を真っ赤にして照れて四方音の提案に戸惑っていた。

「いっそのことネコ、妖子ちゃん、さつきちゃん、吹雪ちゃん、撫子ちゃんの16歳組

全員の21歳verを作るっていうのはどうかな。」

「雅兄様、それは名案です、想像力を研ぎ澄まして

可愛くデフォルメして作ってみましょう。」

四方音はちょっと考えてから恐る恐る提案してみた。

「ところで可愛ければ、美少年はありかのぅ。」

「いったいだれをつくるのですか。」

「Mr.オクロ殿の美少年猫又verというのは。」

「キジコ殿の猫又verとカップルにしたら可愛いと思うのだが。」

「ショタか、ちょっと難しいけど可愛ければやってみる価値はあるかもしれません。」

開き直った雅は筋金入りの人形オタになって来たようだった。

美猫は四方音の話を聞いているうちに四方音も銀に負けず劣らずの

人形好きである事が分って来た。

雅がどんどん深みに嵌っていくような気がしたが美猫自身雅の人形が好きなので、

美的感覚さえ正常なら好きなようにやらせてみたい気がしていた。

「ところで、四方音ちゃん、道雪さんの白鼻芯姿のぬいぐるみを可愛く作ろうと思うのだけれど、

全く本人獣化しないし半人半獣化もしないから一体どんなものが出て来るか想像出来ないし、

この間夢の中で登場予告されたから心配なのです。」

「道雪様の白鼻芯姿はすごくプリティだぞ、狐や狸や穴熊のようなものを想像すればいい、

少なくとも源三爺様の化け狸とは月と鼈だよ。」

「四方音ちゃんは流石に銀ねぇみたいにみやちゃんのモチベーションの限界に

挑戦する様な要求はしないね。」

「銀ねぇは紀美さんとエリカさんを人形として面白いだけの理由で

リクエストして作って貰ったから。」

「やはり、人形は可愛いが正義。」

「可愛くない物を無理やり作ってもらうのは雅兄様に苦行をさせるようなものだからね。」

「みやちゃんも人間体の人形を作るのに抵抗が無くなって来たようだから、

さつき、撫子ちゃん、四方音ちゃんと実績を積んで慣れてきたところで

21歳verの人形は人間体縛りで行こうよ。」

「ネコ、お前そんな妙齢の成人女性の人形なんてすごい羞恥プレイだぞ。」

「何事も慣れが肝心だから、天才人形師ここに爆誕する。」

美猫は無責任なことを言いつつも、どのような人形が完成するか楽しみだった。

 

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142、夢魔と時次郎

 

滝口時次郎は初めて古宮慧快と仕事をしてとても満足であった。

長年一緒に組んで仕事をしてきた藤枝半兵衛の仇を慧快が見事に晴らしてくれた上、

更に慧快に傷一つ負わせず、仕事の手助けが出来たのであった。

「黄泉音様、この度は本当にありがとうございます、慧快さんととてもいい仕事が

できました。」

「時次郎さんも無茶なことをせず無事に帰って来てくれて良かったよ。」

「また、次の仕事も言いたいところですが竜造寺銀さんが黙っていないでしょうから。」

「まあ、銀ちゃんは時次郎さんなら訳ありだと何も言わずに譲ってくれたから大丈夫だよ。」

「それより、デミバンパイア以外で退治してもらいたい化け物がいるんだよ。」

「デミバンパイア以外ならまだ私のような老骨でも役に立つ仕事がありますか。」

「やだねえ、時次郎さんが老骨だったらあたしはどうなるんだよ。」

「夢魔という奴だがかなり手強いんで時次郎さんにおねがいしたいんだよ。」

「相棒は慧快さんなんだ、さすがに銀ちゃんには荷が重いんでね。」

 

「時次郎さん、今度の相手は夢魔と言って男を襲うサキュバス、女を襲うインキュバスの

2種がいて今回はサキュバスの方なんだ。」

慧快はデミバンパイア同様異国の化け物であることを説明した。

共に夢の中で異性を性的に誘惑し生血や生気を吸い取る厄介な化け物でデミパンパイア

の様にいきなり命を落とすことはないが、繰り返し襲われれば衰弱してやがて死に至る。

退治の方法は夢魔の魔力の中で強い意志を持ち夢魔の魔力の中でも使うことのできる

武器で退治するである。

そのためには結界を張ってその中で眠ったふりをして、自分自身が囮になって

夢魔を退治するしかないのである。

「私は僧侶だから敵に警戒されて囮には向かないんです。」

「奴らは香の匂いや気配で僧侶だと見抜いて近づいてこないんです。」

「夢魔の実体を捕えて退治するのが難しいので時次郎さんお願いしたいのです。」

「奴を傷つける事が出来るのはこの独鈷杵です、これで奴の額を思い切り突き刺して

光明真言を唱えてください。」

慧快は夢魔に憑りつかれて半死半生の若者をお堂の中の護摩壇の前で祈祷し

夢魔を遠ざけていた。

時次郎は若者の寝床に慧快が仕掛けた夢魔を閉じ込める罠のなかで囮になって

眠ったふりをしていた。

 

夜が更け辺りが静かになったころ、遠くの方から衣擦れの音か聞こえてだんだんと

近づいて来るものがあった。

時次郎は眠ったふりをして耳を澄ませていた。

時次郎の寝ている部屋に綺麗に夜化粧をした美しい女が入って来た。

不思議な旋律の歌を奏でながら聞くものの心を蕩かして動きを麻痺させるようであった。

時次郎は独鈷杵の刃を握りしめ右手を血まみれにしながら意識を保っていた。

女は時次郎が意外としぶといのを少し嘲るように微笑みながら時次郎の心を揺さぶった。

時次郎の体は半分麻痺していた。

時次郎の頭も半分麻痺していた。

女は時次郎の顔に顔を近づけ口から生気を吸おうとしてきた。

時次郎は自分が半人半獣であることを思い出し、全力でその本性である白鼻芯に変化した。

口に独鈷杵を咥え慧快の張った結界の中を思い切り稲妻を纏って走り回り夢魔を幻惑した。

夢魔は一体何が起こったのかわからず困惑し、部屋の中を走り回る獣の正体が何だかわからなかった。

夢魔自身罠にかかり部屋から出られなくなっていることにさえ気が付かなかった。

時次郎は突然人間体に戻り、夢魔の前に立った。

夢魔はまだ錯乱していた。

時次郎は夢魔を捕えると額に独鈷杵を突き立てずぶずぶと突き刺し光明真言を唱えた。

夢魔の体が硝子の様に砕けやがて塵の様になって崩れていった。

やがて、夜が明けて祈祷を終えた慧快が時次郎の元にやって来た。

「時次郎さん御無事ですか、その右手の怪我はどうされました。」

「慧快さん、意識を保つのに自分で傷つけました、正直手強い相手でした。」

「時次郎さんが夢魔を退治してくれたおかげで憑りつかれていた若者も

何とか命を取り留めました。」

「時次郎さん傷の手当てをしましょう。」

いつもは慧快が怪我をして相棒の銀が手当てをするのだが

今回は反対に慧快が手当てをする方だった。

「慧快さんこの独鈷杵ですが私に頂けませんか、これは武器ではなく

仏具だとは分かっていますが今回のような化け物には効果抜群ですよ。」

「時次郎さんの大事な大刀をこの間折ってしまったから代わりの武器としてはすこし

心細いと思いますので私の念を込めた独鈷杵を少し多めにお譲りします。」

「時次郎さんのお役にたてるならいくらでも念を込めて用意しておきますよ。」

「時次郎さん、異国から来た性質の悪い化けものはデミバンパイアだけではないのです。」

「今回のような化け物がまだこの国に入って何も知らない人々を襲い生血を啜り生気を

吸い取って命を奪うのです。」

「また、時次郎さんのお力をこの慧快にお貸し下さい、よろしくお願いします。」

慧快は時次郎の左手をがっちりと両手で握った。

 

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143、鍋附田の化け猫騒動

 

竜造寺家の財産を根こそぎ奪い成り上がった鍋附田家の最後は悲惨だった。

天罰覿面と噂するものさえあり、せっかく奪った財産も1代も保てずに消散し一家離散

いや最後の代の変死で一家断絶した。

竜造寺銀は竜造寺家の家宝が散逸してしまったことを嘆いていたがそれよりも妹姫たちが

独り立ちするまで面倒を見るため、腕っぷしを活かして未公認エクスタミネーターとして

売出し賞金を稼いでいた。

古宮慧快というパートナーに恵まれ順調に仕事を熟していた。

そんな竜造寺銀に肩入れし姉貴分として力を貸していたのが比良坂黄泉音であった。

比良坂黄泉音は鍋附田家に災いありという占いが出たことから銀に因縁を忘れ鍋附田家に

関わらない様に忠告していた。

鍋附田家は奪い取った財産を湯水のように使い既に身代が傾いていた。

正に悪銭身につかずであった。

鍋附田家の当主白定はかつての謀略の才も影を潜め、酒食に溺れ乱暴を振るう為正妻を

始め側室や子供たち全員が家から全て逃げていってしまい、ただ1人お気に入りの妾を

可愛がり怠惰な生活を過ごしていた。

酒の飲み過ぎで頭も鈍く、ただ妾といちゃつく生活を続けていた。

家臣たち料理人、小間使いにまで愛想を尽かされ、やがて2人きりになった。

ここに至っても白定は眼が冷めず、酒に濁った眼で酒屋に自ら徳利を持って、強引に

ツケで酒を買い、呑んだくれていた。

不思議な女だった。

その白定の元に残った妾というのが特に何も食べたり飲んだりしている気配はなく

ただ白定に寄り添い、白定を狂わせていた。

やがて、鍋附田家は取り潰しとなり、家屋敷は取り上げられ、債権者に分配された。

鍋附田白定は全てを失いただ酒を乞うだけの浮浪者になってしまった。

それでも、女は白定に付き添っていた。

白定は流石に不思議に思い女にどうして自分の元から離れないのかを聞いてみた。

「お前さん、変だとは思わなかったのかい、私が何も食べず、何も飲まず、ただ

あんたの傍に居るだけで、何を啜って生きているか。」

「あんたの生血を今まで存分に吸わしてもらったお礼に私の正体を見せてあげるよ。」

女の周りから霧が立ち込め中から大きな樽の様に太くなった蛭だった。

「あんたはもう用無しだ、最後の一滴まで生血を啜らせてもらうよ。」

白定は大した抵抗も出来ず、蛭の化け物に生血を全て吸われ干物の様になった後、

溝川に棄てられて醜くぶよぶよの水死体になって浮かんでいた。

人々は鍋附田の猫騒動とか猫の祟りとか噂していた。

しかし、竜造寺銀は比良坂黄泉音に従って鍋附田家とは距離を置いていたので、

この不思議な事件を黄泉音に相談した。

「銀ちゃん、この事件はあたしに任せてくれないかい、どうも嫌な奴が絡んでいそうなんだ。」

比良坂黄泉音は滝口時次郎を呼んで相談した。

「時次郎さんあんた蛭の化け物のことを覚えているかい。」

「えぇ、あれは完全に焼き殺す以外切っただけではまた再生して悪さをする厄介な奴です。」

「慧快さんに繋ぎを取ってあいつを完全に始末しないと鍋附田の馬鹿の二の舞になる奴が

でてくるからさ。」

 

「慧快さん今日はちょっと厄介な化け物退治の手伝いをお願いしたいんだ」

「時次郎さんどんな奴なんですか。」

「高野聖じゃないが蛭の化け物だ。」

「切っても死なない、直ぐに再生する奴なんだ。」

「犠牲者に憑りついて少しずつ生血を吸い、最後に用済みになれば生血を全て吸い尽くすんだ。」

「慧快さんには化け物が逃げられない様に結界を張って欲しい。」

「結界の中に閉じ込めたら体中に溜めている人の生血を抜き取ってから油で焼き殺さないと何度でも蘇って人の生血を啜るんだ。」

慧快と時次郎は蛭の化け物がどこに潜んでいるか、白定の水死体の流れ着いた

溝川の辺りから調べてみた。

蛭の好みそうなジメジメとした湿地帯を注意深く探した。

大きな腐った流木を見付けどうやら中に何か潜んでいるようだった。

「時次郎さんこいつの中じゃないですか、早速結界を張って逃げられない様にします。」

慧快は結界を流木とその下の湿地に張り逃げられないようにした。

時次郎は大きな鉈で流木を叩き割った。

すると血を吸い過ぎて血膨れした蛭がゆっくりと動き出した。

慧快と時次郎は独鈷杵で蛭の表皮に深く傷をつけて吸い込んだ血を吐出させた。

蛭の体を分割しない様に切り付け、逃げて再生しないように注意した。

蛭の体をずたずたにして生血をすべて吐き出させてから時次郎は油を蛭にかけ火を付けた。

「ぐぅぎゃー。」

悍ましい悲鳴と共に蛭はのた打ち回り、やがて動きが止まり静かに灰になっていった。

「慧快さん、この国には未だデミバンパイア並みに性質の悪い変化がいるんです。」

「時次郎さん、私にこのような化け物の退治の方法を教えてください。」

「いずれ、必要な時が来るでしょう。」

慧快は時次郎に教わったこの国古来の化け物の退治方法を書物に纏めようと心に誓った。

 

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144、呪い人形返しの風

 

呪い屋の商売を営む女がいた。

呪う相手の髪の毛を手に入れ蝋人形に髪の毛を仕込んで人形に針を刺しじわじわと

苦しめて狂死させる手口であった。

銀は噂を聞き付け黄泉音に相談した。

「放っておくわけにはいかないがいわゆる普通の藁人形と違って舶来の蝋人形を

使うんじゃ処置なしだね、向こうの魔術に詳しい慧快さんなら何とかできる

かもしれないから話を持ちかけてごらん。」

銀は黄泉音に言われた通り慧快に相談した。

「慧快さん、舶来の呪いの蝋人形なんてものを打ち破る方法なんてあるのかい、

もしあるのなら呪い屋を退治できるんだがねぇ。」

「銀姉さん、私はいい方法を知っているよ、返しの風を吹かせるのさ。」

「呪いと言うものは必ずその歪みを纏めて呪ったものに返るように因果応報に

なっているから、呪い逃げが出来るものではないんだよ。」

呪い屋の女は何も知らず、依頼を受け呪いを成就させていった。

女は自分に災いが来ないことを信じて呪う相手に悪意を込め

針を人形に刺してほくそえんでいた。

 

銀は最近不思議な痛みに襲われ苦しんでいる娘を見付け、娘に何か思い当たる節は

無いかを尋ねた。

娘は最近嫁入りが決まったそうだが、相手に横恋慕する者がいて、その者に因果を

含めて身を引いてもらったそうだった。

慧快はその者が呪い屋に依頼して娘を苦しめているのではないかと推理した。

慧快は娘の周りに結界を張り、護摩を焚いて呪いから娘を守ることにした。

娘の呪いを代わりに受ける蝋人形を作り結界の外に置いた。

銀はその蝋人形の様子をじっと観察した。

やがて、蝋人形に針穴がぶすぶすと刺された跡が現れてきた。

夜が明けてじっくりと蝋人形を観察した銀は憤慨して言った。

「こんなに針を情け容赦なく刺されたら娘さんも大変な苦しみだったろうねぇ。」

「で、慧快さんこの後どうするんだい、このままじゃ娘さん呪い殺されちまうよ。」

「呪い屋を突き止めて、呪い返しの呪法を行う。」

「銀姉さん、呪いを依頼した者から呪い屋を突き止めてくれませんか。」

銀は呪い屋を突き止め、呪い屋と、呪いを依頼した者の髪の毛を手に入れ、慧快の

元に持ってきた。

慧快は呪い屋の髪を仕込んだ蝋人形と呪いを依頼したものの髪を仕込んだ蝋人形を

作り、念を込め呪い返しの人形を作り、黒魔術に対抗する祈祷を行った。

「銀姉さん今晩決着をつけるから娘さんを見守っていてください。」

慧快は再び祭壇に向かって祈祷を行い呪い返しの呪法をとり行った。

何も知らない呪い屋の女は大きな針を呪いの人形に何本も刺し呪いを成就するため

呪言を唱え一気に人形の心臓に真っ赤に焼けた針を撃ちこんだ。

「ぎぇぎゅえっ。」と呪い屋の女と呪いを依頼した女は奇声を上げ苦しみながら

死んでいった。

 

慧快は銀と共に呪い返しがうまくいった事を確認するため呪い屋の女の家を訪れた。

呪い屋の女の顔と呪いを依頼した女の顔はとても普通では考えられない様な苦悶の表情を

浮かべていた。

呪い屋の手口は慧快の想像通り黒魔術を使ったものであった。

悪魔に生贄を捧げ、呪いを成就する手口でこれまでたくさんの呪いを成就させたと見えて

呪い屋の祭壇は黒い嫌な気配が凝っていた。

放っておくと何か不吉なことが起こりかねないので、慧快は祭壇を破壊し除霊して黒い

気配の凝りを退散させた。

今まで行ってきた呪いの人形を集めて、祈祷を行い浄化してから荼毘に付し呪い殺された

被害者の霊魂を弔った。

 

ふと呪い屋の家の地下室から呻き声が聞こえてきたので慧快と銀は地下室の明かりを

燈して地下室を調べてみることにした。

地下室には大きな穴がたくさん穿たれており、穴の上には鉄の重い蓋がのせてあった.

慧快は嫌な予感がして蓋の一つをずらして穴の中の様子を覗いてみた。

「銀姉さん、これは蠱毒だ。」

「獣を共食いさせて生き残った者を呪いの道具に使う卑劣な邪法だよ。」

「ここにいるものには罪はないが制御する者がいなくなっては手当たり次第に

人を襲う、ただ危険なだけの存在なんだ。」

「可哀想だが全て引導を渡して成仏させてやらないといけない。」

慧快は穴の中に油を入れ、火を投げ込んで全て始末した。

完全に息の根を止めたことを確認してから慧快は穴の中の哀れな生き物たちを供養した。

「慧快さん、この呪い屋かなり大きな事を企んでいたようだね、誰かを呪いで暗殺する

準備をしていたようだ、大ごとになる前で始末できてよかったねぇ。」

「銀姉さんの小さな発見が大きな化け物を退治できたわけで、性質の悪い蠱毒の呪いを

あれだけたくさん使われたら処置なしだったよ。」

慧快は蠱毒の恐ろしさを経験していた、それもたった一体であったが苦労して

始末していたのであった。

 

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145、四方音でいこう

 

四方音は雅の書斎で銀とうまくかち合わない様にして雅の作った人形を鑑賞していた。

美猫や妖子と一緒になることがあったが特に問題なく鑑賞していた。

銀が四方音人形のことをよく言わないだろうことを四方音は想像していた。

銀は四方音の今の姿があまり好みではない様なのだ。

四方音が黄泉音の姿を捨てたのは逆髪天子が自分の身替わりになって黄泉音の姿で

最期を遂げたことを思うと2度と比良坂黄泉音の姿には変化できなかったのであった。

そういうこととは知らずに銀は若い頃に見ていた姉貴分の比良坂黄泉音の姿は魅力的で

自分の今の姿も霞むくらいであると思っていた。

銀もまた四方音とうまくかち合わない様にして雅の作った人形を鑑賞していた。

銀は四方音人形が嫌いなわけではなかった。

当然、普通に四方音人形を可愛いと思い愛でていたのであった。

ただ、昔馴染みの姉貴分がこんなに可愛い姿をしているのが違和感バリバリであった

だけである。

銀自身自在変化できるわけだがあのような可愛い少女に変化することは余程の事情

でなければ気持ち的に変化したくないのであった。

その余程の事情を自分に打ち分けてくれない四方音に銀は以前の姉貴分であった黄泉音

とは違う心の距離があったのだ。

四方音は以前同様に時次郎こと道雪には何でも腹の内を明かしているのに銀に対して

他所他所しくしている様に銀は感じているのであった。

四方音は四方音で銀は未公認エクスタミネーターを引退し名を改め居酒屋女将の白猫銀

として第二の人生を静かに送っているのを邪魔したくないため、必要最小限の接触に

止めるようにしてなるべく事件に巻き込みたくなかったのだった。

四方音も銀もお互い水臭い関係に陥っていた

「あらっ、銀姉様こんなところで寝ているわ。」

雅の書斎で雅の作った人形を眺めているうちに銀は眠ってしまったようだった。

四方音も雅の人形を鑑賞しようと丁度雅の書斎にやって来たところだった。

銀の安らかな寝顔を眺めているうちに四方音も銀と何の遠慮も無く付き合って居た頃を

思い出していた。

銀は昔と比べかなり落ち着いたように見えたが相変わらず童心を忘れず酷い悪戯をしているようだった。

四方音も本音を言えば銀と昔の様に付き合いたかった。

「銀ちゃんは昔と変わっていない様ね。」

「お転婆で悪戯っ子で源三さんをいつも振り回していた猫姫様のまんま、大きくなって

苦労して妹たちの面倒を見て、いいお姉さんで。」

四方音はつい昔の様に銀の頭を優しく撫でていた。

やがて静かに嗚咽する声が聞こえ銀が泣いていた。

「黄泉音様どうして昔の様に付き合ってくれないの、なんでも胸の内を開いてくれないの。」

「銀ちゃん、あなたはもう静かに暮らしなさい、人の何倍も苦労して、悲しい思いを

して今やっと落ち着いたのだから。」

「銀ちゃん、黄泉音の姿にはどうしても訳があって戻れないの、

私の身代わりになった人がいるの。」

「理由を詳しく話せば、銀ちゃん刀を持って一人でも殴り込みをかけちゃうでしょう。」

「せっかく拾った命大事にしてちょうだい。」

「お願いだから今の私、四方音をうけいれて頂戴。」

「よ、四方音様。」

「四方音ちゃん。」

四方音はにっこりと銀に微笑みかけた。

 

「銀姉様、手毬を一緒に撞きましょう。」

「四方音ちゃん、きれいな手毬ね、美猫に買って貰ったんだって。」

仲睦まじく手毬を撞く二人の姿を妖子は微笑ましそうに眺めていた。

手毬を見て落ち着かなくなって飛び出してきたのがMr.オクロであった。

手毬にじゃれ付こうと必死になって飛びついてきた。

しかし、手毬の動きについて行けずに空を切るばかりでやがて疲れたのか

大人しく香箱を組み手毬の動きを目で追っていた。

キジコもやって来たが少しお姉さんぶってMr.オクロのようにはじゃれ付かず

大きく欠伸をした後、伸びをしてから香箱を組んで手毬の動きを眺めていた。

美猫がやって来た。

珍しく銀と四方音が手毬を撞いているようなので妖子の隣に腰掛けて二人の様子を眺めた。

「妖子ちゃん、銀ねぇ何かあったの、いつもにも増して童心に帰っているようだけど。」

「何か、二人の間に琴線に触れるものがあったみたいでさっきからずっと手毬に興じていますよ。」

美猫はいつもこんな風に童心に帰るようならだれにも迷惑が掛からなくていいなと

思ったが口に出すと突然銀に撲殺されそうな気がしたので黙っていた。

銀と四方音は日が落ち始め暗くなるまで手毬遊びに興じていた。

やがて二人の姿がシルエットの様になっても手毬を撞いていた。

二人の唄う手毬唄がかなり古いものである事には誰も気づかなかった。

銀がまだ少女の頃どこからともなく現れたお姉さんがいて一緒に手毬を撞いていた。

比良坂黄泉音と竜造寺銀の出会いであった。

それからかなりの月日が流れたがお互いそのことをよく憶えていた。

 

 

説明
141、美猫といっしょ
142、夢魔と時次郎
143、鍋附田の化け猫騒動
144、呪い人形返しの風
145、四方音でいこう
あらすじ世界観は快傑ネコシエーター参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定は快傑ネコシエーター2参照
魔力の強弱は快傑ネコシエーター3参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定2は快傑ネコシエーター4参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定3は快傑ネコシエーター5参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定4は快傑ネコシエーター6参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定5は快傑ネコシエーター8参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定6は快傑ネコシエーター9参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定7は快傑ネコシエーター10参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定8は快傑ネコシエーター11参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定9は快傑ネコシエーター26参照
キャラクター紹介一部エピソード裏設定10は快傑ネコシエーター27参照
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