真・恋姫無双〜魏・外史伝〜5
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第参章〜引き合う運命・前編〜

 

 

  

  「・・・全く、何をしているんですか?あなたは・・・。」

  「・・・・・・。」

  「『アレ』より先に見つけたまでは良かったのですが、北郷一刀を

  連れて帰らず、谷に落とす。彼を殺す気ですか?」

  「心配はいらんだろ?奴は死んではいない・・・。それが奴の運命だからな。」

  「そういう問題ではありません。今回は、あの方が彼の位置を追跡していたので

  多少予定は遅れてしまいますが、最初の目的は果たせるでしょう・・・。しかし、

  彼を探しているのは、『アレ』とて同じ。現在、我々は微妙な位置に立たされています。

  たった一歩でも、歩みと止めれば、取り返しのつかない事態になります。それを分から

  ない・・・、あなたではないでしょう。」

  「ああ、それぐらい説明されんでも分かっている・・・。これから気を付けるさ。」

  「・・・やはり、まだ許せないのですか?」

  「・・・・・・。」

  「そうですか。ですが、彼は・・・『彼』ではないのです。彼に・・・っ!?」

  「黙れ!!!」

  「左慈・・・。」

  「貴様に・・・、貴様に俺の何が分かる!結局、俺達は何一つ否定することが出来なかった。

  この外史達を見ろ!!これがあの時の結論だ!俺は、あの外史を否定できなかった・・・、

  自分の運命さえもだ・・・!」

  「その結果、今、我々がここにいるのもまた運命なのですよ。」

  「黙れと言っている!!」

  「左慈、今のあなたは・・・まるで駄々をこねる子供そのものです。」

  「子供で結構・・・。運命に抗わず、あるがままに受け入れる事が大人だと

  いうのならば、俺は一生、餓鬼のままでいいさ。」

  「左慈、待ちなさい。」

  「・・・・・・。」

  「ふう・・・、困ったものです。こんな事になるのなら、もう少し最後の演出をちゃんと

  凝らすべきでした。まぁ・・・、今さら悔やんでも仕方の無い事ですが。」

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  「華琳様、出立の準備が整いました!」

  「・・・・・・。」

  「華琳様、どうなされましたか?」

  「え、ああ・・・そうね。風と稟はもう成都に着いたでしょう。」

  「いえ、そうではなくてですね・・・、出立の準備が出来たという話だったんですけど。」

  「そ、そうだったわね。ごめんなさい、春蘭、秋蘭。」

  「華琳様・・・。」

  「華琳様、ここにおられましたか?」

  「あら、早かったわね、桂花。留守番の子達をちゃんとなだめてられたのかしら?」

  「は、霞に国境付近の監視を、万が一の事態に凪、真桜、沙和の三人に不在時の指揮を

  任せてあります。」

  「結構・・・、さすが桂花ね。」

  「そんな・・・勿体無いお言葉です、華琳様。」

  「華琳さま〜〜、まだ出発しないんですか?」

  「季衣、待たせてごめんなさいね。今すぐ出立するわ。」

  「わっかりました!じゃあボク、流琉や他の皆に言っておきますねー!!」

  「ええ、頼んだわ。」

  「は〜〜い・・・!」

  「ふふ・・・。では私達も行きましょうか。風と稟も私達が来るのを首を長くして

  待っているわ。」

  「「「御意。」」」

  ここ魏の首都、許昌では曹孟徳達が蜀の首都、成都に向かう準備をしていた。北郷一刀が

 成都に到着し、劉備に会っていた時の出来事であった。

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  「愛紗ちゃん・・・、そっちはどうだった?」

  「・・・申し訳ありません。くまなく探したのですが、未だに・・・。」 

  「そう・・・。」

  「ただ・・・、谷間の崖近くの開けていた所に争った痕跡がありました。具合から見て、

  最近できたものかと。」

  「北郷さんが誰かと争っていたって事?」

  「断言は出来かねますが、可能性としては高いかと・・・。」

  「北郷の兄ちゃん・・・、誰かとケンカして谷に落ちちゃったのか?」

  「その線も考え、谷の周辺を調べさせてはいますが・・・。」

  「なら、そのまま続行して、北郷さんの行方を調べてくれる?」

  「御意、では。」

  「・・・鈴々のせいなのだ、きっと。兄ちゃんとはぐれないように気を付けていたら、

  こんな事にはならなかったのだ・・・。」

  「鈴々ちゃんは何も悪くないよ。北郷さんだってそう思っているよ。」

  そういって、すこし涙ぐむ張飛の頭を優しく撫でる。

「ふにゃぁ・・・。」

「桃香さまあああぁぁーーーー!!!!」

  向こうから、すごい勢いで近づいてくる馬岱と、その後ろを追う馬超。馬超の手には

 何かが握られていた。

  「蒲公英ちゃん、どうしたのそんなに慌てて・・・、もしかして、北郷さんが?!」

  「えと・・・、それが・・・。」

  馬岱は言葉を濁す・・・。代わりに馬超が喋る。

  「あたしら、愛紗に言われて川の中流辺りを探してたんだ。そしたら岩陰に

  これが引っ掛かっていて・・・。」

  馬超は手に握っていたモノを桃香の目の前で広げる。

  「これって・・・、北郷さんが来ていた上着・・・。」

  ポリエステルという、この時代では珍しい繊維で作られた彼の服は誰の目からも目立ち、

 印象に残っていた。だからこそ、これが北郷一刀の物であると確信する。

  「ありがとう、二人とも。後は私と愛紗ちゃんに任せて、食事会の方に行ってて。」

  「でも桃香様・・・。」

  「大丈夫、北郷さんの服が見つかったんだからすぐに本人だって・・・」

  「そうじゃなくて・・・、曹操にはどう説明するのかって話。」

  「あ・・・。」

  言葉を失う・・・。そうだ、華琳さんには何て言おう。正直に話すべきだろうけど・・・。

  「でも、まさか着いてすぐに『北郷が行方不明なった』って言うのはどうかな〜・・・。」

  「曹操のお姉ちゃんも、ちびっ子も・・・今日を楽しみにして来るのだ。」

  「そこにそんな話をするのは、気が引けるね・・・。」

  う〜ん、と頭をひねる4人・・・。そして、先に口を開いたのは劉備であった。

  「じゃあこうしよう、少し様子を見て、話す機会を見つけてから、私から華琳さんに話す。

  だから、皆は華琳さん達の前では『北郷さん』の事には触れないで。」

  「・・・分かったよ、じゃああたしらは他の連中にも伝えておくよ。」

  「お願いね。」

  「ああ・・・。さぁ行くぞ、蒲公英。」

  「うん。」

  そして、二人はその場を後にする。

  「お姉ちゃん・・・、大丈夫なのか?」

  「大丈夫だよ・・・。ほら、北郷さんって・・・結構体は頑丈な方だろうし。」

  「・・・・・・。」

  北郷の事では無く、天然の自分の義姉が口を滑らす方を心配する義妹・張飛であった。

  「曹操殿、成都に到着したとの事です。」

  門番の兵が桃香の前で報告する。

  「うん、報告ありがとう。あとは、私がやるから仕事に戻って下さいね。」

  「御意。」

  「じゃあ、風ちゃんと稟ちゃんを連れて華琳さんの迎えに行こう、鈴々ちゃん。」

  北郷一刀が谷から落ち、行方不明になってから、半刻が過ぎた時の出来事であった。

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  「・・・ようやく見つけたわ。全く、左慈の馬鹿者め。仕事を増やしおってからに・・・。

  ・・・じゃが、『アレ』の事もあるからの。結果的には良かったのかもしれんが。

  ・・・さて、ではまずはコレを。」

 

 

 

  これは・・・現実なのか、それとも夢なのか。周囲の音が聞き取れず、意識がはっきり

 としない・・・。目を開けているのか、まどろんではいるが青い空が見える。そこにヌッ

 と影が指す。人・・・らしき影。よく分からない。何かを喋っているように見えるが・・・

 聞き取れない。何かを取り出したが・・・、よく分からない。そして影は視界の全てを覆う。

 そこで・・・意識が消えた。

 

 

 

  「これで良し、と。さて後はどうしたものか・・・。

  ん・・・、いかんな。人間が・・・二人か?近づいて来ておる。こ奴の事は、そ奴らに

  任せるとしようかの。」

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  「ん〜〜〜〜〜、ふふ〜〜〜〜ん、ら〜〜♪」

  細い小道を歌を歌いながら歩く少女、白い虎と白黒模様の熊がその後ろから付いてくる。

 何とも異様な光景。そしてそのさらに後方から、背中に日本刀の様な長剣を携える少女が近づく。

  「小蓮さま〜、何処に行かれるのですか?!お待ち下さーい!」

  「あら、明命。どうしたの♪」

  「どうしたのではありませんよ!勝手に一人で城を出てはいけないと雪蓮様に

  言われているではないですか!」

  「周々と善々いるから別に一人じゃないよ。」

  「ガウガウ」「グルルル」

  「あ、そうですね!・・・って、そういう事では無くてですね・・・って

  待って下さい、小蓮様ー!」

  「もう〜〜、明命は心配しすぎだって。」

  「ですが、小蓮様。昨晩、この辺りで不審な影を見たという報告がありました。

  何処かの賊、もしかしたら五胡の人かもしません。」

  「大丈夫、大丈夫♪その時はシャオがやっつけちゃうんだから。」

  「ガウガウ」「グルルル」

  「はあ・・・。」

  小蓮という少女に振り回される自分に、気付かれないように溜め息を吐く

 明命という少女。少し歩くと辺りは開け始め、右方には緩やかな小川が流れ

 ている・・・。

  「ひゃっほおおーーーー!!!」

  「わわ、小蓮様!?」

  下着一枚となった小蓮は、そのまま小川に入っていく。周々と善々はそれぞれに、

 気ままに遊んでいる。

  「小蓮様、遊ぶのは結構ですけど、午後からお勉強があるの忘れないで下さいね。」

  「むう〜〜〜、せっかく忘れていたのに〜・・・明命の意地悪っ!!」

  小蓮は、そのひんやりと冷たい小川の水を両手で汲み取ると、そこに立っている明命

 にかける。

  「わわわ、お止め下さい小蓮様ーー!」

  「へっへーーん、いやな事を思い出せた報いだよーーだ♪」

  「もう、小蓮様ってば・・・あれ?」

  「どうしたの、明命?」

  そう言って、明命の顔が向く方向の先を見ると、そこに人が倒れいた。曹操孟徳が

 成都に到着し、一夜が明けてから二刻後の出来事であった。

説明
頑張って、直し直し華琳さんを描く、アンドレカンドレです。皆さんの意見を取り込んで、修正して3回
目・・・。あと少しかな?
それはともかく、真・恋姫無双〜魏・外史伝〜第三章。この物語のターニングポイント・・・というのかな?つまり、ここからが魏・外史伝の本骨頂。第壱章、第二章未読の人はまずは、そっちを見てからの方が言いかと思います。
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コメント
おお!呉の希少種達が見つけたか!!(タンデム)
おお! あの二人が登場か〜 これは更にSHURABAな展開が期待できるぞ〜^^w (Poussiere)
おぉ、呉の貧ny―――ロリコンビが一刀の第一発見者ですかwww (フィル)
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